オープンサイエンスの取り組みを支援し、科学知識へのアクセスを促して透過性を高めることに熱心な科学者が増えています。そんな中、マギル大学のモントリオール神経学研究所(MNI)が、科学研究機関として初めてオープンサイエンス方針を採用しました。
オープンサイエンスの取り組みを支援し、科学知識へのアクセスを促して透過性を高めることに熱心な科学者が増えています。ヒトゲノム・プロジェクトなど、政府の助成を受けた取り組みはデータ共有に積極的な姿勢を見せていますが、そんな中、マギル大学のモントリオール神経学研究所(Montreal Neurological Institute, MNI)が、科学研究機関として初めてオープンサイエンス方針を採用しました。
MNI所長のギ―・ルーロー(Guy Rouleau)氏は、同研究所で行われた研究結果とデータを可能な限り迅速に無料公開すると発表しました。この試みを実施する理由について同氏は、「そうすることで、神経科学の発見と応用が促されるから」1と述べています。この方針には、データと結果を無料で共有することで研究の重複を防ぐというメリットがあります。
しかし、同研究所の決定で特筆すべきは、いかなる発見についても特許を申請しないという点と、協力者全員が、所属先を問わず、このオープンサイエンス方針に従わなければならないという点です。特許を申請しなければ、研究所が得られるはずの特許収入に影響を与える可能性があります。しかしルーロー氏は、科学の初期段階で特許を申請することで得られる利益はほとんどなく、データ公開こそが、さらなる発見を確実にする唯一の方法だと考えており、こう述べています「肝心なのは、我々の存在理由は何かということです。それは科学の発展であって、金儲けではありません」2。
バージニア大学のオープンサイエンスセンター所長で心理学者のブライアン・ノゼック(Brian Nosek)氏は、「MNIが科学の理想に近づこうとしているのは間違いない」3と述べています。この決定は、MNIの全スタッフ約670名によって支持されています。現在MNIは、所内の全部門がデータ共有規定に従うことができるよう、またこの実験的取り組みの影響を追跡できるよう、関連ツールやインフラの設計を計画しています。
参考文献
1, 2, 3 Montreal institute going ‘open’ to accelerate science (accessed 25 January 2016)