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ブラジル学術界、新政権によるさらなる予算削減を憂う

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ブラジル学術界、新政権によるさらなる予算削減を憂う

ブラジルでは科学が危機に瀕しており、同国の研究者たちの苦悩が解消される見通しは立っていません。前年の科学予算削減がいまだに尾を引く国内の科学コミュニティは、科学研究費の一層の削減がブラジル科学界に壊滅的な打撃を与えることを懸念しています。

ブラジルの科学が危機に瀕している現在、同国の研究者の苦悩が解消される見通しは立っていません。ミシェル・テメル大統領率いる新政権は、2015年の国内経済3.8%縮小に続き、2016年には3.4%縮小を図るための憲法改正を企てています。前年の科学予算削減がいまだに尾を引く国内の科学コミュニティは、このような動きがブラジルの科学分野に壊滅的な打撃を与えるのではないかと懸念しています。


現在、ブラジルは経済危機に直面しており、テメル大統領は、経済の安定化を目的とした歳出の上限を定める憲法改正案(PEC 241号)を提出しています。この法案は、今後20年間に渡って支出を前年のインフレ率以下に抑制するというものです。すなわち、2016年の科学技術とイノベーションのために割り当てられた約15億ドル(ここ10年で最低)という連邦予算が、今後の予算を決定する際の上限となるため、科学研究費はますます緊縮されることになります。さらに、法案の内容によると、PEC 241号の可決後、ブラジルの国内総生産が上昇したとしても、科学予算の増額は行われない方針です。「このような方針を続ければ科学に未来は訪れない」と考える科学コミュニティからは、不満が噴出しています。前大統領の政策によってブラジルの科学がすでに危機的状況に置かれていた中、新政権の法案によって事態はさらに悪化することが予想されます。リオデジャネイロのブラジル科学アカデミー会長を務めるルイス・ダビドビッチ(Luiz Davidovich)氏は、ブラジル学術界の声を代弁するかのように、「大惨事になる」と警鐘を鳴らしています。リオデジャネイロ連邦大学の物理学者でもある同氏は、「このような状況で、我々が20年間も生き延びられるはずがありません」と強く懸念を表明しています。


ディルマ・ルセフ前大統領による2015年の科学予算削減令以来、国内の科学者は大打撃を受けており、いくつもの研究プロジェクトが止まっている状況です。経済危機の余波は、複数の行政機関が各自の取り組みを複数打ち切っていることからも明らかで、2016年の初めには、National Council for Scientific and Technological Development(国立科学技術振興評議会、NCTSD)が、「大学院進学や海外留学のための新たな奨学金をこれ以上賄うことはできない」と表明しています。学部生や大学院生をはじめとする研究者の国際化を促進する画期的なプログラムであるScience Without Borders(国境なき科学)も、予算削減の煽りを受けており、同プログラムに当てられる予算は、48億ドル(2015年)から19.6億ドル(2016年)に削減されています。また、複数機関が奨学金の支給件数を削減しており、運営すら危ぶまれている機関も存在しています。


ブラジルの科学コミュニティが何よりも怒りを感じているのは、政府が、経済危機を脱するにあたって、科学や教育予算を標的にしていることです。Brazilian Society for the Advancement of Science(ブラジル科学振興学会、サンパウロ)会長のヘレナ・ナデル(Helena Nader)氏は、「賢明な国は、危機を脱するために科学技術やイノベーションのための予算をむしろ増加させます。私たちは正反対の方向に進んでいるのです」と指摘しており、学術界は、科学予算の削減という安易な策に出る政府のビジョンの乏しさを憂えています。リオデジャネイロ連邦大学教授連合会長のタチアナ・ロケ(Tatiana Roque)氏は次のように述べています。「歴代大統領を5代ほど遡ってみても、科学分野にこれほど深刻な打撃を与えた政権はありません」。来たる2016年12月13日、この改正案が上院で可決されるのかに注目が集まります。(編集部注:2016年12月13日、憲法改正案は上院で可決されました。)


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