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システマティック・レビューに、過去のシステマティック・レビューやメタ分析は含めるべきですか?

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Question Description: 

現在、うつ病へのケタミンの使用およびその短期的・長期的安全性についてのシステマティック・レビュー(質的)に取り組んでいます。このテーマについてデータベース検索をすると、多くのレビューと数件のメタ分析がすでに行われていることが分かりました。データ収集には、これらの論文も含めるべきですか?それとも、その中で引用されている原著論文のみを含めるべきですか?

回答

システマティック・レビューとは、あるテーマに関するすべての一次研究に対して分析を行うことです。一次研究とは原著論文のみを指します。ナラティブ・レビュー(narrative review)、システマティック・レビュー、メタ分析は、原著論文をもとに行うものなので、二次研究に位置付けられます。したがって、システマティック・レビューのデータ収集では、ご質問のような論文を含めるべきではありません。ただし、それらの論文で引用されている原著論文は必ず含めるようにしましょう。


インパクトファクターを追い求めて―その労力に見合った価値はあるか?

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インパクトファクターを追い求めて―その労力に見合った価値はあるか?

ジャーナル・インパクトファクター(JIF)の有効性は、議論の続いているテーマです。本記事では、JIFの高いジャーナルがそれほど高い評価を得るに値するのか、そしてそれらのジャーナルで出版するための労力には本当にそれに見合った価値があるのか、という疑問を投げかけてみたいと思います。

ジャーナル・インパクトファクター(JIF)の有効性は、議論の続いているテーマです。2016年7月、研究者らと人気ジャーナルの編集者らが「ジャーナル被引用数の分布の発表に関するシンプルな提案」(A simple proposal for the publication of journal citation distributionsbioRxiv 2016: 062109)と題した論文を執筆しました。この論文では、JIFが個々の論文のインパクトを測定する役には立たない理由が詳しく述べられています。残念ながら大学は伝統にとらわれているため、学術関係者の間では長きにわたり、JIFと定義された出版のインパクトが主な基準となっています。さらに、ネイチャーサイエンスなどの「インパクトが高い」ジャーナルはJIFが高いため、著者の評価を不相応に高めてしまうこともあるようです。


本記事では、JIFが過大視されている現状をふまえ、JIFの高いジャーナルがそれほど高い評価を得るに値するのか、そしてそれらのジャーナルで出版するための労力には、本当にそれに見合った価値があるのか、という疑問を投げかけてみたいと思います。 


インパクトファクターの高いジャーナルに論文を掲載するには、大きなコストがかかります。ここでいうコストには、研究者が投資する膨大な時間も含まれます。十分な結果を出し、さらに編集者による初回審査を通過するためには、長い時間がかかります。インパクトファクターの高いジャーナルでは、論文1本といっても、個々の膨大な研究結果をつなぎ合わせて「ただ1つ」の主張にまとめられているだけということもあります。これは、インパクトファクターがきわめて高いジャーナルでは、補足情報のセクションが肥大化していることから明らかです。


また、これらのジャーナルの査読プロセスは非常に長期に及ぶのが普通です。査読者は「インパクト」と「重要性」の証として、著者にさらなる追加研究を課すべきと感じており、それによって著者の時間がますますとられることも少なくありません。査読と修正が繰り返されることも多く、出版までの期間が長期化します。インパクトファクターと、投稿から出版までにかかる時間との間には、一定の相関があることが最近の研究で報告されています。
 

wait times by Impact Factor

出典:http://www.nature.com/news/does-it-take-too-long-to-publish-research-1.19320


上図で、インパクトファクターの低いジャーナルでの出版に時間がかかるのは、査読結果をすぐに著者に伝えられるリソースやシステムがないジャーナルが多いことが原因と思われます。インパクトファクターの高いジャーナルの出版までの期間が長いのは、期待されている査読の水準が高いこと、あるいは査読者からの修正要求が多いことによると考えられます。


ところで、著者がインパクトファクターを必死に追い求めるだけの価値はあるのでしょうか。まずは、どのような利点があるのかを見ていきましょう。
 

1. ステータス・認知度という価値:インパクトファクターの高いジャーナルでの出版は、価値あることだと誰もが認めています。サイエンス、ネイチャー、セルなどのジャーナルから出版するためには、研究者は大変な苦労をしなければならないとよく知られていますので、それを達成しただけでも価値があるといえます。ただこの価値は、その論文が最終的にどれだけ引用されるかということとはまったく別のものです。


2. 引用の価値:「影響度の高い」ジャーナルのマーケティング上の利点は、インパクトファクターが高いということです。これは単に、そのようなジャーナルの論文の年間平均被引用数が高いということです。しかしそれは、これらのジャーナルから出版されたすべての論文が引用されるということではありません実際、ラリヴィエールほか(Lariviere, V. et al)による論文では、権威あるジャーナルの被引用パターンは不均一で、ごく一部の論文が多数引用され、他の論文はほとんど引用されていないということが発表されています。例えば、ネイチャーの論文1本あたりの平均被引用数は121です(現在までの全期間)。しかし、被引用数の中央値は24で、40%以上の論文の被引用数は10回にも達していません。* 


3. 宣伝の価値:マーケティング上のもう1つの大きな利点として、新旧さまざまな形態のマスコミが、「影響度の高い」ジャーナルから斬新な新しい科学を発見して興味深い記事を書くということが挙げられます。この中には分野が限定されていないジャーナルもありますが、それはつまり読者層が広いということです。さらに、ほとんどの記事はまっとうな研究者なら誰でも理解できる文体で書かれています。これらのジャーナルには、ニュース(News)や視点(Views)のコーナーが設けられ、科学の最新の流行テーマが取り上げられていることもよくあります。これらは一般読者にも理解しやすく、BBCやCNNなどのマスコミにも取り上げられています。


インパクトファクターの高いジャーナルにコストをかけずにこれらの利点を得るにはどうすればよいか?


インパクトファクターの高いジャーナルからの出版で得られるさまざまな利点をよく理解したところで、1つの重要な洞察を引き出すことができます。それは、「インパクトファクターの高いジャーナルがもたらすどの利点も、論文のマーケティング面に関わる」ということです。ですから、論理的には、別の方法で自分の論文を宣伝する戦略があれば、マーケティング上の利点のためにインパクトファクターの高いジャーナルに頼る必要はなくなるということです。


マーケティング価値の1つに、「ブランド」意識という側面があります。例えばネイチャーサイエンスなどには、インパクトファクターの高いジャーナルという定評に価値があります。自分をブランド化することは容易ではありませんが、最近はソーシャルメディアのおかげでそれも可能です。すでにこのゲームに参加して、ソーシャルメディアで非常に活発に活動している教授もいます。


先ほど確認したその他の利点も、1つの知見、つまり「インパクトファクターの高いジャーナルは、論文をより多くの人目に触れさせることができる」という点に集約されます。先ほどの被引用数の分析からはっきり分かるのは、引用してもらうためには、論文に実質的な価値がなければならないということです。しかし、質の高い論文を書くだけでは、被引用数を伸ばすことはできません。論文が他の人に読まれるようにするには、発見される確率を最大限に高める努力が必要です。幸い、権威あるジャーナルでの出版以外にも、幅広い読者に論文を読んでもらう方法はあります。 


自分の論文を宣伝し、露出度を最大限に高める方法を挙げます。


1. ソーシャルメディア:ツイッターやFacebookやLinkedInを利用して自分の研究を宣伝しましょう。効果的な宣伝ができれば、自分のネットワークの内外で論文が読まれるでしょう。


2. ブログ:科学者でない人にも分りやすいように、論文の一般向けバージョン、いわば自分自身の「ニュースや視点」を個人のブログに掲載し、多くの読者に読んでもらえるようにしましょう。


3. 大学の広報部:所属大学の新聞・雑誌部門に連絡して、自分の研究結果を記事にしてもらいましょう。興味深い研究であれば、大手の新聞にも取り上げられるかもしれません。


4. 同僚にEメールを送る: 分野の仲間に自分の新しい研究についてのメールを送り視点や考えを聞いてみることもできます。そうすれば、自分の論文を読む人の数は確実に増えるでしょう。


それでは最初の質問に戻りましょう。インパクトファクターの高いジャーナルでの出版には、必死に労力をかけるだけの価値があるのでしょうか?私には、そのようなジャーナルからもたらされる価値は、コストのかからない別の方法で代替可能だと思われます。実際、研究の露出度やアクセスのしやすさを自分が直接的に操作すれば、研究者はインパクトファクターの高いジャーナルから出版しようとする苦痛から逃れられるだけでなく、より優れた効果をもたらすこともできます。さらに嬉しいおまけもあります。それは、論文の内容やマーケティング業務の所有権をジャーナルに渡すことなく、研究者自らが保持することができ、自分の財産として残せるということです。より多くの研究者が自分の研究の主導権を握り、より強固な科学のエコシステムを築いていくことを楽しみにしています!


このデータは、トムソン・ロイターのツールWeb of Scienceを利用して著者が作成したものです


注:本記事は、ゲストライターが学術出版に関する各種テーマについての見解や経験について執筆するResearcher Voiceシリーズの1つです。下のコメント欄から、あなたの意見をぜひお寄せください。本記事の初出はon LinkedInです。著者の許可を得て加筆・修正したものを、Editage Insightsに再掲載しました。

「リジェクトされた論文を同じジャーナルに再投稿してもいいと思いますか?」

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Question Description: 

お世話になった原稿をNature, Nature Structure&Molecular Biologyに投稿して蹴られたので、Scientific Reportsに転送しました。二ヶ月ほど待たされてRejectされましたが、論文のMethod等に問題がある様ですが、きちんと判りません。編集者は面白いと思ってくれている様ですが、査読者が失礼なコメントをしています。


私としては修正してもう一度ここに再投稿をしたいと考えていますが、ご意見を聞かせてください。以下に手紙の写しを送ります。


3rd Mar 2017   Dear Dr. Nosaka, Thank you for submission of your manuscript "Enzymatic reaction sites on a plane formed with four intron positions". We have now carefully evaluated the work and discussed it among the editorial team. Unfortunately, we have decided not to consider the manuscript further for publication in Nature Structural & Molecular Biology. We can only consider a small proportion of the manuscripts submitted to our journal and are often forced to make difficult decisions. Manuscripts are evaluated editorially for their potential interest to a broad audience, the level of novel insight obtained and whether the findings represent a significant advance relative to the published literature, among other considerations. In this case, we are interested in the influence of mRNA structure on protein structure and function, and we recognize that the analysis that you describe will be of value to others working in this area. However, after discussion among the editorial staff, I am afraid we are not persuaded that this work warrants publication in Nature Structural & Molecular Biology, due to concerns about the immediate interest of the findings to our broader readership. Dear Dr Nosaka, Your manuscript entitled "Enzymatic reaction sites on a plane formed with four intron positions" has now been reviewed by the Editor. A copy of the Editor's comments is appended below. In the light of their advice I regret to inform you that we cannot publish your manuscript in Scientific Reports. You will see that, while your work is of interest, substantive concerns were raised that suggest that your paper does not fulfil the publication requirements for Scientific Reports that is, that papers must be technically sound in method and analysis. Unfortunately, these reservations are sufficiently important to preclude publication of this study in Scientific Reports. Thank you for the opportunity to consider your work. I am sorry that we cannot be more positive on this occasion and hope you will not be deterred from submitting future work to Scientific Reports. Best regards, Nicholas Silvaggi  Editorial Board Member  Scientific Reports Editorial Board Member comments: I regret to inform you that your manuscript entitled “Enzymatic reaction sites on a plane formed with four intron positions” cannot be considered for publication in Scientific Reports. In the opinion of the editor, the manuscript does not describe the results of experimentation and is thus not appropriate for consideration as a research article. It could, perhaps, be an interesting and useful section of a comprehensive review article dealing with catalysis in aspartate aminotransferase, or PLP-dependent proteins in general, but as it stands now, it does not represent even an incremental advance in our knowledge of PLP-dependent enzymes. What has been done is analogous to doing a small set of sequence alignments and then saying that some residue is important because it was found in the same place in all the sequences. You would need to come up with a hypothesis and then test that hypothesis with actual experiments.

回答

両ジャーナルとも、Methodセクションに本質的な問題があることを丁寧に説明していると思います。とくに、Scientific Reportsは、問題をよりはっきりと指摘してくれています。現状では、この論文に編集者が興味を持ってくれる可能性は低いでしょう。彼らがレターの中で伝えようとしているのは、Methodに原著論文たり得る強固な仮説がなく、その仮説を検証するための実験が不足しているということです。レビュー論文の一部としてなら、興味深い内容であると考えているのかもしれません。今後の方針としては、以下の2通りが考えられるでしょう:
 

1. 仮説を再考し、その仮説を検証するための実験を行なってからMethodおよびResultのセクションを書き直す。


2. 原著論文としての出版にこだわらず、広範な文献研究を行い、レビュー論文として投稿する。


いずれにせよ、両ジャーナルとも現状では出版できないという意志を明確に示しています。したがって、小幅修正のみで同じジャーナルに再投稿しても、好ましい結果は得られないでしょう。ほかのジャーナルに投稿する場合も、受け取ったフィードバックをもとに論文を書き直すことをお勧めします。そうすれば、アクセプトされる可能性は確実に高まるはずです。

学術誌『米国科学アカデミー紀要 (PNAS)』: 概要と投稿時のアドバイス

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学術誌『米国科学アカデミー紀要 (PNAS)』: 概要と投稿時のアドバイス

学術誌『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』の概要と投稿時のアドバイスをご紹介します。同誌は科学の全領域(物理科学・社会科学・生物科学)に関する論文を年間3000本以上掲載しており、論文はすべて「幅広い科学者層に分かりやすく」書かれていることが必要とされます。

目的と対象領域

米国科学アカデミー紀要(PNAS, Proceedings of the National Academy of Sciences)は、科学の全領域(物理科学・社会科学・生物科学)に関する論文を年間3000本以上掲載。論文はすべて「幅広い科学者層に分かりやすく」書かれていることが必要とされる。

出版元

米国科学アカデミー(National Academy of Sciences)

発行頻度

週刊(年52号発行、52号で1巻)

編集体制

編集長:インダー・バーマ(Inder Verma)氏/ソーク生物学研究所遺伝学研究室(米カリフォルニア州ラホヤ)。アメリカ癌学会分子生物学教授。主な研究分野はがん遺伝学と遺伝子治療。

共同編集者:10名

編集委員会: 多数の委員で構成され、人類学からサステイナビリティ学までの31領域を網羅している。

詳細はこちら:www.pnas.org/site/misc/masthead.xhtml.

 


出版基準

「最先端の研究」を掲載しており、論文には「顕著な科学的重要性」が求められる。掲載される論文カテゴリーは以下の通り:研究レポート、レター、フロント・マター(Front matter)、コメンタリー、視点、コロキウム論文。最初の2カテゴリー以外はすべて編集委員会からの依頼によって執筆される。


編集方針と投稿規定

論文は、論文投稿システム(PNAS Manuscript Submission System: www.pnascentral.org/cgi-bin/main.plex)からオンライン投稿する。新規利用者は初回登録が必要。
論文原稿の準備に関する詳細:www.pnas.org/site/authors/procedures.xhtml

査読プロセス

各論文には、ジャーナルが指定する31の領域・分野のいずれかに所属するPNAS編集委員1名が担当者として割り当てられる。最初の予備審査を通過すると、専門の査読者を選んでそのコメントを評価するメンバー編集者(Member Editors)に引き継がれる。最終判定は編集委員が行う。
査読のプロセスを詳しく示したインフォグラフィック:www.pnas.org/site/misc/reviewprocess.pdf


出版方針

審査過程は迅速で、最初の決定までの期間は約40日。アクセプトされてからオンライン出版されるまでの期間は平均1ヶ月。投稿から出版までの期間(印刷版を含む)は平均6ヶ月以内。PNASの論文は、出版後6ヶ月を経過すると無料でアクセス可能となる。その他のコンテンツは、さらに早く無料閲覧が可能となるものも多い。
著者からのよくある質問:http://www.pnas.org/site/aboutpnas/faq.xhtml

インデックスとランキング

インパクトファクター:9.423((2014年)


便利なリンク集

ジャーナルのウェブサイト:www.pnas.org

著者向けガイドライン:www.pnas.org/site/authors/index.xhtml

編集委員会:www.pnas.org/site/misc/masthead.xhtml

査読プロセスを詳しく示したインフォグラフィック: 

www.pnas.org/site/misc/reviewprocess.pdf

論文原稿の準備に関する詳細:www.pnas.org/site/authors/procedures.xhtml

論文のキーワードはどのように決めたらいいですか?

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Question Description: 

来週中に論文の投稿を予定しているのですが、キーワードをどのように決めるべきか悩んでいます。論文をもっとも効果的に表現できるキーワードとはどのようなものですか?キーワードを決めるためのルールのようなものはありますか?また、原著論文に求められるキーワード数はどれくらいですか?

回答

キーワードは、その論文の本質を捉えたものでなければなりません。キーワードを適切に設定すれば、論文がより検索しやすくなり、被引用数も増加します。したがって、検索に引っ掛かりやすく、テーマにもっとも関連があるキーワードを含めることが重要です。


効果的なキーワードを選ぶためのヒントを以下にまとめました:


1. 読者の視点に立って考えましょう。その論文にたどり着くために、読者はどのようなキーワードを使って検索するでしょうか?


2. キーワードは2~4語程度のフレーズが理想です。単語でも構いませんが、正確性に欠けることがあります。


3. キーワードには、論文のテーマを示唆する言葉/フレーズを含めましょう。また、そのテーマに関連する言葉/フレーズも有効です。(たとえば心臓疾患についての論文であれば、「発作(stroke)」、「循環系(circulatory system)」、「血液(blood)」などの言葉を選びます。)


4. 読者が使いそうな言葉/フレーズをさまざまな言い方にしてみましょう。(たとえば、脊椎疾患についての論文であれば、「脊髄(spinal cord)」、「脊柱(vertebral column)」、「背骨(backbone)」などの言葉を使います。)


5. 省略語や頭文字の正式名称も含めましょう。


ジャーナルが要求するキーワード数はおよそ3~8個なので、あらかじめ4~5個程度を用意して、それぞれのジャーナルの規定によって追加するようにしましょう。


以下の記事も参考になるかもしれません:

研究不正を犯罪行為とみなすべきか?

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研究不正を犯罪行為とみなすべきか?

2015年の研究不正事件をきっかけに、学術界では「科学的不正行為を犯罪行為とみなすべきか?」という議論が巻き起こりました。研究不正を犯罪行為とみなすことは公正といえるでしょうか。そのような方向に進むことで、研究者の倫理観が向上し、より正直になる効果が見込めるのでしょうか。そして、裁判所が研究不正に対処することは可能なのでしょうか。

2015年にドンピョウ・ハン(Dong-Pyou Han)氏の研究不正事件が大々的に報道されました。アイオワ州立大学の生物医学研究者であった同氏は、米政府の助成を受けたHIVワクチン研究の結果を不正に操作したとして、懲役57ヶ月および720万ドルの罰金に処されました。研究の整合を監督する米研究公正局(ORI)は、今後3年間にわたってハン氏に対する連邦政府助成金の支給を禁ずるという処分を下しました。しかし、不正行為が深刻であったため、チャールズ・グラスリー(Charles Grassley)上院議員が厳重な処罰を要求し、最終的にはハン氏に刑罰が課されることとなりました。この件はマスコミの注目を集め、学術界では「科学的不正行為を犯罪行為とみなすべきか?」という議論が巻き起こりました。


研究不正は、専門家としての倫理に反しているだけでなく、世間一般の信頼を裏切る重罪です。研究者による不正事件の増加が懸念されていますが、この状況は、論文撤回数データねつ造件数の増加、再現性の危機などからも明らかです。不正が告発されると、通常は告発された研究者の所属機関が追跡調査を行います。不正行為が表面化すると、一般的にはジャーナルから論文が撤回され、懲戒免職、研究費の支給禁止などの処分が下されます。研究不正によって告発されるという事例はほとんど聞きません。しかし、これらの罰則をもってしても、研究者が将来的に不正を行わないようにできるとは限りません。科学分野の教授陣からは、研究不正は刑法で裁かれるべきだとする声も聞かれます。研究不正を犯罪行為とみなすことは公正といえるでしょうか?そのような方向に進むことで、研究者の倫理観が向上し、より正直になる効果が見込めるのでしょうか?そして、裁判所が研究不正に対処することは可能なのでしょうか?


研究不正を犯罪行為とみなすことに賛成する人々は、そもそも研究者は法律から除外されているわけではないので、不正行為は窃盗・殺人などの重罪案件・横領などの作為的犯罪と同様に扱われるべきだという意見です。もちろん、有罪となる研究者の処罰は、研究不正の程度に合わせて決定されるべきでしょう。例えばORIは、悪意のない間違いや不正行為は除外しています。しかし、意図的で、政府助成金の誤用があり、公衆衛生に危険がもたらされるような不正行為については軽い扱いとせず、法律に関わる問題として扱うべきだと考えられます。トロント小児病院(カナダ)のCenter for Global Child Healthで理事を務めるゾルフィカー・ブッタ(Zulfiquar Bhutta)氏のように、医療関係者の中にもこの意見に賛同する人がいます。ブッタ博士は、「研究費で納税者を騙し、データや全体の研究結果を改ざんすることは、ほかの経済的犯罪と同罪である」と述べています。この主張を支持する人々は、研究者を裁くために、現在の手順に刑事訴訟を追加すべきだと考えています。そうすれば、不正を告発されても軽い罰則があるだけで、今まで通りの生活を続けられるだろうという期待を打ち砕くことができるのではないかという考えです。


一方、研究不正を起訴しても効果はなく、無意味だと考える人もいます。テンプル法科大学院のスコット・ビュリス(Scott Burris) 教授は、そのような方向性は「科学を抑圧する」恐れがあると述べており、ほとんどの研究者は正直で、犯罪の常習犯ではないという意見です。研究者は専門家として極度のプレッシャーにさらされており、それに屈してしまう人もいます。不正に関わった研究者を弁護するワシントンのポール・ターラー(Paul Thaler)弁護士氏は、罪を犯した研究者も、「刑に服した後、社会の一員として生産的な活動をすることが可能であり、不正を告発された科学者全員を追放することを科学が望んでいるわけではない」と述べています。ビュリス氏はこの議論をさらに進め、研究不正を犯罪化すると、論争の的になるようなデリケートな研究領域に研究者が取り組みたがらなくなるのではないかとも述べています。例えば、遺伝子編集の研究では、研究者が告訴される可能性が高まることも考えられます。      



この問題には、研究機関が立件に躊躇するという側面もあります。研究機関には、罪を犯した研究者を起訴するだけの資金やその他のリソースがないところがほとんどです。さらに、評判に響くことを恐れて裁判沙汰を避けたいと考える研究機関がほとんどです。ターラー氏は、研究者の不正に関する裁判は複雑で、ほかの訴訟とはかなり異なるとも述べています。このような複雑な訴訟を理解するために、弁護士は依頼人や任命された専門家に大きく頼らざるを得ません。「責任ある研究活動事務局」(Secretariat on Responsible Conduct of Research)」のスーザン・ツィマーマン(Susan Zimmerman) 局長は、この問題を以下のように的確にまとめています。


刑法上の有罪を証明するために少なくない時間とエネルギーとリソースが割かれ、その上、重い立証責任を果たせなかった場合、その人物は立ち去ることになる」。このため、研究機関はORIのような組織の手を借りて、自分たちで研究不正に対処する方がよいと考えています。弁護士や警察よりも、研究機関の方が研究不正に関する申し立てを理解して解決する能力があるとして、多くの人がこの見解を支持しています。


科学コミュニティの人々の多くは、本当に悪意があって罪を犯したものだけが起訴されるべきだと考えています。影響の限定的な不正に関わった研究者も、研究費受領禁止や免職などの罰則を受けることもあります。ORI前所長のデビッド・ライト(David Wright)氏は、研究者が助成金を受けられないようにすることは、管理機関が課すことのできる罰則の中でもっとも重いものであると述べています。ライト氏は、これは「専門家としての死刑宣告」に等しく、「禁固刑に処したところでそれ以上何かが得られるかは疑問である」と述べています。



この問題にはさまざまな意見があり、大きな論争を呼んでいます。皆さんはどう思いますか?研究不正を行なった研究者は刑務所に送られるべきでしょうか?そうでないとしたら、理想的な更生措置とは何でしょうか。皆さんからのコメントをお待ちしています。


参考記事:

When Scientists Commit Fraud, It’s ‘Scientific Misconduct’ – Should It Be Criminal Fraud?

HIV researcher found guilty of research misconduct sentenced to prison

Scientific fraud: Is prosecution the answer?

8 things you might not know about research misconduct proceedings: Guest post

Former ISU scientist's stiff fraud sentence sends message

Should fraudsters be criminally prosecuted?

Richard Smith: Should scientific fraud be a criminal offence?

Here’s why this lawyer defends scientists accused of misconduct

在宅医療管理に関する論文を出版できそうなジャーナルはありますか?

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Question Description: 

現在急成長している分野で、多くの人々が関心を寄せそうな、ホームヘルスモニタリング(在宅医療管理)とメンタルヘルスについての総説(opinion paper)を出版したいのですが、協力を仰げるようなつながりを持っておらず、誰にコンタクトを取ればよいのか見当がつかずに困っています。

回答

確かに、ホームヘルスモニタリングはヘルスケアの中で今後重要性を増していく分野ですが、出版しようとしている論文の内容が不明なので、確かな助言をすることはできません。また、この分野を専門とするジャーナルは、私の知る限り、なかったと思います。ただし、在宅医療や看護、メンタルヘルスなどの分野を扱うジャーナルであれば興味を持ってくれるかもしれません。


その分野に関連するジャーナルは、 DOAJ(Directory of Open Access Journals)のウェブサイトで検索できます。条件付き検索や分野別検索ができるので、テーマに関連するジャーナルを探してみてください。また、Google Scholarでも関連する論文の検索ができるので、その論文を掲載しているジャーナルを確認してみましょう。「e-ヘルス(e-health)」や、「テレヘルス(telehealth)」、「オンライン・ヘルスケア(online healthcare)」などのようなさまざまなキーワードで検索してみるのも一案です。ジャーナルをいくつかピックアップできたら、投稿前の質問をそれぞれのジャーナルに送り、あなたの論文に関心を示してくれるかを確認してみましょう。関心を示されなかったとしても、関連するジャーナルを紹介してもらえる場合もあります。

論文をメールで投稿しましたが、受け取った旨の連絡が来ませんでした。

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Question Description: 

そこで、韓国の他の先生方に、編集事務担当者が、受け取ったか否かの確認だけをしていただきたいと御連絡しました。 その結果、査読が控えているので、今後、他の先生方に、連絡をとってはならないと指摘されました。 韓国内の事情が、よくわからず、論文を受け取ったか否かの確認だけとりたかったのですが、韓国の先生の気分を害したようです。 論文を取り下げた方がよろしいでしょうか?

回答

この場合、ジャーナルの編集事務局、または編集長/編集委員に問い合わせるべきでした。ご質問の中では、先生方の立場や、先生方があなたの論文の受領状況についてどのように知るのかについて言及されていませんが、このコミュニケーション方法は適切ではありません。どのような理由があっても、ジャーナルにコンタクトするときは第三者を介さず、直接やり取りする必要があります。


とは言え、このことを理由に論文を取り下げる必要はありません。今後その先生方と再び連絡を取らない限り、問題はないでしょう。機密性を保つことは査読プロセスにおける大変重要な事項なので、もしもその先生方が投稿先ジャーナルで査読を担当している可能性があることを知りながら連絡を取ったのなら、それは非倫理的な行為となります。


以下の記事も参考にしてみてください:

査読についてよくある質問


ヨルダンの若手研究者が直面する残念な出版慣行

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ヨルダンの若手研究者が直面する残念な出版慣行

キャリアの浅い研究者は、若くて出版経験が少ないものの、学術出版界に乗り出していこうという気概に溢れています。しかし、学術出版界はもどかしいことが多く、達成感よりも挫折感を抱くことの多い、浮き沈みの激しい世界です。ヨルダンのような国では、これら通常の課題に加えてさらなる困難が伴います。

キャリアの浅い研究者は、若くて出版経験が少ないものの、学術出版界に乗り出していこうという気概に溢れています。しかし、学術出版界はもどかしいことが多く、達成感を得ることよりも落胆を感じることが多い、浮き沈みの激しい世界です。研究者が直面するこのようなストレスについては、ほとんど話題にもなりません。編集者は、論文のアクセプトや出版に漕ぎつける方法、投稿規定の遵守の仕方、正しい研究のあり方などについてコラムを書くことがよくあります。これらはとても役に立つ、情報満載のトピックです。しかし、若手研究者にとって本当に役立つテーマは、例えばリジェクトされた論文(とくにデスクリジェクトされた論文)について、「本誌読者の関心対象でない」としかコメントされていないものをどう改善したらよいかといったアドバイスです。


私自身、リジェクトに至るプロセスに存在する問題点についてもっと情報を得たいと思って探しましたが、あまり参考になるようなものは見つかりませんでした。このような問題は、もっと議論される必要があると思います。例えば、欧米の研究者は、出版バイアスについてなんとなく知ってはいるものの、必ずしも多くの実体験があるわけではありません。


出版経験の浅い研究者にとって、インパクトファクターの高い著名ジャーナルからの出版は、夢の実現です。研究費をもらって1~2年の研究をする場合、やるべきことの中には、材料や設備の調達、実験の実施、データの収集と統計分析、そして当然ながら、論文執筆が含まれます。つまり、研究が終了し、それを書いてまとめるまでの2~3年間が問題となるわけです。ヨルダンのような国では、これら通常の問題に加えてさらなる困難が伴います。例えば、リソースが限られているために研究資金が足りないこと、担当講義数が多すぎて良質の研究を行う時間がごく限られていること、英語ネイティブでないために、有意義な研究アイデアを表明し、出版できる状態に整った論文原稿を書くのが難しいことなどです。さらに、ターゲットジャーナルに論文が受理されるまでに1年から2年かかることもあります。このとき初めて、学術出版界とはどういうところなのかが分かります。そこは、どれだけ時間や労力をかけた研究かということは関係のない世界です。優れた研究であっても、いとも簡単に論文がリジェクトされるのです。


そこで、私自身や同僚の多くが直面していながら、これまで表立って話されることのなかった悔しい出来事について話してみたいと思います。


1. 論文出版における人種差別:優れた論文でも、例えば著者が中東や発展途上国/地域の人、欧州以外の人(欧州のジャーナルの場合)、米国人以外の人(米国のジャーナルの場合)というだけでリジェクトされてしまうことが多いようです。私も、同じ研究機関の熱心な同僚研究者たちも、そのような経験をしています。出版を目指して一生懸命取り組んだ論文がリジェクトされ、そのジャーナルから、おそらく著者がそのジャーナルを発行している国の出身者である、あるいは欧米の人間だというだけで、質の劣る論文がアクセプトされているのが分かるといらだちを覚えます。また、私の論文は、間違いを見つけるために徹底的に微に入り細を穿って審査されているようなのに、ミスのある(メジャーなものもマイナーなものもある)論文が掲載されていることもあります。

2. 有名な研究者の論文が選ばれやすい:どの分野にも先駆者がいて、その貢献は間違いなく高く評価されています。しかし、そのような人の貢献が時代遅れになり、同じことの繰り返しになっても(自分自身の経験から言っています)、その人の名前がついているだけで、迅速に出版されます。


3. 研究テーマにあまり詳しくない人が査読者に選ばれる:査読者に、研究テーマに関する知識が乏しいことがよく分かるようなコメントをされると、非常に憤慨させられます(しかも、コメントの綴りが間違っていることもあります)。他の査読者はアクセプトを推薦していて大幅修正の提案がなくても、1人の査読者の決定に基づいて編集者が論文をリジェクトする決定をしたときなどは、さらにがっかりします。このようなことは非常に理解に苦しみます。


4. 研究のアイデア・方法・材料に対し、編集者/編集委員会が偏見をもっている:編集者や編集委員会が偏見を持っていることについて抗議するのは難しいものです。こういったことは、噂や、周囲の人たちなどから伝わってくるものだからです。これには憤慨させられますが、その人物が論文をリジェクトする権限を持っているわけですから、どうすることもできません。


5. 有無を言わせぬデスクリジェクト:これは最悪です!投稿規定をよく読み、ジャーナルの対象域に合っている場合は、編集者による決定理由が詳しく説明されていなければ、リジェクトを正当化できないと思います。でも、ほとんどの場合(私の意見では95%以上の割合)、デスクリジェクトは、編集者がその日どんな「気分」だったかで決まり、「こんな論文に私が目を通すと思っているのか」とでもいう態度が隠されているように思います。これまで、プロフェッショナルらしくない態度がにじみ出ている編集者からのメールをたくさん目にしてきました。テンプレートの文言をコピーペーストするだけで、論文をリジェクトしているのです。できれば、リジェクト理由を簡単に述べ、論文をどのように改善すべきか建設的なアドバイスをし、別のジャーナルを提案してほしいと思います。



ヨルダンの若手研究者は、こうした状況に直面し、不満を感じています。本当のところはどうなのでしょうか?これらの問題は真実なのか、それとも単に私たちが不運なだけなのでしょうか。欧米の研究者も似たような問題に直面しているのか、せひ知りたいと思います!

論文のタイトルはどのように決めたらいいですか?

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Question Description: 

私の研究テーマは、ケープタウンにある移民向けレストランのサービス品質に対する消費者の認識です。このようなテーマの論文にふさわしいタイトルとはどのようなものでしょうか?

回答

研究論文に適切なタイトルをつけるには、時間をかけてよく考えることが大切です。読者が最初に目にするのがタイトルで、読者の多くは、その先を読むかどうかをタイトルで判断します。したがって、タイトルは論文の内容を的確かつ明快に説明するものでなければなりません。


まずは、仮のタイトルをつけるところから始めましょう。研究内容を印象づけるためにも、方向性を明確にする意味でも、最初に仮題をつけておくことは大切です。


仮題をつけるときは、以下のような点を考慮してください:

  • 研究の目的
  • 研究または論文の種類
  • 研究方法、アプローチ方法


正式なタイトルを付けるのは、原稿を書き上げてからにしましょう。その時点で、論文の焦点や、タイトルに含めるべきキーワードが明確になっているはずです。


以下のような注意点を、的確なタイトルをつけるための参考にしてください:

  • タイトルに研究の内容が明示されているか?
  • 簡潔に情報が伝わりそうか、興味を引き付けそうか?
  • 検索されやすい、関連するキーワードが含まれているか?
  • 複雑・難解な専門用語を使用していないか?


以下の記事では、適切なタイトルを付けるための方法を順序立てて説明しています:

効果的な論文タイトルをつける5つのステップ

厳しいポスドク時代を乗り切るための8ヶ条(ポエム形式)

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厳しいポスドク時代を乗り切るための8ヶ条(ポエム形式)

ポスドク研究者という立場には、予測不能な多くの困難がつきまといます。準備が十分に整っていないために、困難への対処が非常に難しく感じられることも多いでしょう。そこで、モチベーションを保ちながらポスドク生活を乗り越えて、さらなる成長を遂げるための8ヶ条をポエム形式でまとめてみました。

ポスドク研究者という立場には、予測不能な多くの困難がつきまといます。準備が十分に整っていないために、困難への対処が非常に難しく感じられることも多いでしょう。ポスドク研究者からテニュア(終身在職権)のあるポジションに移れなければ、苦悩はさらに深まります。そこで、モチベーションを保ちながらポスドク生活を乗り越え、さらなる成長を遂げるための8ヶ条をポエム形式でまとめてみました。さあ、ぼんやりせず、今日という一日を無駄にすることなく、ポスドクの航海に乗り出す心構えをしましょう!幸運を祈ります!

※「8ヶ条」は、PDF版のダウンロード/シェアが可能です。(記事末尾をご覧ください)

 

厳しいポスドク時代を乗り切るための8ヶ条(ポエム形式)

 

01 実際的/実践的に考えよう!

現実主義をとって 悲観主義から脱しよう

本当は テニュアトラックが理想だけど

もう少しポスドクを続けて さらに賢くなるのもいい

研究ができて お給料がもらえている限り

希望を捨てず 家族との時間を慈しもう

 

02 燃え尽きないで

「遊びはなし 仕事だけ」にならないように

働き過ぎから 「健康悪化で給与なし」にならないように

全身全霊の取り組みが肝心 ベストを尽くそう

でも 疲労を見過ごせば ストレス過剰になってしまう

 

03 今日積み上げたレンガで 明日お城を築こう

夢は大きく けれど短期目標も大切

少しずつ着実に 論文出版を増やしていこう

学会に出席し 思い切った共同研究に飛び込もう

進捗具合を 定期的に見直してみよう

 

04 あなたの広報担当 ソーシャルメディア

修正作業をするよりも 友達を作るほうが簡単

ウェビナーに参加して バーチャルでの学習と交流

出版論文を宣伝し 査読を引き受けてアピールしよう

オンラインでプロフィールを作り 連絡先を載せてみよう

 

05  応募の好機をつかもう

「好機」を逃さないで!

新しい論文出版や 受賞などの功績で

ソーシャルメディアの話題になったら

それが絶好のタイミング! 積極的に応募しよう 

 

06 応募書類で目的を表明しよう

応募書類では 出し惜しみせずに自分を出していこう

カバーレターはとくに丁寧に 時間をかけて書くこと

自分を売り込む 最強の履歴書を仕上げよう

 

07  面接に備えよう

明瞭に話し 効果的にプレゼンしよう

面接への参加だけで意義があるから 選り好みは厳禁

失敗しても また一つ学んだと受け止めること

今日の大失敗は 未来の指針になるから

 

08 変化に慣れよう

学術界だけに こだわらないで

軌道修正を 恐れないで

自分が求めるものを 洗い直してみよう

ひょっとして 教育やビジネスに向いているかもしれない
 

Postdoc survival tips

 


さらなるアドバイスは、シリーズ記事「この先どうする? 博士号取得者とポスドクのためのキャリア・アドバイス」をご覧ください。

CEBIMar--ブラジルの地域コミュニティで科学を身近なものに

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CEBIMar--ブラジルの地域コミュニティで科学を身近なものに
サンパウロ大学(ブラジル)のCEBIMar(海洋生物学センター)前センター長。サンパウロ大学で動物学の博士号を取得し、現在は同大学で准教授を務める。これまで70本以上の論文を発表し、4冊の著書、共同著者として25章以上の執筆を担当。また、複数の会議録や雑誌記事を執筆するなど多くの刊行物に関与した。各種政策の立案や、科学の普及活動にも参加し、学部や大学院で教鞭を執りながら若手研究者の指導も行なっている。

本インタビューでは、サンパウロ大学(ブラジル)のCEBIMar(海洋生物学センター、Center of Marine Biologyr)前センター長のアルバロ・E・ミゴット(Alvaro E. Migotto)氏に、CEBIMarがどのような発展を遂げてきたかや、小規模の海洋研究施設ならではの取り組みについて伺いました。ミゴット氏は、CEBIMarが臨海研究所として、ブラジル国内のほかの海洋研究施設よりも優れている点を強調しています。さらに、小規模であるがゆえの自律性や自由度を研究や教育方法にどのように活かしているかを、CEBIMarがこれまで達成してきた成果を軸にお聞きしました。また、センターに関わってきた研究者たちに与えた影響や、教育・研究の発展に貢献してきた成果に加え、海洋に関する写真展の開催や、オンラインでの資料映像の公開など、一般市民に科学研究をより身近に感じてもらうための独自の活動についても紹介します。一般社会への科学の普及に尽力する姿勢を知り、私たちも大変勇気づけられました。


CEBIMar(海洋生物学センター):サンパウロ大学の海洋生物学に関する研究、教育、社会貢献活動を行う専門機関。


アルバロ・E・ミゴット氏サンパウロ大学生物学部を卒業(1978年)後、同大学にて生物科学(動物学)の修士号(1984年)と博士号(1993年)を取得。現在は同大学准教授で、系統分類学および刺胞動物を主に専門とする。CEBIMarの副センター長(2001~2005年)を経て、2009年までセンター長を歴任。これまで70本以上の論文を発表し、4冊の著書、共同著者として25章以上の執筆を担当。また、複数の会議録や雑誌記事を執筆するなど多くの刊行物に関与した。各種政策の立案にも参加し、学部や大学院で教鞭を執りながら若手研究者の指導にも携わっている。

CEBIMarに関わるようになってどれくらい経ちますか?博士がセンターで歩んできた道のりについて教えてください。

CEBIMarを初めて知ったのは、サンパウロ大学の生物学部に在籍していた頃です。まだ1回生だったのですが、CEBIMarによる海洋生物学の入門コースを受講できたのはとても幸運でした。その後も演習で何度か利用する機会がありましたが、本格的に通い出したのは修士課程に進学してからです。その頃の交流や経験はどれも印象深く、サンセバスチャンの沿岸地域とともに、センターは私のお気に入りの場所となりました。1981年にCEBIMarが研究員を募集していると聞いて、飛び上がって喜んだのを覚えています。驚くことに、当時はサンパウロ外で暮らしたがる人が少なかったので、幸運にもそのポストを得ることができました。そのままCEBIMarで修士号と博士号(サンパウロ大学生物科学研究所[IBUSP]動物学専攻の学生として)を取得し、1996年に教員として迎えられました。その後、副センター長を経て、センター長の職も経験しました。このように、長年に渡ってCEBIMarの歴史の一部を刻んできたことで、近年の発展に貢献してきたと自負しています。

CEBIMarの主な成果はどのようなものですか?また、ブラジル国内のほかの海洋研究所とは違う、CEBIMarの特色は何ですか?

CEBIMarは、海洋生物学のみを専門とする機関としてはブラジル国内でもっとも歴史のある研究施設の一つです。当時、このセンターの独自性は「海との距離」でした。国内の多くの海洋研究所は、海から離れた場所に立地していたので、フィールドワークや施設内での生物の維持に必要な環境が整っていませんでした。当然、多くの問題に直面する結果となります。たとえば研究対象の生物が、沿岸からサンパウロ市内の施設への輸送中に死んでしまうというような問題が頻繁に起こりました。その点CEBIMarは、沿岸部付近に建てられているので多種多様な海洋環境に容易に触れることができ、そのような問題とは無縁です。したがって、CEBIMarの最大の強みはこの「海との距離」にあると言えます。CEBIMarは当初、サンパウロ大学内のほかの研究機関の支援を必要としていましたが、ここ数十年の間に完全な自治権を得るようになりました。常駐の教員も得られ、多くの学生やポスドク研究員、海洋生物学のさまざまな分野で活躍する専門家たちとともに研究を進めてきました。

CEBIMarは研究と教育を目的とした施設ですが、学部や大学院のコースがあるわけではありません。学生への学術的指導はどのように行なっていますか?

本センターは海洋研究の発展を目的として1955年に設立されました。一方、海洋生物学の教育は設立当初からの懸案事項でした。そこで、学生や生物学者向けの海洋生物学の基本コースから始めることにしました。このコースは現在でも好評のまま続けられています。教員たちは、学部と大学院のコースを1年単位で複数担当します。コース内容は、センターの研究者各自の研究活動と直接関連しています。このため、活きた科学に基づく基礎的かつ理論的な教育やディスカッションを効率的に行うことができます。また、すべてのコースは7~15日間の集中講義で構成されていて、外部から教員を招いて行うこともたびたびあります。限られた時間を有効に使うためにも、コースの期間中は学生や職員に宿泊や食事の提供もしています。以上の取り組みと、サンセバスチャンの海と大西洋岸森林に隣接するCEBIMarの孤立した環境は、集中して学ぶためには最高の場所と言えます。実際に学生や教員たちは、この特殊な環境の中で学習効果が高まっていると感じているようです。


独立した大学院課程の設置は、私たちが現在もっとも力を入れていることの一つで、実現を目指して取り組んでいます。最大の課題は、優秀な教員を集めることです。現在、私を含めて6名の教員が在籍していますが、数年前はこの半分しかいませんでした。この課題を解決するために、私たちは最近、他機関との合同大学院課程を提案したところです。これは海洋生物多様性を主眼としたプログラムで、CEBIMar(サンセバスチャン)で開かれますが、サンパウロ大学のほかの機関(生物科学研究所[IBUSP]、サンカルロス化学研究所[IQCS/USP]、生物医学研究所[ICBUSP]、海洋学研究所[IOUSP])に所属する教員に協力を要請することになります。それ以外にも、過去に協力をしてくれた世界中からの招聘教員陣にも支援してもらう予定です。この提案は現在学内で検討されている段階ですが、承認されればその後はCAPES(ブラジル高等教育支援・評価機構)の審査に進むことができます。この大学院課程を2017年末、または2018年の上半期中には立ち上げたいと考えています。また、現時点でCEBIMarに大学院課程がないからと言って、私たちに修士や博士課程の学生を指導する資格がないというわけではありません。私たちはサンパウロ大学内のその他のプログラムの指導教官として登録されています。だからこそ、このセンターの限られた規模や構造の中でも、我々の研究に参加する学生たち(ポスドクや技術研究員、学部生研究員)も含めてダイナミックな学術コミュニティを形成して行きたいと考えています。

センターではどのように研究が行われていますか?

CEBIMarは、サンパウロ大学の中でも職員と教員の数がもっとも少ない研究機関の一つです。だからといって科学的・学術的な生産能力が低いというわけではありません。むしろその逆で、私たちが持つインフラや科学的・学術的サービスは、クオリティの高い教育的・科学的成果を生んでいます。個々の裁量で研究プログラムやプロジェクト、指導課程や公開講座(より独立した権限の中で熱心に取り組んでいます)を遂行する自由を与えられていますが、理事会やCEBIMarに直接関わる人々の評価に左右されるという側面もあります。インターンと外部協力者との間の多様な交流機会や、スペースや設備、サービスの利用のしやすさなどインフラと制度設計が小規模であることの利点は数多くあります。CEBIMarは60年以上の歴史のなかで、研究プロジェクトを効率的に運営(組織運営やITスタッフ、司書、実験技師、教員のマネジメントも含めて)するためのシステムを築きあげてきました。また、実験室や設備は外部の提携者と共有することで極力無駄を省いています。結果として、投資に見合った効率的なインフラの利用を実現しています。小規模な研究施設ほど、特にその運営や計画においてより機敏に動くことができるので、大きな施設と比べると、割り当てられた予算をよりうまく、より効率的に使用できていると思います。とは言え、設備の改善や教員の人員を増やす拡張計画も考えていないわけではありません。

CEBIMarにとって国際交流は重要ですか?国外からの来訪者は多いのでしょうか?また、CEBIMarの職員たちは国外での研究に興味を持っていますか?

高い基準が求められる現代の科学界では、科学の国際化が必要不可欠であるとブラジルでも考えられるようになっています。近年では、サンパウロ大学を含む研究助成機関がさまざまな国際協力や国際交流を行うよう精力的に働きかけており、個人への奨学金の提供や科学研究を行う国外の大学や助成機関に協力を呼びかけています。CEBIMarと関係を持つ教員、学生、ポスドクらは、提供されるこのような機会を有効に活用しています。最近では、ほとんどのセンターの修士および博士課程の学生が将来的に国外で研究を行うことを念頭に、それぞれの研究に取り組んでいます。国外で研究を行うことは、学生だけでなく教員にとっても欠かせない経験だと思います。CEBIMarでは、国際化を推進する取り組みについては、センターの教員と国外の協力者で構成される研究グループが主導しています。 いくつかのコースでは、国外の協力者に指導をしてもらっています。彼らには、一部の大学院生の指導も任せています。このような取り組みは、センターが国際的な科学協力体制を築くために重要なネットワーク作りに役立っていて、近い将来、組織レベルでの短期的な協力体制を構築することができるかもしれません。たとえば、大学院課程設置後の話にはなりますが、国外の大学などと提携することで、修士・博士課程でのダブルディグリー(複数学位)の授与が可能になります。

CEBIMarの研究者や学生は、国際誌に研究を発表することを求められていますか?

これは研究グループに限定されますが、指導教官と学生の関係性にもよります。CEBIMarの科学的成果は長年に渡って確実に向上し続けています。過去5年間で、質の高いジャーナルに掲載された論文数は明らかに増加しています。しかしながら、掲載された論文のインパクトファクターは十分に高いのですが、数値は上向いておらず、変化が見られません。今後の課題は、質を向上させることです。将来的な国際協力体制の整備と海洋生物多様性の大学院課程の設置によって、我々の科学的成果はさらに高まっていくでしょう。

人気のMonitored Visits Programの他に、CEBIMarの本拠地であるサンセバスチャンの地域コミュニティに向けて提供しているサービスはありますか?サンパウロ州沿岸部に住む人々との交流の重要性についてどのようにお考えですか?

CEBIMarは、古くから科学情報の開示と教育活動に力を入れてきました。CEBIMarが位置するサンパウロの北岸部には、高等教育機関や科学の普及に関する取り組みが不足しています。CEBIMarは地元住民と交流するための主な手段として、1980年代半ばからMonitored Visits Programというプログラムを続けています。このプログラムは、印刷物の発行や展示会の企画や出席にとどまらず、オンライン上で画像、動画、テキスト、ニュース、ゲーム、バーチャル展覧会などの教育コンテンツを作成・公開しています。さらに、小学生から大学学部生を対象に、センターの図書館やウェブサイト、Eメールなどで質問などを受け付けています。センターの教員は、環境保護機関や政策立案者の顧問を務めることもあります。ほかにも講演会を催すなどして地域コミュニティと関わっています。CEBIMarがサンセバスチャンの公立学校と提携して開いたサイエンスクラブは、コミュニティとの交流の好例と言えます。2013年に設立されたこのクラブの主な目的は、CEBIMarの研究者とのフィールドワークや実験、研究、ディスカッション、雑談などを通じ、8、9年生の学生に科学的思考や方法論を身近に感じてもらうことです。教員の指導のもと、学生たちには海洋生物学に関する小規模な研究プロジェクトに取り組んでもらいます。この取り組みは、ブラジル国家科学技術開発審議会(CNPq)のJunior Scientific Initiation Programなどの研究フェローシップ候補者の選定も兼ねています。また、若手研究者の発掘という側面以外にも、公立学校の科学教育レベルを向上させる可能性も秘めています。なぜなら、新しく、効果的で、かつエキサイティングな形で生徒や先生たちが科学の授業に取り組める方法を分かりやすく示しているからです。

博士は長年に渡り、海洋生物学を通して科学コミュニケーションの普及に取り組んできました。このことについてもう少しお話を聞かせて頂けますか?海洋生物学を普及させる上での戦略はありましたか?それはうまく行きましたか?また、その他の研究機関でも応用できると思いますか?

科学の普及には常に関心がありました。科学情報や教育の普及は科学研究活動に従事する人間の義務であるべきだと考えています。私たちの活動は、わりと最近まで国内の学術コミュニティから過小評価されていましたが、科学の普及の重要性についての理解は深まってきていると感じています。事実として、CEBIMarのセンター長たちは、私たちが行なってきた取り組みを常に後押ししてくれています。科学情報の開示と環境教育は、センターのそもそもの主目的でもあります。しかし多くの場合、このような取り組みに当てられる予算は不十分であったりそもそも存在しなかったりします。CEBIMarでは、この点での心配がなく、多くの機会を与えてもらいました。私は、サンセバスチャンに来て以来、CEBIMarによる科学コミュニケーションへの多くの取り組みにさまざまな形で関わってきました。1980年代に立ち上げたMonitored Visits Programに加え、10年以上に渡って開催している写真展や科学展は、研究者たちにも、そうでない人たちにも大変な人気を博しています。写真展2回と生命進化に関する科学展1回の開催で、全国から計10万人以上の来場者がありました。また、以下のウェブサイトで見られる写真やその他のコンテンツへの来訪者も増加しています:
 


Cifonauta(http://cifonauta.cebimar.usp.br/)についても触れないわけにはいきません。このサイトは、海洋生物学に関する映像を閲覧できる無料の巨大オープンアクセス・データベースです。これらの映像はCEBIMarの学生や研究者たちの研究や教育活動の産物です。学生はもちろん、教員、生物学者、海洋学者、芸術家など、海洋生物学に興味がある人なら誰でも、ライブ映像を含む何百点もの海洋環境や海洋生物の映像にアクセスできます。コンテンツはフィルター機能や高度な検索機能を使って閲覧することができます。

これらのコンテンツは無料で転用、共有、ダウンロードが可能なのでしょうか。利用規約はありますか?

Cifonautaのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(Creative Commons Attribution Non-Commercial Share-Alike 3.0 Unported [CC BY-NC-SA 3.0])のもとで利用できます。このライセンスは、互換性のあるライセンスのもとで引用元と著作者を適切に記載した上で再配布していれば、著作者の許可を得ることなくテキストや画像を非商用目的で二次利用・共有することが可能というものです。コンテンツの著作権は著作者にあります。

写真展の成功おめでとうございます!海洋生物の写真はとても美しく感動的でした。写真を見た人たちにどのようなメッセージを伝えたいですか?写真から学び取ってほしいことはありますか?

CEBIMarが開催するすべての展示会に共通するのは、展示を通して何らかのメッセージや物語を伝えたいということです。このテーマを写真家や運営側が忘れないかぎり、それぞれの写真は、見る人の視点や経験によってそれ以上のものを伝える力を秘めていると思います。その写真で、過去の記憶が呼び起こされる(たとえば、沿岸部に古くから暮らす人々が故郷を思い出すなど)人もいるかもしれませんし、生命の起源や自然における人類の役割に思いをはせる人もいるかもしれません。今回の展示会でもさまざまな反応を見ることができましたが、これも一つの成果と言えるでしょう。また、クジラやアシカ、カラフルな海洋生物などの分かりやすい動物たち(“charismatic megafauna”)を扱いがちなメディアでは見られないような、珍しい生き物の写真を見る機会を提供することができました。これらの生き物たちはとても興味深く重要な存在です。私たちが展示会を通して伝えたいもう一つのメッセージは、地球のバランスと繁栄についてです。人類の存続も、一般には無名で感謝されることもないような小さな生命体の存在に左右されています。この記念展示会のタイトルは、「We are here, too!(ぼくたちもいるよ!)」でした。このフレーズには私たちの思いが詰まっています。

博士はこれまで数多くの論文を発表してきました。アドバイスを求める若手研究者たちに、論文の執筆や投稿についてのヒントをお願いします。

重要なのは、レポートであれ論文であれ、最初に書き上げたテキストに満足してはいけないということです。科学文書を作成するには膨大な時間と反復が必要です。学生の多くは一度書いた文書の見直しやブラッシュアップの重要性を軽視しがちです。科学文書を書くということは、科学的プロセスの中でもっとも重要な段階の一つです。学生がこの意義をよく理解していないと、不十分な文章力と相まって、状況は一層悪くなります。貧弱な文章コミュニケーションスキルは、基本的な学校教育の不足と、電子メディアの頻繁な利用による非クリティカルライティングに慣れてしまっていることに起因していると思います。非クリティカルライティングとは、執筆者自身や他者が見直しもレビューもしていない状態の文書のことです。幸いにも、近年では学術論文の執筆とその準備の重要性が増しており、専門書やインターネットを通じて話題になることも増えています。したがって、科学研究のこういった重要な側面についてのリソースが入手しやすくなっており、より多くの人々がその重要性を認識し始めています。しかし個人的には(そして同僚たちも同じ思いなのですが)、そのようなリソースがあるにもかかわらず、論文の執筆や投稿にあたって、まだまだ指導が必要な学生が多いと感じています。このシンプルなヒントは、先々まで役立つものだと思いますよ。


ミゴット博士、ありがとうございました!


本インタビューはジャヤシュリー・ラジャゴパラン(Jayashree Rajagopalan)カリン・ホッフ・フェーローアー・エール(Karin Hoch Fehlauer Ale)が担当しました。

査読者になること自体が1つの功績なのか?

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査読者になること自体が1つの功績なのか?

優れた科学論文の陰には、査読によるフィードバックがあることも珍しくありません。しかし、査読者は査読によって金銭的報酬を得ることもなく、完全に無償の奉仕活動として行なっています。査読者になること自体が、1つの功績なのでしょうか?査読者の貢献を、より具体的な形で認めるべきなのでしょうか?

査読は学術出版の要です。査読は、取って代わるもののない、研究評価のゴールドスタンダードだというのが大方の研究者の見方です。優れた科学論文の陰には、査読によるフィードバックがあることも珍しくありません。査読業務は、研究者が普段の仕事とは別に任意で行うものです。それにもかかわらず、所属先の研究所長や機関が、この科学への貢献を認め、奨励することはまずありません。査読者は査読によって金銭的報酬を得ることもなく、完全に無償の奉仕活動として行なっています。査読に関する最近の議論は主に、査読業務への動機づけ、査読者への感謝、査読という貢献を認めることなどを前提に行われています。ここで、ある疑問が浮かびます。査読者になること自体が、1つの功績なのでしょうか?査読者の貢献を、より具体的な形で認めるべきなのでしょうか?


ジャーナル編集者は、分野の専門知識を考慮して査読者を選びます。ですから、査読者は専門家であり、著名ジャーナルに査読者として関わることは、研究者にとって名誉なことです。つまり、査読を依頼されるということは、専門家として認められることと同義であり、研究の専門家として前進していくために重要なことなのです。このような信望のために査読者になりたいと考えている研究者も大勢います。査読に対するグローバルな視点を考察するために、テイラー&フランシス社は、7438人(論文著者、査読者、編集者を含む)を対象に調査を実施しました。調査結果によると、著者の3分の2以上は査読を依頼された経験がないものの、依頼があればぜひ受けたいと回答しています。


でも、なぜ研究者は学術誌の査読をしなければならないのでしょうか。査読を行う動機として、研究コミュニティの一員になれること、最新の研究をいち早く知ることができること、スキルを高めて知識を拡張できることなどが挙げられます。調査結果からは、20~29才の年齢層の著者は、査読者になれば自分の評価が上がってキャリアアップにつながると考えていることも分かりました。これは、ほとんどの研究者、とくに若い研究者が、査読はやりがいがあり、世界で認知されるための方法の1つだと考えているということです。

多くの若手研究者が査読者になる機会を待っているにも関わらず、ジャーナル編集者は、期限内に進んで仕事を果たしてくれる査読者を見つけるのに苦労しているとよくこぼしています。ジャーナル編集者はたいてい、信頼できる査読者をすでに確保しているので、新たな査読候補者となる研究者を探したがらないのかもしれません。あるいは、新しい査読者を探す時間がないのかもしれません。しかし、査読プロセスをより円滑にするためには、編集者は査読者グループを広げる努力をしなければなりません。ジャーナル編集者が若手研究者(学術界というシステム内にいる、年を取りすぎていない優秀な研究者)を査読者として考慮するかどうかは分かりませんが、経験豊富な研究者(査読依頼を拒否したがるような)が査読を依頼されている一方、貢献したいと思っている若手研究者が無視されているのが現状のようです。査読・出版サービスを提供するPeerage of Scienceの共同創設者/マネージングディレクターのヤンネ-ツオマス・セッパネン(Janne-Tuomas Seppänen)氏は、「ジャーナル編集者の中には、ベテラン研究者よりもポスドク研究者に査読を依頼したいと(非公式に)言っている人もいる」と述べています。査読者になることは研究者として認知されることと同義だという見方を支持しているセッパネン氏は、査読者になるということはCV(履歴書)の価値を高め、将来的に研究資金や仕事を獲得する上で助けとなることを若手研究者も分かっていると述べています。そのためか、若手研究者は査読依頼を断らず、期限内に査読を行い、仕事もきっちり行う傾向があります。


査読は、自分に知識と洞察が備わっていることを示す、研究者としての中心的任務の1つです。専門分野ですでに地位を築き上げた研究者と知り合いになれることもあり、自分の存在感をグローバルに高めることにもつながります。したがって、ジャーナルや出版社は、若く才能ある人物に査読を依頼することを考慮すべきでしょう。査読業務への動機づけが必要だという考え方から、Multidisciplinary Digital Publishing Institute(MDPI)やネイチャー・パブリッシング・グループなどの出版社では、さまざまな方法で査読者を勧誘しています。例えば、感謝状の発行、出版費用の割引、ジャーナル上で公に謝辞を述べるなどの方法です。また、Publonsなどのオンライン・プラットフォームと協力して、査読を公に記録することも行われています。研究者は、査読という仕事に対して感謝以上のものを求めているのかもしれませんが、感謝の意を示されることは、査読依頼を引き受けるためのよい動機となっています。学術界で成功の階段を上っていくのは容易なことではありません。査読者になることは、自分の存在感、信頼、評価を高めていく方法の1つなのです。 


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査読者になるには: 若手研究者へのアドバイス

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査読者になるには: 若手研究者へのアドバイス

学術界での成功を求める若手研究者は、自分の知識やスキル、やる気を示せる機会をいつも探しています。査読者になることは、成功への階段を1段のぼることと言えます。査読は、若手研究者のキャリアアップにどのように関係してくるのでしょうか。研究者はどうやって査読者になるのでしょう?本記事では、このような質問への回答を示すとともに、査読者になりたいと願う若手研究者に役立つ、豊富なアドバイスをお届けします。

学術界での成功を求める若手研究者は、自分の知識やスキル、やる気を示せる機会をいつも探しています。査読者になることは、成功への階段を1段のぼることと言えます。査読は、若手研究者のキャリアアップにどのように関係してくるのでしょうか。研究者はどうやって査読者になるのでしょう?本記事では、このような質問への回答を示すとともに、査読者になりたいと願う若手研究者に役立つ、豊富なアドバイスをお届けします。


まず、もっとも重要な質問から始めましょう。若手研究者は、なぜ査読者になりたがるのでしょうか? それは、査読者として考慮されるということは、その分野の専門家として認められたということであり、履歴書や評価に有意義な価値が加えられるからです。査読者として認知されることは、それ自体が功績となり、若手研究者にとって飛躍の足がかりとなります。それだけでなく、査読は自分の専門分野で最新研究がどのように発展しているかを把握し、知識を広げる機会ともなります。若手研究者がネットワークを広げることは非常に重要であり、査読者になることで、分野のジャーナル編集者や他の研究者たちと交流するよい機会が得られるのです。そのようなわけで、多くの若手研究者・ポスドク研究者が、査読依頼を待ち望んでいます。


1. 論文を出版する

自分が信頼できる研究者であることに気づいてもらう方法として、おそらくもっとも論理的で明らかな方法は、質の良い論文を出版することです。良質な論文を何本か出版していれば、査読者を探している編集者の目を引きやすくなります。実際、論文掲載先ジャーナルの編集者が、あなたのテーマと似た論文を受け付けた場合、あなたに査読が依頼される可能性は高くなるでしょう。同じ分野の研究者から、査読者に推薦されるケースもあるかもしれません。良い論文を発表し続ければ、研究のトレンドに詳しく、分野の専門家にふさわしい基準を満たしているということを編集者に伝えることができます。また、被引用数が多ければ、存在感や信頼性が増します。論文には適切なキーワードやタイトルを使いPubMedなどのデータベース索引を利用する編集者から、論文を発見してもらいやすくしましょう。


2. メンターや指導教官に頼む

著者から査読者への道を進みたいなら、メンターや指導教官は強力な支援者となります。メンターや指導教官は編集者とつながりがあるので、あなたのために一筆添えることや、関係者にあなたを紹介することができます。また、指導教官が編集者であれば、あなたが興味を示せば、査読者として検討してくれるかもしれません。この場合にさらに好都合なのは、メンターが査読のやり方についてのアドバイスや指導をしてくれる可能性があるということです。これは、正式なトレーニングが不十分な駆け出しの査読者にはおおいに助かることです。


3. ジャーナル編集者に積極的に連絡してみる

大胆な方法ですが、ジャーナル編集者から見つけてもらえるのを待つのではなく、編集者にアプローチして査読に興味があると伝えてみることもできます。学会に参加すると、分野のジャーナルに関わっている編集者と話す機会があります。編集者は新鮮な視点を取り入れたがっているので、あなたが意欲を示せば、共同査読者や正式な査読者としてのポジションを得られるかもしれません。また、「査読者になることに興味がある」と編集者にメールを送ることもできます。メールでは自分の経歴を簡単に説明し、出版履歴を含めることを忘れないようにしましょう。ただしその前に、ジャーナルの査読者向けガイドラインを読み、基本的な条件や査読者に求められることを理解しておくようにしましょう。


4. 他の査読方法を試してみる

査読者になるには、(通常の)ジャーナル論文査読とは別の道筋もあります。F1000ResearchなどのジャーナルやPubMedなどのプラットフォームは、出版後査読を採用しています。つまり、登録したユーザーが、出版された論文に自由にコメントできるというシステムです。建設的なコメントをシェアすることで査読のスキルを磨けるので、若手研究者にはよい場と言えるかもしれません。中堅・上級の研究者と議論するにも便利なプラットフォームと言えます。ここで重要なのは、このようなプラットフォーム上の査読者の多くは匿名を好むということです。ですから、自分のプロフィール情報などをシェアするのか、それとも匿名で行うのかを決めておいた方がいいでしょう。査読スキルを磨く別の方法として、ブログ記事を書くことや、ジャーナルに出版論文の批判を書くことも挙げられます。

 


ジャーナル編集者は、査読候補者を増やすことを常に考えています。さらに、ジャーナル編集者の多くは、若手研究者をリクルートしたがっています。なぜなら、若手研究者の方が依頼を引き受ける率が高く、自分を売り込みたいために緻密な仕事をし、正直に意見を述べるからです。ですから、ステップアップのチャンスをつかんで、査読者になりましょう。ただし、査読には相応の責任が伴うことを忘れないようにしましょう。


以下の記事もご覧ください:

査読初心者へのアドバイス(シリーズ記事)

論文を書くには何から始めるべきですか?

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Question Description: 

現在医学部の2回生ですが、US Medical Licensing Exam(米国医師資格試験、USMLE)に役立つと思い、研究論文の執筆を計画しています。どこからどのように始めるべきか、アドバイスを頂けたら幸いです。

回答

まずは、オンラインや大学の図書館で、いくつかの出版論文に目を通してみてください。研究論文がどのように書かれているかということや、取り組んだらおもしろそうだと思えるテーマについてのイメージがつかめるはずです。次に、指導教官や学部の教授に、学内や附属病院で扱われることの多いテーマや症例について聞き、それに関するデータは利用可能か、どのような調査を要するか、指導可能な人物はいるか、などを尋ねてみましょう。


また、参加可能な進行中のプロジェクトがあるか、そのプロジェクトについての論文は執筆可能か、についても確認してみましょう。テーマが決まったら、そのテーマを掘り下げ、先行研究をしっかり把握しながら、現在の知見に不足している点を見つけ出してください。その不足点を基に、自分のリサーチクエスチョンを明確にしていきましょう。


伝統医療の研究に関する6つの重要な倫理原則

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伝統医療の研究に関する6つの重要な倫理原則

近年、伝統医療の研究倫理に関する議論が活発になっています。主なテーマは、野生薬用植物の不正収穫、地元の知識保有者に対する研究者の道義的責任、補完的かつ代替的な治療法としての伝統医療の信頼性などです。論文を出版する際は、伝統医療ジャーナルでの出版物を規制する倫理原則を理解しておくことが大切です。

近年、伝統医療(traditional medicine)の研究倫理に関する議論が活発になっています。主なテーマとなっているのは、野生薬用植物の不正収穫や、地元の知識保有者に対する研究者の道義的責任、補完的かつ代替的な治療法としての伝統医療の信頼性などです[1]。研究を広く普及させるための唯一の方法は、出版物を増やすことなので、伝統医療ジャーナルでの出版物を規制する倫理原則を理解しておくことは非常に大切なことです。具体的には、以下の6項目について考慮する必要があるでしょう:
 

  1. 倫理方針と宣言
  2. 維持・保全
  3. 科学的検証
  4. インフォームド・コンセント
  5. 所有権の問題
  6. 報告基準

 

1. 倫理方針と宣言

 ヘルシンキ宣言では、人体実験に対する倫理的基本原則が定義され、研究活動の規制が初めて行われることになりました。一方、チェンマイ宣言(1988年3月)、WHO Traditional Medicines Strategy 2002–2005(WHO伝統医療戦略2002-2005)、WHO general guidelines for Methodologies on Research and Evaluation of Traditional Medicine(WHO伝統医療の研究と評価の方法に関する総合ガイドライン)では、伝統医療研究の倫理原則に重点が置かれています。具体的には以下のような内容です:
 

  • チェンマイ宣言では、薬用植物を保全し、未来の世代に適切に継承していくための国際協力・協調を支持している[2]。
  • WHOの伝統医療戦略では、薬用植物の安全性、有効性、品質、入手法、適切な使用法に関する方針に重点が置かれている[3]。
  • WHOの伝統医療の研究と評価の方法に関する総合ガイドラインは、伝統医療の安全性と有効性に関する現状の主要議題を取り上げ、いくつかの難題に対してエビデンスベースで回答することを目的としている。また、このガイドラインでは、薬用植物を評価するための国家規制の提案や、臨床研究のための新たなアプローチ方法を推奨している[4]。たとえば、長い歴史を持つ伝統医療は、毒性試験の実施後であれば、第Ⅲ相臨床試験に直接移行することができる、などの提案を行なっている。
  • さらに、Consolidated Standards of Reporting Trials(臨床試験報告に関する統合基準、CONSORT)は、試験結果の報告書の標準フォーマットを研究者たちに提供しており、完全かつ透明性の確保された報告書の作成を促している。研究者にとっては、データの客観的評価や解釈が行いやすくなる[5]。
     

2. 維持・保全

伝統医療の維持・保全

以下の2要素のバランスが重要

・伝統知識を記録する必要性

・伝統知識の不正または有害な使用、関連する生物文化資源の搾取からの保護を保証する必要性
 

研究方法

・植物薬や伝統医学に基づく療法の安全性や有効性を保証しなければならない

・伝統医療の適用や発展を阻害してはならない

 

Sustenance in traditional medicine

 

伝統的な知識や専門知識にアプローチする場合は、敬意を持って現地の慣習に従い、生態系を破壊することなく、その地域に利益をもたらすような方法が必要となります。研究デザインは、コミュニティ内の保健環境や社会経済を改善し、社会的価値や啓蒙的要素を持つものでなければなりません。最終的には、「伝統知識を記録する必要性」と、「その知識の不正または有害な使用や、関連する生物文化資源の搾取からの保護を保証する必要性」とのバランスを取ることが重要です。2つの要素に配慮することには、一方の知識への信仰、知識のプロセス、知識のシステムが、他方を害していないことを確認する意味もあります。したがって、研究方法は、植物薬や伝統療法の安全性や有効性を保証しながらも、伝統医療の適用や発展を阻害するものであってはなりません[7]。


3. 科学的検証

伝統医療をより実用的にするために、また幅広い支持を得るために不可欠なのが、科学的検証です。Research Ethics Boards(研究倫理委員会)やReview Boards(審査委員会)に対して、公式の検証結果や裏付けを提出する必要があります。異なるコミュニティで、同じ伝統医療が別の症状に対する療法として用いられている場合、標準的な方法または改良を加えた方法で、それぞれのケースについて検証する必要があります。検証試験は、適切なサンプル量の検討や、判定結果の公正さに留意して行う必要があります。このような試験では、調剤や標準化の作業をはじめとして、大規模な臨床研究を実施する前に、生物活性物質の安全性と有効性を確認します[3]。

 

科学的検証

・Research Ethics Boards(研究倫理委員会)やReview Boards(審査委員会)に対して、公式の検証結果や裏付けを提出する

・適切なサンプル量を検討し、判定結果が公正であることに留意する

・調剤や標準化の作業を含め、生物活性物質の安全性と有効性を確認する

・ランダム化比較試験は、CONSORTのガイドラインに準拠する

・論文投稿時は、CONSORTのチェックリスト(checklist)とともに、被験者の募集(recruitment)、組入れ(enrollment)、ランダム化(randomization)、離脱(withdrawal)、完了(completion)などの過程を示すフローチャート(flow diagram)および、ランダム化の手順に関する詳細を併せて報告する
 
 
scientific validation
 

ランダム化比較試験はCONSORTのガイドラインに準拠して実施してください。論文投稿時は、CONSORTのチェックリスト(checklist)とともに、被験者の募集(recruitment)、組入れ(enrollment)、ランダム化(randomization)、離脱(withdrawal)、完了(completion)などの過程を示すフローチャート(flow diagram)および、ランダム化の手順に関する詳細を併せて報告する必要があります[6]。
 

4. インフォームド・コンセント

インフォームド・コンセントとは、被験者に情報を伝えた上で自発的かつ選択的に得られた合意を意味します。インフォームド・コンセントの基本的な意義は、参加者の健康、幸福、人権を保護することです。それと同時に、情報を伝える側が、暴力、詐欺、強制、搾取などの行為を行なっていないことを証明する安全装置の役割も担っています[7]。


伝統医療研究を規制する倫理原則は研究者に、伝統的な知識、知恵、慣習を尊重、保護、維持することを求めています。患者や被験者を必要とする研究には、倫理委員会の承認やインフォームド・コンセントが必要であり、それらが得られていることを、出版論文の中で証明する必要があります。インフォームド・コンセントを得るときは、開示情報の中に研究の目的や試験方法の概要を含めることが義務付けられています。また、個々の被験者に、研究への参加拒否権を持っていることを伝えなければなりません。さらに、研究者には、得られた情報についての守秘義務があります(臨床試験の場合)[6]。
 

5. 所有権の問題

伝統医療の評価を行う研究者は、評価対象の知識の権利を保有しているのは、その発祥元(多くの場合はその属する国)であることを認識しておく必要があります。これは特許の取得に重要な意味を持っています。外部の者が特許を取得しようとする場合は、インフォームド・コンセントや利益共有について、あらかじめ発祥元の同意を得なければなりません。伝統医療ジャーナルは、その伝統知識の発祥元が追跡可能であること、知識保有者や関連コミュニティから事前に取得したインフォームド・コンセントが文書化されていること、知識の所有権は元の知識保有者が保持すること、知識保有者のクレジットを掲載すること、利益は貢献者間で公平に分配すること、を保証することで、知的所有権を保護しています[8]。
 

6. 報告基準

伝統医療に関する知見の文書化にあたり、一般的な定型書式のようなものは残念ながら存在しません。一方で、とくに、イノベーションの創出を目的とした知識の文書化を目指す場合、幅広いデータによる裏付けが求められます。活性化合物の収集、培養、調製、補完、季節的・高度的変化に関する情報は、伝統医療研究においてもっとも重要な意味を持ちます。同様に、伝統医療に関する臨床情報として、投与方法のほかに、症状、用量、毒性、有効性、副作用を記載する必要があります。文書作成における個人やコミュニティの貢献度の記載に関する規則は定められていないため、伝統医療の知識保有者の存在が示されないケースも考えられ、知的財産の不正使用に繋がる危険があります[9]。


 

伝統医療の分野に限らないことですが、信頼性と一貫性が保たれた知識体系を構築するには、査読付きジャーナルでの論文出版が欠かせません。研究の普及の土台にあるものが出版倫理であり、科学的手法の妥当性や信頼性を支えるものが、倫理原則です。したがって、伝統医療分野の査読付きジャーナルで論文を発表しようとする研究者にとって、この記事で説明したような倫理規範の基準を理解し、同意し、それに従うことは、極めて重要なことだと言えるでしょう。


参考文献

 

Scientific Journal Impact FactorとImpact Factorの違いは何ですか?

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Question Description: 

インパクトファクター(Scientific Journal Impact Factor、SJIF)が3.7のジャーナルに論文を投稿したのですが、この指標は実際のインパクトファクターとして考慮されないことを後になって知りました。論文はすでにアクセプトされているのですが、取り下げたいと考えています。何かアドバイスを頂けますか?

回答

もっとも信頼性の高い確実なインパクトファクターは、トムソン・ロイターのJCR(Journal Citation Report)によるもので、これが学術的な評価を行える唯一の指標と考えられています。Scientific Journal Impact Factor(SJIF)、Universal Impact Factor(UIF)、Global Impact Factor(GIF)などの指標は、別の情報企業による指標です。高名なジャーナルの多くはJCRに掲載されることを望んでいます。したがって、ご質問にあるように、学術界での就職活動などでは、SJIFが考慮されることはありません。


論文の取り下げを望む場合は、その旨を記載したメールをジャーナル側に送り、論文の出版プロセスを直ちに停止してもらうよう依頼する必要があります。論文がすでにアクセプトされている状況では、ジャーナル側が快く要求に応じないかもしれませんが、謝罪とともに要求を聞き入れてもらえるようお願いしてみましょう。取り下げのプロセスは、編集者から取り下げを承認する旨の連絡を受け取って初めて完了します。承認を受けるまでは論文を別のジャーナルに投稿しないようにしましょう。二重投稿とみなされる可能性があるためです。状況は、随時確認しておく必要があるでしょう。


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シュプリンガー・ネイチャー社、イラン人研究者による論文58本を撤回

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シュプリンガー・ネイチャー社、イラン人研究者による論文58本を撤回

2016年11月1日、シュプリンガー・ネイチャー社は、イランを拠点とする著者らによる論文58本の撤回を決定したと発表しました。同社は、対象となった論文の盗作疑惑を受けて行なった調査の結果、査読とオーサーシップに明らかな不正が認められたため、これらの論文を取り下げる判断を下しました。

2016年11月1日、シュプリンガー・ネイチャー社は、イランを拠点とする著者らによる論文(7誌、計58本)の撤回をシュプリンガーバイオメド・セントラルが決定したことを発表しました。同社は、対象となった論文の盗作疑惑を受けて行なった調査の結果、査読とオーサーシップに明らかな不正が認められたため、これらの論文を取り下げる判断を下しました。


撤回されることになった論文の内訳は、バイオメド・セントラルから28本、シュプリンガーから30本です。両社は引き続き不正論文についての調査を行なっており、処分の対象となる論文は増加することも予想されます。広報担当者によると、「異なる著者グループによる、極めて手の込んだ不正操作が行われていたため」、早い段階での不正発見に至らなかったとしています。シュプリンガー・ネイチャーは プレスリリースの中で、「これらの論文を撤回するという決定は、ひとえに科学的記録を正すため」であるとし、「個々の著者が不正に関わったとする証拠は掴めていない」と述べています。

 


同社は、オーサーシップに関する規定を改め、品質チェックの精度を向上させて編集者が不正を発見しやすくすることを目指し、このような事態の再発防止に努めるとしています。


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エルゼビアが新たなジャーナル評価指標「CiteScore」をリリース

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エルゼビアが新たなジャーナル評価指標「CiteScore」をリリース

大手出版社のエルゼビアは2016年12月、学術ジャーナルの質を測るための新評価指標群、CiteScoreを発表しました。ジャーナルのインパクトファクター(JIF)が信頼性を失いつつある今、今回の発表は、新たな評価方法の有効性や、適切な引用評価指標の必要性について、活発な議論を呼んでいます。

学術出版界に新しい評価指標が誕生しました。2016年12月8日、大手出版社のエルゼビアは、学術ジャーナルの質を測るための新評価指標群、CiteScoreを発表しました。ジャーナルのインパクトファクター(JIF)が信頼性を失いつつある今、エルゼビアによる今回の発表は、新たな評価方法の有効性や、適切な引用評価指標の必要性について、活発な議論を呼んでいます。エルゼビアの評価法研究の責任者であるリサ・H・カレッジ(Lisa H. Colledge)氏は次のように述べています。「現行の評価方法をどう捉えているかによらず、物事を改善する手段の1つとして、新たなデータ群の導入や、評価指標の開発に関心を持っている人は多いでしょう」。


CiteScoreは、以下の点においてJIFと一線を画しています:
 

  1. ジャーナルの影響度を、各論文の過去3年間の平均被引用回数を基に算出(JIFは2年間)。
  2. スコーパスに収録されているジャーナル(2万2,000誌)が対象。(JIFは、クラリベイト・アナリティクスによる Web of Scienceのジャーナル(11,000誌)が対象。)
  3. 研究論文だけでなく、引用可能な記事(ニュース、編集記事、編集者へのレターなど)すべてを対象として値を算出。
  4. オンラインで無料公開。(JIFは購読者にのみ公開。)ただし、より詳細な分析結果は購読者にのみ公開。


CiteScoreでは、すべての引用可能記事を対象に値を算出します。したがって、インパクトファクターの高い多くのジャーナル(NatureThe Lancetなど)は、研究論文以外のコンテンツを数多く扱っているために、JIFほど高い数値を得られないことが予想されます。ニューヨークを拠点とする出版コンサルタントのフィル・デイビス(Phil Davis)氏は、「CiteScoreが導入されれば、編集者は研究論文以外の記事の掲載に消極的にならざるを得ず、これらの記事は、ほかの出版物やウェブサイトに回されるようになるでしょう」と予測しています。


エルゼビアがCiteScoreの算出方法を明示している点について、多くの研究者はポジティブな反応を見せていますが、同社が評価指標を所有することに懐疑的な目を向ける人もいます。マサチューセッツ工科大学(MIT)図書館、Scholarly Communications & Collections Strategy(学術コミュニケーションおよび収集戦略)責任者のエレン・フィニー(Ellen Finnie)氏は、自身のブログで次のように指摘しています。「営利団体であるジャーナル出版社がジャーナルの評価指標を所有することには、本質的に利益相反という問題があります」。この新たな評価指標が学術界の発展に寄与するのか、またはほかの多くの指標のように支持を得られないまま衰退していくのか、今後の動向に注目が集まります。


*この話題についてどう思いますか?あなたにとって引用評価指標はどれくらい重要ですか?CiteScoreを参考にしますか?下のコメント欄からご意見をお寄せください。

論文採択後の学会発表について

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論文投稿後の学会発表についてです。 ある研究内容について全てかぶるわけではないですが半分くらいかぶる内容で学会に抄録を登録し、論文もsubmitしました。 学会も論文も当該分野ではトップなので通らないだろうと思っていたのですが まず先に論文が通せないけどreviseするようにと言う過程を二回経ています。おそらく通らないと思いますがsister jounalにはいい論文だろうとのコメントだったので、そうしようかと思っていました(おそらく一ヶ月以内に返事が来ます)。その時に学会からアクセプトの返事が来てしまいました。 すぐに学会を取り下げるか 論文の結果を待って、sister jounalへの投稿をお断りする予定で、論文の返事を待とうと思っていますが、どうしたら良いでしょうか? なお外科系臨床の学会論文なので、よく似たような発表をしている人は見ますし 論文は採用されても学会のだいぶ先なので そこまで細かくチェックする人はいないレベルだとは思いますが。。 タイトルも少しだけ違うし同じ内容もあるけど論文には入らない内容もあるのでいいかと思っていたのですが 結構ここでは厳しいコメントが多くて困惑しています

回答

コンピューターサイエンス以外の分野では、出版済み論文を学会で発表してアウトリーチを最大化することがおおむね許容されており、これは通常、二重投稿とはみなされません。ただし、出版済みあるいはアクセプト済みの論文を発表するときには、素材の再利用の仕方について何らかの制限が課される場合があります。


例えば、論文内の図を発表で使う場合や、論文からそのまま文章を引用する場合は、その出典を明示する必要があるでしょう。多くのジャーナルでは、適切に出典を明示すれば、事前に許諾申請をせずにそのような対応を取ることができます。


論文がアクセプトされたら、研究結果を学会で発表してもよいかジャーナル編集者に尋ねてみる必要があります。ジャーナルはおそらく、学会での研究発表の仕方について制限を課し、研究の全容ではなく、概要や結果の一部のみを発表するよう求めるでしょう。


ジャーナルの許可が得られたら、論文がジャーナルXにアクセプトされたこととその出版予定日を、学会担当者に連絡しましょう。また、学会発表についての許可がジャーナルから得られていることも伝えましょう。学会発表を行うときは、ジャーナル論文を必ず引用するようにしましょう。


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