米国の連邦取引委員会(FTC)は、研究者に対して出版費用・査読プロセス・出版の性質に関する詐欺を働いたとして、学術出版社OMICSグループを告訴するという先例のない対応を取りました。
米国の連邦取引委員会(FTC)は、研究者に対して出版費用・査読プロセス・出版の性質に関する詐欺を働いたとして学術出版社OMICSグループを告訴するという先例のない対応を取りました。
OMICSの公式ウェブサイトによると、同社は700誌以上の「査読付きオープンアクセス・ジャーナル」を出版しており、さまざまな分野の「5万人以上の編集委員、査読者および1000以上の科学団体と提携」しているということです。しかし、FTCの訴状では、これらの主張は虚偽であり、査読を経て出版されるOMICSジャーナルの論文はほとんどないと述べられています。さらに、編集者リストには同意のないまま名前が掲載されている編集者もいること、そして明確な証拠を示さずにインパクトファクターが高いと公言しているという点も指摘されています。もっとも懸念される点は、論文が受理されるまで論文掲載料を明らかにしていないという点です。著者による論文の取り下げも認められていないため、論文を投稿した人は、出版するためにお金を払うか、論文を「人質」にとられる危険をおかすかのどちらかを選ぶしかなくなります。
実は、疑わしい出版社リストの作成で有名な図書館司書のジェフリー・ビオール(Jeffrey Beall)氏は、OMICSグループをハゲタカの可能性がある出版社としてリストに含めていました。FTC消費者保護局長のジェシカ・リッチ(Jessica Rich)氏は、「学術出版界における環境の変化につけ込んだ詐欺行為を食い止めることはきわめて重要だ」と述べ、怪しげな出版社に対して毅然とした態度を示しています。FTCが勝訴すれば、OMICSには被害を受けた研究者に対する返金が命じられるかもしれません。被害額は明らかになっていませんが、この裁判はハゲタカ出版社の不正を正す大きな一歩となるでしょう。
参考記事:
U.S. government agency sues publisher, charging it with deceiving researchers
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