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Editorial Managerで著者の貢献度を把握するための「CRediT」活用法

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Editorial Managerで著者の貢献度を把握するための「CRediT」活用法

論文への著者の貢献度は、著者名順で判断できる場合もありますが、通常は、相対的な貢献度を正確に判別することは困難です。CRediTThe Contributor Roles Taxonomy)では、「概念化」、「データ整理」、「執筆」などのあらかじめ定義された役割をもとに著者の貢献度を確認することで、この問題の解決を目指しています。

[本記事はウォルターズ・クルワー(Wolters-Kluwer)社の著者向けニュースレター、Author Resource Reviewに掲載されたものを、許可を得てここに再掲載したものです。著者はジョスリン・コラー氏(Jocelyn KollerAries Systems Corporation、マーケティングスペシャリスト)です。]


論文への著者の貢献度は、著者名順で判断できる場合もありますが、通常は、相対的な貢献度を正確に判別することは困難です。CRediTThe Contributor Roles Taxonomy)では、「概念化」、「データ整理」、「執筆」などのあらかじめ定義された役割をもとに著者の貢献度を確認することで、この問題の解決を目指しています。Editorial Managerで論文が投稿された際、ジャーナルは、任意でCRediTの役割を著者に選択させることができます。この記事では、The Journal of Bone and Joint SurgeryJBJS)誌によるCRediTの導入と、それによる著者とジャーナルへの影響について考えます。


CRediTとは?


CRediTは、論文への著者の貢献度を具体的に示すためのものです。これまでは名前の記載順で貢献度を測ってきましたが、この方法は透明性と精度の面で不十分だったため、助成団体も研究者も、現代の研究に必要な役割が反映された、一貫性のある測定方法を必要としていました。そんな中、Cell Pressのガブリエル・ハープ氏(Gabriel Harp)が率いる ハーバード大学とウェルカム・トラストとの共同ワークショップで著者の役割14種が定義され、CRediTの分類法が完成しました。
 

#

役割

定義

1

概念化

Conceptualization

アイデア化:研究全体の目標・目的の設定、展開。

2

データ整理

Data curation

注釈付け(メタデータの生成)、データ整理、研究データ(データを解釈するのに必要ソフトウェアコードを含む)の管理。

3

形式的分析

Formal analysis

研究データの合成を目的とした統計学、数学、コンピュータ、その他の形式的技術を用いた分析。

4

資金獲得

Funding acquisition

論文につながる研究プロジェクトを実行するための財政支援の獲得。

5

調査

Investigation

研究、調査プロセスの実行。データ/エビデンスを収集するための実験。

6

方法論

Methodology

モデルなどの方法論のデザイン/開発。

7

プロジェクト管理

Project administration

研究活動の計画と実行に関する管理/コーディネーションに責任を負う。

8

リソース

Resources

研究素材、試薬、材料、患者、試験室試料、動物、器具、計算資源、その他の分析ツールの提供。

9

ソフトウェア

Software

プログラミングやソフトウェアの開発、コンピュータプログラムの設計、コンピュータコードやアルゴリズムの実装、既存コードのテスト。

10

指導

Supervision

研究チームへの指導を含む、研究活動の計画と実行について監督責任を負う。

11

バリデーション

Validation

プロジェクトの一環として、あるいは別のプロジェクトとして、結果/実験その他の研究アウトプットを複製/再現によって検証する。

12

可視化

Visualization

論文の準備、作成、または発表プロセスにおける視覚化/データの提示。

13

執筆原稿作成

論文の準備、作成、発表プロセスにおける、原稿の執筆(相当量の翻訳も含む)。

14

執筆レビューおよび編集校正

Writing – review & editing

論文の準備、作成、発表プロセスにおける、出版前後のレビュー、論評、修正。

CRediTによる分類(https://casrai.org/credit


Editorial Manager2016年にCRediTが導入されたことで、ジャーナルは、投稿プロセスの一環として著者の貢献度に関する情報を要求できるようになりました。責任著者がすべての著者の貢献度を選択して、共著者は、自分の貢献度を確認することができます。


Editorial Managerにおける、著者の役割の選択

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Editorial ManagerCRediTを最初に完全導入したのはJBJSでした。同社のエディトリアル・オペレーション・マネージャーのクリスティーナ・ネルソン氏(Christina Nelson)は次のように説明しています。「20177月に、JBJS誌およびJBJS Open Access誌限定で、論文投稿時に著者が任意でそれぞれの役割(貢献度)を選択できるシステムを試験的に導入しました」。 20181月には、JBJSの全6誌(JBJSJBJS Essential Surgical TechniquesJBJS Case ConnectorJBJS ReviewsJBJS Open AccessJBJS Journal of Orthopaedics for Physician Assistants)の投稿プロセスで、CRediTの提出を求めるシステムを導入しました。


JBJSによるこのシステム導入は、CRediTで定義された役割がどのように使われているかを知る貴重な機会となりました。たとえば、20175月から20183月の間にJBJS誌に投稿された論文でもっとも多く選択された役割は「執筆レビューおよび編集」で、「方法論」がそれに続く結果となりました。選択数がもっとも少なかったのは「ソフトウェア」でした。JBJS Open Access誌についても同様の傾向が見られました。

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ネルソン氏によると、CRediTの要求に対し、著者からの苦情や疑問はほとんど出なかったようです。また、ジャーナルのスタッフは、とくに複数の著者が関わる共著論文で、このシステムが役立っていると感じているようです。JBJSCRediTの導入以前、著者が6名以上いる論文には各著者の貢献度の詳細を示したカバーレターの提出を義務付けていましたが、CRediTを導入したことで、このプロセスがはるかに簡略化されました。ネルソン氏は次のように述べています。「このシステムによって、これらの情報を要求するプロセスが簡略化されました。また、すべての論文に対して著者の貢献度の情報を集めることで、透明性が促され、意識を高めることができています。個別にレターを要求する必要がなくなったことによる手順の合理化は、ジャーナルのスタッフにとって有益なことです。この単純なシステムは、一目で情報を把握することができるので、時間の節約にもつながっています。著者には教育ツールとして、そして編集者には共著論文を評価するための情報源として、CRediTを導入することをお勧めします。とくに外科では、名誉著者資格やゲストオーサーシップに関する問題が発生することが多いため、このシステムで各著者の役割を選択することで、著者資格への意識向上につながるのではないかと考えています」。


6誌にCRediTを完全導入したJBJSは、将来的には読者にとってのCRediTの価値を検討していきたいと考えているようです。ネルソン氏はこうも述べています。「CRediTは、現時点では著者と編集者のためのものです。将来的には、著者の役割を出版論文に記載するなどして、より読者に寄り添ったものにしていきたいと考えています」。


参考資料

  1. Aries Systems Corporation. Editorial Manager CRediT Integration. 2017. www.ariessys.com/wp-content/uploads/CRediT-FAQ_8.5x11.pdf.
  2. Aries Systems Corporation. Implementing CRediT: An interview with Cell Press’s Gabriel Harp. 2016. www.ariessys.com/views-press/news-opinion/implementing-credit-an-interview-with-cell-presss-gabriel-harp.
  3. Casrai. CRediT. 2018. https://casrai.org/credit.
  4. Harvard University. Report on the International Workshop on Contributorship and Scholarly Attribution. 2012. http://projects.iq.harvard.edu/files/attribution_workshop/files/iwcsa_report_final_18sept12.pdf.

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