チリの研究者らが、同国の科学政策を不服として街頭抗議行動を起こし、科学に対する政府の支援が不足していると批判する公開書簡を提出しました。チリは天文学への貢献で知られており、宇宙科学分野における1論文あたりの被引用数ではランキングの上位を占めています。
チリの研究者らが、同国の科学政策を不服として街頭抗議行動を起こし、科学に対する政府の支援が不足していると批判する公開書簡を提出しました。
チリは天文学への貢献で知られており、「宇宙科学分野における1論文あたりの被引用数ではランキングの上位を占めています」。しかしながら過去数年間にわたり、チリの研究者は政府の科学関連政策に対して不満の声を上げてきました。
チリ国家科学技術研究委員会(National Commission for Scientific and Technological Research、CONICYT)(科学に関するあらゆる事項について大統領に助言し、助成金や奨学金を提供する資金提供機関)の委員長であるフランシスコ・ブリエヴァ(Francisco Brieva)氏が2015年10月29日に辞任を表明したことを受け、研究者たちの懸念はさらに高まりました。辞任の理由は、科学分野への公共投資を増大させようとする同氏の計画が、硬直した官僚制度の支持を得られなかったことだとされています。CONICYTは、留学を希望する3000人以上の研究者やチリ人学生に助成金や奨学金を提供しています。31億5000万ペソというCONICYTの今の資金では、チリの全研究者を支援するには不十分です。ブリエヴァ氏は、CONICYTの準備資金は、同氏が委員長職に就いて以降、その報酬が支払われていないところまで目減りしていると明かしています。
11月9日、サンチアゴ市に拠点を置くチリ細胞生物学会(Chilean Society for Cell Biology)の会長であるアンドレ・クーブ・コレア(Andrés Couve Correa)氏と、民間の研究機関である生命科学財団(Fundación Ciencia & Vida)の新プロジェクト監督責任者であるキャロリーナ・トレアルバ(Carolina Torrealba)氏は、政府を糾弾する公開書簡を発表しました。そこには、政府が「国内外の世論を無視し、その結果チリを無知と貧困に陥れた」と書かれており、これに対し1800名の研究者が賛同を表明しました。
チリでは科学研究開発への投資額が少なく、国内総生産(GDP)の0.5%以下です。チリの研究者たちは、抗議行動と公開書簡によってチリの科学情勢に変化がもたらされることを期待しています。政府は、CONICYTの予算を31億5000万ペソから1億5000万ペソ増加することを検討すると研究者たちに確約しました。研究者たちはさらに、科学への拠出金を決定する委員会に参加して、政府に研究者の視点を提供しようと画策しています。
チリの研究者たちの努力が同国における科学の発展を加速させられるかどうか、今後が注目されます。
参考記事:
Chile’s scientists take to the streets over funding; Accessed in November 2015
Chile needs better science governance and support; Accessed in November 2015
South American science: Big players; Accessed in November 2015