2017年6月、南極のラーセンC棚氷から、重さ1兆トンの氷山が分離しました。棚氷の亀裂が拡大を続けた結果、分離を繋ぎ止めていた薄氷がついに崩壊したようです。一国ほどの大きさを持つ分離した氷山はA-68と名付けられ、ヴェッテル海を漂流しています。
2017年6月、南極のラーセンC棚氷から、重さ1兆トンの氷山が分離したとのニュースが広く報じられました。棚氷の亀裂が拡大を続けた結果、分離を繋ぎ止めていた薄氷がついに崩壊したようです。一国ほどの大きさを持つ分離した氷山はA-68と名付けられ、現在ヴェッテル海を漂流しています。
この巨大棚氷は、1890年にノルウェーの探検家カール・アントン・ラーセン(Carl Anton Larsen)が南極半島で発見したものです。発見者にちなんでラーセン棚氷と名付けられ、ラーセンA、B、C、Dの4つの棚氷に分類されています。これらは非常に安定した棚氷でしたが、ラーセンAは1995年に、ラーセンBは2002年にすでに崩壊しており、より巨大なラーセンCの状態に注目が集まっていました。
棚氷は、海水と大気両方の温度上昇に影響を受けます。氷山の崩壊に伴う海面上昇が切迫した懸念とされていますが、もともと海水面に浮遊している氷山の一部が崩壊したにすぎないので、著しい海面上昇には発展しないと考えられています。非常に大規模な崩壊であったものの、環境問題の専門家や科学者たちは、この現象を気候変動によるものであるとは考えていないようです。むしろ、氷河学者のマーティン・オレアリー(Martin O’Leary)氏を含む多くの研究者は、今回の崩壊を自然現象と捉えています。とは言え、ラーセンCの残りの部分が現状を維持できるかどうかを含め、今後の動きを把握するには数年間を要するとしています。
一般的に、氷山が崩壊すると、新たな生態系が形成されます。氷山崩壊地点から320キロ程度離れた場所に生息するペンギンたちの採餌パターンに今回の崩壊がどのような影響を及ぼすかは、まだ誰にも予測することができなません。