イタリアのオリーブ園で2013年、オリーブの木が枯死に至る病気に侵され始めました。細菌の拡散を阻止しようとしたイタリア人研究者9人と政府関係者1名が、病原体の伝染拡大の責任を問われ、取り調べを受ける事態となっています。
オリーブの木を枯死させる細菌の拡散を阻止しようとしたイタリア人研究者9人と政府関係者1名が、病原体の伝染拡大の責任を問われ、取り調べを受ける事態となっています。
2013年、イタリアのプーリア(Puglia)州のオリーブ園で、オリーブの木が枯死に至る病気に侵され始めました。研究者たちは、原因病原体としてピアス病菌(学名:Xylella fastidiosa)を特定しましたが、対処法は確立されていませんでした。EUの規定に従って、イタリアは病原菌に侵された木の封じ込めを命じ、健康な木を保護する一方、病気になった木を完全に処理することで、他のEU諸国への拡大を防ぐ措置を取りました。非難を受けている研究者らは、封じ込め計画の一環として、病気の木だけでなく健康な木もある程度間引き、緩衝地帯を作るよう指示しました。
しかし、影響を受ける地域の農家らはこの案に反発し、法的支援を求めました。最終的にはイタリアの検察官が介入し、2015年12月18日、病原体封じ込め計画を中止させ、関係者10名を「木の病気の拡大を放置し、誤った情報と材料を役人に提示し、環境を汚染させ、景観を損ねた」1疑いで調査を行うと宣言しました。検察官らは、「この病気について、このような対策を正当化するだけの十分な科学的根拠がない」と述べています。検察官たちはまた、この病原菌がカリフォルニアからバーリ地中海農学研究所(イタリア)に入り、その後周囲の環境へ広がっていった可能性があるとの見解を示しました。
イタリアのInstitute for Sustainable Plant Protection(持続可能な植物保護研究所)のバーリ支部局長で、告訴されたうちの1人でもあるドナート・ボーシャ(Donato Boscia)氏は、「我々はショックを受けている。こんな告訴はばかげている」と述べています。3
なお、欧州委員会(EC)は、イタリアが計画通りに封じ込めを遂行できなかったとして、違反手続きを開始しました。ECの広報担当エンリコ・ブリビオ(Enrico Brivio)氏は、この病原菌はオリーブの木以外の多くの植物にとっても危険であり、「緊急対策が必要で、その実施も不可欠」4と述べています。一方、イタリアは完全に計画を停止してしまいました。複雑な事情を考えると、今後の展開は長期化することが予想されます。
参考文献:
1,2,3,4 Italian scientists under investigation after olive-tree deaths (accessed on December 23)
Researchers Accused of Spreading Disease (accessed on December 23)