査読付き学術誌からの論文出版数は年々増え続けていますが、「査読が研究への重要な貢献である」という認識はほとんどないのが現状です。査読付き学術誌に掲載されると、論文に対する信頼性が高まり、キャリアアップにも役立つため、研究者は皆、査読付き学術誌に論文を発表したがります。しかし、査読者たちが適切な支援を得ているとは言えません。
査読付き学術誌からの論文出版数は年々増え続けていますが、皮肉にも、「査読が研究への重要な貢献である」という認識はほとんどないのが現状です。査読付き学術誌に掲載されると、論文に対する信頼性が高まり、キャリアアップにも役立つため、研究者は誰もが査読付き学術誌に論文を発表したがります。しかし、論文の査読を行う研究者たちは、自分たちの所属する研究機関や関連資金提供機関から、適切な支援を得ているとは言えません。
この問題に関して、オーストラリアの学術誌編集者40名以上のグループが、オーストラリアの各大学、資金提供機関などの研究機関・組織に対し、「学術誌の査読と編集:支援制度の重要性」と題した公開書簡を提出しました。書簡では、「学識経験者が編集や査読という形で学術出版に対して提供している専門的サービスは、オーストラリアの全大学において、学識経験者が行うべき専門的サービスの一部として、一層明確に認知され、報酬が与えられるべきである」と述べられています。この書簡は2014年9月に提出され、世界中の学術機関から大きな注目を集めました。
この書簡では、全ての学術誌編集者が直面する課題に焦点が当てられています。例えば以下のような課題です。
1. 研究機関や助成金提供機関は、査読や編集など、直接的に機関に貢献するとみなされない学術業務に対する支援を十分に行なっておらず、これらの業務の意義を認識していない。(この書簡の署名者は、「編集者や査読者(及び当然ながらその他大勢の貢献者)の仕事なくして、研究論文が日の目を見ることはない。掲載拒否率の高い、『権威ある、高品質な学術誌』にあたる学術誌各誌において、特にその傾向が強いのは皮肉といえる」と述べています。)
2. オーストラリアの研究機関は、研究者に対し、助成金を確保する能力や、権威ある学術誌で論文を発表する能力を過度に重視している。そのため、査読に割ける時間は非常に限られてしまう。このため、上級研究者は、自分が「出版しなければ消え去るのみ」というプレッシャーに押され、次世代の査読者のトレーニングを行う時間を確保することが難しくなっている。
3. 学術誌編集者が良い査読者を探すことが、難しくなっている。これは、論文を評価するという作業をしても、編集者が報酬や研究機関の支援を受けられるわけではないことが原因となっている。(書簡では、「この問題のため、編集者は査読者を探すという仕事に多くの時間をとられてしまう。また、選ばれた査読者が、投稿論文の価値や独創性を判断するのに最もふさわしい人ではないというケースが生まれる」と述べられています。)
この書簡の署名者は、これらの問題に対処するため、以下の2点を提案しています。
1.大学や研究機関は、学識経験者が行うべき専門的サービスを認識しなければならない。更に、論文出版目標数が指定されているように、そのような専門的サービスの到達目標値も指定されるべきである。
2.学識経験者の行う査読や編集業務に対し、大学は支援を行うべきである。そうした専門的サービスについて、Excellence in Research for Australia (ERA)の規定に含め、大学が率先してその維持発展に努めるべきである。
これらの提案は、Wiley’s Global Researchの広報責任者(Director of Communications)であるアリス・メドーズ氏(Alice Meadows)が言うように、「オーストラリアや英国などのように、助成金のための研究機関の評価に対して集約的なアプローチをとっている国々では、学術コミュニケーションに良い影響をもたらすかもしれない」と考えられます。
査読は、学術出版や科学の進歩の中核を成すものであり、その重要性が認識されるべきです。オーストラリアの編集者たちの動きは、学術界を改善する第一歩となるでしょう。
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