1970年代までの研究は、分野別に行われるものでした。しかし、研究の重点が基礎研究からより大きな問題(例えば気候変動、食料・水危機、公衆衛生など)の解決へと移り始めると、分野の境を超えた学際的な研究が進むようになりました。学際的研究は従来の分野の限界を飛び超えていくため、単独の分野では解決できない問題を解決できると信じている専門家も多く存在します。
1970年代までの研究は、分野別に行われるものでした。しかし、研究の重点が基礎研究からより大きな問題(例えば気候変動、食料・水危機、公衆衛生など)の解決へと移り始めると、分野の境を超えた学際的な研究が進むようになりました。学際的研究は従来の分野の限界を飛び超えていくため、単独の分野では解決できない問題を解決できると信じている専門家も多く存在します。
学際的研究は近年盛んになり、より広範囲に社会的・経済的な影響を与えるようになっています。(英国の研究評価制度である)Research Excellence Framework (REF)が2014年、学術界に限らない大きな影響力のある研究事例について報告するよう研究者たちに要請したところ、その80%が学際的研究でした。学際的研究の推進者は、学際的研究が個別分野の研究に対しても良い影響を与えていると指摘しています。また、学際的研究では知識の統合によって新しい洞察がもたらされるため、発見の機会が増加します。研究がますますグローバル化し、共同研究が増えている現在、学際的研究が科学と研究の未来を担っていることは確実です。
しかしながら、学際的研究を追求する研究者は、助成金の確保、業績の評価、論文出版など、いくつもの困難に直面します。分野別の一流ジャーナルは学際的研究の出版には懐疑的で、学際的研究の論文を掲載するジャーナルはほとんどありません。また、ジャーナルは、学際的研究を評価できる査読者の選定にも苦労します。そのため、特に若手の研究者は、学際的研究テーマを追究するよりは、従来からの分野別の研究体系の一部となることを好みます。
助成金の獲得もまた、学際的研究の課題です。学術機関の予算は通常、分野別に検討されます。英国政府では3年ごとに7つの全国規模の研究委員会(national research council)がレビューを行なっていますが、その報告の中でも、学際的研究の助成金確保は困難であると述べられています。1つの分野内に収まる研究の方が助成金を確保しやすいため、以前の分野に戻ったという研究者もいます。この報告ではその他、学際的研究の課題を適切に評価するためにはより詳細なデータが必要となると述べられており、助成金の枠組みを別にしたり、分野別の研究と同等とみなされるようレビュー過程を改善する等の必要があるとも記されています。
従来の分野別研究を推奨する人々は、学際的研究について、核となる各分野から資金や時間を流出させるものだと考えています。この背後には、学際的研究の影響力を測定するのにふさわしい方法が存在しないという事情があると考えられます。研究者も、学際的研究は複雑であり、影響力を測ることは難しいと認めており、被引用数が分野別研究を上回るかどうかも意見が分かれるところです。また、分野別研究の影響力を測るために使われている数量的メトリクスは、学際的研究には不利なものとなっています。学際的研究の被引用数に関するある分析によると、参考文献が多分野にわたる論文は、3年間で見ると被引用数が想定よりもよりも少なく、13年間で見ると被引用数が多くなります。しかし、この分析では、学際的研究による幅広い社会的・経済的影響を被引用数で表すことは難しいとも述べられています。学際的研究の影響はすぐに現れるものではないため、助成金提供機関としても、従来からの分野別研究と比較した場合に、学際的研究に投資するメリットを見いだせないのかもしれません。
資金や出版に関する問題とは別に、学際的研究には大きな課題があります。それは、学際的プロジェクトの成功は、様々な分野で1つの共通基盤を作れるか否かにかかっているということです。しかし、学際的国際研究の増加は、様々な分野を支える人々がスムーズに連携していることを示しています。学際的研究は、西側諸国だけでなく東側諸国でも増加しています。
学際的研究の課題は多様です。しかし、助成金提供機関、政府、ジャーナルなど、科学界の主要な利害関係者らは、学際的研究への支援の重要性を認識しています。ブラジル・中国・日本・ロシア・英国・米国から50以上の研究資金提供機関等が集まった組織であるグローバルリサーチカウンシル(Global Research Council、GRC)が、2015~2016年にかけての詳細レポート・討論会・声明の2つの年次テーマのうちの1つに学際的研究を選んだことは、その表れと言えるでしょう。
学際的研究に対してどのような意見をお持ちですか? 下のコメント欄からあなたの考えをお聞かせください。
参考文献:
Grant giving: Global funders to focus on interdisciplinarity
Available from: http://www.nature.com/news/grant-giving-global-funders-to-focus-on-interdisciplinarity-1.18344, Accessed in October 2015
Why interdisciplinary research matters
Available from: http://www.nature.com/news/why-interdisciplinary-research-matters-1.18370, Accessed in October 2015
Interdisciplinary research by the numbers
Available from: http://www.nature.com/news/interdisciplinary-research-by-the-numbers-1.18349, Accessed in October 2015