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投稿・リジェクト・再投稿の手間を解決:アクシオス・レビュー

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投稿・リジェクト・再投稿の手間を解決:アクシオス・レビュー
ヴァインス氏は、独立査読機関であるアクシオス・レビュー(Axios Review)の編集長/創設者です。エジンバラ大学で進化生物学の博士号(PhD)を取得後、ブリティッシュ・コロンビア大学でポスドク研究員を務めました。その後学術出版界に進み、ワイリー社のジャーナル、Molecular EcologyとMolecular Ecology Resourcesの編集長を務めました。また、科学分野の学会・ジャーナル・出版社向けのコンサルタントとしても活動しています。さらに、科学出版、データアーカイブ、再現可能な科学についての論文発表に加え、最近では国際編集者会議(ISMTE)から功績・イノベーション賞を受けています。

ジャーナル選びと投稿は、著者にとってフラストレーションの溜まりがちなプロセスです。多くの著者が、論文を投稿し、リジェクトされ、別のジャーナルに再投稿する、というプロセスで苦労しています。それぞれの段階で膨大な時間と多大な努力が必要とされるだけでなく、その間には、待機期間も含まれます。独立査読機関であるアクシオス・レビュー(Axios Review)は、この投稿・リジェクト・再投稿という問題を解決するために、著者の論文原稿を厳しく査読し、著者の選んだジャーナルのうちのどれに投稿するのがふさわしいかを判断します。そして、ふさわしいと判断されたジャーナルに、その論文の掲載に興味があるかどうかを尋ねます。アクシオス・レビューでは専門性の高い編集委員会も設置されていることから、その査読によって、論文の質的な価値が高められます。そして、ジャーナルが論文のアクセプトやリジェクトを決定するまでの期間や、掲載までの期間が短縮され、わずか6週間で掲載に至ることもあります。アクシオス・レビューの編集長であるティム・ヴァインス(Tim Vines)氏は、アクシオス・レビューの利用によって、新規性の欠如や研究領域の不一致といった理由でのリジェクトをどう回避できるのかをお話しくださいました。ヴァインス氏は、データ共有の熱心な提唱者でもあります。精選された共有データが含まれている論文の方が、含まれていないものよりも科学的に優れているということを著者自身が認識するようになれば、データ共有という概念が本当の意味で発展していくだろうと述べています。

ヴァインス氏は、エジンバラ大学で進化生物学の博士号(PhD)を取得後、ブリティッシュ・コロンビア大学でポスドク研究員を務めました。その後、学術出版の道に進み、ワイリー社のジャーナル、Molecular EcologyMolecular Ecology Resourcesの編集長を務めました。また、科学分野の学会・ジャーナル・出版社向けのコンサルタントとしても活動しています。さらに、科学出版、データアーカイブ、再現可能な科学についての論文発表に加え、最近では国際編集者会議(International Society of Managing and Technical Editors)から功績・発明賞(Award for Achievement or Innovation)を受けています。


アクシオス・レビューについて簡単にご説明頂けますか?御社のウェブサイトには、「新規性の欠如や研究領域の不一致を理由としたリジェクトを受けずにすみます」と書いてありますが、その方法を教えてください。

我々は基本的に著者とジャーナルの媒介者であり、著者が自分の論文に興味を持ちそうなジャーナルを探すお手伝いをしています。そのプロセスは、次のようになっています。

1) 著者がターゲットジャーナル4誌を添えてアクシオス・レビューに論文を送付

2) アクシオス・レビューの編集者が査読者を選定

3) 査読者が論文および各ターゲットジャーナルへの適合性についてコメント

4) アクシオス・レビューの編集者が、アプローチすべきジャーナルを決定

5) 選ばれたジャーナルに、その論文の投稿を希望するかどうか尋ねる

6) 著者が論文を修正し、興味を示したジャーナルに論文を投稿

この方法はとてもうまくいっています。アクシオス・レビューの査読後、興味を示したジャーナルに論文が受理される確率は85%で、そのうちの半数は次段階の査読に回されていません。こうした状況は、アクシオス・レビューの仲介報告書に役立つ情報(査読報告書、査読者名、論文のPDF版)が含まれており、ジャーナルが、その論文に十分な新規性があるか、ジャーナルの対象領域にあっているかを容易に判断できるためであると言えるでしょう。ジャーナルは、受理する可能性が高いと考えられる論文の投稿だけを依頼します。アクシオス・レビューに投稿されてからジャーナルに掲載されるまでの平均期間は7ヶ月で、著者が論文を修正している期間を除けば、これは4ヶ月にまで短縮されます。

この数字には大いに誇りを持っています。アクシオス・レビューのアプローチが効果的であることを示すものであり、ジャーナルが弊社の査読プロセスを信頼していることの表れだと思うからです。アクシオス・レビューを利用する著者は、本当にふさわしいジャーナルで、迅速に論文を発表することができるのです。


アクシオス・レビューをもっとも有効活用できるのはどのような人でしょうか。

アクシオス・レビューは、一般分野であれ特定分野であれ、論文を発表するためのジャーナル探しが困難だと感じている人々にもっとも役立ちます。優れたジャーナルで発表するべき素晴らしい論文を書いたのに、適切なジャーナルがわからないという著者には、とくに役に立つと思います。実際、どのようなキャリアの段階にいる研究者でも、そのような状況に置かれることがあります。アクシオス・レビューの査読プロセスでは、専門家が論文に詳細なフィードバックを提供した上で、その論文の投稿を望むジャーナルを探します。


アクシオス・レビューが著者に勧めるジャーナルは、何を基準に選ぶのですか?そのプロセスについて教えてもらえますか?

アクシオス・レビューに論文を送る際、著者は投稿を希望するジャーナル4誌を選び、優先順位をつけて提出することになっています。提案されたジャーナルに受理される可能性がないと思われる場合は、作業開始前に、アクシオス・レビューの編集者がターゲットジャーナルのリストを変更するよう申し入れることもあります。


アクシオス・レビューの査読者や編集者はどのような人々ですか?どうやって選ぶのでしょうか。著者には、査読者が誰か分かるのですか?

アクシオス・レビューの編集者は、特定の分野で評判の高い専門家で、その多くはジャーナル編集者としての経験も豊富です。これらの編集者が、研究分野と、論文を客観的かつ徹底的に評価できる能力に基づいて、査読者を選んでいます。弊社の査読プロセスは、初期設定では「単盲検法」(“single blind”)となっているので、査読者が誰かを著者が知ることはありません。著者は「二重盲検法」(“double blind”)、すなわち査読者も著者の名前が分からない状態での査読を選ぶこともできます。どちらの場合も、編集者は著者と査読者の名前を把握しています。


学術出版界では、査読者を奮起させるための動機付けが必要だということがよく話題となります。アクシオス・レビューで査読を行うことで、査読者に何か特典があるのでしょうか。

アクシオス・レビューのために喜んで査読をしてくれるのは、我々が査読者のコメントを効果的に利用することを知っている人たちです。ジャーナルへの査読報告書は通常、対象の論文がリジェクトされてしまえば保管されたまま忘れ去られてしまいますが、アクシオス・レビューのために書かれた査読報告書は、適切なジャーナルが見つかるまで何度も使われます。投稿・リジェクト・再投稿問題に悶々としている研究者の多くが、我々の解決方法を気に入ってくれています。また、一流編集者が論文を扱うことが、査読への貢献意欲を高めることにつながっていることも分かってきました。

査読者には、将来アクシオス・レビューに投稿する際の50ドルの割引特典を提供しています。編集者も同様の割引が受けられます。アクシオス・レビューの査読をPublonsに登録した査読者もいます。査読者の協力が得られる確率は、普通のジャーナルと同程度のようです。


ほとんどの場合、研究費には、出版費用への支払いに限定された予算が含まれています。アクシオス・レビューへの支払いにもこの研究費を使えますか?

はい!アクシオス・レビューを利用する著者のほとんどは、研究費で費用(250ドル)を支払っています。この費用は、アクシオス・レビューの査読報告書を受け取ってからの支払いで結構です。


アクシオス・レビューと提携しているジャーナル(例:BioMed Central(BMC))には、オープンアクセス費用からアクシオス・レビューの費用を差し引いてくれるところもあります。他のジャーナルと提携することになった場合、同様の形式が採用される予定ですか?

BMCのジャーナルが著者の出版費を割り引いてくれることを大変嬉しく思っています。今後、他の出版社も似たような割引を提供してくれる可能性は大いにあると思います。


アクシオス・レビューの事前査読サービスは現在、進化生物学・生態学分野で提供されています。サービスの提供分野を拡大する計画はありますか?また、近い将来、アクシオス・レビューに期待できることはありますか?

もちろんあります!今現在、様々な分野で編集委員会メンバーの募集や、ジャーナルとの折衝を進めています。新しい分野の論文を扱う準備が整い次第、正式に発表したいと思います。


アクシオス・レビューの査読によって、出版プロセスの効率化が進むと思われますか?ここまでで、効率化は進んだと思われますか?また、具体的にお困りのことはありますか?

私は生まれつき悲観的なのかもしれませんが、アクシオス・レビューのプロセスが順調であることに常々驚いています。先ほども述べましたが、我々が仲介した論文の受理率は85%です。また、アクシオス・レビューで投稿を受けてから論文がジャーナルに掲載されるまでの期間は平均7ヶ月で、著者の論文修正期間を除くと4ヶ月にまで短縮されます。

これまでで最大の成果は、アクシオス・レビューを利用した著者が、数か月という期間で、もっともふさわしいジャーナルで論文を発表できている、ということでしょう。我々のサービスによって、投稿・リジェクト・再投稿前の修正という苦労を何度も繰り返すことなく、ジャーナルという生態系のどこに自分の論文がぴったり収まるのかを試すことができるのです。

アクシオス・レビューが成功したのは、多種多様なジャーナルのワークフローに関する理解があったからではないかと思っています。(アクシオス・レビューのターゲットジャーナルの一覧はこちら。)我々の仕事を各ジャーナルに対してどのように集約させるのがベストであるかは難しい課題ですが、これについては引き続き改善の努力を行なっていくつもりです。これまでのところ、各ジャーナルはとても辛抱強く支援してくれています。


アクシオス・レビューのような独立した査読モデルは、学術出版界の新しいトレンドの1つです。このモデルによって、論文原稿の質や出版ワークフローにどのような価値が加えられるでしょうか。また、新しい査読モデルを受け入れるという点で、学術コミュニティがどの程度進歩したとお考えですか?

査読システムに変更を加える場合は、慎重に取り組む必要があると思います。好むと好まざるとにかかわらず、学術文献の査読は、近代社会が「真実」を確立しようとする2つの方法のうちの1つであり(もう1つは法律システム)、どのような変更を加えるにしても、その基幹となる諸機能が保たれるようにしなければなりません。私にとって、これらの機能で重要なのは、「改良」と「濾過(選別)」です。「改良」においては、著者が論文の問題点に対応することを査読者と編集者が支援し、「濾過(選別)」においては、ジャーナルが論文を選り分け、読者が自分の研究テーマや重要と考えることについて学べるようにします。

ここで大きな問題となるのは、著者は昇進のために最適なジャーナルで自分の論文を発表しなければならないという強いプレッシャーを受けていることが多いという点です。上を目指すことが重視される結果、野心のある投稿が多く集まりすぎて「濾過」機能が詰まってしまうことになります。これは、もちろん、独立査読サービスが解決しようとしていることです。我々は、著者が1回限りの手間で、なおかつ「改善」と「濾過」の両方が確保された状態で、論文に適したジャーナルを探せるよう支援しているのです。

アクシオス・レビューのアプローチに対する支援は、学術コミュニティ全体から集まっています。これは、「ジャーナル・ショッピング(選び)」の問題を皆が認識しているからであり、我々が現在のシステムを崩壊させることなくそれを解決しようとしていることが評価された結果だと思います。いずれは学術コミュニティが、独立査読をジャーナルでの論文発表の標準ルートとみなすようになることを願っています。


ヴァインスさんが情熱を傾けておられるデータアーカイブ(data archiving)についてお聞きします。ご自身が書かれたある論文で、データアーカイブを必須にすれば研究データへのアクセスが大幅に改善する、また「個々の研究者が研究データを確実に保管することはできない」と述べられていますが、これについてご説明頂けますか? 現在の科学出版環境でデータアーカイブが果たす役割とは何でしょうか。データアーカイブという考えは、出版界の各領域でどの程度受け入れられているのでしょうか。

近年、データ共有には大きな進展がみられ、大変素晴らしいことだと思っています。もちろん、データ共有が問題になる状況も存在します。例えば、長期に渡る生態系学研究や、データから患者個人の特定が可能である研究などの場合です。これらの問題に対応する方法は、よく考える必要があると思います。

しかし一般的には、科学論文を発表する際に、主張の裏付けとなる核心部分のエビデンス(データ)が添えられていないのはおかしいと思います。科学コミュニティは長年、論文発表後にいつでも著者にデータを要求できるものだと信じてきましたが、我々の研究は、この信念が間違っていることを示しました。古い論文の場合はとくにそうです。論文の裏付けとなっているデータの共有に協力的でない、あるいはできないという著者があまりにも多いのです。論文発表時のデータ共有を必須とすれば、この問題は難なく解決できます。なぜなら、(a)どのデータを共有すべきかを決定するのは比較的容易であること、そして、(b)ジャーナルは全データが公表されるまで掲載を控えればよいからです。

もちろん、著者自身が、自分の論文のデータを共有するのが当然と考えるとき、つまり、精選された共有データを含む論文の方が、含まないものよりも科学的に優れているということを著者自身が認識して初めて、データ共有という概念が本当の意味で発展するのでしょう。この考えを広めることに、過去2、3年でだいぶ貢献できたと思っています。


ヴァインスさん、ありがとうございました!

情報開示: エディテージとアクシオス・レビューは提携関係を結んでいます。エディテージからは高品質な編集・校正・翻訳サービスが、アクシオス・レビューからは進化・生態学研究分野の論文原稿に対する査読サービスが提供されています。ただし、本インタビューはエディテージ・インサイトにより独自に行われたものであり、これによる金銭的な利益相反はありません。


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