EUの競争力理事会は、公的資金および官民共同の資金助成を受けているオンライン上のすべての研究論文に、2020年までに無料でアクセスできるようにすることを宣言しました。オープンアクセスとオープンサイエンスは、科学コミュニティが長年にわたって働きかけ続けているテーマです。
EUの競争力理事会 (Competitiveness Council)は、公的資金および官民共同の資金助成を受けているオンライン上のすべての研究論文に、2020年までに無料でアクセスできるようにすることを宣言しました。本理事会は、各国で国内市場、産業、宇宙、研究、イノベーションを担当する全EU加盟国の大臣らで構成され、EUの研究・科学・イノベーション担当委員であるカルロス・モエダス(Carlos Moedas)氏が議長を務めています。大臣らは、万人が研究にアクセスできるようにすることは「研究データの再利用において、考え得る最高の方法であり、オープンサイエンス・システムへの移行を加速させるものである」と述べています。
オープンアクセスとオープンサイエンスは、科学コミュニティが長年にわたって働きかけ続けているテーマです。理事会の現議長国であるオランダ政府がこの変化を強力に後押しし、学術界から称賛を受けています。公的資金の助成を受けた研究へのアクセスは、科学コミュニティの内外両方の特権と考えられています。そのため理事会は、例えばプライバシーの問題や知的所有権といった妥当な理由がない限りは、研究データにアクセスできるようにすべきだと述べています。
理事会はこの新たな方針の実現に向け、「欧州委員会、加盟国、資金助成機関等の利害関係者にこの変化の推進を求める」と述べています。EUはこの方針の共通目標を決定しましたが、各地域には独自の研究および技術革新のシステムが存在するため、過渡期にどのような判断を行うかは加盟各国に任されています。
この改革が、購読モデルのジャーナルや、オープンアクセス誌の公開猶予期間(エンバーゴ)の方針にどのような影響を与えるのか、そして各誌がこの新方針をどのように受け入れるのかはまだはっきりしていません。しかし、「著作権の侵害vsユニバーサルアクセス」の議論が続く中での競争力理事会によるこの動きは、科学を真にオープンにする方向へ一歩踏み出すものと言えるでしょう。
参考記事:
All scientific papers to be free by 2020 under EU proposals
Free access to scientific papers should be default by 2020, say European ministers
All scientific papers will be accessible for free by 2020, EU announces