硬質な器具を用いる侵襲手術は、体内組織を誤って傷付けてしまうリスクが伴います。侵襲を最小限に抑えられる器具の開発が求められる中、ハーバード大学の科学者らが、高度な知能を持つロボットアームとして機能する装置を設計しました。
硬質な器具を用いる侵襲手術は、体内組織を誤って傷付けてしまうリスクが伴います。侵襲を最小限に抑えられる器具の開発が求められる中、ハーバード大学の科学者らが、高度な知能を持つロボットアームとして機能する装置を設計しました。侵襲手術を安全に行えるソフトロボットは以前からありましたが、実際に手術を行えるレベルのロボットは今回が初めてです。
Advanced Materials Technologies誌で発表された今回の研究を率いるシーラ・ルッソ(Sheila Russo)博士は、チャールス・リバー・ラボラトリーズ社のロバート・ウッド(Robert Wood)氏が開発した、折り紙をヒントにして生まれたポップアップ型ロボットに関する先行研究に大きな影響を受けました。ルッソ博士らは、柔らかなパーツと硬いパーツを組み合わせたハイブリッドモデルを開発。各パーツは、接着剤ではなく化学結合でつながっているため、高い柔軟性を持つ装置に仕上がっています。また、鋭利な器具と比べて組織により優しい吸着カップが付いています。内視鏡は折りたたまれた状態で体内を移動し、目的の位置に着くと水力アクチュエータによってポップアップする仕組みになっています。
この装置は製造方法がシンプルなので、大量生産が可能です。また、微小な空間に内視鏡を入れる必要がある脳や肺といった部位でのきわめて複雑な手術に合わせて、最小1ミリまで縮小した装置を作ることも可能です。研究者らは将来的に、費用効率が良いこのロボットアームを、使い捨ての装置として普及させることを目指しています。