論文を出版することは手品ではなく、1つのプロセスです。シンプルなルールを守り、自分の研究内容に合ったジャーナルに投稿し、編集者や査読者からのコメントに耳を傾けましょう。論文投稿プロセス一般について、特に査読コメントへの対応方法について、役立つアドバイスと注意事項をまとめました。
[本記事はウォルターズ・クルワー(Wolters-Kluwer)社のニュースレター、Author Resource Reviewに掲載されたものを許可を得て再掲載しています]
論文の出版は手品ではなく、1つのプロセスです。魔術師になろうとする必要はありません! シンプルなルールを守り、自分の研究内容に合ったジャーナルに投稿し、編集者や査読者からのコメントに耳を傾けましょう。論文投稿プロセス一般について、特に査読コメントへの対応方法について、役立つアドバイスと注意事項を以下にまとめました。
編集者が求めているものは、何よりも新奇性(novelty)、重要度(relevance)、そして品質(quality、表1を参照)です。あなたの原稿にこれらが投影されているかどうか確認しましょう。
表1. 原著論文における新奇性、重要度、及び品質の例
新奇性 Novelty | 重要度 Relevance | 品質 Quality |
新薬、患者グループ、課題に関する情報 | 臨床への影響(従来からの問題に対する新たな回答、エビデンスの強化、現状の慣習の変更) | 健全な方法、適切な装置 |
論争領域における決定的データ | 診断の方法や疾患の重症度を数値化する方法の開発及び立証 | 網羅的かつ分析的 |
先行研究の拡張 | 疾患のメカニズムの解明 | 表示の仕方と文章が適切 |
大規模集団調査(確証的データ) | 仮説の設定 | 統計的分析とレビュー済、妥当なサンプルサイズ |
査読コメントを受け取ったら、査読者や編集者のコメントを分類して検討し、論文を修正して同じジャーナルに再提出するのか、あるいは修正後に別のジャーナルに投稿するのか(掲載拒否だった場合)を決定しましょう。編集者は、投稿論文の初期評価を行いますが、査読に回す前に変更を求めることもよくあります。これらの変更は、たいてい長さ、明快さ、焦点に関することです。この選別段階を通過すれば、論文が査読に回される可能性が高いでしょう。一定期間が過ぎると、査読者と編集者のコメントと共に、決定通知が届きます。この通知は通常、掲載拒否を知らせるものか、査読コメントに対処して修正版を投稿するよう要請するものであるかのいずれかです。
ジャーナルに返答する前に少し時間をおき、怒りや敵意などの感情をなるべく抑えるようにしましょう。査読者があなたの研究結果を正しく評価していないとか、間違っている、誤解している、偏った見方をしている、無能であるなどと思いながらコメントに返答するのは得策ではありません。批評を、個人的な攻撃ではなく建設的なものと捉え、受け入れるようにしましょう。査読者はあなたの論文を改善し、間違いを正してくれるのだということを忘れないでください。査読は、あなたの論文に価値を付加していくプロセスだと考えるようにしましょう。
<査読者への模範解答例>
査読者Aのコメント1:研究の目的が分かりにくく、明確に述べられていません
著者の返信:ご指摘ありがとうございます。原稿を修正しました。目的を序論の最後(3ページ、最後の文)に書くのをやめ、次のように書き直しました。「我々の研究の目的は・・・」
論文を修正すると決めたら、査読者と編集者のコメントに従って修正した文章をハイ
ライトします。更に別のファイルに、査読者の各コメントとそれに対する返答を箇条書きにして提出しましょう。コメントの1つ1つに対応し、どのように変更したかを率直に述べ(何をしたのか、あるいはしなかったのか)、その理由を述べましょう。これらの返答や説明は重要なものなので、慎重に検討した上で明確に説明する必要があります(先ほどの「査読者への模範解答例」のように)。もちろん、へりくだって全てのコメントを受け入れる必要はありませんが、可能な点はコメントに従って全て修正し、特定の変更を行わなかった理由を詳細に説明しましょう。査読者に同意しつつ(少なくとも異議を唱えることは避け)、提案を修正に取り込まなかった理由をきちんと説明しましょう。とにかく、漏れのないよう、丁寧に、根拠に基づいて返答しましょう。2
査読コメントに返答する時は、プロ意識を持って誠実に対応し、著者とジャーナルは同じ目的に向かって仕事をしているのだということを忘れないようにしましょう。編集者が求めているものは、すなわち読者が読みたい(または引用したい)と思う論文であることを意識しましょう。これは、論文の投稿先を現実的に考えるということにもつながります。あなたの論文は、本当に分野の一流ジャーナルで出版されるべきものでしょうか? 情報はすべて開示しましょう。要求されている書類は全て準備し、投稿時に書類のリストをチェックし、資金報告や利益相反の書類が全てそろっていて最新のものになっているか確認しましょう。ルールを守りましょう。投稿規定を読み、原稿の全ての要素がそれに合致していることを確認しましょう。次の投稿の幸運を祈っています!
<参考文献>
1. Kotsis SV, Chung, KC. Manuscript rejection: how to submit a revision and tips on being a good peer reviewer. Plast Reconstr Surg. 2014; 133: 958-964.
2. Williams HC. How to reply to referees’ comments when submitting manuscripts for publication. J Am Acad Dermatol. 2004; 51:79–83.