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ノーベル賞は現代の科学事情に合っているか?

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ノーベル賞は現代の科学事情に合っているか?

ノーベル賞は今年で115周年を迎えます。しかし、100年余りを経た今、科学の業績をたたえる賞の規定は、今日の科学文化を反映しているといえるでしょうか?ノーベル委員会は、古い規定を再検討し、変化し続ける研究情勢にふさわしく、ノーベル賞を改変すべきなのでしょうか?

ノーベル賞は今年で115周年を迎えます。この賞は、アルフレッド・ノーベル氏が1895年にしたためた遺言により、その資産の大部分を提供して、物理学、化学、生理学・医学、文学、そして平和の各分野で「最も重要な発見や発明」を行なった人々に敬意を表するために創設されました。ノーベル氏は、賞の創設だけでなく、その授与規定まで定めていました。ノーベル賞は、研究者の知的功績に贈られる名誉として、最高位のものを体現することになりました。

しかし、100年余りを経た今、科学の業績をたたえる賞の規定は、今日の科学文化を反映しているといえるでしょうか?ノーベル委員会は、古い規定を再検討し、変化し続ける研究情勢にふさわしく、ノーベル賞を改変すべきなのでしょうか?

ノーベル賞に対する批判の一つとして、ノーベル基金によって定められた「50年間の秘密規定」というものがあります。この規定は、候補者、推薦者及び選考委員会による評価は、50年が経過しなければ公表されないというものです。このため、受賞候補者の選考過程は半世紀にわたって覆い隠されたままとなります。ノーベル賞の選考過程に透明性が必要だと考えた、オスロ(ノルウェー)のノーベル研究所所長でノルウェーノーベル委員会事務局長のオラブ・ニョルスタッド(Olav Njølstad)氏は、秘密を守る期間を25~30年に短縮しようと試みたが無理だった、と述べていますNobelprize.orgの編集長、アグネータ・ウォリン・レビノビッツ(Agneta Wallin Levinovitz)氏は、「評価が50年間秘密にされるからこそ、(委員会のメンバーは)誰にも気兼ねすることなく本当の意見を書ける」という意見です。しかし選考過程の透明度が高まれば、ノーベル賞の威信がより高まるとも考えられます。

ノーベル賞受賞者の選考に関わるもう一つの規定に、「死後に賞が授与されることはないが、授賞式の前に亡くなっても受賞することができる」というものがあります。この規定に不快感を示す学者は大勢います。2013年、後にヒッグス粒子として知られるようになる粒子の存在を予想したピーター・ヒッグス 氏とフランソワ・エングラート氏が、ノーベル物理学賞を共同受賞しましたエングラート氏はこの研究結果を、同僚でアメリカ生まれの理論物理学者、ロバート・ブロート氏と共に発表していました。しかし、ブロート氏は2011年に亡くなり、ノーベル賞候補者となる資格がありませんでした。この規定を変え、たとえ死後であっても、候補者としてふさわしい人物に敬意を表すことができるようにしようという声が高まりました。科学界は、亡くなった人物を認める機会を失うべきではないという意見です。

共同研究や学際的研究、オーサーシップの肥大化が進む今の時代、科学の研究は大所帯のチームで行われます。ヒッグス粒子に関するヒッグス氏の発見も、多数の研究者の支援があったからこそ可能となったものです。しかし、ノーベル賞を授与されるのは最高で3名までです。このルールは、研究の現状を反映していません。エコノミスト誌は論説で、「3名ルールによって、科学は少数の天才が象牙の塔にこもってこつこつと行うものだという考えを増幅させている」と述べています。平和賞以外は組織を指名推薦できないため、研究者をチームとして表彰することはできません。ノーベル委員会は、この規定を改定し、画期的な研究を行う大型チームの貢献を評価する必要性に迫られているといえるでしょう。

ノーベル賞受賞者全体を見渡したときによく指摘されるのが、女性受賞者が少ないという点です。1901年から2014年の個人の全受賞者860人中、女性は46人です。2004年からスウェーデン王立科学アカデミーで物理学のノーベル委員会事務局長を務めるラース・ベルグストローム(Lars Bergström)氏は、女性の受賞者数が適切でない理由として、「女性よりも男性の研究者を優先して認める傾向があったかもしれない」と認めています。同氏は、一例としてリーゼ・マイトナー(Lise Meitner)博士を挙げています。彼女は、核分裂がどのように誘発されるかを発見しただけでなく、ドイツの化学者オットー・ハーン博士と30年間共同し、核分裂を導く実験の完成を助けた人物です。ハーン博士はその後、「重原子核の発見」でノーベル化学賞を単独受賞しています。ノーベル委員会は、女性研究者に対しても男性研究者と同様に認められる機会を提供し、男女平等が示されるよう、さらに努力すべきでしょう。

数学の天才を認める賞がないことは、学術界で何世代にもわたって議論されてきました。ノーベル賞は物理学、化学、生理学・医学分野で授与されますが、数学はノーベルの遺言に含まれていませんでした。数学では、アーベル賞とフィールズ賞が、どちらがノーベル賞に匹敵するかを競い合っています。ノーベル氏が数学を含めなかったのは、自分が興味をもっていなかったか、あるいは数学に対する深い理解がなかったからであろうと考えられています。しかし、数学も重要な学問分野です。ノーベル氏を記念して後にノーベル経済学賞が追加され、他の分野と同時に授与されるようになったように、ノーベル基金は「ノーベル数学賞」の導入を検討してもよいかもしれません。

長年にわたり知識人を表彰してきたノーベル賞は、学術界の最高峰として世界的に認められています。候補者の選考を左右する決まりごとはほぼ変わっていませんが、科学と研究を取り巻く文化は大きな変貌を遂げました。ノーベル賞に何らかの変更を加えることで、その栄光はいつまでも変わらずに続いていくのではないでしょうか。


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