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「査読の訓練を、博士課程に取り入れるべきです」

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「査読の訓練を、博士課程に取り入れるべきです」
2016年Sentinels of Science(科学の門番)賞を受賞。医学統計学の教授や上級講師として、ルンド大学(スウェーデン)など複数の学術機関で勤務し、現在は独立統計コンサルタントとして活動している。Osteoarthritis and Cartilage誌の副編集長、British Journal of Surgery誌の統計編集者、Acta Orthopaedica誌の統計コンサルタント、その他複数の国際医科学誌の統計学専門の査読者としても活躍中。自身が運営するブログ「Statistical Mistakes(統計的誤り)」では、医学研究の統計的誤りに関する系統的レビューを行い、既存文献を参照しながら、そのような誤りを防ぐための方法を解説している。

本記事では、PublonsのSentinels of Science(科学の門番)賞受賞者である医学統計学者のヨナス・ランスタム(Jonas Ranstam)氏へのインタビュー後半を紹介します。


研究者は多忙なものですが、その中でもヨナス・ランスタム(Jonas Ranstam)氏はとりわけ忙しい研究者と言えるかもしれません。ランスタム博士は世界でもっとも多くの論文を査読した人物として公式に認定されており、1年間で661本の論文を査読したことがあります。医学統計学者である同氏は、査読者の貢献を称えるためにPublonsが設けたSentinels of Science(科学の門番)賞を2016年に受賞し、最高の査読者の1人として知られるようになりました。今回のインタビューでは、医学統計学から査読まで、幅広いテーマについてお話を伺いました。


ランスタム博士は、フルタイムの研究職から身を引く前は、医学統計学の教授や上級講師として、ルンド大学(スウェーデン)など複数の学術機関に務めていました。現在は医学統計学者として、学術・研究機関、病院、政府機関、企業の臨床学や疫学研究者の統計アドバイザーを務めています。また、その専門性を活かし、Osteoarthritis and Cartilage誌の副編集長、British Journal of Surgery誌の統計編集者、Acta Orthopaedica誌の統計コンサルタント、その他複数の国際医科学誌の統計学専門の査読者として活躍しています。自身が運営するブログ「Statistical Mistakes(統計的誤り)」では、医学研究の統計的誤りに関する系統的レビューを行なっており、既存文献を参照しながら、そのような誤りを防ぐための方法を解説しています。


インタビュー前半では、統計的方法論や再現不可能性の問題についてお聞きしました。後半の今回は、ジャーナル編集者や査読者の立場からお話を伺います。査読者としてのアウトプット、査読者への評価、査読のトレンドの変化、査読に関する不正行為についてもお聞きしました。また、研究者は早い段階で査読の訓練を積む必要があると強調する博士から、その方法についてのアドバイスも頂きました。

世界一多産な査読者として公式に認定されており、2015年10月から2016年9月の間には1日当たり2本の論文の査読を行なっています。ブログの運営やコンサルタント業務、執筆、指導、出張、編集業務などと並行して、これだけの量をどのようにこなされたのでしょうか?査読の時間を減らしたいと考えたことはありますか?

数字だけを見ると膨大な量に思えますが、私には20年以上にわたって培ってきた経験がありますし、通勤もなく、指導や管理業務はごくわずかなので、そこまで大変ではありませんでした。


査読を行う中で、同じようなミスを何度も見かけると気が滅入るのは確かですし、そのようなミスを指摘し、正すよう働きかけることを繰り返しているとイライラすることもあります。その一方で、多くの論文はきちんと書かれていますし、興味深い研究内容は楽しみながら読んでいます。研究をより良くするための指摘を行うという作業は、やりがいのある仕事だと思います。

査読者への報酬は必要だと思いますか?査読者にとって最高の見返りとは何でしょうか。

論文の査読依頼を受けるのは名誉なことだと思っています。これは、国際的な専門家として認められた証拠であり、科学出版に影響を与えるという貴重な機会を与えてくれるものだからです。また、論文を査読することで最近の研究動向に触れられ、方法論の発展の最前線にいることができます。研究者としてこのような見返りがあると思っているので、査読は決して報われない仕事ではありません。


しかしながら、多くの研究者にとって時間は貴重なものです。管理業務が仕事の主な部分を占める医学研究者たちにとっては、なおさらです。査読と管理業務の相互作用は、査読と研究、あるいは査読と指導の関係ほど実りあるものとは言えません。この点から見れば、査読が報われない仕事であるという議論もうなずけます。

あるインタビューで、「可能なら、現役研究者たちのごく当たり前の日常的活動として査読を定着させたい」」と語っておられます。これを実現するにはどのようなことが必要ですか?

査読の訓練を、博士課程の一部に組み込むべきだと考えています。指導教官や上席者が、査読を行う時間を増やすよう働きかける必要があると思います。論文の査読能力を評価するようなシステムがあれば、このようなことも実現できるでしょう。

査読は、科学論文の読み方や理解力にどのような影響を与えていますか?

私は、査読が科学研究を理解する力に変化を与えると確信しており、この変化によってより良い著者になれると考えています。例えば私自身、最初のうちは個別の技術的な問題に注目して査読を行なっていましたが、経験を重ねるにつれ、透明性と一貫性がより重要であることが分かってきました。これは査読だけでなく、論文を執筆する場合にも重要な側面です。

出版後査読やオープン査読といった新たな査読モデルについてのご意見をお聞かせください。

出版前査読は、とくに著者にとっては間違いなく重要です。私自身も、論文を投稿する前は、同僚数人に必ずレビューしてもらうようにしています。その後でジャーナルの査読者から受け取る指摘も、大部分は大変ありがたく受け止めています。


出版後査読やオープン査読などの新たな査読モデルはとても興味深いですね。これらの試みは、透明性に欠けることの多い従来の出版前査読システムにメスを入れるものとして捉えています。

査読に関する不正行為が起きるのはなぜだと思いますか?査読の不正操作を防ぐために、ジャーナル編集者や出版社ができることはあるでしょうか。

不正が起きるのは、不正を起こすことが可能だからであり、危険な抜け道を通ることをいとわない人々がいるからです。これを防ぐには、編集者が自覚を持つことがきわめて重要ですが、査読プロセスの透明性を高めることでも、不正操作のリスクを低減する余地があるでしょう。

編集者として、査読者を見つけるのに苦労した経験はありますか?そのときはどのように対応しましたか?研究者が査読により積極的になるためには、どのような働きかけが必要でしょうか。

これは頻繁に起きる問題で、私自身もシンプルな解決策は持っていませんが、査読に興味を持っている同業者のネットワークを個人的に広げるようにはしています。ルンド大学に勤務していた頃は、査読に関する議論を交わせるようなセミナーや、ジャーナル会員向けのミーティングを開いていました。


主要な国際学会の前にワークショップを開くことは、若手研究者にとって有益かもしれません。多くの若手研究者が興味を持ってくれるのではないでしょうか。

査読者は訓練を受けるべきだと思いますか?この訓練は誰がどのように行うべきでしょうか。

査読では方法論的な問題に焦点を当てることが多いので、統計学者であろうと医者であろうと、査読には方法論的な能力が間違いなく必要です。とは言え、このような訓練はそもそも査読者個人の問題であり、研究者としての成長に関わる部分でもあります。


ジャーナルや編集者が、報告のガイドラインを遵守させるなどして、方法論をより重要視すれば、このような能力を伸ばすことができるのではないでしょうか。そのためには、編集システムの中に、例えば、ガイドラインの遵守チェックや統計計算の検証を行う、テクニカル面での専門家によるサポートを組み込む必要があると思います。

これまでのご経験を基に、査読者たちにアドバイスをお願いします。

以下のようなアドバイスを送りたいと思います:


論文を批判することをためらわないでください。ただし、前向きで丁寧な姿勢を心掛けましょう。論文の不明確/不明瞭/曖昧な部分、未熟な部分について調べ、著者に論文の欠点を説明してください。


また、得られた結果に対する実証的な裏付けが正しく行われているか、著者の結論が分析結果と一致しているかどうかを確認してください。適切な方法論に基づいて統計分析が行われているかを検討してください。分析データが明確に示されているか、研究目的と結びついているかの確認も重要です。著者にあなたのアドバイスが受け入れられなかったとしても、気分を害さないようにしましょう。


 

経験豊かな医学統計学者、ベテラン研究者、熱心なブロガー、世界一多産な査読者のヨナス・ランスタム博士への、内容豊かなインタビューは以上です。ランスタム博士、貴重なお時間を頂き、ありがとうございました!


査読者の指定について

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Question Description: 

査読者の指定が必要(強制)なJournalがあります。これはどのように指定すべきなのでしょうか? 上司が、山のように(断れない)査読が回ってきて御疲れぎみからなのか、よくいわれるのは、「これを知り合いの教授に指定するのは、(ビジネスマナー上) 失礼だ」とのこと 狭い世界なので指定された側からすると、知り合いの論文の査読依頼があれば 「査読者に指定しやがったな。余計な仕事を回しやがって!!」 と思われるのを避けたいというのがあるんでしょうか? 実際マナーやモラル、editorの心象をよくする技術、反対に知合いとの関係維持、どうすれば正解なのか、よくわからないというのが本音です。 Journal HPみても、peer-review がopenかblindなのか情報がないようで、よくわかりません。 よろしくお願いします。

回答

ジャーナルが著者に査読者を指名させることは、通常はありません。著者は、単に査読者の推薦を認められるのが普通です。ジャーナルの中には推薦を必須とするところもあるものの、たいていは任意です。ご質問のケースでは、査読者の推薦が必須とされているとのことですので、査読の適任者の選び方については、同様の質問にお答えした記事「なぜ著者が査読者を推薦しなくてはいけないの?誰を選べばよい?」をご参照ください。


適切な査読者とは、建設的で客観的な見方ができる人物のことです。ご自身の指導教授やスーパーバイザーは、関係が近いがために、甘めのコメントになってしまうかもしれません。したがって、そうした立場の人を推薦することは好ましくないでしょう。


関連記事

Do I need to provide the names of preferred reviewers to the editor?

文献レビューはどの時制で書くべき?

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Question Description: 

「同じ刺激によって同じ結果を得ている2つの論文がある」ことを書く場合、どの時制を使うべきですか?

回答

ご質問は、同一/同様のテーマに関する先行研究を説明するための論文セクション(序論または考察)についてでしょうか。あるいは、文献レビューにおける論文一般についてのご質問でしょうか。


前者の場合、たとえば「Jones (2013) found that....(Jones(2013)は…明らかにした)」のように、単純過去形を使うのが一般的です。文献レビューであれば、複数の時制を使用しても構いません。先行研究のレビューを行うときは、以下のことを考慮して時制を選んでください:
 

  1. 過去形: 焦点を先行研究またはその著者に当てる場合、過去形を使用するのが好ましい。このとき、「Jones (2013) reported that...(Jones(2013)は…と報告した)」のように、先行研究を文の主語にする。過去形がもっとも一般的な形であり「reporting tense(報告時制)」と呼ばれることもある。
     
  2. 現在形: 先行研究について自身の解釈を述べたい場合、「Jones (2013) argues(Jones(2013)は…と論じているが…)」のように、現在形の使用が好ましい。
     
  3. 現在完了形: 最近の研究を引用する場合、「Recent studies have demonstrated that...[Jones, 2015; Pinto 2014](最近の研究では…が行われている[Jones, 2015; Pinto 2014])」のように、現在完了形を使用することがある。また、ある領域における先行研究を総括したいときにも使用する。例: Several researchers have studied these stimuli...(複数の研究者がこれらの刺激について研究している)


これらはあくまで、ほかの研究を引用するときに使う時制を判断するためのヒントであって、規則ではありません。伝えたいことや焦点を当てたいこと、文脈における文法面での妥当性によって、使用すべき時制は変わってきます。あるいは、分野による違いもあるかもしれません。文献レビューで使う時制は、学術ライティングの世界でも頻繁に議論の対象になっています。同様のテーマを扱った外部サイトを以下に紹介します:
 


また、時制の使用に関する以下の記事も参考にしてみてください:
 

論文投稿中に転勤になりました

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Question Description: 

論文を投稿中に転院になり、所属が変わってしまいました。その場合、現在の所属にするべきか、以前のままでよいものいでしょうか?また、以前の所属中の研究で投稿前に転勤になった場合、転勤先の所属にするべきでしょか?

回答

以前の職場の資源を利用して行なった研究であれば、その研究に貢献したのは主としてその職場のはずですから、所属先は以前の職場とすべきでしょう。方法セクションで、この職場を研究の「支援者(スポンサー)」として記載することもできます。


しかし、あなたはもう以前の職場には所属していないので、読者からの質問を受け付けられるように、現在の職場名も追記すべきでしょう。コンタクト先として、現在の職場を登録しておきましょう。2つの職場を、それぞれ「支援者」(以前の職場)、「現在の所属先」(新しい職場)とすることも可能です。


投稿前に転勤になったとしても、同じルールが当てはまります。新しい職場に移ってから論文を書いた場合は、現在の職場の貢献について、謝辞で簡単に触れましょう。


こちらの記事もおすすめです:

How should a change of institute reflect in the author's affiliation?

博士論文とジャーナル論文の9つの違い

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博士論文とジャーナル論文の9つの違い

博士号取得後に博士論文をジャーナル論文として出版することは、論文出版を始めるにあたっての1つの足掛かりとなります。執筆を開始する前に、まずは博士論文とジャーナル論文の違いをよく理解しておくことが重要です。博士論文とジャーナル論文の9つの違いを、図にまとめました。

研究者は、論文の出版という大きなプレッシャーに晒されています。そうした状況において、博士号取得後に博士論文をジャーナル論文として出版することは、論文出版を始めるにあたっての1つの足掛かりとなるでしょう。執筆を開始する前に、まずは博士論文とジャーナル論文の違いをよく理解しておくことが重要です。以下の図は、博士論文とジャーナル論文の9つの違いをまとめたものです。2種類の論文が、学術文献としての存在目的や読者ターゲットという点でまったく異なるものである、ということを理解する一助としてご利用頂ければ幸いです。


※こちらの図は、PDF版の無料ダウンロードが可能です。プリントするなどして、参考資料としてお気軽にご利用ください。
 

9 differences between a thesis and a journal article


博士論文とジャーナル論文の9つの違い

 

博士論文

ジャーナル論文

1. 目的

教育: 知識を示す

進歩: 関連領域への新たな知見の提示、貢献

2. 読者

教育委員会/教授: 学位授与にふさわしいかを審査

多忙な科学者や研究者:裏付けのある実用的な情報を求めている

3. 長さ

長い: 50ページ、20,000ワード程度になることもある

短い: 3,000~6,000ワード程度。分野、ジャーナルによる

ヒント: コピー&ペーストは避け、言い換える

4. アブストラクト

比較的長い: 350ワード程度

比較的短い: 150~250ワード程度

5. 序論(イントロダクション)

より詳細に:先行研究を熟知していることを示し、より広範に背景を組み立てる

より簡潔に: 研究目的に繋がる先行研究の不足点を説明するための情報に限定する

6. 材料および方法

詳細に説明:各アプローチおよび方法論を十分に説明・提示する

選択的に説明:使用した方法論と行なった実験についての詳細のみを説明する

7. 考察

結果を詳細に解説:得られたデータを完全に理解していることを示し、研究の今後の方向性を提示する

結果を明瞭簡潔に解説:主な結果のみについて考察し、研究目的に直結させる

8. 参考文献

包括的リスト:文献目録や用語の定義リストを含む場合もある

選択的リスト: 論文内で引用された文献のみを含める(引用文献数を制限しているジャーナルもある)

9. 付録(Appendix)

必須:論文を完成させるために必要な情報を含める

任意:ページ数制限などにより含めることができない場合もある

 

以下の記事も参考にしてください:

論文発表前の学会発表について

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Question Description: 

論文発表前の研究内容について、先だって海外の学会と日本の学会両方で発表することは問題ないでしょうか?また、国内の別の学会であっても類似した分野をカバーしていると、同様の内容で複数回発表している演題を見ることがありますが、守るべきルールはありますか?

回答

発表前の論文を複数の学会で発表することは可能です。未出版の論文であれば、どこで発表しようと自由です。ただし、アブストラクトを学会論文の一部として提出することは控えましょう。また、学会のアブストラクトを論文の形に整えてジャーナルに投稿することは可能ですが、類似したアブストラクトを複数の学会論文として発表した場合は問題になるかもしれません。同じ論文を異なる学会で発表しても問題ありませんが、その場合は発表タイトルを若干変えるようにしましょう。また、別の学会で同じスライドを使わないようにしましょう。発表ごとにある程度の変更を加えるようにしてください。

 

関連記事:

修正論文投稿後の査読期間やステータスについて

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Question Description: 

Dr. Eddy、初めて質問させていただきます。 今年の3月末にPLOS ONEに論文を投稿いたしました。5月末にはmajor revisionsの連絡をいただき、修正論文を指定期間内の7月頭には投稿いたしました。その後2カ月ほど経つのですが、連絡もなく、ステータスも「Manuscript Submitted to Journal」から変わりません。同じ雑誌に投稿した人の話を聞いていると、夏季休暇があったことを考慮しても反応が遅めな気もします。一度雑誌に問い合わせをした方がよいでしょうか。

回答

修正論文を投稿してから2ヶ月が経過しています。この程度の期間がかかるのは、とくに珍しいケースではありませんが、一度問い合わせてみても良いと思います。査読プロセスをより積極的に進めてもらうためには、著者側から編集者への一押しが必要な場合がありますので、今すぐジャーナルに問い合わせてみましょう。論文の現在のステータスはどうなっているのか、また、いつ頃ステータスが更新される見込みであるのかを、尋ねてみてください。

 

関連記事:

査読状況の丁寧な問い合わせ例文は?

論文が、いつも査読以前にリジェクトされてしまうのはなぜですか?

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Question Description: 

投稿した論文が査読に回らず、いつも編集長にリジェクトされてしまいます。リジェクトの理由も、英語の問題を除いて明確な説明をされたことがありません。アドバイスをよろしくお願いします。

回答

このようなことが繰り返されているなら、論文の質に決定的な問題があるのだと思われます。一度、指導教官にアドバイスを求めてみてはいかがでしょうか。または、専門の校正サービスの力を借りてみてください。そうすれば、論文の問題点を特定でき、改善するための助言が得られるはずです。エディテージにも論文校正サービスがあるので、ぜひ検討してみてください。

 


ピアレビュー・ウィーク2017に参加しよう!

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ピアレビュー・ウィーク2017に参加しよう!

ピアレビュー・ウィークは、さまざまな機関が集まり、査読をテーマとして継続的なディスカッションを行うための世界的イベントです。今年のテーマは「Transparency(透明性)」。期間中は、さまざまなテーマに焦点を当てたイベントが開催されます。

ピアレビュー・ウィークは、学術出版において中心的役割を果たしている「査読(ピアレビュー)」に光を当てるための、世界的なイベントです。201791117に開催される本イベントの今年のテーマはTransparency(透明性)」。期間中は、査読の重要性に関する啓発、編集者や査読者の仕事、研究内容のシェア、最善の出版慣行の理解、最新の動向など、さまざまなテーマに焦点を当てたイベントが催されます。


エディテージ・インサイトとピアレビュー・ウィーク2017

エディテージ・インサイトは、ピアレビュー・ウィーク2017の組織委員会の一員であり、 8th International Congress on Peer Review and Scientific Publication (第8回査読と科学出版に関する国際会議:9月10~12日、米シカゴ)での出展も行います。そのため、ピアレビュー・ウィーク中は、査読に関する重要な議論やキーパーソンの意見をリアルタイムで聴くことができます。私たちは、ピアレビュー・ウィークの支援者としてさまざまな活動に参加し、査読に関する最良のリソースと最新の情報を皆様にお届けします。


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·         エディテージによるピアレビュー・ウィークの総括(期間終了後)

 

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大幅修正の判定を受けた論文の採択率はどれくらいですか?

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論文を投稿したジャーナルの編集者から以下のメールを受け取りました:


「査読者からのコメントを踏まえると、貴論文を出版するためには大幅修正(Major revisions)が必要であると考えます。論文の修正に当たり、添付した査読者のコメントをよく検討し、各コメントへの回答をリストにして提出してください」。


大幅修正を行なった論文の採択率はどれくらいですか?今回の論文では、1人の査読者から小幅修正(minor revisions)を、その他の査読者たちから大幅修正を求められています。

 

回答

修正論文の採択率は、ジャーナルや分野によって異なります。また、ジャーナルの採択率から個別の論文の判定を予測することは不可能です。今回の場合、1人の査読者から小幅修正、ほかの査読者たちから大幅修正を求められているとのことですが、指摘をすべて解消できれば、アクセプトされるチャンスは十分にあるでしょう。ただし、編集者も述べているように、査読者のコメントについてよく検討し、それぞれに回答を用意する必要があります。可能な限り、査読者の指摘に沿うようにしましょう。もっと実験を行うように言われているなら、そうすべきです。もちろん、同意できない指摘に従う必要はありませんが、その場合は、同意できない理由を、エビデンスを添えて説明しなければなりません。返答は、丁寧かつ礼儀正しく行いましょう。


以下の記事も参考にしてください:

イスラエルが韓国を抜き、世界一の研究開発投資国に

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イスラエルが韓国を抜き、世界一の研究開発投資国に

OECD(経済協力開発機構)の発表によると、これまで科学研究費のGDP比率が世界でもっとも高かったのは韓国でしたが、イスラエルがそれを上回りました。背景には、独創的なプログラムの存在があったようです。

2017年2月7日、パリに本部を置くOECD(経済協力開発機構)が、OECD加盟国の2015年の研究開発投資に関するデータを発表しました。発表によると、イスラエルはGDP(国内総生産)の4.25%を研究開発に投資しており、これは世界でもっとも高い割合でした。


これまで科学研究費のGDP比率が世界でもっとも高かったのは韓国でしたが、2016年は4.23%で、わずかにイスラエルに及びませんでした。今回のイスラエルの結果を後押ししたのは、ヘブライ語で”イニシアチブ”を意味する「Yozma」と呼ばれる政府プログラムでした。このプログラムが海外の投資家の興味を引き付け、OECDいわく「イスラエルの長きに渡るイノベーション政策史上、もっとも成功した独創的プログラム」となったのです。


とは言え、基礎研究への投資に関しては、韓国が引き続き世界をリードしています。OECDは基礎研究を「直ちに応用できる方法が明らかではない、新たな知見を得るための研究」と定義していますが、韓国の基礎研究への投資比率が0.73%であるのに対し、イスラエルは0.39%でした。イスラエルは、2017年にはこの比率を5%まで引き上げるという目標を掲げています。


OECDは、中国の動向にも触れています。中国の研究開発投資は、著しい経済成長に伴って、1%未満(2000年)から2.1%(2015年)まで上昇しています。研究開発投資額では、米国が引き続き主役を演じており、全OECD加盟国の総額の40%を占めています。また、今回の報告で浮き彫りになったもう1つの傾向は、政府と産業界による研究開発投資のバランスが変わりつつあるということです。産業界からの投資(2015年は61%)が増加傾向である一方、政府からの投資は31%から27%に落ち込んでいます。


関連記事:

Korea: An emerging Asian superpower in science, technology, and innovation

韓国科学出版界が直面する課題

Interview with Dr. Sun Huh: Vital resources and tips for science editors of Korean journals

参考記事:

Israel edges out South Korea for top spot in research investment

How Israel is leading the world in R&D investment

Israel invests more in R&D per capita than any other country, study shows

Under review→Reviewer invitedになってました。

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Question Description: 

Dr.Eddy 初めて質問させて頂きます 投稿論文のレビュー状況のステータスを 確認したら、「Under review」の表示から「Reviewer invited」に変わっていました。 これまでのステータスの経過は、 6月18日 Manuscript Submitted 6月20日 with Editor 6月28日 Reviewer invited 7月4日 Under review 9月7日 Reviewer invited だったのですが、再び「Reviewer invited」になったということは、新たな査読者を募っているということなのでしょうか?

回答

おっしゃる通り、編集者は、あなたの論文をほかの査読者にも送ることにしたということです。一般的に、査読コメントが根拠に欠けていたり、相反する査読コメントが出たりした場合は、さらなる査読が行われます。


ジャーナルの査読プロセスにおいて、これはきわめて普通のことです。編集者があなたの論文を別の査読者に送ることに決めたこと自体は、悪いことではありません。これは、編集者が結論を急ぐことなく、あなたの論文に公正な判断が下されるよう努めていることを示しているからです。ですので、心配はいりません。編集者は、確信を得てから論文に判定を下そうとしているのですから、これはあなたにとって良いことと言えます。


こちらの記事もお勧めです:

How long will it take for the journal to reach a decision on my revised submission?

英語の「the」を正しく使えるようになる方法を教えてください。

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Question Description: 

論文を担当してもらっている編集者から、英語表現を改善するよう求められています。具体的には、「the」の使い方を指摘されており、しかるべき場所に「the」が抜けていたり、誤用が散見されるとのことです。

回答

科学論文を英語で書くことは、非英語ネイティブの著者にとって難しい作業だと思います。編集者からのこのような指摘は、英語の文法やライティングスキルを伸ばす上で貴重な機会です。とは言え、英語力は一朝一夕で身に付くものではないので、今回の論文については英語ネイティブの友人や同僚に校正をお願いするのが得策でしょう。または、プロの英文校正サービスを利用するのも一案です。エディテージもこのようなサービスを提供しています: https://www.editage.com/editing-services/manuscript-editing.html


同時に、一般英語とサイエンティフィック・ライティングにおける定冠詞「the」の使い方について、インターネットで調べてみましょう。指南動画や練習問題など、さまざまな情報が見つかると思います。日常的に文法を学ぶようにすれば、数ヶ月後には明らかな上達が望めるはずです。


定冠詞の使い方を説明しているサイトの例を紹介します:

https://owl.english.purdue.edu/owl/resource/540/01/

http://www.englishgrammar.org/definite-article/

http://english.stackexchange.com/questions/62467/definite-article-before...


また、歌で定冠詞の使い方を説明している楽しい動画もご覧頂けます。

 

 

ヒンダウィ(Hindawi)社が国際STM出版社協会からの離脱を表明

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ヒンダウィ(Hindawi)社が国際STM出版社協会からの離脱を表明

オープンアクセス出版社のヒンダウィ社が、国際STM出版社協会からの離脱を決めました。同社CEOのポール・ピーターズ氏は、「STMは過去のビジネスモデルを守ることに力を入れており、新たなモデルの発展に消極的である」ため、今回の決定に至ったとしています。

最大手のオープンアクセス専門出版社の1つであるヒンダウィ・パブリッシング・コーポレーション(Hindawi Publishing Corporation)が、国際STM出版社協会からの離脱を決めたと発表しました。同社CEOのポール・ピーターズ(Paul Peters)氏は、「STMは過去のビジネスモデルを守ることに力を入れており、新たなモデルの発展に消極的である」ため、今回の決定に至ったとしています。この決断は、科学的知見をオープンにしようという同社の理念をベースにしたものと見られます。オープンアクセスのムーブメントが学術界を席巻する中、経済的な持続可能性や透明性などに関する課題は、依然として残っています。


国際STM出版社協会は、学術関係者や編集者のための国際事業者協会として業界をリードし、学会、大学出版局、民間企業、新旧の団体など、21ヶ国から120を越えるメンバーが所属しています。同協会は、オープンアクセス化の動きを支援する立場を取ってはいるものの、新しいモデルを取り入れることへの抵抗があるとピーターズ氏は言います。「残念ながら、事業者団体が必ずしも変化の進行役として機能するわけではありません。なぜなら、所属会員が長らく頼ってきた従来のモデルを保護することに固執してしまうからです」。


デジタルサイエンス社の出版イノベーション・ディレクター、フィル・ジョーンズ(Phill Jones)氏は、この問題について、「国際STM出版社協会は、メンバーの合意によって動いているため、重大な決断を早急に下すには時間を要する」と、ある記事で指摘した上で、「巨船の舵を取るようなもので、良い提案でも、それが受け入れられるのに必要以上に時間がかかることもある」と述べています。また、同氏はヒンダウィ社の今後について、同社の理念をより強力に支持する組織と連携を取る可能性や、独立した支援勢力として役割を果たす可能性もあるだろうと見ています。


ピーターズ氏は、協会からの離脱を決めたものの、協会がオープンアクセス移行の流れに向き合う意欲を示せば、関係を再び結び直す意思があることを、自身の投稿の中で表明しています。また、ジョーンズ氏は次のように語っています。「ヒンダウィ社の行動は、STMに向けられたメッセージに留まらず、進化し続ける企業が、移りゆく市場の中で独立したポジションを築いていく象徴なのかもしれません」。


参考記事:

Why Hindawi Left the STM Association and What It All Means for the Industry

Hindawi’s Decision to Leave the STM Association

Publisher Hindawi leaves the STM Association over its resistance to open access change

uniformityとhomogeneityの違い

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Question Description: 

論文中に以下の記述があったのですが、non-uniformityとnon-homogeneityの違いがよく分かりません。

回答

文脈や研究分野が不明なため、具体的にお答えするのは困難ですが、一般的に言って、"non-uniformity"はサイズや形状等が違っている場合に使うのに対し、"non-homogeneous"は、異なる物質でできている場合に使います。


「オルメトリクスで研究のインパクトを測るのは時期尚早です」

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「オルメトリクスで研究のインパクトを測るのは時期尚早です」
トゥルク大学教育社会学研究ユニット(RUSE)ポスドク研究員、ウォルバーハンプトン大学統計サイバーメトリクス研究グループ名誉主任研究員、オーボ・アカデミー大学情報学部准教授。オルメトリクス、ウェボメトリクス、サイエントメトリクス(科学計量学)、Web 2.0、Library 2.0、教育におけるバーチャル世界について研究している。また、ウェブ一般や特定のソーシャルメディアで起きるさまざまな現象について、定量的手法を用いた研究も行なっている。学術論文、共著、学会議事録の執筆経験があり、専門分野であるソーシャルメディア時代におけるオルメトリクスと情報交換をテーマとした書籍を出版している。

現在、多くの人が何らかの目的でTwitter、LinkedIn、ResearchGate、MendeleyなどのSNSを利用しています。ソーシャルメディアを活用することで研究者が受けられるさまざまな恩恵について語られることも増えています。今回のインタビューでは、ソーシャルメディアを用いた研究者同士のオンライン交流についての調査や、研究のインパクトを測るためのオルメトリクス(altmetrics)のポテンシャルの把握に情熱を注ぐ、トゥルク大学教育社会学研究ユニット(RUSE)ポスドク研究員、キム・ホルムバーグ(Kim Holmberg)博士にお話を伺います。同氏はウォルバーハンプトン大学統計サイバーメトリクス研究グループ名誉主任研究員、オーボ・アカデミー大学情報学部准教授も務めており、オルメトリクス、ウェボメトリクス、サイエントメトリクス(科学計量学)、Web 2.0、Library 2.0、教育におけるバーチャル世界について研究しています。また、ウェブ一般や特定のソーシャルメディアで起きるさまざまな現象について定量的手法を用いた研究も行なっています。学術論文、書籍(共著)、学会議事録の執筆経験もあり、専門分野であるソーシャルメディア時代におけるオルメトリクスと情報交換をテーマとした書籍も出版しています。


本インタビューでは、研究者のネットワーク構築や機会の創出に、ソーシャルメディアプラットフォームがどのように役立つかについて伺います。学術コミュニティではオルメトリクスの理解や探求が始まったばかりなので、研究が社会に与えた影響を測る絶対的な指標としてオルメトリクスを用いるのは時期尚早であるというお話は、とくに印象的でした。また、被引用数ベースの指標の主な問題点や、SNSの使用で研究者が犯しがちな初歩的ミスについてもお聞きしました。

とても興味深い研究を行われています。それぞれの研究について、詳しく教えて頂けますか?

私の研究対象はすべて、ウェブと定量的研究方法の2点に繋がっています。基本的には、オンライン上で発生するさまざまな現象について、定量的評価を中心とした研究を行なっています。研究・出版コミュニティがオンラインで生産/シェアしている膨大なデータ量を考えれば、定量的評価を行うのは当然の流れと言えます。具体的に言うと、現在はオルメトリクスに興味を持っています。オルメトリクスとは、オンライン上の学術コミュニケーションを調査するツールで、研究のアウトプット(論文、データ)がどのように議論され、シェアされ、言及されているかを測定し、これらの結果が、学術界の枠を越えた広範な聴衆からどのような注目を集めているかを教えてくれる指標です。

研究者のTwitterの活用方法について、明確な特徴のようなものはありますか?

研究者のTwitter活用法について、明確な特徴というものはないと思います。Twitterは、仕事で使う人もいればプライベートで使う人もいますが、大半は両方の目的で使用しています。この二重性によって、研究者のTwitter活用法だけを取り出すことが難しくなっています。

研究領域によってソーシャルメディアの利用法に違いはありますか?

はい、我々が発表した「Disciplinary differences in Twitter scholarly communication(Twitterを用いた学術コミュニケーションの研究領域による違い)」という論文で、学術コミュニケーションのためにTwitterをより多く利用している研究領域があることを明らかにしました。すべての分野について分析を行なったわけではありませんが、領域によって研究者のTwitter利用に明確な違いがあることが分かったのです。この結果から、Twitterに関するオルメトリクスは、分野の標準化を行う必要があることも提言しました。[Holmberg, K. & Thelwall, M. (2014). Disciplinary differences in Twitter scholarly communication. Scientometrics, vol. 101, no. 2, pp. 1027-1042. DOI:10.1007/s11192-014-1229-3.]

研究者同士のコラボレーションを容易に、また可能にするために、ソーシャルメディアはどのような役割を果たすでしょうか?

研究者同士のコラボレーションを容易かつ可能にするために、ソーシャルメディアは重要な役割を担っています。学術関係者向けのSNSや文献管理ツールを通して、同じ研究分野の研究者を探すことができますし、これらのプラットフォームのアルゴリズムは、ユーザーの論文に似た論文を抽出できるように設計されているので、ほかの研究者と繋がりやすくなります。また、ソーシャルメディアは、プラットフォーム上での自由な議論や、共同執筆などのコラボレーションを可能にします。

ソーシャルメディアの使用経験が浅い研究者が犯しがちなミスには、どのようなものがありますか?

ソーシャルメディアを利用している研究者にまず覚えておいてほしいのは、これらのプラットフォームの多くは、(初期設定では)不特定多数に公開されており、書き込みやシェアしたものは全員が閲覧可能であるということです。非公開グループの作成や、投稿を閲覧できる人を限定できるプラットフォームもありますが、情報を共有している相手を常に把握し続けることは難しいかもしれません。私の場合、Facebookのアカウントは全員に公開しています。このため、非公開のグループに共有するような情報は投稿せず、私が発信する情報を誰もが目にする可能性があることを念頭においています。この意識があれば、発言に気を配りますし、適切なコミュニケーションを取ることができます。また、目的に合わせてそのプラットフォームをより効果的に使えるようになります。

ソーシャルメディアの利用については、研究者のみに焦点が当てられがちです。学術機関、図書館、助成団体、ジャーナル、出版社など、学術出版コミュニティのほかのメンバーがSNSを有効活用するには、どうしたらいいですか?

それらの機関は、すでに画期的な方法でソーシャルメディアを活用していると思います。図書館はその最前線に位置しており、支援者との繋がりや提供するサービスの宣伝のためにソーシャルメディアを利用し、Library 2.0と呼ばれる現象も数年前に話題になりました。この現象は、オルメトリクスが登場する以前のものです。図書館は、ソーシャルメディアを利用して、論文などの学術的成果物の宣伝を行い、学術イベント(学会、講義、講演、セミナーなど)の情報をシェアし、支援者、クライアント、聴衆、出資者と交流を図る術を知っています。

研究のインパクトを測るために現在使われている代替指標(オルメトリクス)には、どのようなものがありますか?その指標の有効性についても教えてください。

オルメトリクスは発展途上であり、現時点で研究のインパクトを測れる指標は存在しないと考えています。研究のインパクト指標としてのオルメトリクスへの我々の理解も不十分です。モントリオール(カナダ)、ライデン(オランダ)、ウォルバーハンプトン(英)、ブルーミントン(米)、トゥルク(フィンランド)の研究機関では、この指標をテーマにした研究が数多く行われていますが、データの品質やインパクト測定の基準について解決すべき問題は山積みです。オルメトリクス・データの標準化についても課題があります。オルメトリクス(Twitter、Reddit、Facebookでの論文に対する言及数など)が何を反映しているのか完全に理解するには、シェアまたはツイートで言及した人物が何を伝えたかったのか、どの文脈でシェアをしたのか、といったことを把握できる信頼性の高いシステム作りが必要です。オルメトリクスは、研究がオンラインでどれだけ注目を集めたかを示す指標としては最適だと思います。加えて、学術界の外でどれだけ注目されたかも分かるので、被引用数のみでは測れない研究のインパクトを知ることができます。また、研究がどのようにシェアされ、誰によって話題にされているのか、といった研究のストーリーを作るためにも利用できます。しかしながら、信頼できる代替指標あるいは研究の評価指標として利用するには、まだまだ研究を積み重ねていく必要があるでしょう。

オルメトリクスの知名度は日に日に増していますが、使用を躊躇している研究者もいるようです。研究のインパクト指標として、研究者がオルメトリクスに抱きがちな誤解はありますか?これはどのように解消できるでしょうか。

問題の1つは、「オルメトリクス」と一口に言っても、その中には、研究に関する言及を追跡するためのプラットフォームやソースが広範囲に含まれているということだと思います。研究の評価を目的とした場合、信頼できるソースもあれば、使用すべきでない情報も含まれている可能性があるのです。異なるプラットフォームやソースを区別する必要があるということへの理解が重要でしょう。また、Twitterは膨大なデータを含むソースではありますが、これが唯一のソースでもなければ、もっとも信頼できるソースでもないことを理解しておいてほしいと思います。

被引用数をベースにした指標の問題点は何でしょうか?また、代替指標(オルメトリクス)の弱点は何だと思いますか?

被引用数ベースの指標には、基本的に3つの問題点があります。1つ目は、研究論文のみに焦点を当てているということです。デジタル時代である現在、研究のアウトプットは、論文以外にもデータセット、プレゼンテーション、コンピューターコードなど、さまざまな形で存在しています。これらすべてのアウトプットを、科学に貢献しているものとして考慮すべきですが、いまだに論文のみが「重要」とみなされています。また、研究領域によっても出版や引用の文化が大きく異なっており、学術誌での論文出版よりも、書籍や学会議事録を出版する頻度が高い領域もあります。


2つ目の問題は、時間軸と関係しています。学術コミュニケーションは、研究計画を練る段階から、他者が引用できる論文を出版するまで、長い時間を要することがあります。被引用数を基に研究のインパクトを測る場合、引用数が十分に蓄積されるまで数年間待つか、論文が掲載されているジャーナルのインパクトファクターを基に判断するかのどちらかです。前者は、当然過去の成果物になってしまっており、後者は、その論文の将来的なポテンシャルを予測したものにすぎません。


3つ目の問題は、被引用数は、研究者だけが影響を及ぼすことができる数値であるということです。すなわち、科学コミュニティ内で論文が引用された回数を測っているだけなのです。これは、研究の科学的インパクトを示してはいますが、経済、保健、文化、教育、環境といったより広い社会に与える影響を示す需要が高まっている中では、不十分と言えるでしょう。


代替指標(オルメトリクス)の現状での弱点は、主にデータ品質に関連するものでしょう。NISO(米国情報標準化機構)などがこの課題に取り組んでいますが、やるべきことはまだたくさん残っています。もう1つの弱点は、オルメトリクスがカウントするそれぞれの発言やシェアの文脈が分からないことです。つまり、それが称賛されているのか、批判されているのかの判断ができないのが現状です。

研究のインパクトを測るための最良のアプローチは何でしょうか。

査読でしょう。査読だけが、研究のインパクトを適切に評価できるものだと思います。しかし、査読は大規模に行えるものではありません。できないことはないのかもしれませんが、莫大なコストが掛かってしまいます!したがって、別の手段が必要なのです。被引用数ベースの指標では、査読を援護することができますし、(現状の)オルメトリクスでは、興味深い研究や、査読者がより注目すべき研究をあぶり出すことができます。

研究者が利用する上でより効果的なオンラインプラットフォームは、Twitterなどの広範なものと、ResearchGateなどの研究者向けのもの、どちらだと思いますか?

これは「効果的」の定義によって異なります。幅広い聴衆と繋がるという意味で効果的と言うなら、Twitterでしょう。ほかの研究者に自分の論文をシェアし、、専門が同じ研究者と繋がるという意味なら、学術関係者向けのSNSや文献管理ツールをお勧めします。すべては、自分が何を達成したいかによります。先述したように、研究者がソーシャルメディアを利用する目的はさまざまなのです。

ソーシャルメディアと研究コミュニティの関係は、今後どのように発展していくとお考えですか?

ソーシャルメディアは現代社会に定着しており、私たちもそれを受け入れています。しかし、不変のものなどありません。あるプラットフォームが衰退し、それに代わるものが出現するかもしれません。近い将来、より多くの研究者がソーシャルメディアのメリットを理解し、それぞれの目的でそれを利用し始めるでしょう。



ホルムバーグ博士、学術コミュニケーション界に出現した新たなテーマについて、数々の興味深い視点を共有頂き、ありがとうございました!

査読者に指摘された点を修正すれば、論文はアクセプトされますか?

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Question Description: 

論文投稿先から次のメールが届きました。


「弊誌に投稿頂いた上記論文の査読が完了しました。本メールの下部に査読者からのコメントを記しました。以下の指摘を修正する意思がある場合は、修正版をぜひ弊誌に再投稿ください」。


査読者からのコメントを見ると、「論文を査読に回す前にいくつか修正が必要です」と書かれていました。編集者は「査読が完了した」と言っているのに、査読者は「査読に回す前に修正が必要」と言っており、混乱しています。これはどういう状況なのでしょうか?

回答

ジャーナルから届いたメールは、同誌が論文の修正版を検討する意思があることを示しています。これは、ジャーナルが論文を修正して再投稿するよう求めていると受け取っていいでしょう。ただし、指摘された修正を行えば必ずアクセプトされるということではありません。確かなのは、ジャーナルがあなたの論文に興味を持っているということだけです。


「論文を査読に回す前に修正が必要」という査読者のコメントは、修正版を再投稿すると、論文は再び査読に回される、という意味です。状況をまとめると、論文の査読は完了しており、査読者からのコメントもあなたに送られています。指摘された部分を修正して再投稿すれば、論文は再び査読に回されます。ほとんどのジャーナルがこのような手順を踏んでいます。


査読者のコメントを慎重に検討し、必要な修正を可能な限り行い、同じジャーナルに再投稿することをお勧めします。その際、各コメントへの回答を記したresponse letterあるいはrebuttal letter(反論の手紙)を添えることをお忘れなく。

「この論文が正しいなら、現在の経済学は成り立たない」

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「この論文が正しいなら、現在の経済学は成り立たない」

学術出版の最前線で戦っている人々にとって、厳しいフィードバックは日常茶飯事です。ノーベル経済学賞受賞者のジョージ・アカロフ氏も、キャリアの最初の頃は、論文のリジェクトという学術界の厳しい洗礼を受けていました。

If this is correct, economics would be different(この論文が正しいなら、現在の経済学は成り立たない)」。この言葉は、Journal of Political Economy(1970年頃)の編集者が、ジョージ・アカロフ(George Akerlof)氏に宛てたリジェクト通知の冒頭に書かれていました。マサチューセッツ工科大学で博士号を取得したばかりだったアカロフ氏は、学術出版の現実を早くも思い知らされることになったのです。「The Market for Lemons(レモン市場)」と題した同氏の論文は、それ以前にも、考察が「平凡」であるとして、経済学のトップジャーナル2誌(American Economic ReviewReview of Economic Studies)にリジェクトされていました。


学術出版の最前線で戦っている人々にとって、このようなフィードバック(さらなる酷評も多い)は、日常茶飯事です。しかしアカロフ氏は、「中古車販売に関するありふれた議論をしているにすぎない」という査読者の判定は正しいものだと、潔く認めたのです。結局、論文はQuarterly Journal of Economicsで出版され、「売り手は買い手よりも多くの情報を持っている」というごくシンプルな問題(情報の非対称性)を論じたことで、2001年のノーベル経済学賞を受賞しました。


私たちは、この逸話をジャーナル出版における査読本位システムを打破する武器として使いたい、という気持ちを抑えなければなりません。論文出版の栄光という約束の地を守る門番たちは、重箱の隅をつついてくるものです。それでも、このような存在は必要なのです。アカロフ氏の苦難は、否定的/批判的なフィードバックを受けたとしても、その失敗を認め、尊重できるような神経の図太さを身に付けなければならない、という教訓として心に留めておきましょう。


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テキストの引用について。

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物理学の翻訳の依頼をしています。中学や高校の教科書に載っている物理現象の内容を論文に引用しました。この場合、参照引用を記載する必要があるのでしょうか。 この場合、昔の研究者の論文を捜して、エンドリストの参照番号を付ける必要があるのでしょうか。

回答

引用文献や参考文献については、使用したすべてのソースに触れるというのが一般的なルールです。ただし、分野の共通認識とみなされている基本的コンセプトについて言えば、ソースに触れる必要はないでしょう。例えば、ニュートンの法則を使ったとしましょう。これは、物理学分野の人なら誰もが知っている基本的知識なので、高校の教科書を引用する必要はありません。


しかし、教科書に載っているニュートンの法則の説明の仕方に何か特筆すべきユニークな点があるのなら、引用すべきでしょう。


2つめの質問ですが、文献レビューは、自身の論文のテーマに関連のある過去のすべての文献を対象に行なった上で、イントロダクションに簡単な文献レビューを書かなければなりません。これらの文献をすべて引用して、番号を振った参考文献リストを文末に掲載し、それが使用したすべてのソースであることを示しましょう。


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初めて質問させていただきます. 5月の終わりに論文を投稿したところ,うまく進んだのか,7月初めにはステータスがunder reviewになりました.しかし,それから約2週間後の7月終わりにはreviewers assignedに戻ってしまいました.その後,8月中旬にステータスは変わらず,status dateのみが更新されました.おそらく査読者にeditorが催促したものと思われますが,それから1か月経過してもステータスに変化がありません. 投稿してから4ヵ月になろうとしているので,そろそろこちらからの問い合わせを考えています.問い合わせるとしたら,まずどこに連絡すべきか教えて頂けないでしょうか?

回答

ステータスが"under review"から"reviewers assigned"に変わったということは、編集者があなたの論文を別の査読者に送ることに決めたということです。これにはいくつかの理由が考えられます。最初の査読者の状況が変わってレビューにあてる時間がなくなったか、あるいは利益相反の懸念が浮上したのかもしれません。もしくは、論文にざっと目を通してみて、専門外だと感じた可能性もあります。


ステータスは変わらないまま日付だけが変わったのは、編集者があなたの論文をチェックするためにデータベースにアクセスしたということです。(これは、査読者がアクセスしたかどうかを確認するためかもしれません。)


投稿から4か月たつということですので、ぜひとも問い合わせをしてみるべきです。編集者の連絡先が分かっているのであれば、編集者に直接連絡してみましょう。ジャーナルのウェブサイトに編集者のEメールアドレスが掲載されていない場合は、編集部宛てにメールを出してみましょう。ジャーナルによっては、オンライン投稿システムを通じた問い合わせしか受け付けていないこともあります。その場合は、オンライン投稿システムから送るしかありません。


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