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日本の科学力低下の3つの理由

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日本の科学力低下の3つの理由

科学研究は、経済大国日本の根幹をなすものです。国内経済は1980年代前後に急成長を遂げ、科学技術への重点的な投資を行うことで、日本は研究やイノベーション先進国としての地位を確立してきました。しかし近年になり、科学研究におけるそのリーダーシップが、世界の中で発揮できなくなってきています。

科学研究は、世界第3位の経済大国である日本の根幹をなすものです。国内経済は1980年代前後に急成長を遂げ、科学技術への重点的な投資を行うことで、日本は研究やイノベーション先進国としての地位を確立してきました。2000年以降、日本の研究者は自然科学分野でノーベル賞を17回受賞しており、その科学力の高さを示してきました。しかし、近年になり、日本は科学研究におけるリーダーシップを世界の中で発揮できなくなってきています。日本の科学力の低下にはいくつかの要因が挙げられており、国内の研究者は自分たちの将来に不安を感じ始めています。


クラリベイト・アナリティクス社のウェブ・オブ・サイエンス(WOS)とエルゼビア社のスコーパスのデータを取り入れたNature Index 2017のレポートで、日本の研究アウトプットが低下傾向にある証拠が示されています。同レポートの概要を以下に紹介します:
 

  • 質の高い論文に占める日本の論文の割合は、2012~2016年の間に6%減少している。
  • スコーパスに収録されている総論分数は2005~2015年の間に80%増加しているが、日本の論文が占める割合は7.4%から4.7%に低下している。
  • 日本の研究者による論文出版数は全体的に低下しており、得意分野の材料科学と工学の分野では約10%、コンピューター・サイエンスの分野では約37.7%減少している。
  • 日本の学術論文の平均被引用数は停滞しており、その成長率は、1.3%(2005年)から1.5%(2015年)と、わずか0.2%しか増加していない。


急速な経済成長を遂げている中国や、科学研究を前進させている米、韓などの先進国と比較すると、日本は明らかに失速しています。日本の学術関係者たちは、自国の研究環境の悪化がこの結果を招いていると考えています。エルゼビア・アカデミック・リレーションズ副社長のアンダース・カールソン(Anders Karlsson)氏は、「日本のグローバルシェアは低下しており、それに伴って世界への影響力も低下している」と述べています。

ここからは、日本の科学研究が直面している主な問題点や課題について見ていきましょう。


科学政策の弱体化が研究アウトプットに影響

一国の科学研究力は、政府の科学政策に大きく依存しています。残念ながら日本では、大学などへの援助が十分とは言えません。ジャパンタイムズの社説で指摘されているところによると、日本の科学論文は半数が国立大学から発信されていますが、2017年の国立大学への政府補助金は、2004年と比べて10%減少しています。日本の研究アウトプットが停滞傾向にあるのも無理はありません。


予算が削減されているのは、大学の補助金だけではありません。2012年以降、科学技術への総投資額は5%減少しています。2017年10月に安倍首相が解散総選挙を表明した際、日本のトップ研究者たちは、5年前に安倍政権が発足して以来、政府は科学を軽視し続けてきたと指摘しています。また、政府による競争的資金の総額は増えてはいますが、これらの補助金はプロジェクト単位のものであり、研究者たちは実際の研究よりも、この資金獲得レースに多くの労力を割かなければならない状況になっています。


基礎研究の軽視も、日本の科学力が低下している大きな要因です。基礎研究は、イノベーションや知見を拡充に欠かせないものです。大きな発見の下には、必ずと言っていいほど基礎研究という土台があります。日本学術会議の前会長で豊橋科学技術大学の大西隆学長は、「政府は、応用科学の種となりアイデアとなる基礎研究の振興にもっと力を入れるべきだ」と主張しています。


若手研究者への職の不足

科学予算の削減は、さまざまなことに影響を及ぼしかねません。予算削減によって、日本の若手研究者の就職先の選択肢が狭まっています。正規採用は狭き門となり、大学は彼らに安定した常勤職を用意できずにいます。


予算の不足は、若手研究者の独立を阻害することにも繋がり、自分の研究室を持つことを難しくします。大阪大学大学院生命機能研究科の仲野徹教授は、「このような状況に置かれた若い研究者が独立した場合、過酷な現実が待ち受けていることが予想されます。この現実が、彼らの独立の意欲を削ぐ大きな要因となっているのです」。


仲野教授は、テニュアトラック制度を整備することの重要性を強調しています。テニュアトラック制度とは、一定の任期付き雇用契約を全うした若手研究者に常勤のポジションを与える制度で、米国で幅広く採用されています。完全無欠な制度ではありませんが、より多くの研究者が学術界に留まる動機にはなるでしょう。


国内労働力の減少

日本の研究者たちの最大の懸念は、労働力の減少を意味する高齢化により、科学発展のスピードを維持することが困難になることです。労働力の減少は、政府が科学への投資を抑えている理由の1つでもあります。日本学術振興会の家泰弘理事は、「政府予算は、社会の高齢化には抗えない」と述べています。


日本政府は、この問題を打開するための予算案を出す必要があるでしょう。科学技術振興機構(東京)の濱口道成理事長は、外国の研究者や学生を呼び込み、日本の学術界に刺激を与えることの重要性を説いています。


 

日本の対応策

失敗は許されません。状況はきわめて深刻です」と、仲野教授は警鐘を鳴らしています。日本政府は事態の重大さを考慮し、主要研究機関への支援を除々に開始しています。教育と研究のバランスによって研究機関を分類し、それに応じて予算を配分する制度も提案されています。また、40歳以下の研究者を3年以内に10%増加させる計画もあるようです。日本が再び世界をリードする科学技術大国に返り咲くことができるかどうかは、研究界を苦悩させている根深い問題を、今後数年で政府が解消していけるかどうかにかかっています。


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