キャリアの浅い研究者は、若くて出版経験が少ないものの、学術出版界に乗り出していこうという気概に溢れています。しかし、学術出版界はもどかしいことが多く、達成感よりも挫折感を抱くことの多い、浮き沈みの激しい世界です。ヨルダンのような国では、これら通常の課題に加えてさらなる困難が伴います。
キャリアの浅い研究者は、若くて出版経験が少ないものの、学術出版界に乗り出していこうという気概に溢れています。しかし、学術出版界はもどかしいことが多く、達成感を得ることよりも落胆を感じることが多い、浮き沈みの激しい世界です。研究者が直面するこのようなストレスについては、ほとんど話題にもなりません。編集者は、論文のアクセプトや出版に漕ぎつける方法、投稿規定の遵守の仕方、正しい研究のあり方などについてコラムを書くことがよくあります。これらはとても役に立つ、情報満載のトピックです。しかし、若手研究者にとって本当に役立つテーマは、例えばリジェクトされた論文(とくにデスクリジェクトされた論文)について、「本誌読者の関心対象でない」としかコメントされていないものをどう改善したらよいかといったアドバイスです。
私自身、リジェクトに至るプロセスに存在する問題点についてもっと情報を得たいと思って探しましたが、あまり参考になるようなものは見つかりませんでした。このような問題は、もっと議論される必要があると思います。例えば、欧米の研究者は、出版バイアスについてなんとなく知ってはいるものの、必ずしも多くの実体験があるわけではありません。
出版経験の浅い研究者にとって、インパクトファクターの高い著名ジャーナルからの出版は、夢の実現です。研究費をもらって1~2年の研究をする場合、やるべきことの中には、材料や設備の調達、実験の実施、データの収集と統計分析、そして当然ながら、論文執筆が含まれます。つまり、研究が終了し、それを書いてまとめるまでの2~3年間が問題となるわけです。ヨルダンのような国では、これら通常の問題に加えてさらなる困難が伴います。例えば、リソースが限られているために研究資金が足りないこと、担当講義数が多すぎて良質の研究を行う時間がごく限られていること、英語ネイティブでないために、有意義な研究アイデアを表明し、出版できる状態に整った論文原稿を書くのが難しいことなどです。さらに、ターゲットジャーナルに論文が受理されるまでに1年から2年かかることもあります。このとき初めて、学術出版界とはどういうところなのかが分かります。そこは、どれだけ時間や労力をかけた研究かということは関係のない世界です。優れた研究であっても、いとも簡単に論文がリジェクトされるのです。
そこで、私自身や同僚の多くが直面していながら、これまで表立って話されることのなかった悔しい出来事について話してみたいと思います。
1. 論文出版における人種差別:優れた論文でも、例えば著者が中東や発展途上国/地域の人、欧州以外の人(欧州のジャーナルの場合)、米国人以外の人(米国のジャーナルの場合)というだけでリジェクトされてしまうことが多いようです。私も、同じ研究機関の熱心な同僚研究者たちも、そのような経験をしています。出版を目指して一生懸命取り組んだ論文がリジェクトされ、そのジャーナルから、おそらく著者がそのジャーナルを発行している国の出身者である、あるいは欧米の人間だというだけで、質の劣る論文がアクセプトされているのが分かるといらだちを覚えます。また、私の論文は、間違いを見つけるために徹底的に微に入り細を穿って審査されているようなのに、ミスのある(メジャーなものもマイナーなものもある)論文が掲載されていることもあります。
2. 有名な研究者の論文が選ばれやすい:どの分野にも先駆者がいて、その貢献は間違いなく高く評価されています。しかし、そのような人の貢献が時代遅れになり、同じことの繰り返しになっても(自分自身の経験から言っています)、その人の名前がついているだけで、迅速に出版されます。
3. 研究テーマにあまり詳しくない人が査読者に選ばれる:査読者に、研究テーマに関する知識が乏しいことがよく分かるようなコメントをされると、非常に憤慨させられます(しかも、コメントの綴りが間違っていることもあります)。他の査読者はアクセプトを推薦していて大幅修正の提案がなくても、1人の査読者の決定に基づいて編集者が論文をリジェクトする決定をしたときなどは、さらにがっかりします。このようなことは非常に理解に苦しみます。
4. 研究のアイデア・方法・材料に対し、編集者/編集委員会が偏見をもっている:編集者や編集委員会が偏見を持っていることについて抗議するのは難しいものです。こういったことは、噂や、周囲の人たちなどから伝わってくるものだからです。これには憤慨させられますが、その人物が論文をリジェクトする権限を持っているわけですから、どうすることもできません。
5. 有無を言わせぬデスクリジェクト:これは最悪です!投稿規定をよく読み、ジャーナルの対象域に合っている場合は、編集者による決定理由が詳しく説明されていなければ、リジェクトを正当化できないと思います。でも、ほとんどの場合(私の意見では95%以上の割合)、デスクリジェクトは、編集者がその日どんな「気分」だったかで決まり、「こんな論文に私が目を通すと思っているのか」とでもいう態度が隠されているように思います。これまで、プロフェッショナルらしくない態度がにじみ出ている編集者からのメールをたくさん目にしてきました。テンプレートの文言をコピーペーストするだけで、論文をリジェクトしているのです。できれば、リジェクト理由を簡単に述べ、論文をどのように改善すべきか建設的なアドバイスをし、別のジャーナルを提案してほしいと思います。
ヨルダンの若手研究者は、こうした状況に直面し、不満を感じています。本当のところはどうなのでしょうか?これらの問題は真実なのか、それとも単に私たちが不運なだけなのでしょうか。欧米の研究者も似たような問題に直面しているのか、せひ知りたいと思います!