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若手研究者のためのケースレポートの書き方指南

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若手研究者のためのケースレポートの書き方指南

ケースレポートは、臨床診療から得られた新しい知識を普及させるための手段です。また、初めて論文を書く医学生や研修医にとって着手しやすい形式と言えます。

ケースレポート(症例報告)とは何か?

ケースレポートは、医学コミュニケーションの形式のうち、最も古くから存在するものです。ケースレポートあるいはケーススタディ(事例研究)は、臨床診療から得られた新しい知識を普及させるための手段です。医師は、周知のものとは異なる症状、すでに知られている疾病の合併症、治療に対する異常な副作用や有害反応、あるいはよくある症状に対する新しい対処法など、従来とは異なる珍しい患者の事例に遭遇することがよくあります。ケースレポートとは、そのような疾病の兆候、症状、診断、治療について論じるものです。

ケースレポートは、症例に対する直接的な観察事項を提供するものであることから、医学文献の最も重要なエビデンスです。また、初めて論文を書く医学生や研修医にとって、着手しやすい形式と言えます。また、当然のことながらケースレポートは医科学に貢献するものなので、履歴書(CV)に記載する項目としても効果的です。

適した症例をどのように判断すればよいのか?

医学生や医師という立場から、興味深い事例や普通とは異なる事例を見逃さないように常に注意を払っておく必要があります。しかし、報告書として執筆する価値のある事例を特定するのは難しいことかもしれません。ジャーナルClinical Case Reportsの主任編集者であるチャールズ・ヤング(Charles Young)氏は、優れたケースレポートとは、伝えるべき内容が明確で、一般化が可能であり、多くの臨床医に関係するものだと述べています。

テキサス大学健康科学センター(University of Texas Health Science Center)によると、ケースレポートを出版するジャーナルの多くは、以下のような内容を扱っているということです。

1.      珍しい所見

2.      治療に対する有害反応

3.       混同につながる異常な合併症

4.      新説の説明

5.      現在の理論に関する疑問

6.      個人的な影響


患者の同意:ケーススタディに必要な倫理的要件

インフォームドコンセントは、人が参加する研究でほぼ例外なく必要とされる倫理的要件です。患者の同意書は、原稿の投稿時に全てのジャーナルが提出を求めるものなので、ケースレポートの執筆開始前に取得しておくことが重要です。患者が未成年者の場合は親の同意書が必要となります。研究や治療に同意する意思を示すことができない成人の場合は、近親者の同意が必要となります。

患者の匿名性もまた重要な要件です。患者が特定される可能性のある情報は、絶対に開示しないようにしましょう。特に写真を扱う場合は注意を要します。患部の写真から患者が特定されることがないよう気をつけてください。


ケースレポートの構成とは?

ケースレポートでは、ジャーナルによって少しずつ異なったフォーマットが用いられます。出版を目指すジャーナルを何冊か選び、掲載されたケースレポートを読んでみて、大体の構成やフォーマットをつかんでおくとよいでしょう。

一般的には、ケースレポートには抄録(abstract)、序文(introduction)、事例(case)、考察(discussion)が含まれます。ジャーナルによっては、文献レビューを含めなければならないものもあります。

抄録(Abstract):

抄録では、症例、扱う問題、症例が伝える内容について要約します。症例研究の抄録は、たいていの場合、150ワード以下というごく短いものです。

序論(Introduction):

序論では、症例が提示する問題についての概要を簡潔に述べます。必要に応じて関連文献を引用します。序論は通常、患者およびその患者が患っている基本的な症状について説明する一文で締めくくります。

症例(Case):

「症例」では、症例の詳細について以下の順序で記述します。

  • 患者について
  • 患者の病歴
  • 検診結果
  • 病理テストおよびその他の検査結果
  • 治療計画
  • 治療計画後に予測される結果
  • 実際の治療結果

これらの関連事項の詳細が全て含まれていることと、不必要なものが除外されていることを確認しましょう。

考察(Discussion):

考察は、ケースレポートで最も重要な部分です。ジャーナルは、出版する価値のある症例であるかどうかを、ここを見て判断します。序論で述べた内容を発展させる形で書き始め、この症例に注目すべき理由と、それによって提示される問題に重点をおくようにします。

続けて、このテーマに関する文献についてまとめます。(ジャーナルが文献レビューを別項目とするよう規定していれば、考察の前に入る場合が多いです。)ここでは、患者の症状の主な問題点に関する既存の理論や研究結果について記述します。レビューは、混同の根本原因、あるいは症例の主な課題に焦点を絞るようにします。

また、ケースレポートでは、症例が伝える内容に言及し、既存の文献との関連付けを行わなければなりません。つまり、この症例が当該の問題に関して、現在一般に信じられていることを裏付けることになるのか、あるいはそれを覆すことになるのかを説明し、このエビデンスが将来の臨床診療にどのような価値を与えるのかを述べるということです。

結論(Conclusion):

ケースレポートは、ジャーナルの指定するフォーマットに従って、結論または留意事項をもって結びとします。ここでは、ケースレポートで網羅された重要な点を簡潔に伝えます。著者はこの部分で、臨床医、教員、研究者に対する提案や推薦を行うことができます。ジャーナルによっては、結論を独立した項目としないものもあります。その場合は、考察に結論のパラグラフを書くことになります。


ケースレポートはどこに投稿すればいいのか?

ケースレポートの出版は容易ではありません。ジャーナルの中には、ケースレポートを出版したがらないところもあるからです。しかし、新しいオンラインジャーナルの中には、ケースレポートに特化しているものがあります。BMJ Case ReportsCases JournalJournal of Medical Case ReportsRadiology Case Reportsは、ケースレポートを出版する著名ジャーナルです。

症例研究は、難しい症例に対処した経験を、世界中の医師と共有するための媒体といえます。臨床医にとって、担当する患者に困惑させられるような難しい症状がみられるときの貴重な情報源となります。

疑問やご質問がありましたら、下のコメント欄からご投稿ください。何らかの問題に直面していて、出版に関する専門的なアドバイスが必要という方は、Dr. Eddyにご質問ください


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