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利益相反の可能性を開示せずトラブルに:ケーススタディ

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利益相反の可能性を開示せずトラブルに:ケーススタディ

ある著者がジャーナルで論文を出版したところ、その後まもなくジャーナル編集者から「利益相反の可能性を開示していなかった」と指摘するメールが届きました。編集者は、なぜ利益相反を開示しなかったのかについて納得のいく説明がなされなければ、論文撤回の可能性があるとも書いていました。著者は、そうした事実が利益相反になると知って驚き、どう対応すべきかアドバイスを求めてエディテージ・インサイトに相談しました。

事例:ある著者がジャーナルで論文を出版したところ、その後まもなくジャーナル編集者から「利益相反の可能性を開示していなかった」と指摘するメールが届きました。編集者によると、著者の配偶者が数年前に勤務していた製薬会社が、その研究結果によって利益を得た可能性が高いということでした。編集者は、オンラインで公開されている著者のプロフィールからこの事実を知ったといいます。


編集者は、なぜ利益相反を開示しなかったのかについて納得のいく説明がなされなければ、論文撤回の可能性があるとも書いていました。著者は、そうした事実が利益相反になると知って驚き、どう対応すべきかアドバイスを求めてエディテージ・インサイトに相談しました。


対応:私たちは、編集者の懸念は妥当であること、そして近親者が直接または間接に研究結果によって利益を受ける立場にいた場合は利益相反の可能性があることを著者に伝えました。そして、編集者に謝罪の手紙を書き、情報開示をしなかったのは著者側の認識不足による誤りだと説明するようアドバイスしました。また、正誤表(correction/erratum)で情報開示をしたいという意向も伝えるよう提案しました。著者がこの通りに対応したところ、ジャーナルは納得し、次号の正誤表で情報開示を行うことで合意しました。


まとめ:ほとんどの国際ジャーナルでは、利益相反の完全開示が求められます。利益相反の可能性は、金銭的関係、個人的関係、学術的競争、強いイデオロギーや信念などから生じます。ジャーナルに書かれていなかったとしても、著者は利益相反の開示を行うか、あるいは少なくともジャーナル編集者にその必要性をメールで問い合わせてみるべきでしょう。利益相反がないと考えられるなら、その旨を宣言しなければなりません。また、特定の状況や関係性に利益相反の可能性があるかどうか不明な場合は、編集者に確認する必要があります。


論文投稿を行う場合はジャーナルの投稿ガイドラインを参照し、利益相反開示用の指定フォームがあるか、また開示すべき事項について明確なガイドラインがあるかどうかを確認しましょう。情報開示に関するガイドラインがない場合は、他誌のガイドラインを参照して、利益相反とみなされる可能性のある状況の例を確認しましょう。国際医学雑誌編集者委員会(ICMJE)の利益相反に関するガイドラインを参照すれば、このテーマについてよく分かると思います。また、ジャーナルに利益相反開示用のフォームがない場合は、ICMJEのフォームを使用することができます。


ジャーナルもまた、開示すべき利益相反の種類を著者が理解できるよう、ガイドラインや事例を提供すべきでしょう。


自分の研究に合った研究デザインはどのように選んだらいいですか?

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Question Description: 

こんにちは!私はフィリピンで病理学専門の研修医をしています。指導医から、症例の病理診断(sign-outs)の新たな手法に関する研究を行うよう言われていますが、研究をどのように進めるべきか悩んでいます。指導医から求められているのは、新たな手法を提示することなので、これが主たる目的になります。この場合、どのような研究デザインを適用するのが妥当ですか?ご回答よろしくお願いします!

回答

研究デザインについて助言するには、あなたが提示しようとしている手法についての情報がもう少し必要です。提示したい手法に最適な研究デザインは、研究者であるあなたが選択しなければなりません。リサーチクエスチョンを立て、それに対してどのようなデータやエビデンスが必要なのかを整理してみてください。また、自分の裁量で使用できるリソースも考慮に入れましょう。他の病理研修医にインタビューを行うのはどうか?病理診断に関する問題を理解するためのデータは入手可能か?電子化された病理診断にアクセスし、それらをデータとして利用することは可能か?これらのことを一度確認してみてください。


まずは文献調査から始めてみるのもよいかもしれません。出版済み論文の中から、病理診断の手法に関するものをピックアップし、それぞれの研究にどのような研究デザインが適用されているのかを調べましょう。こうすれば、適用できそうな研究デザインのタイプを把握することができます。また、同僚や指導医にも意見を求めてみましょう。以上の段階を経た後で、リサーチクエスチョン、データ、利用可能な手元のリソースを考慮して、最適と思われるデザインを選んでください。

 

 

メディカルライターによる非倫理的行為のせいで著者に剽窃の疑いがかけられる:ケーススタディ

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メディカルライターによる非倫理的行為のせいで著者に剽窃の疑いがかけられる:ケーススタディ

非英語ネイティブの著者グループが、メディカルライティング・サービスを利用して論文を投稿しました。しかし論文は剽窃を理由にリジェクトされ、編集者からは「剽窃について納得のいく説明がなされなければ所属機関にその旨を伝える」と言われてしまいました。メディカルライターの所属会社とは連絡がとれず、途方に暮れた著者たちはエディテージ・インサイトにアドバイスを求めました。

事例:著者4名のグループで、あるジャーナルに論文を投稿しました。著者は全員英語ネイティブではなかったため、メディカルライティング・サービスを利用しました。しかし論文は剽窃を理由にリジェクトされ、編集者からは、「剽窃について納得のいく説明がなされなければ所属機関にその旨を伝える」と言われてしまいました。


著者たちによると、剽窃とされた文章は、自分たちの知らない間にメディカルライターが入れたものだということです。著者たちはメディカルライターの所属会社と連絡をとろうとしましたが、何度メールを送っても返信がありませんでした。途方に暮れた著者たちは、エディテージ・インサイトにアドバイスを求めました。


対応:メディカルライターを紹介した会社について、エディテージ・インサイトの出版エキスパートがインターネットで調べてみると、悪い評判があることが分かりました。著者たちには、剽窃が含まれたのはメディカルライターの責任であるものの、著者としてよく注意し、信頼できるメディカルライティング・サービスを選ぶべきだったと説明しました。


私たちは、ジャーナル編集者への謝罪と、メディカルライターに非倫理的行為があったことの説明を伝えるメールの下書きを手伝いました。メールには、著者たちが論文の剽窃に気づいていなかったこと、言葉の壁があったために見直しの段階でそれに気づくことができなかった旨を書き、ジャーナル編集者に送る際は、証拠としてメディカルライターとのやり取りも添えました。


論文には執筆支援サービスを利用したことが明示されていたので、編集者は、原稿がメディカルライターによって執筆されたものであることをすでに承知していました。著者たちからのメールを受け取った後、編集者も当のメディカルライティング会社と連絡を取って説明を聞こうとしたものの、返信がなかったということでした。このため、編集者にも、著者たちがそのサービス提供会社に騙されたということがすぐに分かりました。編集者は著者たちに同情し、剽窃部分を削除して修正すれば、論文の新規投稿を受け付けると言いました。


まとめ:メディカルライティング・サービスを選ぶ際は、十分に注意する必要があります。会社のウェブサイトを検索して、サービスを利用したことのある人の感想を確認してみるとよいでしょう。できれば、米国メディカルライター協会(AMWA)欧州メディカルライター協会(EMWA)国際医学出版専門業協会( ISMPP)などに所属している専門家や会社を利用するとよいでしょう。


さらに、メディカルライターの支援を受けて執筆する場合、著者は執筆の全プロセスに関わるようにし、執筆すべき内容を伝え、論文の各セクションを注意深く見直さなければなりません。これは、英語が苦手な著者には難しいことかもしれませんが、そのような著者こそ、メディカルライティング・サービスを選ぶ際は細心の注意を払う必要があります。メディカルライターについて直接自分で確認し、論文全体で出版倫理と出版規定が確実に守られるようにしなければなりません。


完成した原稿は、投稿前に必ず剽窃チェックにかけるようにしましょう。オンラインで利用できる剽窃探知ソフトには、 iThenticatePlagAwarePlagScanなどいくつかあります。また、執筆支援・校正サービスを利用したことを原稿の謝辞(Acknowledgments)に含めることも忘れないようにしましょう。


おすすめ記事:

若手研究者のためのオープンアクセス出版ガイド

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若手研究者のためのオープンアクセス出版ガイド

近年、オープンアクセス(OA)は着実にその勢いを増しています。ジャーナルや出版社の多くはOAでの出版を行なっており、著者の選択肢も広がってきています。しかし、多くの研究者(特にキャリアの浅い研究者)は、いまだにOA出版に対してぼんやりとした印象を抱いています。

近年、オープンアクセス(OA)は着実にその勢いを増しています。ジャーナルや出版社の多くはOAでの出版を行なっており、著者の選択肢も広がってきています。しかし、多くの研究者(とくにキャリアの浅い研究者)は、いまだにOA出版に対してぼんやりとした印象を抱いています。OAって何?OAで出版する意義は?OA出版にはどんな選択肢があるのか?このような疑問が頭をよぎり、その答えが不明瞭であるために、OAに対して懐疑的になりがちなのです。今回の記事で、OA出版の基本を学びながら疑問点を解消していきましょう。


オープンアクセス(OA)とは?

OAは、科学研究をすべての人に無料で公開し、その知見を利用しやすい環境を作ることで科学の発展を促進することを目的としています。これまでの学術出版界では購読モデルが採用され、読者がコンテンツに対して料金を支払ってきました。また、学生などの利用者が論文を読めるように、図書館がさまざまなジャーナルを購読するのが一般的でした。しかし、購読料が高騰しはじめ、図書館が高価なジャーナルを揃えることが難しくなってきています。資金調達を満足に行えない途上国の図書館や研究機関にとってはなおのことです。その結果、読みたい論文を入手できない研究者が多く現れ、科学の発展にも影響を及ぼしはじめました。この障壁を取り除くものとして、再利用が許可された状態で出版される論文に、無制限かつ迅速にアクセスできるOA出版モデルが生まれたのです。


OA出版にはどのような種類がある?

OA出版には、大まかに分けてゴールドとグリーンの2種類のモデルがあります。


ゴールドOA

このモデルは、査読済みの論文を無料で読者に提供し、出版費用は著者側(所属機関や資金提供者を含む)が負担します。現在、ほとんどの大手出版社はOA出版の選択肢を用意しており、OAを専門とするPLOSのような出版社も存在します。また、複数あるOAジャーナルのディレクトリの中でもっとも有名なDirectory of Open Access Journals(DOAJ)では、研究分野ごとのOAジャーナルを検索することができます。


ゴールドOAモデルの中にも、さまざまなジャーナルの選択肢があります:


・フルOAジャーナル: このタイプのジャーナルで出版されたすべての論文は、ウェブサイト上に無料で公開されます。学術機関や学会、あるいは政府からの助成で運営されている場合もありますが、論文を出版する段階で、いわゆる論文掲載料(article processing charges、APC)を著者に要求するジャーナルもあります。


・ハイブリッド・ジャーナル: このタイプのジャーナルに掲載されている論文の多くは有料購読型で、一部のコンテンツのみが無料公開されています。論文をOAで公開するには、著者が追加料金(オープンアクセス費、open access fee)を支払う必要があります。ハイブリッドOAのジャーナルには、iOpenAccess(Taylor & Francis)、Online Open(Wiley)、Sage Open(Sage)などがあります。
 

・ディレイドOAジャーナル: このタイプでは、論文の出版後一定の期間が経過すると、無料で公開されます。論文が有料の期間は公開猶予期間(embargo period)と呼ばれ、その期間は6~12ヶ月程度が一般的です。
 

グリーンOA

グリーンOAとは、著者が購読型ジャーナルで論文を出版し、同時にOAのリポジトリにも保存するというものです。これをセルフアーカイブ(self-archiving)と呼びます。したがって、ジャーナル自体は購読が必要ですが、読者はリポジトリ経由で自由に論文にアクセスできます。この方式は、OAジャーナルでの出版費用を捻出できない著者によく利用されています。ただし、リポジトリに登録される段階では、論文が査読されていない場合もあります。また、購読型のすべてのジャーナルが、論文をリポジトリに保存することを許可しているわけではありません。各ジャーナルのウェブサイトでセルフアーカイブが認められているかを確認し、セルフアーカイブを行う場合は事前にジャーナルの同意を得ることが望ましいでしょう。


リポジトリは、研究機関が提供するものと独立したもの、 専門分野に特化したもの(bioRxivNature PrecedingsPubMed Centralなど)、複数分野を対象としたもの(arXivGlobal Open Access PortalZenodoなど)があります。また、OpenDOARのように、OAのリポジトリのリストを提供するディレクトリもあります。


リポジトリでセルフアーカイブできる論文は、基本的には以下の3種類です:


プレプリント: 査読前の論文。

・ポストプリント: 査読済みおよび著者による修正済みで、出版社の校正が入る前の論文。

・パブリッシャー版:冊子体またはオンラインで公開されている、出版社による校正後の最終版PDF。


オープンアクセスに関するよくある誤解

冒頭で述べたように、研究者はOAでの出版について懐疑的になりがちです。これは、頭の中にOAへの誤解があることが大きな原因となっています。以下でそれらの誤解を解消していきましょう:
 

1. OAジャーナルには査読がない: これは完全な誤解です。ジャーナルが定める査読方針と公開方針はまったく別のものです。実際は、ほとんどのOAジャーナルが査読を行なっています。


2. OAジャーナルはインパクトファクターが低い: これも誤解です。多くのOAジャーナルが出版する論文は多く引用されており、高いインパクトファクターを獲得しています。たとえば、Living Reviews in Relativityのインパクトファクターは32です。また、インパクトファクターがジャーナルの質を表す最良の指標ではないことも忘れないでおきましょう。
 

3OAジャーナルは出版費用が高額: 高額なAPCの支払いが足枷となり、OAジャーナルでの出版を断念する著者は多くいます。しかし、すべてのOAジャーナルがAPCを請求するわけではなく、請求する場合も通常はウェブサイト上でその旨を明記しています。料金はジャーナルによってさまざまで、必ずしも高額というわけではありません。さらに、APCを負担してくれる大学や助成団体も多く存在します。また、発展途上国の研究者や資金調達が困難な研究者には、ジャーナルが支払いを免除してくれるケースも少なくありません。ネイチャー・パブリッシング・グループが出版するジャーナルの多くは、APCの免除指針を定めています
 

4. OA出版は著作権保護や著者に対するクレジットを提供していない: 実際は、PLOS や BMJなどの多くのOAジャーナルは、出版後の著作権を著者に付与しています。また、ほとんどのOAジャーナルがクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC licence)を使用しており、研究が再利用された場合のクレジットは、必ず著者に与えられるようになっています。


キャリアが浅い研究者にとって、OA出版の重要性を理解しておくことはとても大切です。研究成果への迅速かつ無制限なアクセスが可能でなければ、科学の進歩はありません。近い将来、研究者たちがOA出版に対してより積極的になり、科学コミュニティだけでなく、政治や一般の世界にも研究の恩恵が行き届くような環境が実現することが期待されます。

EIC辞任への対応

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Question Description: 

ある科学誌に投稿した論文に対し,大幅修正の通知を受けました.修正済み論文を投稿しましたが,担当しておりましたEditor-in-Chief(以下EIC)が辞任したと知りました.その後,ほどなくして辞任したはずのEICより,再度大幅修正の通知を受け,修正済み論文を再投稿しました. 2度目の修正済み論文投稿後,かなりの日数が経過しておりますが,いまだに投稿論文管理システムでのEIC及びステータスは,以前のままになっております. レビューが進んでいるのかどうか確認したいと考えておりますが, 誰にどのような文章で問い合わせればよいのでしょうか.

回答

ご質問にはEiCの辞任を知った経緯が書かれていませんでしたが、本人から直接メールで連絡があったのでしょうか。そうであれば、後任者と交代日についての記載はありませんでしたか?そのあたりの情報がないようでしたら、当面は同じEiCが業務にあたっているものと思われます。担当していた論文の判定を終えてから退任するということは十分に考えられます。ご質問から察すると、EiCはまだ交代していないのではないでしょうか。交代が完了すれば、ジャーナルのウェブサイトで告知があるはずです。同じ人の名前がEiCとしてウェブサイトに掲載されている間は、投稿に関する問い合わせは、すべてその人宛てに行う必要があります。

査読後の修正について

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Question Description: 

Current StatusがAcceptにになっている状態ですが、we appreciate your attention to detail in satisfactorily revising your manuscript as suggested. という返事がありました。 どのように修正したものを提出すればいのでしょうか? メールに回答レターという形で返信するのでしょうか?

回答

ご質問からすると、投稿論文に条件付きアクセプトという判定を受けられたようです。これは、修正の提案がきちんと反映されればアクセプトするということです。


修正を求めるメールを受け取ったのであれば、そこには査読者のコメントが含まれているはずです。手違いでコメントが記載された書類が添付されていなかった可能性も考えられます。あるいは、査読者のコメントはオンライン投稿システムに記載されていて、そこから書類をダウンロードする必要があるのかもしれません。編集者に詳細を尋ねてみることをお勧めします。


参考記事:

4誌にリジェクトされてしまった論文の改善方法を教えてください

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Question Description: 

4つのジャーナルに論文を投稿したのですが、すべて査読に進むことなくリジェクトされてしまいました。1誌目には、対象領域における科学的インパクト、ポテンシャル、独自性、意義が不足していると指摘されました。2誌目には、読者層の興味を引くものではないとされ、3誌目には、ジャーナルの目的と対象範囲から逸脱していると言われました。そして4誌目には、英語表現が不十分であることを理由にリジェクトされました。以上のように2誌からテーマの不一致を指摘されているのですが、次の3つの理由から、私の論文はそれらのジャーナルが扱う範囲に収まっていると考えています:
 

・私の論文と同じキーワード、研究方法、テーマが含まれている論文がそのジャーナルに複数掲載されている。
 

・論文で引用している文献のほとんどが、この2誌に掲載された論文である。
 

・投稿にあたり、それぞれのジャーナルの目的と対象範囲を何度も確認している。
 

論文がリジェクトされたのには別の理由があると考えられますか?また、アクセプトされるためには、(言語校正のほかに)どのように論文を改善すればよいですか?ご回答いただければ幸いです。

回答

投稿した4誌すべてが査読以前にリジェクトしたということは、ジャーナルの選択を誤っているのかもしれません。あるいは、各ジャーナルの基準に達するように論文を大幅に改善する必要があるという可能性が高いと思われます。対象範囲外であると指摘された2誌からの通知はおそらく、査読に至らない即時のリジェクトを告げる場合の定型メールでしょう。そうであれば、それらのジャーナルにあなたの論文のテーマと似たものが掲載されていたとしても不思議ではありません。残りの2誌からは、領域に対する科学的インパクト、ポテンシャル、独自性、意義の不足、さらに英語表現の乏しさを指摘されたとのことですが、これは論文の総合的なクオリティがそのジャーナルの基準に達していないということです。指導教官と相談の上、論文の大幅な改善を検討してください。
 

以下の点について検討してみましょう:
 

1. リサーチクエスチョンは適切に説明されているか?

2. 適切な研究デザインが適用されているか?

3. 研究方法に誤りはないか?

4. 実験は十分か?

5. 結果に再現性はあるか?

6. 結果に論理的あるいは実用的意義はあるか?

7. IMRaD形式で書かれているか?

8. 図表は正確かつ適切にラベリングされているか?

9. 文章は簡潔・明快に分かりやすく書かれているか?


以上の点で不安のある部分を修正しましょう。投稿前にはスペリングや文法に誤りがないかも確認し、入念に校正を行なってください。必要であればプロの校正サービスに頼るのもよいでしょう。


健闘を祈ります!

以下の記事も参考になるかもしれません:
 

• 不採択になる一番多い理由
• 論文がリジェクトされる8つの理由
• 論文が何度もリジェクトされるのはなぜ?

オープンアクセス方針/義務化は世界でどれくらい採用されている?

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オープンアクセス方針/義務化は世界でどれくらい採用されている?

オープンアクセス(OA)方針とその義務化は、科学研究にOAの概念がどの程度受容されているかを示す直接的な指標です。世界のOA方針/義務化の状況は今どうなっているのでしょうか。

オープンアクセス(OA)方針とその義務化は、科学研究にOAの概念がどの程度受容されているかを示す直接的な指標です。Open Access Weekの2016年のテーマは「オープン・イン・アクション」でしたが、世界のOA方針/義務化の状況は今どうなっているのでしょうか。Registry of Open Access Repository Mandates and Policies(ROARMAP)のデータベースをもとに、世界中で実際にどれくらいの助成機関や研究機関がOA方針を策定し、義務化を行なっているのかを調べました。それによると、より多くの組織や助成機関がOAによって得られる恩恵を認識し始めており、研究やデータを一般に公開して利用可能な状態にするよう研究者たちに働きかけていることが分かります。ROARMAPデータベースから入手したデータを以下にまとめましたので、自由にダウンロード、共有、配布してください。これぞまさにオープンアクセスです!


オープンアクセス方針&義務化

世界中の助成機関・大学・研究機関が策定したOA方針および義務化の概要

 

OA方針/義務化は誰が実施する?

助成機関/研究組織 

→ 大学、研究機関

→ 学部や研究所などの比較的小規模な組織

 

OA方針/義務化の件数(組織別)

世界で策定されたOA方針/義務化の組織別件数

 

OA方針/義務化の件数(地域別)

世界で策定されたOA方針/義務化の地域別件数

 

OA方針/義務化の件数(国別)

上位10ヶ国

 

OA方針の採用 - 過去から現在まで

OA方針/義務化の件数の年次推移

 

より多くの研究機関、出版社、資金提供者、研究者が、OA方針/義務化を採用することのメリットに気づき始めています。この数字は今後も上昇を続けると予想されます。

 

出典:ROARMAP - Registry of Open Access Repository Mandates and Policies: http://roarmap.eprints.org/

OA出版に関するさらに詳しい情報・資料はこちらから: http://www.editage.com/insights

Open access policies and mandates

 


博士論文をジャーナル論文にする際の基本

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博士論文をジャーナル論文にする際の基本

若手研究者にとって、「論文を出版しなければ」というプレッシャーはとてつもなく大きなものです。ポスドク研究者ならば、科学コミュニティで信用を確立するために、自分の名前で少なくとも2、3本の論文を出版しておく必要があります。駆け出し研究者にとって論文を書くことは非常に大変な作業で、リサーチクエスチョンを思いつくことさえままならないことも多く、状況は困難を極めます。

若手研究者にとって、「論文を出版しなければ」というプレッシャーはとてつもなく大きなものです。ポスドク研究者ならば、科学コミュニティで信用を確立するために、自分の名前で少なくとも2、3本の論文を出版しておく必要があります。駆け出し研究者にとって論文を書くことは非常に大変な作業で、リサーチクエスチョンを思いつくことさえままならないことも多く、状況は困難を極めます。


博士号取得後、すぐに論文を出版するための1つの方法として、博士課程で取り組んだ研究で集めた材料を再び吟味してみるということが考えられます。修士論文とは異なり、博士論文には独自の研究が含まれているはずです。博士課程の学生はたいてい、何ヶ月もの期間をデータ収集や分析、論文執筆に費やしています。これらの研究材料を最大限に活用して、博士論文を1本あるいは複数のジャーナル論文に変換することが可能なのです。完成した博士論文をもとにジャーナル論文を書くことは、初めて論文を出版するための方法としてもっとも簡単で合理的なだけでなく、ほかにもメリットがあります。キャリアの強化や個人的な充実感につながり、さらに、広く世間に研究を知ってもらうことで、自分の研究分野により大きく貢献できるのです。


学位論文としてすでに出版された内容は、ジャーナルに受け付けてもらえないのではないか」、あるいは「そのような論文を投稿すると、自己剽窃や重複投稿とみなされ、著作権違反になるのではないか」と心配する著者もいます。これは分野や事例によって異なることですが、一般的に、学位論文として発表した内容の論文出版をジャーナルが問題視することはありません。これにはいくつか理由があります。


第一の理由として、学位論文は伝統的に大学の出版会によって学内での閲覧のために少数の部数だけが印刷され、出版されているものだということが挙げられます。学位論文は発行部数が少ないので、科学コミュニティ全体からアクセスできるようにするには、ジャーナル論文として出版する方がベターです。しかし、博士論文が学術出版社から(書籍として)出版されていて、オンライン上で公開されていることを問題視するジャーナルもあります。そのような場合は、学位論文を公開する前にジャーナル論文として出版する方がよいでしょう。学位論文がすでに学術出版社から出版されている場合には、論文の投稿前にジャーナル編集者にその旨を伝え、アドバイスを求めるようにしましょう。


第二に、学位論文の場合、通常は著者が著作権を保持しています。ジャーナル論文のように、出版前に著者が著作権を譲渡しなければならないことはありません。このため、著者には学位論文の内容を自由に再利用する権利があるので、著作権の問題はありません。もちろん、学位論文には著作権に関するページを入れ、著作権が登録されるように著者が確認する必要があります。


さらに、学位論文とジャーナル論文では、全体的な書き方やフォーマットがまったく異なります。学位論文をジャーナル論文にするためには、原稿を書き直して洗練させる必要があります。ジャーナル論文は学位論文の抜粋、あるいは単独の章に基づいて書かれる場合が多く、また、学位論文の複数の章から複数の論文を出版することも可能です。ジャーナル論文では、査読過程でさらに修正が加えられ、学位論文とは大きく異なったものになるため、重複出版の問題は解消されます。自己剽窃の問題も、ジャーナル論文の参考文献として学位論文を記載し、文章がそのまま重複して使われている箇所をすべて引用符で示すようにすれば、避けることができます。


もっとも重要なことは、論文が自分の学位論文に基づいたものであること、そしてそれがいつどこから出版されたのかについて、投稿時に編集者に伝えることです。必要ならば学位論文のコピーを提出する意思がある、ということも書き添えましょう。編集者に対して正直にオープンに接することは、必ず有利に働きます。そのように接すれば、編集者はあなたのガイド役となり、認識していなかった倫理的問題があっても、回避する方法を提案してもらうことができるでしょう。

 

以下の記事も併せてご覧ください。

学術出版の共通問題に取り組む若手研究者のためのガイドライン

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学術出版の共通問題に取り組む若手研究者のためのガイドライン

研究を志す者にとって、査読誌での初めての論文出版がキャリア上の重要な節目であることは広く認識されています。論文を出版することによって、分野での議論に積極的に関わり、知識の体系に貢献していることを示せるからです。

 [本記事はウォルターズ・クルワー(Walters-Kluwer)社の著者向けニュースレター、Author Resource Reviewに掲載されたものを、許可を得てここに再掲載したものです。著者:デボラ・Aチュン (Deborah A. Chyun) 氏/スーザン・ヘンリー (Susan Henly)氏 

デボラ・Aチュン(PhD、RN、 FAHA、 FAAN)氏はウォルターズ・クルワー・ヘルス(Wolters Kluwer Health)が発行するNursing Research誌の編集委員です。同氏はニューヨーク大学ローリー・マイヤーズ看護学院(New York University Rory Myers School of Nursing)の副学部長(Executive Associate Dean)と教授(Dr.John W. Rowe)を務めています。

スーザン・J・ヘンリー(PhDRN FAAN)氏はNursing Researchの編集者で、ミネソタ大学名誉教授です。同氏は看護研究および健康の経過(健康の軌跡)における心理測定法について研究しており、Routledge International Handbook of Advanced Quantitative Methods in Nursing Research誌の編集者も務めています。]

 


研究を志す者にとって、査読誌での初めての論文出版がキャリア上の重要な節目であることは広く認識されています。論文を出版することによって、分野での議論に積極的に関わり、知識の体系に貢献していることを示せるからです。私たち編集者も、「おめでとうございます!」で始まるアクセプトの通知メールを受け取る人々を祝福し、喜びを分かち合っています。また、投稿前の質問メールや、初めての論文を投稿して出版の舞台に立とうとしているすべての学生たちにエールを送っています。


学生やポスドク研究者の出版は、成功すれば良い意味でゾクゾクするものですが、困難や落とし穴に遭遇することも多々あります。覚悟を決めて必死の努力をしても、利益が競合する中、学術出版の経験がない状態では、途中でうまくいかないことがあると、耐えがたい負の感情に苦しむこともあるでしょう。私たちは編集者として、初めての出版にまつわるありとあらゆる経験を見てきました。以下の論説は、有益な出版経験を得るために知っておくべき共通の課題やポイントについての情報を提供する目的で書かれたものです。


出版について学ぶ

出版は、広範にわたる科学コミュニケーションというプロセスの中心に位置づけられています。コミュニケーションのプロセスには、従来型のセミナー、会議、学会などがあります1が、今では電子ジャーナルのウェブサイト、情報収集サイト、電子図書館やデジタルアーカイブも含まれるようになりました。2 これらすべての活動の中心となる概念はコミュニケーション、つまり各分野内や分野間で新しい知識を蓄積しつつ利用できるような情報交換を行うことです。著者や研究者は、重要な論文や目録を読んで引用を行います。文献レビューである概念(アイデア)の歴史を批判するときは、過去の科学者との対話が行われます。直接対面できる場や最新刊のジャーナルでは、同時代の人々と自分のアイデアを共有します。そして自分の論文が出版されれば、アイデアや業績を分野の未来の科学者に伝えることになります。若手研究者は、論文執筆の際にこれらのコミュニケーションのダイナミクス(原動力)を念頭に置いておくと有効です。


科学コミュニケーションとは、著者がジャーナルの中で自分の立場を確立して読者の関心を集めようとすることで、競いながら努力する行為です。査読誌で論文を出版し、科学の言説に首尾よく参加するためには、当然ながらそのプロセスの基本を分かっていなければなりません。優れたアイデアを持っていることと、それを文章で伝えるスキルを持っていることは必要不可欠です。人生の別の側面にも当てはまりますが、取り組んでいることを楽しめれば苦痛は和らぎますし、練習を積めばパフォーマンスは上がります。3米国の(看護学)博士課程プログラムのほとんどは、アメリカ看護大学協会(American Association of Colleges of Nursing, AACN)4の博士課程カリキュラムの構成要素に準じ、研究成果を広めるための話したり書いたりするための学術的ツールを使える能力を身に付けることを学生に求めています。5このスキルは、正規の授業で学んだり、あるいは研究助手などの職務として、大学院生やポスドク研究者が研究プロジェクトに関わりながら、研究者と共にアイデアを考えたり論文を執筆したりする中で学ぶことも可能です。大学院生やポスドク研究者は、執筆や研究を広めるプロセスに参加することを「隠れたカリキュラム」として学ぶこともあります。これは、文章化されていない非公式な形で、ときには意図していない形で、科学者コミュニティの価値や視点について学ぶこともあるということです。6隠れたカリキュラムで伝えられることには、科学の仕事において求められる厳密さ・独自性・倫理観、著者資格(オーサーシップ)の割り当てにおける公正さ、出版・研究助成金の申請・学術関連の職位における昇進の間の関連性などがあります。理想的なのは、大学院生の全期間を通じ、正規のカリキュラムと隠れたカリキュラムの両方で、入念かつ正確で独自性のある科学的成果をあげるために必要な考え方が育てられることです。逆に、好ましくないのは、大学院生が、競争に「勝つこと」こそが科学出版で最も大切なことだと学ぶことです。残念ながら、このような視点は、透明性の欠如したコミュニケーション、著者資格の割り当てにおける不正、サラミ出版(論文数のもっとも多い著者が「勝者」とされる)などにつながる場合があります。


出版を目指し、学ぶために書き、書くために学ぶ

大学院生やポスドク研究者は、研究生活の間に多くのレポートを書きます。課題の多くは、学生がテーマや研究方法、あるいはすでに普及している知見(例えば文献レビューなど)について学びやすいように考えて作られています。このような論文のすべてが出版に適しているわけではありません。例えばNursing Outlookの著者向け情報には、「授業の課題のために書かれた論文は、Nursing Outlookの目的と研究領域に適合するように編集されている場合を除き、受け付けない」7と書かれています。これは、書き方を学んでいるときと、論文を出版するために書くときの目的が異なるためで、妥当で明確な指針と言えます。


「出版を目指して論文を書く」という課題であれば、論文執筆のよい機会となるでしょう。看護学者の出版する論文は多様なので、例えばアメリカ心理学会(APA)の論文出版の手引き(American Psychological Association’s Publication Guideline8 )や 医学雑誌編集者国際委員(ICMJE)の規定(International Committee of Medical Journal Editors’ Recommendations9)など、各種の出版規定に沿って書くことを学ばなければならないという難しさもつきまといます。それぞれのスタイルに沿って書かれた論文は、とくに議論や研究のエビデンスの提示の仕方、引用文献の書き方などの点で、構成が大きく異なります。スタイルには統一性を持たせなければなりません。スタイルに関わらず、情報が伝わりやすいタイトルのつけ方を学ぶことも非常に重要です。タイトルは、簡潔で内容が分かりやすいものがよいでしょう。タイトルに「方法」が含まれることもよくあります。機転をきかせた、面白おかしいタイトルは避けます。タイトルにMeSHキーワード(www.nlm.nih.gov/mesh/MBrowser.html)を使う方法も学んでおくとよいでしょう。的確なタイトルをつければ、出版された論文が検索されやすくなり、読者に論文を読んでもらいやすくなります。どのスタイルを参照するにせよ、APA論文執筆マニュアル(Publication Manual of the American Psychological Association)は、博士課程に在籍する大学院生全員の必須課題図書です。とくに第2章の「論文原稿の構成と内容」(“Manuscript Structure and Content”) は有益です。8 出版を目指して書かれた論文のテーマが意義深く、既存文献にはない内容が含まれる可能性があり、著者向け指針に沿って書かれたものであれば、査読され、出版を考慮してもらえるかもしれません。



著者資格(オーサーシップ)

著者資格は、「実際に執筆を担当した者だけでなく、研究に実質的・科学的な貢献をした者も含まれる」8と定義されています。若手研究者が大いに苦労するのが著者資格です。自分の論文出版の著者に誰を含めるべきか、また他人の論文原稿に自分が含まれるべきなのかどうかについては、どちらも悩むところです。論文審査委員を著者として含めるかどうかについても、よく疑問が生じます。ほとんどの場合、論文審査委員会で大きな役割を果たした人であれば、著者資格にふさわしいといえます。学内外で論文を読んでもらった人については、その関わり方やフィードバックの水準によって、含めるのにふさわしいかどうかが決まります。学生や若手研究者は、論文の執筆や研究を行う際に上級の教授や研究者と共同で作業する機会も多いため、そのような人々の役割については、研究プロジェクトの初期段階で明確にしておく必要があります。著者資格にふさわしい貢献をする人なのか、もしそうであれば、著者順のどこにその名前を入れるのが適切なのでしょうか。第一著者およびそれ以外の著者名の順番は、各自の貢献度によって決定されなければなりません。主要な貢献をした人が最初になります。8 学位論文の場合、その研究が「学生が考えた独立・独自の貢献」であれば、それ以降のすべての関連論文で学生が第一著者とされるべきです。8どのような場合も、著者順と、著者資格を保持するための研究チーム員各自への期待度を明確にすべきでしょう。ただし、貢献度が途中で変化し、それによって著者順が変わることもあります。


学位論文

従来の4~5章構成の学位論文は、研究プロジェクトの全容を系統立てて包括的に発表するものです。学位論文では、既存の文献をまとめ、知識のギャップがある箇所や研究が必要な問題点を特定し、リサーチクエスチョンと研究目的を考え、問題点を追求するための適切な方法について述べ、データの分析結果を示し、その結果をほかの研究結果と照らし合わせて考察し、医療行為・政策・今後の研究に対する意義を示します。学位論文はたいてい、後で1本あるいは複数の論文として世の中に広めていくための足がかりとなるものです。さまざまな理由で学位論文に基づく論文が執筆されないことも多く、問題となっています。研究は広く普及すべきものであり、研究結果の発信は倫理的義務とすら言えます。研究結果を共有し、さらなる知識の発展に貢献できるようにするため、従来の学位論文のフォーマットに代わり、論文を3本執筆するという選択肢を設ける博士課程プログラムも増えてきています。さらに、読み手や対象読者をさらに引きつけるようなデジタル論文などのフォーマットも提案されています。10


「単独の学位論文」を出版することで制限されてしまうことは多いため、それが論文3本という選択肢の受け入れ支持につながっています。学位論文の基本となる文献レビューは、それだけでも出版価値があることが多いものです。文献レビューを1本の研究論文としてまとめると、ページ数の制限があるために大幅な短縮が必要となり、貴重な洞察が失われてしまいます。解析手法を含む革新的な方法も、同じ運命をたどることがあります。1本の論文では研究結果まで十分に報告できないことも少なくありません。学生には、これらの論文執筆を奨励し、支援の手を差し伸べるべきです。論文3本の選択肢が適切でない場合も、学位論文の研究結果の出版は奨励されるべきでしょう。


3本の論文執筆という選択肢を考慮する場合、「選択肢」という言葉がカギとなります。すべての学位論文にこの方法がふさわしいというわけではないからです。学生にとってどちらの選択肢が適切かを決定する際は、学位論文の特徴に加え、学生の能力も考慮すべきです。従来の学位論文を出版可能な論文原稿に圧縮することは難しいと感じる学生も多くいますが、すべての要素を包括的に1つにまとめるという段階を「省略」しても、プロセスが楽になるわけではありません。3本の論文に直すことが可能な研究課題であっても、それがすべての学生にとって最善の方法とは限りません。3本の論文という選択肢は、慎重に考慮した上で、学生ごとに個別に判断されるべきです。論文の執筆と出版に関して学生が受けられるガイダンスは、博士課程プログラムごとに大きく異なります。博士課程修了前の必須課題として、出版論文が1本以上あることを条件とするには、博士課程在籍中に学ぶ機会と適切な支援が与えられている必要があります。卒業要件のために、不十分な原稿を出版可能な論文に整える義務は、ジャーナルにはありません。それは、学生と学位論文委員会、博士課程プログラム、そして教授陣の責任です。このプロセスに必要なのは、博士課程への進学時に学生の文章力を評価すること、授業で書くことに重点を置くこと、執筆を含む課題のすべてに詳細なフィードバックをすること、そして授業や進級のために書かれたレポートには修正の機会を設けることです。学生はまた、他人が書いた論文を批判することからも学べます。出版されている論文の評価を重視することに加え、助成金応募要項の模擬審査や、他の学生の論文を評価すること、さらには教授と共に出版する機会が重視されるべきでしょう。Nursing ResearchのOpen Manuscript Review(オープン査読)では、教授も学生も、査読プロセスが原稿の完成にどのように役立っているかを学ぶことができます。博士課程後期の学生やポスドク研究者は、ジャーナル投稿論文の査読に参加するという貴重な経験ができますし、ジャーナルと著者および研究者も、最先端の研究トレーニングを受けている研究者による新しい洞察を得ることができます。Nursing Researchでは、新人研究者が第一著者として論文を出版すると、審査委員になることを勧めます。さらに同誌は、事前に編集者の許可を得て、査読者ガイドラインの規定に準じている限り、博士課程の学生やポスドク研究者が論文原稿の査読に関わることを許可しています(査読者ガイドライン:http://journals.lww.com/nursingresearchonline/Pages/reviewerguidelines.aspx)。


博士課程での要求事項とジャーナルの優先度

学位論文に関連があるかどうかに関わらず、論文原稿の出版を必須とすることで、学生の成功の責任の所在が、ジャーナル編集者や査読者側に少々移っていますが、これには再検討の余地があります。ジャーナルにアクセプトされることを条件とするには注意が必要だということが認識されなければなりません。ジャーナルのなかでもとくに論文誌は、設定された目的と読者層に合った、最先端の質の高い論文を掲載します。学生や学位論文委員会にとって重要なテーマであっても、ジャーナルが必ずしも興味を示すとは限りません。学位論文は通常、研究キャリアの始まりであるため、出版には適していないかもしれません。研究資金が足りず、十分な数のサンプルを集められないことや、必要な方法が使えないこともあります。博士課程の研究は、結局は学びの経験なのです。(レビューは以下で読むことができます。 http://journals.lww.com/nursingresearchonline/Pages/openmanuscriptreview.aspx)また、有意でない結果の論文の出版は困難だということも知られています。このような場合にどうなるかは、どのような博士論文にするのかを決める場合と同様、結果が出るずっと前から分かっていることです。学術的観点から、学生が出版できるジャーナルは区別される必要があるのでしょうか?オープンアクセス、インパクトファクター、そしてその他の指標は考慮されるのでしょうか?考慮されるべきでしょうか?投稿すればよいのか、それともアクセプト、あるいは出版されることを基準にすべきなのでしょうか?学位取得の条件が、ジャーナルの優先順位やスケジュールとは必ずしも合わないかもしれません。学位取得条件は、とくにアクセプトの前に必要な複数回の修正にかかる時間など、出版にかかわる事柄について考慮する必要があります。ジャーナルは、大学のスケジュールや学生の締め切りに合わせて論文を出版することはありません。短く簡潔な研究レポートを出版するジャーナルも多数あります。そのような形式の方が、学位論文の結果発表に合っているかもしれません。ただ、それが学位取得という見地から適切といえるでしょうか?(Nursing Researchでは、短報には査読が行われ、出版された場合には通常の論文と同様にデータベースに採録されます。)最初の投稿でアクセプトされる論文は稀です。学生が著者である場合、査読者の提案と学位論文委員会の提案が対立した場合にどう折り合いをつけたらよいのでしょうか。


編集者とのやり取り

論文投稿には、ジャーナル編集者とのやり取りが含まれます。投稿前の質問、投稿時のカバーレター、評価への返答やその他のやり取りでは、専門家にふさわしい文章を使わなければなりません。これらの文書を準備する際は、編集者の役割と責任を理解していることが助けになります。編集者はコンテンツの選択、編集部の差配、投稿論文を正確かつ公平に評価するための査読の管理、科学的記録の整合性の確認を行います。これらの任務をベースとして、編集者は著者にさまざまなことを尋ねます。多くの編集者は、投稿前の質問を歓迎しています(Nursing Researchも歓迎しています) 。これは、投稿前に質問があれば、著者に有益なフィードバックを行い、査読の計画を立てやすくなるからです。投稿前の質問には、論文の仮タイトル、著者名、アブストラクトを含めましょう。論文投稿時のカバーレターには、関係機関の審査委員会や動物の飼育・使用に関する委員会のプロトコル承認、利益相反、投稿の時点で同じ研究データに基づいて書かれた出版済みの論文、出版予定の論文、査読中の論文についてすべてリスト化したものを含めましょう。投稿論文が新しい研究に基づくものだということが分かるのは、編集者にとってありがたいことです。これは、著者資格に関することなどで問題が出てくるかどうかなどを把握しやすくなるからです。ただし、これらの情報が出版基準として使われることは決してありません。質問が出るのは多くの場合、査読の際なので、編集者は情報を求めるために著者に問い合わせを行います。編集者からの質問には率直に答え、疑問が解消されて問題が解決されるようにしましょう。


私たち編集者は、質の高い論文原稿の投稿が増え、未来の看護学者を育てる役割を担うことができることを大変うれしく思っています。博士課程の教授陣とプログラムは、学生に対して論文出版に必要な支援を与えることが肝心です。私たちは、指導教授やメンター・学位論文委員会・ジャーナル編集者・査読者にはそれぞれ異なる役割があることを忘れずに、学生と協力しながら看護学を発展させていきたいと考えています。新しい学者の皆さんから研究の話を聞き、共に論文出版プロセスに関わることができることを楽しみにしています。

 

参考文献

1. Garvey, W. D., & Griffith, B. C. (1972). Communication and information processing within scientific disciplines: Empirical findings for psychology. Information Storage and Retrieval, 8, 123–136.

2. Hurd, J. M. (2000). The transformation of scientific communication: A model for 2020. Journal of the American Society for Information Science, 51, 1279–1283.

3. Saver, C. (2014) Anatomy of writing for publication for Nurses (2nd ed). Indianapolis, IN: Sigma Theta Tau International.

4. American Association of Colleges of Nursing. (2010). The research-focused doctoral program in nursing: pathways to excellence.  Retrieved from http://www.aacn.nche.edu/education-resources/PhDPosition.pdf

5. Wyman, J. F.,&  Henly, S. J. PhD programs in nursing in the United States: Visibility of AACN core curricular elements and emerging areas of science. Nursing Outlook, 63(4), 390-397.

6. The Glossary of Education Reform. (2015). Hidden curriculum. Retrieved from http://edglossary.org/hidden-curriculum

7. Nursing Outlook. (2015). Editorial policies. Retrieved from  http://www.nursingoutlook.org/content/authorinfo

8. American Psychological Association. (2010). Publication manual of the American Psychological Association (6th ed). Washington, DC: Author.

9. International Committee of Medical Journal Editors. (2014). Recommendations for the conduct, reporting, editing, and publication of scholarly work in medical journals. Retrieved from http://www.icmje.org/recommendations

10. Morton, P. G. (2015). What is the future of the PhD dissertation? [Editorial]. Journal of Professional Nursing, 31, 1–2.

Reprinted from Nursing Research: July/August 2015 - Volume 64 - Issue 4 - p 231-234.

研究者がオープンアクセスを選ぶメリットとは?

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研究者がオープンアクセスを選ぶメリットとは?

学術出版界で熱い議論が交わされるテーマの1つに、オープンアクセス(OA)があります。研究者たちが各分野で後れを取ることなく研究を発展させていくためには、論文への迅速かつ無制限のアクセスが欠かせません。それでも、研究者たちがOA誌での論文出版に慎重になってしまう要素もいくつか見られます。本記事では、OAのメリットの数々を紹介していきます。

学術出版界で熱い議論が交わされるテーマの1つに、オープンアクセス(OA)があります。OAが巻き起こしているこの嵐は、出版論文にアクセスする手段としてインターネットが登場して以来のものです。研究者たちがそれぞれの分野で後れを取ることなく各自の研究を発展させていくためには、科学論文への迅速かつ無制限のアクセスが欠かせません。それでも、研究者たちがOAジャーナルでの論文出版に慎重になってしまう要素もいくつか見られます。この記事では、OAを取り入れることによるメリットの数々を紹介していきます。


なぜOAか? これは、経験年数を問わず多くの研究者が抱いている疑問ですが、従来の購読モデルからOAモデルに切り替えるメリットは数多くあります。このことが広く認識されるようになり、多くの研究者や編集者がOAを取り入れるようになっています。それでは、OAのメリットについて具体的に見ていきましょう:


1. 露出が増える

OAでは論文に迅速かつ無制限にアクセスできるので、研究の露出が必然的に増えます。2014年に実施されたTaylor & Francisの調査によると、論文著者7,936名のうちの35%が、購読型ジャーナルよりもOAジャーナルのほうが露出が増えると答えています。また回答者の49%が、OAのほうが幅広く研究が伝わりやすいと回答しました。OAでは論文が無料で公開されるので、著者はSNSなどを活用してオープンに研究の宣伝を行うことができます。この高い露出性は、共同研究を行う、奨学金を獲得する、学会への招待を受けるなどの交流を深める足掛かりともなります。
 

2. 研究のインパクトが増す

露出の増加はインパクトの増加と強く結び付いています。OAが被引用回数に与える影響についての研究が続けられており、その多くが、OAによって被引用回数は増加すると結論付けています。デイビッド・J・ソロモン(David J Solomon)氏、ミカエル・ラークソ(Mikael Laakso)氏およびボー=クリスター・ビョーク(Bo-Christer Björk)氏は、1999~2010年の間にスコーパスの書誌データベースに登録されたOAジャーナルの引用率について調査しました。その結果は報告書「A longitudinal comparison of citation rates and growth among open access journals(OAジャーナルにおける引用率およびその増加に関する長期的比較)」で発表されており、質の高いOAジャーナルは購読型ジャーナルよりも多くの被引用率を得ていると述べられています。また、Nature Communications誌に掲載された論文700本を分析したThe Research Information Networkは、「open access articles were cited a median of 11 times, compared with a median of seven citations for subscription-only articles.(OA論文の被引用回数の中央値が11であるのに対し、購読のみの論文では7であった。)」と報告しています。一方で、引用回数の増加に有意性は認められないと主張する研究結果もありますが、OAによってインパクトは確実に増していると言えるでしょう。
 

3. 科学研究が一般にも幅広く普及する

購読型ジャーナルは、一般の人々にとって親しみやすいものとは言えず、科学研究が科学コミュニティの中で限定されてしまう要因となっています。その一方でOAは、研究者だけでなく科学好きの一般の人にも、科学の理解と発展を促す機会を等しく提供します。一般の人々も巻き込みながら科学を広く普及させていくことは、きわめて重要です。Canadian Institutes of Health Research(カナダ保健研究機構)などの助成機関には、助成の決定を下すメンバーとして一般市民が参加しています。このように、研究を一般にもアクセス可能にすることは重要であり、OAはそれを実現するための道筋となるでしょう。
 

4. さまざまな障壁が取り除かれ、研究の応用が促進される

OAによって経済的、法的、技術的な障壁が取り除かれ、すべての人が論文を利用できるようになります。これによってイノベーションが促され、成果が最大限に活用されます。研究コミュニティだけでなく産業界も研究を応用しやすくなり、科学の飛躍的な進歩を後押しします。

OA出版モデルに付きまとう誤解は、研究者たちの疑念を増幅させてしまっています。代表的な誤解として、OAジャーナルには査読がない、クオリティが低い、高額な出版費用を要する、著者が著作権を保持できない、などがあります。これらは、誤解であるにも関わらず、著者たちがOAを遠ざけてしまう原因となっています。確かに、OA出版モデルを悪用するハゲタカジャーナルが存在するのは事実ですが、すべてのOA出版社やOAジャーナルがそうだというわけではありません。ハイレベルな購読型ジャーナルと比べても遜色のないOAジャーナルは数多くあります。また、シュプリンガー・ネイチャーやエルゼビアなどの多くの大手出版社も、その傘下にOAジャーナルを持っています。
 

時間とともに発展・成熟しているOAは、学術出版の未来の形と考えられています。このモデルに欠陥がないわけではありませんが、OAジャーナル方針やオープンデータ義務化の展開、購読型ジャーナルからOAジャーナルへの転換などによって、進化は絶え間なく続いています。OAは、科学の透明性の確保と普及のための重要な一歩であり、従来のモデルよりも研究者たちの知見やデータがより目に入りやすいものであることは確かでしょう。
 

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A beginner’s guide to open access publishing                        

EiCへの辞任への対応

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Question Description: 

ご回答ありがとうございました. EiCの辞任は任期切れによるものであり,ジャーナルのウェブサイトの告知でその方の辞任を知りました.ウェブサイトにその方のお名前はないので,投稿論文管理システムでの表示がどうであれ,ウェブサイトにて新しくお名前があがった方が引き継いでいるものとして,今後投稿に関する問い合わせはその方にすればよいのでしょうか.

回答

ウェブサイト上でEiCの名前が変わっているとすれば、本来は投稿管理システムにも変更が反映されていることが望ましいです。この状況でベストな対応は、To: 新任EiC、cc: 前任EiCでメールを送り、投稿論文の状況を尋ねると同時に、「ウェブサイトと投稿管理システムのEiC名が一致しないようだが今後の問い合わせは誰に送ればいいか」と聞いてみることでしょう。


コミュニケーションがスムーズに進むことを願っています!

共同著者への対応

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Question Description: 

5人の共同著者の方に論文原稿のreviewをお願いしましたが、内1人の著者の返答が最後にみたいので、最終原稿を送るよう連絡がありました。よって、4人の共同著者の方と議論をして、その後の原稿をその方に送ったのですが、2カ月以上も待たされた結果、考察箇所の一部の記述(ある化合物の炎症作用は動物試験のデータのみで、臨床データがないからという理由です)を削除する提案がありました。その提案をお断りしたいのですが、気分を害せずに、その著者に返答する際、注意すべき点についてアドバイスをお願い致します。

回答

動物試験のデータによってもその論文の価値が高まると感じる理由を説明すべきだと思います。その方が指摘する点に対して、根拠と論理的理由を示しながら1つ1つ回答しましょう。あなたの見解について丁寧に説明を尽くせば、相手が気分を害すことはないと思います。それでも一部の記述を削除するよう強いられたら、「ほかの共著者たちの意見も聞いた上で多数決で決める」と伝えてはいかがでしょうか。


良いかたちで合意が形成されることを願っています!

Initial assessment of submissionsの期間について

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先日投稿した論文の状態がInitial assessment of submissionsとなり一週間が経とうとしています。雑誌のHPには、内容次第ではEditorに回らずRejectされることもあると掲載されています。形式はComminucationなのですが、このInitial assessment of submissionsの期間は一般的にはどのくらいかかると思っていればよいのでしょうか。

回答

Communication形式の論文は短いため、ほかの形式の論文よりも速く処理されるのが一般的です。論文の形式によっては、1人または複数の編集者が初回判定を行なってから担当編集者に回すという手順が取られますが、これに数週間以上かかることはまずありません。しかし、プロセスにかかる期間は、ジャーナルの状況、論文の内容、投稿数によってまちまちです。もう1、2週間待ってみて、それでもステータスが変わらなければジャーナルに問い合わせてみましょう。


よろしければ、下のコメント欄から結果をお知らせください。

review paperの引用について

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論文執筆時の参考文献の引用方法についての質問です。 review paperを読んで、執筆に必要な内容を参考文献を引用する場合は、原典のみを参考文献とすべきですか?それとも原典およびreview paperを参考文献とすべきですか? 前者が正しい方法だとすると、review paperが引用される機会がほとんどない気がするのですが、認識として正しいでしょうか?

回答

他の人がある原著論文(一次資料)を引用している二次資料については、その二次資料を引用するのではなく、原典にさかのぼってそれを引用するようにしましょう。何らかの理由でそれができない場合は、二次資料、つまりreview paperを引用することも可能です。


原典にあたることができたら、それのみを引用すればよく、二次資料には触れる必要はありません。ただ、原典に対するreview paperの著者の解釈や観察事項について述べたい場合は、二次資料にも触れる必要があるでしょう。


二次資料を引用することは問題ありませんが、参考文献欄がそればかりになりすぎないよう注意しましょう。著者に求められるのは、原典を参照しつつ、それに対する他者の研究や見解に頼りすぎないことです。原著論文に比べてreview paperが引用されにくいのには、このような理由があります。


こちらの記事も参考にしてください。

 

この回答が参考になりましたら、下のコメント欄から感想をお寄せ頂ければ幸いです!


Decline to Revise選択後の他誌への投稿について

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投稿論文において数回改訂を繰り返してきましたが、査読者の要求に完全に答えるのが困難であり、改訂を繰り返すうちに報告内容も当初の意図と異なる方向に向かいつつあるため今回は改訂を辞退したいと思っております。Author menuにおいてDeclines to Reviseを選択することはできましたが、この操作後に他誌に投稿することは可能となるのでしょうか?(操作完了後もReinstate submissionの選択はできるようになっています)

回答

"Declines to revise"を選択したのなら他誌に投稿しても問題はないはずですが、その場合はゼロから再び査読プロセスをたどり、多くの時間を費やすことになります。ただちに"Declines to revise"を選択するのではなく、査読者の提案によって論文の方向性が変わってしまったことを編集者に説明してみてはいかがでしょうか。当初の意図とは違っていることと、提案に同意できない理由を逐一説明する反論のレターを用意しましょう。それでも編集者が「提案通りに修正しないとアクセプトされない」と言うのなら、"Declines to revise"を選んで新たなジャーナルに投稿するとよいと思います。しかし、編集者があなたの意見に納得すれば、今のジャーナルに掲載される可能性も捨てきれません。


こちらの記事もお勧めです。

優れたRebuttal Letter(反論の手紙)をどう書くか?


もしよろしければ、対応の結果を下のコメント欄からお知らせください。

学術誌『Corrosion Science』: 概要と投稿時のアドバイス

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学術誌『Corrosion Science』: 概要と投稿時のアドバイス

学術誌『Corrosion Science 』の概要と投稿時のアドバイスをご紹介します。本誌は、金属・非金属の腐食のあらゆる側面とその管理についてのアイデア、開発、研究に関する論文を掲載しています。

目的と対象領域

Corrosion Scienceは、金属・非金属の腐食のあらゆる側面とその管理についてのアイデア、開発、研究に関する論文を掲載している。

出版元

エルゼビア。Corrosion Scienceは、腐食研究所(Institute of Corrosion、英ノーザンプトン)の公式ジャーナル。

発行頻度

月刊(各号で1巻)

編集体制

編集長: バースティン(G T Burstein)教授/英ケンブリッジ大学材料科学・金属学部教授・名誉研究員
ジャーナル編集委員:12名
詳細はこちら:www.journals.elsevier.com/corrosion-science/editorial-board

 


出版基準

Corrosion Scienceは理論と実践の両面にわたる論文を掲載し、腐食科学を幅広く解釈している。研究領域は、高温酸化、不働態、陽極酸化、生化学的腐食、応力腐食割れ、腐食管理のメカニズムや方法など。純粋・応用腐食、材料劣化、表面科学・工学に関する原著論文およびクリティカル・レビュー論文の掲載も考慮する。金属学者、材料科学者、腐食・劣化のすべての研究者を結びつける重要な役割を担っている。


編集方針と投稿規定

原稿はすべて、Elsevier Editorial Systemに著者としてログインしてアップロードする(初めての場合は最初に登録が必要)。ウェブサイトwww.journals.elsevier.com/corrosion-scienceの左側のメニュー「Submit your paper(論文を投稿する)」から操作する。

査読プロセス

標準的な査読プロセスを採用。査読者の手引きはこちらを参照(Corrosion Science専用ではない)。投稿を検討中の著者にも有益。https://www.elsevier.com/reviewers/how-to-conduct-a-review.


出版方針

Corrosion Scienceでは、著者が計125種類程度の中から最適なキーワードを選べるように、材料・技術・特性および現象の3タイプにわかれたキーワードリストを用意している。


インデックスと指標

2014年のインパクトファクター:4.422

5年インパクトファクター:4.831


Corrosion Scienceのウェブサイトには、本誌に関する様々なリンクを掲載した「Journal Insights」というセクションがある。例えば、ジャーナルの処理速度(論文の査読期間や受理後出版に至るまでの期間の平均を1週間単位で示したもの)や、ジャーナルの普及度についてのデータ(過去5年間にダウンロードされた国別の論文数や、過去5年間に論文が掲載された責任著者の分布を示した世界地図)などが紹介されている。


より詳しい情報はこちら:http://journalinsights.elsevier.com/journals/0010-938X.


便利なリンク集

ジャーナルのウェブサイト:www.journals.elsevier.com/corrosion-science

著者向けガイドライン:https://www.elsevier.com/journals/corrosion-science/0010-938x/guide-for-authors

編集委員会:www.journals.elsevier.com/corrosion-science/editorial-board

「Journal Insights」: http://journalinsights.elsevier.com/journals/0010-938X

学位論文をジャーナル論文に書き換える際のヒント

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学位論文をジャーナル論文に書き換える際のヒント

学位論文とジャーナル論文は学術文献としてまったく異なるカテゴリーに属するものであり、読者層も執筆目的も異なります。当然ながら、異なるスタイルやフォーマットで書かなければなりません。本記事では、学位論文を1本または複数本のジャーナル論文として再構成する方法について説明します。

本シリーズ前半の記事では、博士論文をジャーナル論文に書き直して発表しても問題ないことを説明しました。しかし、学位論文とジャーナル論文は学術文献としてまったく異なるカテゴリーに属するものであり、読者層も執筆目的も異なるということを覚えておく必要があります。当然ながら、これらの論文は異なるスタイルやフォーマットで書かなければなりません。本記事では、学位論文を1本または複数本のジャーナル論文として再構成する方法について説明します。


まずは、学位論文とジャーナル論文の違いを理解することが重要です。学位論文は通常、学生が学位課程で執筆する長い論文です。このため、学位論文には教育的な目的があり、審査員に発表して、学位授与にふさわしいか否かの評価を受けなければなりません。したがって、学位論文の目的は、学生がどれだけ多くの知識を持っているかを示すものであり、一般的に、学位論文のテーマについて知っているすべてのことを書くことになります。学位論文の特徴として、長々としたイントロダクション、網羅的な文献レビュー、詳細な研究手法・方法、込み入った報告、拡大解釈した結果が挙げられます。


一方、ジャーナル論文は、エビデンスに裏づけられた実践的アイデアを求める多忙な科学者や研究者が読むものです。したがって、構成面での読みやすさを極力重視しなければなりません。ジャーナル論文は、特定のフォーマットに沿って、簡潔な文献レビュー、要点を押さえた方法、主要な結果、簡明な考察で構成しなければなりません。


以下に、学位論文からジャーナル論文を作成する際に検討すべき項目を挙げます:


長さ:ジャーナル論文は学位論文よりもかなり短いので、無駄のない構成と簡潔な文体で書く必要があります。学位論文は数百ページ/2万ワードに及ぶ長さとなりますが、ジャーナル論文は分野やジャーナルによって3000~6000程度となります。つまり、学位論文の全体をかなり圧縮する必要があるのです。そのためには、学位論文をコピー&ペーストするのではなく、内容を厳選して書き直さなければなりません。ここで重要なのは、選択して、別の目的のために再利用するということです。研究の本質を慎重に残し、重複する細部を取り去ることが必要です。


アブストラクト:ジャーナル論文のアブストラクトの長さは通常、150~250ワード程度です。一方、学位論文のアブストラクトは、多くの場合350ワード程度と長めです。投稿先のジャーナルの指針を注意深く読むようにしましょう。構造化アブストラクトが必要なジャーナルもあれば、非構造化アブストラクトが必要なジャーナルもあります。グラフィカルアブストラクトやビデオアブストラクトの人気も高まっており、これらが必要とされるジャーナルもあります。


イントロダクション:学位論文のイントロダクションはきわめて詳細にわたります。徹底的な文献レビューによって、学生が既存文献について知っていることを示すためです。しかし、ジャーナル論文の文献レビューは、その研究が必要とされる研究上のギャップを理解するのに十分なだけの分量を簡潔に記載することが必要です。学位論文のリサーチクエスチョンが複数ある場合、ジャーナル論文ではリサーチクエスチョンを1つに絞るようにしましょう。


方法:学位論文の材料・方法のセクションでは通常、研究の手法や方法について長々と説明します。しかし、ジャーナル論文の方法セクションは、より要点を押さえて記述する必要があります。使用した方法の詳細、つまり実際に行なった実験についてのみ述べるようにします。研究方法についての包括的な議論は不要です。


結果:学位論文ではすべての結果を詳細にわたって報告しますが、ジャーナル論文では主要な結果のみを報告します。実際、学位論文では、学生に経験がなかったり、解釈に凝りすぎたりするために、説得力に乏しい研究結果が報告されることもよくあります。しかし、ジャーナル論文では厳しい報告基準に従わなければならず、リサーチクエスチョンに直接的に関連する堅固なエビデンスによって裏づけられた結果だけを報告しなければなりません。二次的な結果を報告したい場合は、補足情報として報告するようにしましょう。


考察:学位論文では、考察も詳しく記述します。学生が自分のデータを完全に理解していることを示すために、すべての結果の解釈を漏らさずに記載します。また、今後の研究の方向性に興味があることを、広範な思索に基づいて示さなければなりません。ジャーナル論文の考察は、明確に要点を押さえて書かなければなりません。 このセクションで結果を反復することは避けましょう。


参考文献:学位論文の参考文献は網羅的で、ときには著書目録が含まれる場合もあります。しかし、ジャーナル論文では記載する参考文献の数を抑え、論文内で引用した論文だけを記載するようにします。参考文献の数に上限を設けているジャーナルもあります。同様に、学位論文には「定義」のセクションがあるのが普通ですが、ジャーナル論文にはありません。

 

 

以上のアドバイスは、学位論文をジャーナル論文に書き直す際の方向性をつかんで頂くためのものです。ただ、これは簡単なことではなく、十分な配慮と努力が必要とされます。もっとも重要なのは、ジャーナル論文の参考文献に学位論文を記載し、その論文が自分の学位論文に基づいたものであることをカバーレターで必ず述べることです。編集者と査読者のサポートとアドバイスを受けることで、出版論文はきっと、学位論文とはまったく異なり、より優れたものになるでしょう。


以下の記事もご覧ください。

ベテランジャーナル編集者/学術トレーナーから、著者への不朽のアドバイス

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ベテランジャーナル編集者/学術トレーナーから、著者への不朽のアドバイス
キャベン・マクローリン博士(ケント州立大学教授)は本インタビューで、学術界のあらゆるキャリア段階の研究者にとって有益なアドバイスを与えて下さいました。博士は過去25年間以上にわたり、分野を超えて乳幼児・新生児を対象として活動する指導的立場にある人々のための、連邦政府が財政支援をするトレーニングプログラムを運営してきました。またフルブライトスペシャリストとして、学術出版に関するワークショップを世界各地で開催しています。研究者としての業績も多く、100本以上の論文を出版し、10冊以上の書籍の執筆・編集・協力に関わりました。School Psychology International Journal誌の編集者も務めています。

学術出版の各種規定を若手研究者や大学教員に紹介しながら指導することに熱心な研究者に出会えたとしたら、どうでしょうか?きっと、キャリア計画からジャーナルでの論文出版まで、研究に関するすべてについての情報やヒントが詰まった宝の山をみつけたも同然でしょう!今回はケント州立大学教授のキャベン・マクローリン博士にインタビューを行い、学術界のあらゆるキャリア段階の研究者にとって有益なアドバイスをたくさん頂きました。

 

学校専属心理カウンセラーの資格を持つマクローリン氏は、オハイオ州最大の学校心理学整備プログラムで「幼少期における学校心理学」の指導を行なっています。また、特殊教育学級教員兼管理者であり、スクールカウンセラーでもあります。過去25年間以上にわたり、分野を超えて乳幼児・新生児を対象として活動する指導的立場にある人々のための、連邦政府が財政支援をするトレーニングプログラムを運営してきました。フルブライトスペシャリストでもある同氏は、そのプログラムの一環として学術出版についての情報を伝達し指導するためのワークショップを世界各地で開催しています。特にBRICKS諸国へ赴いて著者や大学教員を対象に出版規定に関する指導を行なっています。研究者としての業績も多く、100本以上の論文を出版、10冊以上の書籍の執筆・編集・協力に関わりました。また、School Psychology International Journalの編集者も務めています。


豊富で幅広い経験と、他の研究者たちと情報をシェアしようという情熱を持つマクローリン氏は、学術出版に関するあらゆるアドバイスを得るには正にうってつけの、素晴らしい人物です。さまざまな国の著者と関わった経験から、世界各地の研究者が直面する困難についても熟知しています。今回のインタビューでは、とくに発展途上国の研究者が直面しがちな課題についてどう考えているか、そしてそれらの課題をどう克服したらよいかを伺いました。また、学術誌に論文を投稿し出版することについて、「不朽のヒント」を頂きました。

フルブライトスペシャリストとしてのお仕事について、少し教えて頂けますか?

もちろんです!過去30年間、毎年必ず、大学教員の方々に海外でプレゼンを行なってきました。フルブライトと関わるようになったのは自然な流れでした。フルブライトスペシャリストになったのはほんの3年前ですが、その間に南アフリカの大学2校と南インドの大学1校(各大学に2度ずつ別々に訪問)を訪れました。南インドの大学にはもうすぐ3度目の訪問をする予定です。私の役割はずっと変わらず、ジャーナル編集者としての20年以上の経験と、もちろん専門分野の研究学者としての経験にも基づいて、大学教員がインパクトファクターの高い国際的に著名な英文誌で論文を出版できるよう支援することです。


長年の経験から分かったのは、大学教員は多くの論文を出版するよう期待されているのに、自分の研究を出版につなげるようなデザインを考えること、そして研究結果とその意義の価値を明確に示すことについて、基本的な手順に関する指導や支援がほとんど与えられていないということです。私のプレゼンテーションは、リソースが不足している国々、主にBRICKSA諸国と呼ばれるブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ、韓国(中国はこのグループから外れつつありますが)の著者を対象としています。

マクローリン博士のお仕事では、世界中の研究者と関わるために、とくに第三世界や発展途上国を旅する必要があります。出版のベストプラクティスという面で、東西のギャップはあると思われますか?

ここ2年間で南アフリカとインドでプレゼンテーションを行い、トルコ、韓国、中国、そして母国米国の大学教員グループと話す機会を持ってきました。この間、ジャーナル編集者や自分の大学のプログラム管理者も務めていました。その関係で、さまざまな国で、異なる文化圏の影響、展望、正規教育のスタイルや学生への教育訓練について学ぶ機会に恵まれました。


欧米の著者が本質的に優れているとは思っていません。そうではなく、非欧米諸国の研究者には、6つの障壁があるのだと考えています。
 

  1. どの分野でも、非欧米人が編集する著名ジャーナルが少ないため、発展途上国には、出版の方法を教えたり、ロールモデルとなる人物が比較的少ない。
     
  2. 学部・大学院レベルで、ジャーナル編集者の興味を引きそうな研究のデザインの仕方について、指導がほぼまったくなされていない。
     
  3. BRICKS諸国の著者は、自分の研究の社会的・経済的・個人的に有意義な点を強調する形で研究結果や結論を示す方法がよく分かっていないことがある。(編集者は、素晴らしいデータがあるだけでは満足しません。そもそもなぜこのようなデータの収集が重要なのかということについての根拠を示してほしいのです。)
     
  4. 残念ながら、他人の論文をカット&ペーストする(つまり内容の複製あるいは剽窃)という文化がはびこり、いくつかの非欧米諸国の研究者全員がそのような目で見られ、編集者がこれらの地域の研究に疑いを向けるようになっている。
     
  5. BRICKS諸国の大学では、質より量を重視する学術文化が昇進の根拠となっている。(質・重要性・インパクトが高い研究を育てるよりも、意義や価値や重要性に乏しい論文の量産がむやみに珍重されています。)
     
  6. 質の高い論文をそれなりの量だけ出版することは可能だが、そのためには慎重にキャリアプランを練る必要がある。(これは、多くのBRICKS諸国の大学教員に欠けている要素です。)


まとめると、ご指摘の通り、世界でリソースがある地域と不足している地域の研究者の間には、大きなギャップが存在します。でも、世界中の大学教員と仕事をしてきた経験から、内部事情を知る人がアドバイスをシェアすれば、すぐに手軽に学べる教訓もあると言えます。そして、たまたまそういうことをするのが好きなのが私というわけです!

マクローリンさんは、(ケント州立大学の昇進・テニュア諮問委員会の委員として)大学のテニュア(終身在職権)関係の決定に助言を与える役割も担ってこられました。エディテージ・インサイトの読者の多くは、キャリアを積んでテニュアを得るのが順当なキャリア構築だと考える、若手研究者です。これらの研究者のために、テニュアの決定がどのように行われるのか教えて頂けますか?また、テニュアを得てキャリアを積んでいきたいと望む研究者にアドバイスをお願いします。

非欧米諸国の大学教員にコンサルティングを行うときはいつも、若手研究者が専門家としてのキャリアについて、どれだけ先の将来まで考えているのかを重視して、キャリア計画について質問します。そうすると、しばらく宙を見つめてから、「2、3ヶ月程度でしょうか」という意味合いのコメントが返ってくることがよくあります。欧米の研究者はたいてい何年も先まで明確なビジョンがあるので、そのような点が異なっています。
 

非欧米諸国の研究者には、私の大学の後輩教員と同じように、「立場や文脈を意識した宣言」(Contextual Statement)を毎年書くよう強く勧めています。これは「キャリアプラン」宣言として、次のような役割を果たします。(a) 来年の研究成果に含まれるものを予測する(客観的に「目標」として述べる)、(b) 少なくとも今後3年間の研究の軌道の計画を予測する(「研究で何を行うのか?」)、(c) 知的領域を見極め、提示された研究結果が各分野の優先事項とどう折り合うかを示す(「その研究が、分野においてどこに位置づけられるのか?」)。
 

そして、指導(メンターシップ)もまた、欧米でより価値が認められている要素だというのが私の考えです。欧米の研究者は、第一、第二のメンターや助言者をあげることができます。取り組み内容によって(規律に関すること、方法、テクニカルライティングなど)、異なるメンターを持つ人もいます。でも、海外の訪問先で交流する研究者には、これはほとんど当てはまりません。
 

欧米の研究者は、終身雇用をもたらすテニュアは、研究、指導、奉仕の結果得られるものだと理解しています。これらの評価が「十分」あるいはそれ以上で、少なくとも1つ(できれば研究が)「模範的」でなければなりません。この3つのうち、一番誤解されているのが研究です。私が訪問した欧米の大学では、教授はすべての側面において優れており、なおかつ特定の研究に焦点を当て、専門知識を有しているという点で高い評価を得ています。
 

率直に言って、お金を払って疑わしい偽ジャーナルで論文を出版し、大学という神聖な殿堂に入り込もうと画策する著者に出会うことがあるのには驚きます。これは発展途上国でとくに問題だと指摘しなければならないことです。私が訪れたどの地でも、大学運営に関わる人はこの問題を承知していますが、どう対処したらよいのか分からないようです。これは非常に深刻な問題です。ハゲタカ出版を助長するだけでなく、研究者の仕事の信用に疑問を呈することにもなりますから。
 

研究者の履歴書(CV)がハゲタカ出版社のジャーナルにまみれて汚れてしまったら、研究者としてそれなりの国際的認知を得るには、「死の接吻」を受けたに等しく、学術界での評価においては毒となります。陰で同僚に嘲笑されてしまうことなのです。そんなことをすれば、大学システムの中で低い位置に追いやられてしまうことは確実です。このような、専門家としてあるまじき不正行為を行う人物は、ずっと先の将来、つまり正教授になる資格が決まる頃まで、自分のCVに掲載された項目が人の目に触れ続けるということが分かっていないようです。研究者がもっとも活発に出版活動を行う時期に、いいかげんな業績ばかりが連なっていたら、どう思われるでしょうか?ハゲタカ出版社から出版するには対価を支払う必要がありますが、その対価は、偽ジャーナルの銀行口座に実際に送金する以上の金額となるでしょう。

最近心理学を中心に、反復・再現性が話題となっています。ジャーナル編集者として、この問題はどれぐらい深刻だとお考えですか?また、この状況を改善するための提案やアイデアはありますか?

単刀直入に言いましょう。反復・再現性を疑うということは、要するに剽窃・盗用があるのかどうかを問うているということです。反復は、分野で広く受け入れられるようになった研究結果を、異なる状況で別のサンプルを利用して再現しようとする、正しくまっとうな行為です。基本的に反復は、将来性のあるアイデアを支える(あるいはそれに反駁する)ためのものです。ジャーナル編集者も歓迎します。ただし、剽窃・盗用は歓迎されません


自分の論文が審査の初期段階で剽窃や重複がないか徹底的に調べられると分かっているとは言いつつ、実際には信じてはおらず、本当にそのようなことが起こるとは思っていない著者が多いのには唖然とさせられます。


商業出版社が発行するインパクトファクターの高い著名ジャーナルは、剽窃・盗用チェックを実施しています。私自身を例にとれば、ポータルサイトで投稿論文を実際に閲覧できるようになる前に、論文はすでに剽窃探知ソフト、IThenticateでチェックされています。このブール型の分析(Boolean analytics)を利用したきわめて複雑な人工知能ソフトは、前世紀末以降に出版されたすべての論文、学位論文、オンラインの学術出版物と単語・語句を比較します。編集者にとってこのソフトが魅力的なのは、アイデアの盗用(例えば、コピーしたという事実を分からなくするために、慎重に同義語を選んで入れ、出版済み論文とは言い回しを変えること)も探知可能だということです。このソフトで、編集者の私は、語句やアイデアが過去に出版された論文のどこから取ってきたものか、一行ごとに色分けされたものを見ることができるのです。このソフトを騙すことはできません!コピーに勤しむ研究者が、この最初のチェックを通過することはまずありません。


剽窃や盗用の蔓延は、同業の編集者たちもおおいに懸念している問題です。そう、我々編集者は、剽窃や盗用がよく見られる状況や個人に投稿パターンが認められると、その情報を共有します。非英語ネイティブの著者は、他の著者の説明に頼って原文通りの語順を使用してしまうこともあります。これは、自分の考えを明確に分かりやすく説明することが難しいからです。残念ながら、そのようなコピーがあるだけで、その著者の論文がリジェクトされることもあります。


ここで、おそらくあまり知られていないと思われることを紹介しましょう。ほとんどの編集者は、倫理にもとる不正行為に関わった著者と長いやり取りを続けたくはありません。つまり、自分の不正行為を正当化しようとしたり、修正を申し出たりする著者です。率直に言って、著者のインチキを理由にリジェクトの手紙を書くのは難しいことなのです!ですから、編集者はそれとは関係のない問題を見つけて理由づけします。その結果、著者は問題のある文章が入ったその論文原稿を、今度は別のジャーナルに投稿します。こうやってリジェクトのサイクルが何度も繰り返されるのです。


著者は他人の言葉、語句、アイデアをコピーしないよう、慎重にならなければなりません。ジャーナルに論文を投稿する前、特に共著論文の場合には、どれでもよいので剽窃探知ソフトをかけてみることをお勧めします。このテーマについて研究者グループに話をするときは、「著者がよい第一印象を与えられる機会は一度しかない」ということを率直に話します。

心理学・教育学分野において、インパクトファクターはどれくらいの影響力を持っているのでしょうか。

ご存知のように、ジャーナルのインパクトファクターは、発行後2年間のジャーナル論文の平均被引用回数で測定されます。これは、価値あるジャーナルであれば、出版後すぐに多く引用される論文を掲載しているはずだという考えが前提となっています。物理科学は、教育学や心理学よりも研究による新発見が蓄積されやすいので、ジャーナルのインパクトファクターも、社会科学や人文科学より高いのが一般的です。


したがって、著者やその雇用者の多くが、インパクトファクターはそこに掲載されている各論文や論文著者の信頼性ではなく、ジャーナルの信頼性を測定するものだということを忘れてしまっています。研究者の信頼性を評価する指標には、h-indexと呼ばれる別のものがあります。この指標は、研究者の生産性と出版物の引用インパクトの両方を測定するものです。h-indexは、著者の論文の中でもっとも被引用数の多いものと、著者のその他の論文の被引用数の合計に基づいています。これは、ジャーナル同士というよりは、研究者同士を比較する指標です。


昇進の際にジャーナルのインパクトファクターよりも重要なのは、上級の研究者が、あなたの論文が出版されたジャーナルを認識し、価値があるとみなすかどうかです。ですから、上級研究者(および昇進について評価をする人々)と話すときには、インパクトファクターの心配をするよりも、自分たちの分野でどのジャーナルが有力なのかということを話題にすることを勧めます。昇進諮問委員会は、たとえインパクトファクターが高くても、聞いたことがないジャーナルならば価値があるとはみなさず、そのような無名のジャーナルから出版しようとも思わないでしょう(でっち上げのインパクトファクターがつけられた偽ジャーナルかもしれないからです)。

心理学・教育学についてもう1つ質問させてください。この2分野では、オープン科学の概念から派生したもの、つまりオープンアクセス、オープンデータ、データシェアリングなどの受け入れはどの程度進んでいるでしょうか。

著者は誰しも、自分の論文が批判を受けないまますぐにアクセプトされ、費用をかけることなく出版され、直ちに拡散され、制約を受けずに世界中で読まれることを求めているようです。でも、質の高いものにはすべてコストがかかるのです。


オープンアクセス(OA)はその答えの1つです。でも、OAで出版されたものも、決して「無料」ではないことを忘れないでください。表立っては見えない出版のコストも、誰かが払わなければなりません。そして、それは莫大なコストである場合もあります。論文を査読基準に合うように整え、編集・校正・法的レビュー・組版などを行い、オンラインに掲載し、ときには郵送が必要な印刷版のジャーナル向けに整える、ということにはすべてコストがかかります。出版社は営利が目的で、慈善活動をしているわけではありませんから、誰かがどこかでこのサービスへの対価を支払わなければならないのです!


著者が自分の研究を発表して昇進していきたいという願いと、出版する側のサービスにかかる莫大なコストを支える必要性とのバランスをうまくとることは、容易ではありません。

マクローリンさんは大学教員や出版の専門家向けのトレーニング経験も豊富です。大学教員のトレーニングでもっとも重要な領域はどこだと思われますか?

方法、方法、また方法です。もう1度繰り返しましょうか?方法です!


サンプルの選択・データ収集・データのパターン分析の指針となる、優れた方法と統計分析がなければ、研究ではいかなる結果も得られません。研究デザインが未熟で、体系立っておらず、過度に単純化されて脆弱であれば、それが研究結果の質と有効性における限界を定めてしまいます。国際的に広く認められるためには、研究者は、現代の最先端の研究ツールに精通することが重要です。学会で自分の研究分野の内容について学ぶよりも、研究方法や応用統計学などのワークショップに参加した方がよいというのが私のアドバイスです。


著名ジャーナルは、単純な記述データや相関分析(因果分析ではなく)、あるいは学部レベルの統計分析に基づいた論文はもはや受理したがりません。データ収集を終えてから統計学者を呼んで「このデータの意味を教えてください」と頼んでも、うまくいきません。収集方法が不適切なデザイン、データセットの不十分なデザインを救済できるような統計学的なデータの操作方法はありません。そのような場合に「別の分析方法を使ってみたらどうか?」と考えてみても、解決にはなりません。研究デザインについてコンサルタントや統計学者に相談するのは、重要な要素であるサンプル選択やデータ収集を行うでなければなりません。研究に従事する教員に対し、適切な研究デザインの技術についてトレーニングを行えば、多くの問題が解決できるのではないかと思います。

ジャーナル編集者としての経験から、著者が投稿時にしがちなミスでもっとも多いものを教えて頂けますか?そのようなミスをしないようにするにはどうしたらよいでしょうか?

この問題に前向きに取り組めるように、少々質問の形を変えてお答えしたいと思います。「著名ジャーナルに論文を投稿するときに重視すべき4つの要素とは?」
 

  1. 論文に書かれたアイデアや内容をまともに取り上げてもらえるかどうかは、論文の文章と構成の盤石さで決まる。一流ジャーナルは、投稿論文のすべてを査読に回すことはありません。編集者は、査読に回すべき投稿論文を決めるフィルターの役目を果たしているので、編集者の目を引かなければなりません。論文原稿の構成だけでなく、文章の洗練度や構成にも注意を払わなければ、アクセプト通知の獲得競争での「負け」を自ら招いているようなものです。内容ばかりを強調し、文章や構成の洗練への配慮が不足している著者がほとんどです。
                   

    あなたの科学的アイデアをどうまとめて提示するのかに注目しましょう。アイデアの中の、科学的細部だけをただ羅列することは避けましょう。あなたの論文がジャーナルにとって妥当だとみなされるためには、編集者が注目し、重要と考える点に注意を払わなければなりません。自分の論文原稿の最終版から距離をおき、アイデアが滑らかでなおかつ正確に伝えられているかどうかを判断できる著者はほとんどいません。これは、そこに至るまでに、著者が論文に密着し過ぎていて、文章の抜けや不明瞭な箇所や重複している部分を見つけることが難しくなっているからです。技術英語に熟達し、出版プロセスの経験が豊富な、論文から距離を取れる編集者なら、アクセプトと、査読前のリジェクトを通知するレターの間の差異がどのようなものかが分かります。

 

  1. ほとんどの著者は、論文原稿の文章が申し分のない英語になっているかどうかの確認に長い時間を費やします。それにもかからず、カバーレターは問題のある英語で書きなぐり、編集者に安心感を与える要素を盛り込むことをすっかり忘れています。BRICKS諸国の著者は特に、投稿論文についての長所を紹介しながら、自信と確信に満ちた説得力のあるレターを書くことに苦労しているようです。投稿時のカバーレターは、論文が査読に回されるか、それとも編集者にざっと目を通されただけでリジェクトされるかどうかの境にあるもので、論文を売り込める唯一の手段だということを理解することが肝心です。自分の研究の価値を自分が売り込まなければ、アクセプトの可能性を高める貴重な機会を失ってしまいます。

     
  2. 科学論文でもっとも重要なのは、明確さです。優秀な科学者は、美辞麗句で飾られた言葉を使いません。それよりも研究内容を明確に説明することを重視しています。そのためには、短く簡潔な文章を書くのが一番です。些末なことを書き連ねて、中心となる命題やメッセージを埋もれさせてしまうことのないようにしましょう。はっきりと単刀直入に、まっすぐに表現しましょう。執筆と編集を同時にしようとするのはやめましょう。この2つは別の作業で、異なるスキルが必要とされます。厳しい目を持つ同僚の研究者に論文をチェックしてもらいましょう。英語ネイティブでない場合は、英語ネイティブの人に見てもらいましょう。あなたが英会話上級者かどうかは問題ではありません。問題なのは、「専門的洗練されている明瞭な英語が書けるか」ということです。それが不得手なら、助けを求めましょう。

 

  1. ジャーナルの指示する投稿手順を、注意深く、漏れなく、不平を述べずに確実に守りましょう!ジャーナルは著者向けガイドラインや、それに類した手引きを用意しているはずです。念入りに読んでください。これらは、投稿論文のアクセプトの確率を高められるよう、著者のために準備されたものです。


    ジャーナルの指針に従うことは、出版競争への参加費を支払うようなものです。フォーマット・構成・投稿手続きなどの指示に従っていないというだけでリジェクトされる場合も多々あります。どの一流ジャーナルにも、アクセプトできる数を大幅に上回る、質の高い投稿が寄せられています。ですから、論文原稿がジャーナルの指定するスタイルからどの程度外れているかということは、アクセプトかリジェクトかを左右する重要なフィルターであるのは、至極当然のことです。 何を差し置いても、著者向け指針を遵守すること!これを忘れないようにしてください。
     

 

マクローリンさん、ありがとうございました!このインタビューには、読者の皆さんの役に立つ貴重なアドバイスがたくさん詰まっています!


マクローリン氏:「出版に関する情報をシェアする機会を頂き、ありがとうございました。私は、学術出版について学んだことを今の立場から共有し、フィードバックする機会を常に探しています!」 

学術誌『Thorax』: 概要と投稿時のアドバイス

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学術誌『Thorax』: 概要と投稿時のアドバイス

学術誌『Thorax』の概要と投稿時のアドバイスをご紹介します。同誌は英国呼吸器学会の公式ジャーナルで、呼吸器内科、小児科、免疫学、薬理学、病理学、外科の臨床・実験に関する研究論文を掲載しています。

目的と研究領域

Thoraxは呼吸器内科、小児科、免疫学、薬理学、病理学、外科の臨床・実験に関する研究論文を掲載している。

出版社

BMJ Publishing Group/英国呼吸器学会

Thoraxは同学会の公式ジャーナル。

出版頻度

月刊(年12号発行、12号で1巻)

編集体制

編集者3名、副編集長2名、共同編集者20名以上、編集委員会(50名以上)

Thoraxでは、統計編集委員会および統計編集者4名が別途設けられている。

詳細はこちら:http://thorax.bmj.com/site/about/edboard.xhtml

 


出版基準

科学の大きな進展に寄与し、臨床業務に影響を与えることができる論文を歓迎する。本ジャーナルが検討対象とするテーマは以下の通り: 呼吸器内科、睡眠、救命救急診療、”およびこれらのテーマにおいて臨床材料への応用をともなう基礎および翻訳機構(例:細胞分子生物学、遺伝学、疫学、免疫学)。


編集方針と投稿規定

原稿はすべて論文投稿システムScholarOneからアップロードする。初回利用時は登録が必要。 


投稿プロセスについて:https://mc.manuscriptcentral.com/thorax


Thoraxでは、12の分類にしたがって論文を掲載している(各カテゴリーの詳細とワード数制限は、こちらの著者向けガイドラインを参照):
http://thorax.bmj.com/site/about/guidelines.xhtml
 

査読プロセス

編集者による予備審査を通過した投稿論文は査読に回される。各論文につき1名の編集者が割り当てられる。編集者が専門家データベースから適切な査読者を選び、査読プロセスを管理する。統計学専門の査読者に回される論文もある。査読に回される前にリジェクトされる論文も多数。その理由として、独自性に欠ける、科学的欠陥がある、ジャーナルの読者にとっての重要性と関連性に欠ける、挙げられる。


出版方針

とくに潜在的な投稿者に役立つ統計をウェブサイトで紹介している。2015年の「独自研究」カテゴリーの受理率はわずか8%。予備審査で1~3日以内にリジェクトされた論文は全投稿論文の54%。最終決定までの期間(予備審査を通過した投稿論文)は15週間。論文のフルテキスト版・PDF版のページビュー数に基づいてもっともよく読まれた論文が決定され、毎月更新される。詳細はこちら:http://thorax.bmj.com/reports/most-read


インデックスとランキング

最新のインパクトファクター:8.121


Thoraxは、Science Citation IndexCurrent ContentsIndex Medicus (Medline)、Excerpta Medica (Embase)、BIOSIS Previewsに採録されている。


便利なリンク集

ジャーナルのウェブサイト:http://thorax.bmj.com/

著者向けガイドライン:http://thorax.bmj.com/site/about/guidelines.xhtml

編集委員会:http://thorax.bmj.com/site/about/edboard.xhtml

「最も読まれた」論文:http://thorax.bmj.com/reports/most-read

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