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Sci-Hub、エルゼビアに対する著作権侵害で1500万ドルの賠償を命じられる

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Sci-Hub、エルゼビアに対する著作権侵害で1500万ドルの賠償を命じられる

米連邦地方裁判所は2017年6月、学術論文の海賊版を無料で提供するウェブサイト、Sci-Hubに対し、エルゼビアに1500万ドルの賠償金を支払うよう命じました。エルゼビアは、科学・技術・医療情報を提供する世界最大手の出版社で、Sci-Hubで公開されている論文数がもっとも多い組織の1つです。

 米連邦地方裁判所は2017年6月、学術論文の海賊版を無料で提供するウェブサイト、Sci-Hubに対し、エルゼビア社(オランダ)に1500万ドルの賠償金を支払うよう命じました。エルゼビアは、科学・技術・医療情報を提供する世界最大手の出版社で、シュプリンガー・ネイチャー、ワイリー・ブラックウェル、米国化学会と並び、Sci-Hubで公開されている論文数がもっとも多い組織の1つです。


エルゼビアは、Sci-HubとLibrary Genesis Project(Libgen)に対し、「自社が著作権を持つ論文に違法にアクセスし、公開している」として、2015年に訴訟を起こしていました。ニューヨーク地方裁判所の裁判官、ロバート・スウィート(Robert Sweet)氏は、「米国の著作権法に違反しているため、これらのサイトはサービスを停止すべき」との判断を下しました。しかし、Sci-Hubの運営者が異なるドメイン名やIPアドレスを駆使してサイトの運営を続けていたことを受け、エルゼビアは、永続的なサイトの閉鎖と併せ、100点以上の論文を違法に公開されたことへの損害賠償1500万ドルを要求しました。公判では、Sci-Hub創始者のアレクサンドラ・エルバキアン(Alexandra Elbakyan)氏に弁護士が付いていなかったこともあり、判決はエルゼビア側の言い分に沿ったものとなりました。ただ、エルバキアン氏が損害賠償の支払いに応じるかどうかは不透明です。


同氏は、研究者の文献アクセスの障壁をなくすためにサイトを立ち上げた、との主張を崩していません。米国出版社協会(AAS)のマリア・A・パランテ(Maria A. Pallante)会長兼CEOは、「裁判所は、公共の利益のための違法行為を容認しないという点で正しい判断を下した」と述べています。しかし、同サイトが違法であるとの見解を示す研究者がいる一方、高い支持を集めているという事実は、学術論文のアクセシビリティの問題を浮き彫りにしています。エルゼビアの高額な購読料を図書館や研究機関が賄うことが難しくなってきている現状には反発があり、台湾、ドイツ、オランダなどの学術機関は、より公正な購読料での契約を求めています。また、Sci-Hubはロシアで運営されているため、海賊版論文の公開を続けるサイトを米国の法律で取り締まれるのか、という点にも注目が集まっています。


続報: 2017年6月28日、米国化学会(ACS)はSci-Hubに対し、米連邦地方裁判所で訴訟を起こすという行動をとりました。ACS対外関係広報部長の グレン・ラスキン(Glenn Ruskin)氏は、Sci-HubがACSの偽サイトを運営しているとし、「Sci-Hubは、ACSから盗んだ著作物(科学論文、書籍)を偽サイトで違法に公開している上、ACSの複数の商標を違法に偽造・複製している」と主張しています。ACSは裁判所に対し、Sci-Hubへの指導、ACSの裁判費用の負担、ACSのコンテンツの違法公開の停止などを含め、Sci-Hubへの処置を求めています。


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