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トランプ氏の勝利は科学にとって何を意味するか?

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トランプ氏の勝利は科学にとって何を意味するか?

米国でトランプ政権が誕生したことで、研究者たちは自分の将来や科学の行方に不安を感じるようになっています。ある教授は、「科学が注目されるのは、政治的優先事項の邪魔になるときか、役に立つときだけだろう」と述べています。

共和党指名候補者のドナルド・トランプ氏がヒラリー・クリントン氏を破って第45代米国大統領に選ばれたことを受け、学術界には大きな衝撃が広がりました。対立的な大統領選を通じ、どちらの候補者も科学を話題にすることはほとんどありませんでした。しかし、トランプ氏の「地球温暖化は偽科学とデータ捏造造に基づいたもの」という発言や、「自閉症の原因は医者にある」 という批判は学術界に衝撃をもたらし、多くの人が「トランプ氏は科学の重要性を理解していない」と考えるようになりました。その結果研究者は、トランプ政権下での自分の将来や科学の行方に不安を感じるようになっています。アメリカ物理学会(ワシントン)の広報部長マイケル・ルーベル (Michael Lubell) 氏は、「トランプ氏は、反科学を唱える我が国初の大統領となるだろう」と述べています。


共和党が上院の過半数を掌握し、政策立案過程でもトランプ氏がコントロールを握りやすくなっていることで、学術界の不安が高まっています。トランプ氏は、科学政策の立案方法や、科学予算を抑制については触れていません。しかし、気候変動や移民などの主要問題に関する同氏の見解から、研究者の多くは、科学研究の発展は優先されなくなるのではないかと考えています。アリゾナ州立大学(テンピ市)のロバート・クックディーガン (Robert Cook-Deegan)教授は、「科学が注目されるのは、政治的優先事項の邪魔になるときか、役に立つときだけだろう」と述べています。研究者の間でも大きな話題となっているトランプ氏の強硬な意見を、さらに少し詳しく見てみましょう。


気候変動

トランプ氏の気候変動についての見解は、学術界の内外で大いに議論されています。トランプ氏は気候変動を「米国製造業の競争力を弱めるため、中国が自国の国益のためにねつ造した」でっち上げだとし、パリ協定からの離脱も宣言しています。電気化学と持続可能なエネルギー保存について研究するスタンフォード大学(カリフォルニア州)のポスドク研究者、マリア・エスクデロ・エスクリバノ (María Escudero Escribano) 氏は、「科学、研究、教育、そして将来の地球にとって恐ろしいことが起こっている」とツイートしました。世界中の上級研究者たちがトランプ氏の見解を批判し、そのような行動に警告を発する公開書簡に署名しています。米国は二酸化炭素排出量で世界第2位を占めています。研究者たちは、今後の研究が阻害され、専門家の意見がないがしろにされることになれば、米国と米国民にとって大惨事となるだろうと警告しています。さらにトランプ氏は、米国環境保護庁の長官に、気候変動に対する懐疑派で知られ、保守的な企業競争研究所のエネルギー・環境センター所長を務めるマイロン・エーベル (Myron Ebell)氏を指名しました。これは、米国の環境政策に大きな変化が訪れる兆しと捉えられています。


移民

トランプ氏の提案する移民政策は、選挙運動の柱の1つでした。彼は、イスラム教徒の入国禁止や、メキシコとの国境に壁を作って移民の流入を阻止することを公約にしました。科学を擁護する人々は、このような極端な考え方によって、米国で働く外国人研究者の間に不安感を芽生えさせるのではないか、そして、才能ある海外の研究者が米国で勉強や研究を行うことをためらうようになるのではないか、と心配しています。アメリカ細胞生物学会(メリーランド州)で公共政策と広報を率いるケビン・ウィルソン(Kevin Wilson)氏は、「少なくとも、他国から我が国にやってくる科学者の利益を損なうことになるのは間違いないだろう」と述べています。


宇宙プログラム  

トランプ氏が選挙中に支持を表明した唯一の科学分野は、宇宙開発です。しかし、彼は米航空宇宙局(NASA)を「地球低軌道で活動する物流機関」だと批判しています。その代わりに興味を示しているのは、宇宙飛行の商業化です。トランプ氏の上級政策顧問であるボブ・ウォーカー(Bob Walker)氏とピーター・ナヴァロ(Peter Navarro)氏はジャーナルSpace Newsの論説で、「宇宙に関する取り組みの基盤は官民連携で作るべきだ」と述べています。トランプ氏はインタビューで、NASAの計画の「包括的な見直し」を行い、支出を調査した上で、「必要に応じて調整を行う」つもりだと述べています。これが米国の宇宙開発プロジェクトにどのような影響を与えるのかは大きな疑問ですが、研究者にその答えは分かりません。


研究者はどうすべきか?

米国海洋大気庁の漁業部門の元高官であるアンドリュー・ローゼンバーグ(Andrew Rosenberg)氏は、「科学者は立ち上がり、意見表明を行うべきだ」と考えています。同氏は大統領選の結果に落胆しましたが、それでも研究者はトランプ氏との関係を確立し、国の発展に科学がいかに重要かということを理解してもらえるよう努力すべきだと考えています。トランプ氏が、科学顧問やホワイトハウスの科学技術政策室長に適切な資質を備えた人を指名することを、ローゼンバーグ氏もその他大勢の研究者も期待しています。しかし、トランプ政権の進路は、今後も注視していく必要がありそうです。 


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