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ジャーナル側の遅れによって論文発表で先を越される:ケーススタディ

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ジャーナル側の遅れによって論文発表で先を越される:ケーススタディ

著者Aが某有名ジャーナルに論文を投稿しましたが、判定プロセスにひどく時間がかかり、投稿から9ヶ月経っても論文ステータスは「査読中」のままでした。一方、別の著者Bが、同じテーマの同じ結果の論文を、スピード出版を行うジャーナルから出版しました。著者Aは、自分の努力が無駄になったのはジャーナル側の遅延のせいも同然だと感じ、非常に憤慨しました。

事例:著者Aが某有名ジャーナルに論文を投稿しましたが、判定プロセスにひどく時間がかかっていました。投稿から9ヶ月経ち、編集者に何度もメールを出したにもかかわらず、論文ステータスは「査読中」のままでした。一方、別の著者Bが、同じテーマの同じ結果の論文を、スピード出版を行うジャーナルから出版しました。著者Aは、自分の努力が無駄になったのはジャーナル側の遅延のせいも同然だと感じ、非常に憤慨しました。著者Aは、著者Bよりも先に論文を投稿したという確信がありました。著者Aの論文はジャーナルに9ヶ月も預けられた形になっていましたが、著者Bの論文はスピード出版ジャーナルから出版されたため、出版までの期間も短かったと推測されるからです。ジャーナルがもっと迅速に処理していれば、その論文を他の誰よりも早く出版できたはずだと思わずにはいられませんでした。さらに追い打ちをかけるように、数日後、そのジャーナルは著者Aの論文をリジェクトしました。著者Aは、エディテージ・インサイトにアドバイスを求めました。


対応:エディテージ・インサイトは、残念ながら科学研究で先を越されるのはよくあることだと伝えました。著者Bよりも先に論文を投稿したという主張は正しいかもしれませんが、科学出版では、先に論文を発表した人が功績を認められるものなのです。


著者Aには、著者Bの論文を丁寧に読み、何かしらの抜けや、論文で触れられていない些細な点がないか確認してみるようアドバイスしました。著者Bの研究に別の角度からアプローチし、無視されている副次的な結果に注目するなどして、著者Bの論文を改良することを提案しました。その上で、著者Bの論文とは異なる、できればそれ以上に盤石で優れた、自分なりの論文を書くのです。できるだけ早くこの作業を行い、出版にトライするよう伝えました。


また、論文が執筆できたら、arXivなどのプレプリントサーバーに論文を投稿することもアドバイスしました。プレプリントにはアップロードされた日付が入るので、論文の優先権を確立しやすくなるためです。また、通常はプレプリントサーバーからの引用も可能なので、出版前に引用される可能性も出てきます。


著者はエディテージ・インサイトのアドバイスに感謝し、今後はジャーナル側の遅延によって先を越されることがないよう、論文は投稿前にすべてプレプリントサーバーに投稿することに決めました。


まとめ:科学では、複数の研究者が同じテーマについて世界各地で別々に研究を行なっており、互いの研究に気づかないまま、同じ結果を同じ時期に出すことも珍しくありません。そのような場合、科学における優先権は、結果を最初に発表した研究者あるいは研究グループに与えられます。2番手の発表者は、得られる功績が小さくなるので、面白くないでしょう。これが「先を越される(出し抜かれる)」ということで、科学ではしばしばみられる状況です。この慣行は、「出版しなければ消え去るのみ」という学術界の文化から生じたものです。


出版の遅れのせいで、ある特定の理論、分析、発見についての科学における優先権をほかの人に獲られてしまうのは、よくあることです。科学出版の激しい競争の中では、ジャーナル側の遅れによって先を越されることを避けるために、研究者側の努力も重要です。


以下のような手段を使えば、研究の優先権獲得に有効でしょう。
 

  • プレプリントサーバーに論文をアップロードする
  • 学会で予備段階の研究結果を発表する


先を越されてがっかりすることがないよう、懸命に取り組んだ研究のアイデアや理論については、積極的に優先権の確立に努めることを強くお勧めします。


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