複雑なアイデアを伝えるには、明瞭さが重要です。伝え方が複雑だと、本来の意図が伝わらないばかりか、アイデアそのものに関する誤解も生じかねません。表現したいアイデアが複雑だからといって、伝え方まで複雑にする必要はないのです。簡潔明瞭で分かりやすく表現するコツを紹介します。
本記事は、Center for Plain Languageに掲載されたものを、許可を得てここに再掲載したものです。
複雑なアイデアや概念を伝えるには明瞭さが重要なので、学術出版では、内容を単純化することが必要になってきます。伝え方が複雑だと、本来の意図が伝わらないばかりか、アイデアや概念そのものに関する誤解も生じかねません。サイエンティフィック・ライティングは、読みやすく分かりやすくすることが可能です。表現したいアイデアが複雑だからといって、伝え方まで複雑にする必要はないのです。英語が母語であろうとなかろうと、簡潔明瞭に分かりやすく伝えるためには、いくつかのコツをおさえておけば十分です。
言葉遣いや文構造や構成が明確であれば、読者は、必要な情報を簡単に見つけ、素早く理解し、その情報を活用することができます。
以下の5ステップは、分かりやすく伝えるためのプロセスを示したものです。各ステップのチェックリストを活用して、適切なコンテンツを完成させましょう。
ステップ1:ターゲットとする読者層を見極め、その特徴を把握する
あなたの文書やウェブサイトを利用しそうな読者像を明確にしましょう
- 読者の目的をリスト化し、優先順位を決める
- その目的を達成するために読者が必要としていることや知るべきことをリスト化する
- 読者について、内容の構成に影響を与えそうな特徴をリスト化する(例:年齢、コンピューターの使用経験等)
読者層を明確化することで、読者がしたいこと・知っていること・知るべきことが分かり、それに合わせて内容を構成できるようになります。
ステップ2:読者が読みやすいコンテンツ構造にする
- 論理的な流れになるように内容を整理する
- 文末が不自然にならないよう注意しながら、内容を短い節に区切る
- 読者が文章の内容を予測できそうな見出しを付ける
コンテンツを構造化することで、読者は必要な情報を素早く確実に見つけることができます。
ステップ3:平易な言葉で書く
短く簡潔に書く
- 短く論理的な文章で書く
- 重要な情報は、それぞれの節・項・段落の最初に書く
- 読者の目的達成に役立つ情報を含める
- 興味深い情報であっても、読者にとって不要または邪魔になりそうなものは割愛する
- アイデア、文章、段落、節のつなぎに転換語を使う
文のトーンを意識する
- お役所的な堅い文体ではなく、会話体のくだけた文体で書く
適切な単語を選ぶ
- 意味の明確な動詞を能動態で使う
- 読者が知っている言葉を使う
- タイトルや箇条書きの文体を統一する(動詞で書き始める等)
- ウェブサイトの場合:単語をリンク付けする場合は、リンク先との表記揺れがないようにする
言葉の使い方次第で、読者は文章や意図する内容を、素早く確実につかめるようになります
ステップ4:読者にとって見やすく分かりやすいデザインにする
- 見出し・小見出しを駆使して情報を整理する
- フォントのサイズ・色・字体などを変えて読者の興味を引く
- 余白を活用する
- 画像を使って理解を助ける
デザインを工夫することで、読者はそれを目印に情報を効率良くキャッチできるようになります。
ステップ5:オンラインコンテンツの場合は、ターゲットユーザーにデザイン/コンテンツを試してもらう
さまざまな点からデザインをチェックする
- 読者のニーズは、ユーザー調査に基づいて最優先されているか?(トップページ等)
- ナビゲーションラベルや情報の構造は、直感的に使えるようになっているか?
- コンテンツは読みやすく分かりやすいか?
- 最終版の確認を行なったか?
エビデンスベースのテスト戦略を活用する
- ターゲット層の代表にふさわしい人がテストに参加したか?
- デザイン/コンテンツを、十分な人数にテストしてもらったか?
- 分かりやすさや使いやすさをどのように測定したか?
- 改善を示すために、事前と事後の比較を行なったか?
最終版の使い勝手を確認する
- 読者に、誰/何のために作られた文書/サイトだと思ったかを聞く
- 必要な情報や求める情報をどのように見つけ出したかを聞く
- 主要なコンセプトもしくはプロセスを自分の言葉で説明してもらう
- ターゲット層が、目的を容易かつ確実に達成できたかどうかを観察する
- 読者がつまずいた点や誤解した点を書き出し、その部分を見直す
文書/ウェブサイトは、読者が、求める情報を見つけ出し、見つけた情報を理解し、確信を持ってそれを活用することができて初めて役立ちます。
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