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「ビブリオメトリクス分析の誤用により、科学者は研究よりも点数稼ぎに走ってしまうのです」

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「ビブリオメトリクス分析の誤用により、科学者は研究よりも点数稼ぎに走ってしまうのです」
1983年からクラリベイト・アナリティクス社(旧トムソン・ロイター、知的財産およびサイエンスビジネス部門)で引用分析官を務める。大学と大学院で古代史を専攻した後、科学情報研究所(ISI)に翻訳者兼索引製作者として入所し、ISIの創始者であるユージーン・ガーフィールド(Eugene Garfield)氏の研究プロジェクトに参加(同研究所は1992年にトムソン・ロイターが買収)。1987年にThe Scientist誌の研究部門を開設し、その2年後にはクラリベイト・アナリティクスのリサーチサービス・グループに参加。ニュースレターScience Watchの発刊にも尽力した。同社リサーチグループのメンバーとして、世界の研究界における学術出版のトレンドや引用データを提供するデータベース、Essential Science Indicatorsの開発にも携わった。連邦政府機関や世界中の学術機関、企業、科学出版社などとの仕事において豊富な経験を持つ。

デイビッド・A・ペンドルバリー(David A. Pendlebury)氏は、1983年からクラリベイト・アナリティクス社(旧トムソン・ロイター、知的財産およびサイエンスビジネス部門)で引用分析官を務めています。大学と大学院で古代史を専攻した後、科学情報研究所(ISI)に翻訳者兼索引製作者として入所し、ISIの創始者であるユージーン・ガーフィールド(Eugene Garfield)氏の研究プロジェクトにも参加しました(同研究所は1992年にトムソン・ロイターが買収)。1987年にThe Scientist誌の研究部門を開設、2年後にはクラリベイト・アナリティクスのリサーチサービス・グループに参加し、ニュースレターScience Watchの発刊に尽力しました。同社リサーチグループのメンバーとして、世界の研究界における学術出版のトレンドや引用データを提供するデータベース、Essential Science Indicatorsの開発にも携わりました。連邦政府機関や世界中の学術機関、企業、科学出版社などとの仕事において、豊富な経験を持っています。


研究のインパクトを理解することはきわめて重要です。急速に変化を遂げる今日のデジタル化された学術出版業界では、研究のインパクトを評価する人々に新たな機会と挑戦が与えられています。今回のインタビューでは、ビブリオメトリクス(計量書誌学)に焦点を当て、クラリベイト・アナリティクスでの仕事についてお話を伺いました。また、同社が創設した、引用分析に関するイノベーションに贈られるユージーン・ガーフィールド賞についてもお聞きしました。


クラリベイト・アナリティクスのコンサルタントとしての主な責任はどのようなものですか?また、クラリベイト・アナリティクスの「Essential Science Indicatorsデータベースの開発の経緯について詳しく教えてください。

私は、情報の検索、研究の評価、科学の監視における引用分析の可能性と有用性を伝えることに力を入れています。Essential Science Indicators(ESI)は、2000年頃に当時のトムソン・サイエンティフィックでディレクターをしていたヘンリー・スモール(Henry Small)氏率いる研究開発チームによって開発されました。ESIは、誰もが簡単にアクセスできることを目的に、22の研究分野における論文、個人、組織、国、ジャーナル単位の出版・引用に関する10年分の統計データをデータベース化したものです。また、過去5年間に出版された被引用数が多い論文の共引用分析によって同定される、リサーチフロント(先端研究領域)に関する重要なデータも含まれています。共引用分析では、頻繁に共引用される論文間の類似性を見いだすことができます。論文の共引用関係の科学的分析・解析によるリサーチフロントの同定は、1970年代から1980年代にかけてスモール氏が開発した手法です。ESIのデータは2ヶ月に一度アップデートされており、類似サービスの中でも最新の重要研究情報がキャッチできるデータベースとして知られています。ESIは現在、インパクトファクターを含むJournal Citation Reportsを搭載するInCitesプラットフォームの一部になっています。このプラットフォームは、我々のWeb of Scienceのデータを使用して、多元的な研究評価と指標化を行うための出版/引用データをユーザーに提供しています。これらのツールやデータは、研究の構造や力関係に関する実態や、重要分野、成長が著しい分野、トップの業績を挙げている研究者を明らかにしながら、情報の検索・発見の支援を目的として設計されています。

ノーベル賞受賞者の予測などの特殊なプロジェクトにも取り組んでおられます。この点についても教えて頂けますか?

ユージーン・ガーフィールド(Eugene Garfield)氏がScience Citation Indexを開発した当初から、ノーベル賞を受賞するようないわゆるエリート科学者と平均的な科学者の間には、有意な差があることが我々のデータから明らかでした。ガーフィールド氏は(わずか数年分のデータで)1965年に、ノーベル賞受賞者は平均的な研究者と比べておよそ5倍の論文を出版し、被引用数は30~50倍であることを示しています。また、受賞者の大半は、専門分野での被引用数が上位0.1%という「古典」論文を少なくとも1本は発表していることも明らかにしました。クラリベイト・アナリティクスの研究者が、ノーベル賞の対象研究分野(医学・生理学、物理学、化学、経済学)における被引用数がきわめて高い(2000以上)論文をリストアップし、その著者や論文の内容、著者のノーベル賞受賞歴の有無を調べたところ、受賞歴がある場合が多いことが分かりました。その後、スウェーデン訛りの英語を話す人からの吉報をまだ受けていない研究者による被引用数の高い論文への注目を続けています。被引用数の多さと、受賞という形での仲間からの評価に相関があるのは、当然と言えるでしょう。どちらも仲間からの高評価が反映された結果であり、前者が定量的、後者が定性的な評価の結果なのです。

読者のために、ビブリオメトリクス(計量書誌学)とサイエントメトリクス(科学計量学)の違いについて解説して頂けますか?

ビブリオメトリクス(Bibliometrics)の由来は、ギリシャ語の「biblios(本/巻物)」と「metron(計量)」という言葉です。したがって、ビブリオメトリクスとは、書籍や学術誌などの出版に関するさまざまな計量を行うことです。かつては司書が、いわゆるコアジャーナルの特定や、使用頻度のパターン分析による科学的根拠を得ることで、蔵書の改善を図るためのアプローチとして使用していました。一方、サイエントメトリクス(Scientometrics)は、1960年代後半にロシアの博学者ヴァシリー・ナリモフ(Vasily Nalimov)氏が「naukometriya」という言葉を使用したのが始まりでしょう。「nauk」はロシア語で「科学」という意味です。したがって、ビブリオメトリクスを科学研究に応用したのがサイエントメトリクスです。サイエントメトリクスは、図書館が学術誌の分析を行うよりもはるかに広範な分析が必要で、研究業績、イノベーション、科学コミュニケーション、専門分野の構造や動向、助成を含む政治的状況などが含まれます。

ビブリオメトリクスの長所と短所について、どのようなご意見をお持ちですか?

「ビブリオメトリクスが何に役立つか」と「ビブリオメトリクスの使用に伴う危険性は何か」という観点で説明します。まず、ビブリオメトリクスが使い方によっては有用であることを明確にしておきたいと思います。ウィリアム・トムソン(ケルビヴィン卿)は、「関心対象を数値化できれば、より多くを知ることができ、数値化できなければ知識は脆弱なものになる」という言葉を残しています。「短所」としては、以下のようなことが挙げられるでしょう:


・不完全/不正確なデータを使用している


・疑問に直接に答えるわけではない指標を用いている


・単一または混在した指標に依存している(研究活動や研究のインパクトの多種多様な側面を表現するには不十分)


・同等の比較が可能な、相対的または標準化された基準を使用していない


・データ自体が意味を持つと考えてしまい、専門家の解釈を経ずに使われてしまう

ビブリオメトリクスというアプローチは、科学に関わる政策決定者や助成団体に誤解または誤用されていると思いますか?どのような形で誤用されることが多いのでしょうか。

そう思いますし、これはとても残念なことです。研究の評価や助成の決定を行うために、単純な単一計量システム(h-インデックス、インパクトファクターなど)が採用されているケースが余りにも多いと感じています。これらのシステムは、ビブリオメトリクス分析の有用性や価値を揺るがせており、研究よりも得点稼ぎに夢中になる研究者を増やすだけで、科学を腐敗させる要因になっています。このような誤用を防ぐ方法の1つは、引用分析が査読の補完材料であって、代替ではないことを理解してもらうことです。人々は、これらの指標を本質や品質を決定するものと捉えていますが、ビブリオメトリクスによる値はあくまで指標であって、有意性や価値を保証するものではありません。

絶え間なく進化を続ける科学界の中で、ビブリオメトリクスの課題は何だとお考えですか?

1つは、学術界(大学)を越えたインパクトを測る指標の必要性でしょう。もちろん、イノベーションに関する基礎/応用研究のインパクトを追跡することについては長い間、関心が寄せられています。クラリベイト・アナリティクスでは、50年以上に渡り、自社開発のDerwent特許データを用いたイノベーションの計量を行なっています。現在重要視されている研究テーマの1つは、被引用数がもっとも高い論文や重要な特許に引用されている論文の分析を行うことです。この研究により、学術界と産業界の重要な関係性を明らかにできるのではないかと期待されています。大学は、公的資金を研究に回すことを正当化するために、経済成長に自分たちが寄与していることをアピールする傾向が強まっています。ソーシャルメディアの普及により、研究のインパクトを測る新たな指標が登場し、大学による研究活動が社会的・文化的貢献を果たすことへの期待が高まっています。研究がSNSで取り上げられた回数や、推薦された回数、ブックマーク、ニュース記事、ブログ、ツイートなど、指標になり得る多種多様なデータを総称して、オルメトリクス(代替指標)と呼びます。これらは、研究のインパクトを測る指標として、その意味や重要性が不均一です。オルメトリクスは現在、サイエントメトリクス研究でもっとも活発なテーマですが、それぞれの指標の特性、意味、力関係、そして広義の意味での研究のインパクトとの関連性を理解するためには、多くの課題が残されています。インパクトを示唆する指標に対しては、時間経過や分野、テーマによって標準化する作業も必要です。オルメトリクスはまだ生まれたばかりです。現時点では、オルメトリクスが従来の指標を追い越す見込みはありません。従来の指標を補完するような指標もありますが、まだまだ発展途上なのです。

最近のプレスリリースの中で、「出版データや引用データを慎重に分析することで、データ駆動型の科学に関する政策・助成の意思決定が可能になり、短所を解消して長所を引き出すための重要な戦略になり得る」と述べておられますが、このことについて詳しく説明して頂けますか?引用分析データは、政策や助成の決定にどのように利用されているのでしょうか。

ビブリオメトリクスを用いて論文を分析することの最大の強みの1つは、トップダウンのアプローチであるということです。膨大な情報をまとめることが可能なので、個人の知識や経験をもとにした査読由来のボトムアップ型視点では見ることができなかった研究の全容の中から、重要な特性を見きわめることができます。次に、きわめてゆがんだ引用分布という特徴から、全体の中のもっとも注目度が高い論文に、迅速かつ効率的に着目できるようになります。もちろん、ある分野で突出しているものであっても、分野間の平均引用数が異なるせいで、別の分野ではそうでない可能性があります。加えて、古い論文は新しい論文に比べて被引用数が蓄積されているので、時間軸の調整も必要になります。このように、指標は相対化または標準化しなければなりません。引用分析が示すことができるのは、ある分野における研究インパクトのポジティブなエビデンスであり、そのインパクトが、ほかの研究者、機関、国にどのように関連しているかということです。このエビデンスによって、どのような文脈で影響度やインパクトがあるのかということへの理解が深まります。すべての研究に予算を提供できるわけではないので、インパクトの高い研究を生み出している研究者に予算を提供するのは、妥当なアプローチと言えます。ただし、引用指標から見た研究のインパクトが高い研究者だけが支援を受けるべきであると言いたいわけではありません。「absence of evidence is not evidence of absence(エビデンスの欠如は、何かが欠如していることを示すものではない)」という有名な言葉があります。過去の業績に関する定量的評価とは別に、知識や直感にもとづいて政策や助成を決定する余地も残されるべきなのです。この考え方は、若手研究者を支援する上でとくに重要です。


これは、研究の生産性を高めるための包括的なデータ駆動形アプローチのほんの一部に過ぎません。研究のライフサイクルは、論文の出版や被引用だけに留まりません。出版の前には査読があります。また、研究者はその論文を書き上げるために多大な労力を費やしています。これらの活動に従事している研究者たちが所属する大学も、評価されるべきだと思います。機関で進行中のプログラムのための全体的な戦略の一部として、何らかの報奨があってもいいでしょう。このような理由から、クラリベイト・アナリティクスは最近、研究者が学術研究における査読や編集の価値について評価、シェア、議論ができるグローバルな主要プラットフォーム、Publons(パブロンズ)を買収しました。(http://news.clarivate.com/2017-06-01-Clarivate-Analytics-acquires-market-leader-Publons-creating-the-definitive-publisher-independent-platform-for-accelerating-research-through-peer-review)。研究活動の一側面を捉え、計量することで、機関のデータを拡張し、意思決定をサポートすることができるのです。

近年のサイエントメトリクスの進化の中で、もっとも革新的だったことは何ですか?

すでにいくつかについて触れていますが、フルテキストデータへのアクセスが可能になったことから、オルメトリクスや文脈・感情分析などができるようになりました。この情報を通して、助成データの分析も可能になりました。クラリベイト・アナリティクスは、2008年8月から助成団体のインデックスを始めているので、現在では約10年分のデータが集まっています。助成団体を、出版論文やその引用データにもとづくインパクトと関連付けるのは未知の領域ですが、助成者が意思決定をする上で、業績やインパクトの情報を少しでも多く知りたいと考えているのは間違いありません。イノベーションを加速させたがっている産業界、大学、政府、民間助成団体の思いは、学際的研究の盛り上がりに繋がっており、その特性や機能、可能性を探る研究は増え続けています。学際的分野を体系づけることは困難な作業ですが、従来の分野間の境界の存在意義が小さくなるほど、異なるアプローチができるようになるでしょう。異なる領域の知見が結びついたときに、重要な発見を前向きに研究するか、後ろ向きに研究するかは、個人的にはサイエントメトリクスの領域だと思っています。それにいくらか関連しているのが、コンピューターの高速化と大容量化、そして複数の学術組織が作成したソフトウェアの利用によって発展したサイエンスマップの分野です。これにより、今では誰もが自分で簡単にさまざまな類型を視覚化できるようになっています。

Science Watchの発刊に携わったご経験についてお話し頂けますか?秘話などがありましたらぜひ教えてください。

1989年にヘンリー・スモール氏から、当社のデータにもとづく研究業績やトレンドに関する短い記事を載せた月刊ニュースレターを作るよう求められました。そこで、既存の科学ジャーナリズムに自分たちの出版/引用指標を組み合わせてみることにし、主要メディアが見落としている研究に焦点を当てて、新興トレンドの発見に努めました。各号には、高い被引用数を得ている研究者へのインタビューや、医学、生物学、物理学、化学の分野における注目論文のトップ10リストを、専門家の解説とともに掲載しました。注目論文とは、出版後2年以内の、専門分野における被引用数が上位0.1%の論文のことです。Science Watchのバックナンバーを見れば、後にノーベル賞やその他の国際的栄誉を勝ち取った科学者たちのインタビューを読むことができます。これらの特集記事や注目論文リストは、その時々の科学的発見やトレンドを上手く映し出していたと自負しています。残念ながら編集上の方針転換により、元のScience Watchのウェブサイトは2015年に終了してしまいましたが、アーカイブコンテンツは現在も閲覧可能です。また、国内や地域の研究について調べたり、特定の研究テーマにフォーカスした白書やレポートなど、クラリベイト・アナリティクスのオンラインコンテンツ内の引用分析集は、今も注目されています。

学術出版界ではデジタル化が急速に進んでいます。あらゆる人が、さまざまなフォーマットやプラットフォームでデータを保存できるようになりました。このアクセシビリティの向上は、情報検索を複雑化していると思いますか?複雑にデジタル化された学術出版界において、ビブリオメトリクスが情報検索に寄与できることは何でしょうか。

印刷媒体のデジタル化の流れは歓迎すべきことです。この変化は情報の流通、利用、分析の面で革命をもたらしましたし、今後も発展を続けるでしょう。個人的には、モニターの字面を追うよりも本やジャーナルなどの印刷物を手に持って読む方が読みやすいのですが、印刷媒体が優れているのはこの点だけではないでしょうか。もちろん、デジタル化への移行によって生まれる可能性を活かすためには、適応が必要です。著者個人や研究機関を特定できるデジタルオブジェクト識別子(DOI)はきわめて重要なものであり、急速に普及しています。ResearcherIDやORCIDなどの著者の識別が可能な識別子は、著者名の曖昧さを回避することでサイエントメトリクス分析に大きく役立ちます。また、オープンアクセス出版の普及により、論文をフルテキストで読める機会が増えています。これにより、どのような文脈・感情で論文が引用されているのかという、文章単位での引用分析が可能になりました。引用の「質」を区別することの必要性は何十年も議論されてきましたが、技術的には実現可能な段階に来ています。ここでいう「質」とは、その引用の文脈がポジティブかネガティブか、あるいは単に中立的に使用されているのかということです。クラリベイト・アナリティクスは、この技術の発展を目指し、オープンアクセス論文のフルテキスト版を無料で素早く閲覧できるオープンAPIを提供する、ImpactStoryによるoaDOサービスの支援を発表しています(http://news.clarivate.com/2017-06-23-Clarivate-Analytics-announces-landmark-partnership-with-Impactstory-to-make-open-access-content-easier-for-researchers-to-use)。また「ビッグデータ」の分析についても触れておきましょう。この言葉は、人によって異なった(誤った)認識をされています。確かに、論文のフルテキストとそれに伴うデータセットからは、あらゆる種類の新たな繋がりが抽出されるでしょう。この発見はテキスト情報に限らず、引用データについても同様であり、すでに実現されているのです。

ワクワクするお話ですね。次は、少し個人的な質問になります。サイエントメトリクスのパイオニアであるユージーン・ガーフィールド氏とは、数年間にわたって近くで仕事に取り組んでおられました。このご経験についてお聞かせ頂けますか?

彼と30年以上も一緒に仕事ができたことを、大変光栄に思っています。彼は私の師であり、友人でした。Web of ScienceやCurrent Contentsなどのデータベース製品の開発・販売を行なった人物なので、彼をビジネスマンや起業家として捉える人が多いのですが、これらの製品の開発のために集めていたデータを分析し理解することを何よりも愛していた彼は、生粋の研究者だったと思います。引用インデックスの開発だけに留まらない学術界への貢献は、サイエントメトリクスの父であるデレク・デ・ソーラ・プライス(Derek de Solla Price)と肩を並べるものでしょう。天才と呼ぶにふさわしい人物でしたが、寛大で心の優しい人でもありました。亡くなってしまってとても寂しいです。

最近、クラリベイト・アナリティクスは、引用分析に関するイノベーションに贈られるユージーン・ガーフィールド賞の創設を発表しました。この賞について詳しくお聞かせください。

ユージーンが今年の2017年の2月下旬に亡くなってから、クラリベイト・アナリティクスは、彼に敬意を表するためにすぐにこの賞の創設を決めました。彼のライフワークであった引用分析に関する賞にしたのは、引用文献が、SCIの開発当初からの焦点であり、彼がこの分野で70年に渡ってさまざまな形で研究を続けてきたテーマだからです。この賞は、引用分析に関連する研究プロジェクトに贈られますが、ほかにも、科学構造の分析サイエンスマップ、トレンドの観測、あるいはユージーンの最初の関心領域であった情報公開における引用の役割などに関する研究も対象としています。最初の授与式は、2017年9月15~16日にフィラデルフィアで催されるユージーンを偲ぶ会の中で行われます。副賞として、2万5千ドルとWeb of Scienceのデータへのアクセス権が贈られます。また、応募できるのは博士号を取得して10年以内の若手研究者です。


ペンドルバリー氏、大変ためになるお話をありがとうございました!


ステータス「archiving completed」の意味は?

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Question Description: 

重大な誤解があるとの理由で、論文がリジェクトされてしまいました。その後、修正した論文と併せて、編集者への回答、査読者からのコメントや指摘に対する回答を提出したところ、ステータスが「archiving completed」に変わりました。これはどういう状態を意味するのでしょうか?

回答

「Archiving completed」は、通常、論文がリジェクトされたときに表示されるステータスです。つまり、ジャーナルの投稿システム内で、その論文が「アクティブ」でなくなり、リジェクト論文のアーカイブファイルに送られたということです。


リジェクト通知を受け取った際、編集者から、査読者からのコメントに回答して修正論文を再投稿するよう求められましたか? 今回の場合、おそらくそのような要求はなかったのではないでしょうか。編集者が、本件の投稿プロセスは終了したものとして、論文の状態を「rejected」に更新したため、投稿システムが論文をアーカイブに送ったものと考えられます。


新たな論文としての再投稿を求められていない場合は、別のジャーナルへの投稿をお勧めします。再投稿を求められている場合は、査読者への回答は不要ですが、必要な修正を加えた上で、新たに投稿し直しましょう。


幸運を祈ります!

南極の棚氷から巨大氷山が分離

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南極の棚氷から巨大氷山が分離

2017年6月、南極のラーセンC棚氷から、重さ1兆トンの氷山が分離しました。棚氷の亀裂が拡大を続けた結果、分離を繋ぎ止めていた薄氷がついに崩壊したようです。一国ほどの大きさを持つ分離した氷山はA-68と名付けられ、ヴェッテル海を漂流しています。

2017年6月、南極のラーセンC棚氷から、重さ1兆トンの氷山が分離したとのニュースが広く報じられました。棚氷の亀裂が拡大を続けた結果、分離を繋ぎ止めていた薄氷がついに崩壊したようです。一国ほどの大きさを持つ分離した氷山はA-68と名付けられ、現在ヴェッテル海を漂流しています。


この巨大棚氷は、1890年にノルウェーの探検家カール・アントン・ラーセン(Carl Anton Larsen)が南極半島で発見したものです。発見者にちなんでラーセン棚氷と名付けられ、ラーセンA、B、C、Dの4つの棚氷に分類されています。これらは非常に安定した棚氷でしたが、ラーセンAは1995年に、ラーセンBは2002年にすでに崩壊しており、より巨大なラーセンCの状態に注目が集まっていました。


棚氷は、海水と大気両方の温度上昇に影響を受けます。氷山の崩壊に伴う海面上昇が切迫した懸念とされていますが、もともと海水面に浮遊している氷山の一部が崩壊したにすぎないので、著しい海面上昇には発展しないと考えられています。非常に大規模な崩壊であったものの、環境問題の専門家や科学者たちは、この現象を気候変動によるものであるとは考えていないようです。むしろ、氷河学者のマーティン・オレアリー(Martin O’Leary)氏を含む多くの研究者は、今回の崩壊を自然現象と捉えています。とは言え、ラーセンCの残りの部分が現状を維持できるかどうかを含め、今後の動きを把握するには数年間を要するとしています。


一般的に、氷山が崩壊すると、新たな生態系が形成されます。氷山崩壊地点から320キロ程度離れた場所に生息するペンギンたちの採餌パターンに今回の崩壊がどのような影響を及ぼすかは、まだ誰にも予測することができなません。

 

ステータス「under review」と「decision made」が同時に表示されています。

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Question Description: 

Editorial Managerを使って論文を投稿したのですが、同じ論文が2つのフォルダ(「Submissions Being Processed」と「Completed Submissions with a Decision」)に同時に表示されています。両フォルダのステータス更新日も同じで、「Submissions with a Decision」フォルダの方には、論文が査読中である旨も表示されています。これは何が起きているのでしょうか?

回答

1つの論文が2つのフォルダに同時に表示されるのは、非常に不可解なケースです。フォルダ内に査読中である旨が示されていながら、論文が「Submissions with a Decision」フォルダにも表示されているのは、技術的エラーによるものかもしれません。あるいは、編集者による初回チェック完了後に、査読を経ずにリジェクトするか、査読に回すかの判定段階として、論文をこのフォルダに一時的に置いているのかもしれません。一度、この状況について編集者に問い合わせてみることをお勧めします。

キャリアの各段階で適切な助成金を選択するには

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キャリアの各段階で適切な助成金を選択するには

研究者が研究を進めるには研究費の獲得が欠かせませんが、この獲得レースに勝つのは容易ではありません。助成金申請はさまざまな観点から判断されますが、それ以前に、「数ある助成金提供元の中からどこを選ぶべきか?」とで悩む研究者も多いのではないでしょうか。この記事では、種々の助成金についてのメリットとデメリットを知ってもらうことを目指して、研究者向けの現行の助成金オプションの概要をご紹介します。

研究者が研究を進めるには研究費の獲得が欠かせませんが、この獲得レースに勝つのは容易ではありません。助成金申請の採否は、研究テーマ、所属、研究業績など、さまざまな観点から判断されます。しかしそれ以前の問題として、「数ある助成金提供元の中から、自分の立場や能力に見合ったところをどのように選ぶべきか?」という段階で悩む研究者も多いのではないでしょうか。


この記事では、種々の助成金(グラント/コントラクト)について、実際の(または想定される)メリットとデメリットを知ってもらうことを目指して、研究者向けの現行の助成金オプションの概要をご紹介します。各助成金の採択難易度、申請書類の形式、字数制限、書式などの詳細については触れず、キャリアの各段階でそれぞれの助成金に申請することの可否に焦点を当てます。具体的には、化学分野における若手からベテラン研究者向けの3タイプの研究開発(R&D)助成制度について説明していきます。なお、本記事で扱う以外にも助成団体や助成形態は存在しますが、少なくとも米国では、以下で解説する3タイプが、現在の学術R&D活動の土台となっています。他国のシステムや、中小企業技術革新研究プログラム(SBIR)、中小企業技術移転プログラム(STTR)などの助成形態、化学分野への助成を行なっていない個人財団については、本記事では触れていません。


研究者としての各キャリア段階に適した助成形態はどれなのか、また、適した形態を選ぶ意義は何なのかについて知ってもらうことができれば幸いです。加えて、特定の政府機関や民間企業、非営利団体への助成金申請は、研究費の獲得だけを目的にしてはならないということも強調しておきたいと思います。


それでは、学術界における助成形態を1つずつ見ていきましょう。


1. 国、州、地域のグラント/コントラクト


学術R&D向けのあらゆるグラント/コントラクトの中で、もっとも需要が高くメリットの多い助成金は、間違いなく政府機関によるものですが、これは、継続的に獲得するのがもっとも難しい助成金でもあります。少なくとも米国では、国立衛生研究所(NIH)国立科学財団(NSF)環境保護庁(EPA)などの機関における助成金申請採択率や(満額)支給率の低さが、この事実を物語っています。一方で、競争率の低い助成金は、研究者の業績という観点から見ると、価値が高いとは言えません。したがって、1か所からでも政府機関(または国際機関)から継続して競争的資金を獲得していると、平均以上の成功を収めている研究者と見なされるのが一般的です。


連邦政府機関によるコントラクトは、機関が定めたきわめて具体的なゴールに向かうことを求められるので、グラントほどの人気はありません。学術界において、コントラクトは、民間企業によるR&D助成金と同様に、グラントほどの価値があるものとは考えられていません。コントラクトは、助成側がグラントの支給では実現が難しい現行/将来のニーズを満たすための提供資金であり、その意図に沿うことができる申請者を求めます。包括的な知見の生成が目的ではないので、支給額も機関が定める目標の範囲内に収められます。連邦政府や州政府機関のグラントに採択された研究は、たいていの場合高名な学術誌に論文が掲載されますが、コントラクトは論文出版が目的ではないため、必ずしもこのような結果に繋がりません。


コントラクトよりもグラントに、あるいは、より競争率の高い助成金に人気が集まるのはなぜでしょうか?これは、競争率の高さを考慮に入れても、いくつかのメリットがあるからです。たとえば、複数年に渡って研究費が支給されること、採択者の能力と研究の計画性への評価に繋がること、専門領域の著名な科学者による審査があること、管理が行き届いていること、経験豊富なコーディネーターから助言を受けられること、などが挙げられるでしょう。また、政府機関グラントの採択者は、研究者として優秀で、研究の質・経験値・文章能力が高いという評価を受けます。さらに、昇進・テニュア(promotion and tenure、P&T)査定委員会は、政府機関による競争的資金を1回以上獲得し、相応の結果を出している研究者を評価するのが一般的で、このような要件を満たしていない場合はマイナス評価に繋がる可能性があります。民間企業も、政府機関(NIH、NSFなど)グラントの採択歴がある申請者には、安心して助成金を支給することができるでしょう(逆は真ならず)。以上のように、政府機関(NIH、NSFなど)グラントを継続的に獲得することのメリットは絶大であり、そこに論文出版が伴えば、まさに鬼に金棒です。


とは言え、先述したように、これらの連邦/州政府機関のグラントには競争率の高さというマイナス要素があります。とくに、若手研究者が経験豊富なベテラン研究者に対抗するのは至難の業でしょう。また、申請書類の審査に長い期間を要するケースが多いこともネガティブな側面です。申請書には審査員からのフィードバックがあり、必ず何らかの修正を指摘されます。審査員によるこの評価をもとに、機関が採否の最終決定を行います。ネガティブな評価が下された申請書については、コメントが少ないのが特徴です。このような審査を勝ち抜いてきた「常連」の採択者たちに割って入るのは容易ではなく、悔しい思いをすることもあるでしょう。また、たとえば議会や機関の予算削減に伴ってNIHの助成金総支給額が減ったとしても、翌年の申請数が減るわけではありません。この場合、採択数が減少するだけなので、採択されるためのハードルが上がり、より少ない申請者しか研究費を獲得することができなくなります。採択されなければ、申請書作成に費やした時間や労力は無に帰し、一からのやり直しを余儀なくされます。


一方、コントラクトは比較的競争率が低い助成金です。コントラクトは、政府機関が設定する課題をR&Dによって解決することを求められるので、所定の研究テーマを扱う申請者のみが競合することになります。SBIRやSTTR型のコントラクトは、学術界由来の新規の小規模ビジネスを支援するためのものです。これらは、初期に6ヶ月間の支給を受け、良好な結果が得られた場合に限り、数年間延長されるのが一般的です。コントラクトは、プロジェクトがあらかじめ設定されているので、新規性や革新性のあるR&Dを行うのは困難でしょう。企業が提供するコントラクト/グラントも同様に、新規製品の開発や製品の改良を目的としているケースがほとんどなので、革新的・独創的な研究結果を得ることは困難でしょう。特定のコントラクトによって研究費を支給されるということは、所定の問題を解決し、商業化や市販化に繋がる研究結果を生み出さなければならないということです。これは、独創性や新規性に富んだ質の高い科学研究とは相反するものです。すべてがそうであるとは限りませんが、ほとんどのコントラクトには、一定の制約が付きものです。


2. 民間企業のグラント/コントラクト


民間企業のコントラクトやグラントを得る方が、NIH/NSFルートを目指すよりも容易であると考えている研究者は多いでしょう。これは事実ではありますが、P&T(昇進・テニュア)を考慮した場合には、弊害をもたらす可能性があります。もちろん、研究費の出処がどこであろうと、画期的な研究結果や実用価値が高い結果を生み出すことは可能です。しかし、民間企業からの助成金受給歴しかない若手研究者は、P&T査定委員会から疑念を抱かれがちです。一方、企業コントラクトと政府機関グラントの両方を獲得している研究者は、P&T査定委員会からポジティブな印象を抱かれます。グラントは、大学側が負担している多大な経費を還元してくれるのが一般的ですが、多くのコントラクトは(政府、民間によらず)そうではないことを、若手研究者は認識しておく必要があるでしょう。


とくに分析学の分野において、コントラクト/グラントそのものは、適切に利用すれば、新規性・創造性があるR&Dを実施するための資金になります。また、科学関連企業に就職する学生にとっては貴重な経験を積む機会になるでしょう。企業が定めるR&Dプログラムによって、採択された側は、個人では容易に入手できない研究機材を扱う機会を得ることができ、資金提供元の企業は、新たな市場の開拓や新規の機器・機器分析法の開発を実現できます。これは、研究者と企業双方にとって望ましいものです。このような取り組みは、学生を含めたすべての関係者にとって有益です。大学と企業が連携し、学生の時間を両者で折半すれば、学生は学位取得のための研究を行いながら、貴重な学術的経験と企業での経験の両方を得ることができます。近年、多くの大学でこのような連携プログラムが実施されており、論文出版や学会発表、商業的成功という形ですべての関係者が利益を得る結果が頻繁に見受けられます。


過去数十年間の分析分野のR&Dにおいて、大学院生との連携によって成功裏に終わったプロジェクトが数多く生み出されています。ある超大型の生物医薬品の開発と商品化に寄与した研究プロジェクトは、産学の連携によるものでした。このプロジェクトにより、企業は自社のベストセラー商品を生み出し、学生は博士号を取得しました。企業は、ほとんどの分析的R&Dを大学との連携で実施しながら、高評価の論文も数件出版し、数十年に渡って世界一の利益を上げた(特許完全取得済の)医薬品の開発に成功しました。こうして、すべての関係者が勝者となったのです。


3. 民間非営利団体のグラント/コントラクト


民間の助成機関や非営利団体は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団Alzheimer’s Association関節炎財団(101の医療財団が含まれる)、チャールズ・コーク財団ヘルスケア財団ウォルマート財団ロックフェラー財団など多数存在し、主に物理科学に関連したグラントやコントラクトを提供しています。これらのほとんどは競争的資金ですが、各財団の関心テーマの範囲内での制約は比較的緩いのが特徴です。たとえば、新薬の開発、特定の疾病の治療法、社会の発展、科学の普及、物理科学の高等教育などの一般的なテーマに研究費が支給されます。3~5年間支給される政府機関グラント(NIH、NSFなど)ほどではありませんが、複数年に渡って比較的大きな金額が与えられます。


一般的にこれらの助成金は、NIHやNSFグラントと比較すると、経費還元率が低く、支給期間が短く、支給額も少額ですが、競争率はきわめて高いと言えます。また、必ずしも基礎科学研究を扱うわけではなく、たとえば、タンパク質のトップダウン質量分析のための新型3Dプリンターやオービトラップ質量分析計の開発なども、通常は対象となりません。このようなテーマには、関連するR&D型の企業グラント/コントラクトが対応しているからです。


財団にもよりますが、このタイプの助成金申請が採択された場合、P&Tの面で研究者にメリットがあります。ほとんどの場合、企業コントラクトほどの厳しい制約はありませんが、社会的・医学的課題などを解決するための具体的なR&Dが求められるからです。ゲイツ財団やザッカーバーグ財団、米がん協会(ACS)などのより大規模な財団は、より包括的な研究プロポーザルを受け入れていますが、ACSの場合はがん研究に関するプロポーザルに限定されます。米化学会(American Chemical Society)は、学術的なテーマに関して同様の助成金を提供していますが、支給額は限定的です。通常、年間の支給額は連邦政府の助成金(NIH、NSFなど)よりは少なく、企業コントラクトと同等がそれを上回る場合が一般的です。


まとめ


助成機関の規模が大きいほど毎年の申請数は多く、競争率も高くなるのが普通です。そして、提案するR&Dの内容が主な判断基準となるのは当然として、プロポーザルが革新的であるほど、そしてその実現可能性が高いほど、採択される可能性は高まります。


企業や民間財団のグラント/コントラクトは、NIHやNSFグラントの審査プロセスほど厳格ではなく、競争率も高くありません。その分、若手研究者にとっての魅力や価値はいくぶん劣ることになります。また、申請者の所属先への経費還元率も限定的なので、プロジェクトに関わる研究者に対する所属先の価値も低めになるでしょう。


昇進や昇給、研究環境の拡張といった研究者の労働条件の向上は、その研究者がどれだけの予算を獲得してきたか、とくに、大学にどれだけの経費を還元したか、還元する見込みがあるか、という点と直接的に結び付いています。労働条件を向上させるには、質の高い論文の出版や学会発表、学部生/大学院生の指導歴、指導や研究による受賞歴だけでは不十分なのです。「お金がすべてではない」と言う人もいますが、この世界では、残念ながらほとんどの場合において、お金がすべてだと言えるでしょう。

研究公正に関する論文のスピード出版が可能なジャーナルを教えてください。

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研究公正に関する論文を執筆したのですが、現在の職を維持するためにはスピード出版が可能なジャーナルに投稿する必要があります。アドバイスを頂けたら幸いです。

回答

研究公正に関する論文とは、興味深いテーマです。しかし、詳しく研究内容が分からない以上、どのジャーナルが最適かをアドバイスすることは困難です。論文が特定の分野(生物医学における研究公正など)に焦点を当てたものであれば、なおさらです。また、スピード出版の定義も分野によって異なります(投稿から受理までの期間が2~3ヶ月でも迅速とされる分野もあります)。とは言え、研究公正はあらゆる科学分野が関心を持っているテーマなので、ジャーナルの選択肢は幅広いでしょう。オープンアクセス出版というルートも選択肢を拡げてくれるかもしれません。


まずは、学術出版を専門に扱っているジャーナルを調べてみましょう。以下は一例です:
 

European Science Editing誌(欧州科学編集者協会)

Learned Publishing誌(Association of Learned and Professional Society Providers)

Science Editor誌(国際科学編集者会議)


PLOS ONE(複数分野を扱うスピード出版が可能なオープンアクセスジャーナル)、BMJ OpenScienceOpen(PLOS ONEと同じく、出版後査読モデルを採用)などの複数領域に対応しているジャーナルも調べてみましょう。こちらのリストに掲載されているジャーナル/出版社に直接問い合わせてみるのも一案です。事前に、ジャーナル/出版社のアーカイブを確認して、類似テーマの論文が掲載されたことがあるかどうかを調べておくとよいでしょう。

中国政府が研究不正の取り締まり強化を発表

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中国政府が研究不正の取り締まり強化を発表

2017年5月、中国人著者と研究機関が関与した107本の論文の撤回をシュプリンガーが発表し、中国学術界に衝撃を与えました。この問題を受け、中国政府は、研究不正を抑え込むための厳格な方策を打ち出し、その第一歩として、研究不正を一切容認しない方針を掲げました。

2017年5月、中国人著者と研究機関が関与した107本の論文の撤回をシュプリンガーが発表し、中国学術界に衝撃を与えました。その翌月にも、シュプリンガーの別のジャーナルであるCell Biochemistry and Biophysics誌が、中国人著者による論文数本を撤回しています。撤回された論文著者の多くは、中国の著名な病院や医科大学に所属する研究者だったようです。この問題を受け、中国政府は、研究不正を抑え込むための厳格な方策を打ち出し、その第一歩として、研究不正を一切容認しない方針を掲げました中国科学技術協会(CAST)の副議長であるシャン・ヨン(Shang Yong)氏は5月25日に開かれた記者会見で、「中国は、蔓延する学術不正に決然と立ち向かい、真剣に対処していく」と語りました。また、「起きてしまった不正を教訓として、科学者、科学機関、科学研究への従来の画一的な評価システムを見直していく」と述べています。同氏によると、CASTは今後、政府の科学技術部や教育部と連携して科学不正を阻止する方針であるようです。今回の方針の公表が、研究不正対策の大幅な転換の第一歩となるかもしれません。


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論文掲載誌のインパクトファクターは、履歴書にどのように記載すべきですか?

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2年前、とある高名なジャーナルに論文が掲載されました。論文掲載時のインパクトファクターは4.52でしたが、現在は3.962まで下がっているようです。履歴書(研究業績書)には、現在の数値と出版時の数値のどちらを記載すべきですか?

回答

興味深いご質問ですね。基本的には、論文が出版された当時のインパクトファクターを記載すべきです。補足情報として、論文が掲載されたジャーナルがデータベースにインデックスされているかどうかも示しましょう。インパクトファクターは不変ではなく、2年ごとに更新される数値なので、履歴書に記載したすべてのジャーナルの数値を修正するのは困難です。履歴書に記載した数値と審査段階での数値が異なる場合もあるかもしれませんが、その都度説明を加えれば問題ありません。


履歴書にインパクトファクターを記載することの可否は、分野によって見解が異なります。分野によっては、トップジャーナルの情報は全員が把握しているので記載は不要、と考えられています。インパクトファクターは、これまでジャーナルや研究者の質を測るための最重要指標とされてきましたが、その信頼性が失われつつある現在、この数値に過度に頼ることに抵抗を感じる人もいます。また、履歴書を審査する人が、インパクトファクターではなく、応募者が能力向上のために何をしてきたかを重視する可能性もあります。このように、多くの研究者や助成団体が、オルメトリクスさまざまな指標を組み合わせたものに目を向け始めています。


まずは、専門分野での慣例や、履歴書の提出先がインパクトファクターを重視しているかどうかを調べてみましょう。また、研究の影響度を示すその他の指標を履歴書に加えることも検討してみてください。


世界初、生きた細胞のDNAに動画を保存

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世界初、生きた細胞のDNAに動画を保存

ある研究グループが、生物学の限界を突破する壮大な実験に成功しました。その実験とは、生きた細菌細胞のDNAに動画を保存するというものです。DNAへのデータ保存に関する研究は以前から行われていましたが、生体細胞のDNAに情報が書き込まれたのは今回が初めてです。

ある研究グループが、生物学の限界を突破する壮大な実験に成功しました。その実験とは、生きた細菌細胞のDNAに動画を保存するというものです。DNAへのデータ保存に関する研究は以前から行われていましたが、生体細胞のDNAに情報が書き込まれたのは今回が初めてです。実験に使用された動画は、エドワード・マイブリッジ(Eadweard Muybridge)が1878年に製作した「Human and Animal Locomotion」(人類と動物の運動)シリーズの、馬が疾走する5コマの連続画像です。この画像は世界初の動画として知られるものですが、偶然にもそれが、世界で初めて生体細胞に記録された動画となったのです。


ハーバード大学ワイス応用生物学エンジニアリング研究所(Wyss Institute for Biologically Inspired Engineering)のジョージ・チャーチ(George Church)氏率いる研究チームは、この「分子レコーダー」を作るために、遺伝子編集技術「CRISPR(クリスパー)」を採用しました。チャーチ氏らは、映像の各ピクセルをDNAコードに変換した情報を、遺伝子編集によって細菌のゲノムに組み込みました。研究室に残っているこれらの細菌を分裂/増殖させれば、記録された映像を次の世代に引き継がせることも可能です。


もっとも、映像を保存して鑑賞することがこの実験の目的ではありません。研究者たちは、この技術を応用して、生体内の生物学的発達を記録することを目指しています。記録されたデータから、脳の発達への理解が進み、さまざまな疾病・疾患の観察や治療に繋がることが期待されています。

出版後の論文の著作権について教えてください。

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出版後の論文について、例えば学会発表時、ポスター下に論文を置いているのを見かけるのですが、著作権の問題にならないのでしょうか?また、Research gateなどにpdf fileをのせているのも見かけますがこれも問題にならないのでしょうか?open accessで出版したものであれば問題ないでしょうか?

回答

著作権が問題になるのは通常、同じ著作物/図版を別のジャーナルで再利用する場合や、出版社が著作権を持つ情報を公開する場合です。出版済みの著作物を学会で発表することはまったく問題ありません。ポスター発表は会議録として出版されることもありますが、それはごく一部です。また、発表形態が異なり、ポスターは論文とは違う方法で発表されているものなので、著作権が問題となることはありません。


ResearchGateのpdfについては、即時閲覧可能な状態で掲載されるのは、本来はオープンアクセス論文のみであるべきです。ResearchGateのホームページには、著作権の問題に関する基本情報が掲載されています。ResearchGateに掲載される論文は、公開する権利を著者が保持しているもの、つまり、オープンアクセスの論文でなければなりません。ですので、「オープンアクセスで出版された論文であればResearchGateに掲載できる」というあなたの理解は間違っていません。ただし、これは必ずしも守られていなかったので、ResearchGateに対する懸念が示され、その後ResearchGateは、著者以外が著作権を持つ著作物については、アクセスを制限することに同意しています。

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case reportの同意書

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Question Description: 

case reportの同意書について質問です。 入院時に全例においてもらっている「臨床データー、検査データー、画像データーを学会・論文発表に使用することへの承諾書(日本語)」は、実際に論文投稿する際において、同意をとったと解釈できるのでしょうか?ジャーナルが日本語のフォーマットでも容認する場合でも、再度、同意書を取る必要があるのでしょうか?

回答

臨床データに同意するインフォームドコンセントを書面でもらっているのであれば、それは、実際にジャーナルに論文を投稿する際の同意書として使用することができます。ほとんどの国際誌は、英語以外の言語で書かれたインフォームドコンセントも受け付けていますが、認定された翻訳者が訳した文書の提出を要求するところもあります。

基本的には、どのジャーナルに論文を投稿するときも、同じインフォームドコンセントを使うことができます。ターゲットジャーナルが別のフォーマットを定めていない限り、通常は別のインフォームドコンセントを用意する必要はありません。

 

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「政府が政策を動かす“運転手”なら、研究者はその効果的な施行を担う“整備士”です」

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「政府が政策を動かす“運転手”なら、研究者はその効果的な施行を担う“整備士”です」
発展途上国の科学者を対象としたリサーチトレーニング・フェローシップ(インド)を獲得し、ジャワハルラール・ネルー大学(ニューデリー)で半年間を過ごした。母国ナイジェリアでは、国立技術経営センター(National Centre for Technology Management 、NACETEM)の科学政策およびイノベーション研究(Science Policy and Innovation Studies、SPIS)部門の主席研究員を務める。学術コミュニケーション、サイエントメトリクス、政策立案の研究のほか、研究者のためのワークショップやセミナーの企画、教育活動にも関心を持ち、センター代表者として会議/イベントに出席。スタッフォードシャー大学(英国)で技術経営分野の修士号を取得。

ユスッフ・ウティエイネショラ・アデレケ(Yusuff Utieyineshola Adeleke)氏は、発展途上国の科学者を対象とした、インド政府による栄えあるリサーチトレーニング・フェローシップを獲得した5人のナイジェリア人研究者の1人です。このプログラムのもと、ジャワハルラール・ネルー大学(ニューデリー)で6ヶ月間(2017年1~6月)を過ごしたアデレケ氏は、母国ナイジェリアでは、国立技術経営センター(National Centre for Technology Management 、NACETEM)の科学政策およびイノベーション研究(Science Policy and Innovation Studies、SPIS)部門の主席研究員を務めています。学術研究のトレーニングや学術政策に関するさまざまな活動に携わっており、サイエントメトリクスの研究、政策立案、研究者のためのワークショップやセミナーのオーガナイズ、センターのための各種コースの設置、研究マネジメントと方法論の教育活動、センター代表者としての会議/イベントへの出席など、研究外の領域でも幅広く活動しています。また、スタッフォードシャー大学(英国)で技術経営分野の修士号を取得しています。


アデレケ氏は長年に渡り、研究者としてのスキルを磨きながら、若手から中堅の研究者にさまざまな機会を提供する活動に積極的に関わってきました。最善の研究/出版慣行をグローバルレベルで推進できるエディテージ・インサイトのアンバサダーに志願したのも、そのような活動の一環です。アデレケ氏の参加を歓迎するとともに、その熱意に感謝の意を表したいと思います。


今回のインタビューでは、インドとナイジェリアにおける研究環境の違い、研究者が政策決定に果たす役割、研究者や研究機関にとってのインフラの重要性などについて伺いました。また、若手/中堅の研究者がもっとも不安に感じている2つのこと(学会発表と助成金申請)に関して、ご自身の経験に基づく実用的なアドバイスを頂きました。

発展途上国の科学者のためのリサーチトレーニング・フェローシップについて詳しく教えてください。

発展途上国の科学者のためのリサーチトレーニング・フェローシップ(Research Training Fellowship for Developing Country Scientists、RTF-DCS)は、NAM S&Tセンター(Centre for Science and Technology of the Non-Aligned and Other Developing Countries)が実施する、発展途上国の若手研究者にチャンスを提供するためのプログラムです。このフェローシップに選ばれた研究者には、同センターと提携するインドの学術・研究機関で、短期間、研究活動に従事する機会が与えられます。インド政府と科学技術省が資金を提供するこのプログラムでは、リサーチフェローに、国内外への渡航費や生活費、研究費を含めた経済的支援が行われます。2012~13年度の開始以来、同プログラムで選ばれたリサーチフェローたちは各配属機関で滞りなく研究を完了させており、順調に成果を挙げています。このプログラムは発展途上国の研究者から高い人気を集め、インドの研究機関からも強い関心が寄せられているため、2014~15年度のフェローシップは、20名から50名に増やされました。この度、5期目のプログラムが終了を迎えたばかりです。


RTF-DCSプログラムの主な目的は以下の通りです:
 

  • 発展途上国の科学者/研究者のインドへの流入を増やすとともに、彼らにインドのR&D/学術機関で働く機会を提供し、スキルや専門性を高めてもらう
  • インドをはじめとする発展途上国の科学者間の情報交換や交流のハードルを下げ、協力体制を構築するためのネットワークを作る


また、RTF-DCSフェローは、帰国後は、博士・修士レベルの研究プロジェクトで、インドの研究者が共同で指導してくれる機会を得られます。


光栄なことに、私は今年度のナイジェリア代表として選ばれた5人の研究者の1人になることができました。今回は、約50ヶ国の発展途上国から応募があったようです。選ばれた後は、ジャワハルラール・ネルー大学科学政策研究センター(Centre for Studies in Science Policy、CSSP)のマドハヴ・ゴヴィンド(Madhav Govind)准教授のもとで、「Scientometrics as a Tool for Effective Evaluation of Science, Technology and Innovation (STI) Policy Performance in a Developing Country Context(発展途上国における効果的な科学技術イノベーション[STI]政策評価のためのサイエントメトリクス)」と題した研究の指導を受けました。

インドでの経験から、インドとナイジェリアにおける研究環境の類似点と相違点は何だと感じましたか?

インドに6ヶ月間滞在した経験から得た印象をもとにお話したいと思います。まずは類似点ですが、どちらの国でも、社会で必要とされる技術的発展、人々の社会経済的生活水準の向上、持続的発展の実現を目的とした研究が主流です。一方、相違点ですが、インドでは、これらの目的を達成するために、国家的なイノベーションシステムが設定されていて、より組織化されています。インド政府は、国中に戦略的に配置したイノベーション/リサーチセンターに対して、各地域の発展に寄与することを求めています。これらの研究機関は、その任務を果たせるように、政府や民間から十分な支援を受けており、適切な労働環境と最先端の設備が整えられています。学術界や公的機関(役所)、企業との交流を図るためのセミナーやワークショップも定期的に催されていて、インドの経済的な競争力を高めるための計画が共同で進められています。


一方、ナイジェリアの研究環境の現状はどうでしょうか。ありのままをお話しすると、6年間公務員を務めた中で感じたのは、ナイジェリアの研究は、明確な目的を持って戦略的に進められてはいないということです。これは、4年に一度政権が変わってしまうことや、各政権がその都度新たな目的や方針を定めていることが要因として挙げられます。こういったアプローチは、変化を続ける社会的ニーズに対応するために継続的に更新していく必要のある長期的研究には向いていません。また、研究に当てられる予算も不十分で、場合によっては、プロジェクトのための予算として計上された資金が、もっとも必要とされるときに支払われず、予算年度が終わる直前に支払われるというようなこともあります。この問題は研究者たちの不満を生み、頻繁に抗議の声が挙がるようになっています。何より深刻なのは、この問題が研究者のモラルに影響を及ぼすことで、ひいてはその成果物の質に影響しかねません。インドと違い、ナイジェリアの省庁(Ministries, Departments and Agencies、MDAs)は、ニーズではなく、政略的動機に基づいて動きます。このようなシステムが、ナイジェリアの省庁の働きが低水準である要因になっています。ナイジェリアには適切な機会やキャリアを求めている優秀な研究者がたくさんいるので、これは大変残念なことです。

助成金申請に関するトレーニングを受けたご経験をお持ちですが、これについて詳しく教えて頂けますか?若手研究者たちに、申請書類を書くときのアドバイスをお願いします。

助成金申請については、いくつかトレーニングセッションを受けました。セッションでは、欧州での助成金申請、助成金の種類、申請書の審査プロセス、却下される申請書の特徴などについて学ぶことができました。


以下は、申請書類の執筆に関する若手研究者へのアドバイスです:
 

  • すべての申請書に当てはまる万能なテンプレートはありません。資金提供元にはそれぞれのテンプレートがあり、申請者はそれに従う必要があります。
  • 適切な資金提供元を選ぶためには、それぞれの機関が扱っている分野を理解し、助成の制限や締め切りなどを把握しましょう。研究提案募集(Request for Proposals、RFPs)では通常、資金提供対象とする分野が規定されています。この規定に該当していない申請書が承認されることはありません。
  • 締め切りは厳守しましょう。資金提供元が時差のある地域にある場合は、早め行動する必要がありまます。時差による不受理を避けるためには、最低でも締め切りの1日前に申請書を提出した方が良いでしょう。締め切り最終日に提出することは絶対に避けてください。なぜなら、コンピューターやインターネット接続などの技術的な問題が発生しないとも限らないからです。また、提出前の見直しと修正に時間がとれず、審査員の心証を悪くするようなミスだらけの申請書を提出せざるを得ない状況になるかもしれません。
  • 申請書を書く前に、関心のある研究テーマについて詳しく調べておきましょう。そのテーマの現在の関心事や、資金提供元の求めに自分の研究がどう応えられるか、などについて考えておきましょう。

多くの研究者にとって、学会発表はもう1つの不安の種です。こちらについても、ご経験に基づいたアドバイスをお願いします。

学会発表は、ほとんどの研究者が不安に感じているものです。初めて参加する研究者にとってはなおのことでしょう。私は、本番の数週間前に、別の地域学会や国際学会に出席して練習の機会を作るようにしています。自分が関心を持っている研究について、研究者たちの前で発表するというのは、素晴らしい機会です。若手研究者が余計な不安から解放されるためには、練習あるのみです。経験豊富な研究者から質問されることも想定しておかなければなりません。落ち着いて、自信を持って、自分を信じるしかありません。私は、質問されたら、「分かりません」とは答えないようにしています。そう答えると、知識や自信のなさを表明していることになってしまうからです。難しい質問にも、できる限り答えるようにしましょう。「この件については、後ほど議論して、意見や知識の交換ができればと思います」などと付け加えるのも一案です。

科学技術発展のための、科学技術イノベーション(Science, Technology and Innovation、STI)指標に着目した論文を執筆されています。このとても興味深いテーマについて詳しく教えて頂けますか?

論文は、ケニアのAfrican Technology Policy Studies (ATPS) Networkのニュースレターとして、TechnoPolicy Africa誌に、「Scientometrics and STI indicators as an option for improving S&T Development in Africa(アフリカの科学技術の発展のためのサイエントメトリクスおよびSTI指標)」(December 2016 Issue No. 0007 pp.5-6)というタイトルで掲載されました。


この論文では、アフリカの科学技術発展のためのさまざまな取り組み(世界サミット2005や国連ミレニアム・プロジェクト2005など)に注目しました。それらの取り組みはすべて、「アフリカで持続可能な発展を実現するには、STIシステムの構築が必要である」と強調しています。私はそれに対し、「社会の発展にSTIが寄与した度合いを測定できない限り、それを定義し評価することはできない」と述べました。そして、特定の指標を測定するツールとして、サイエントメトリクスを提唱しました。「サイエントメトリクス」という言葉は、使用する研究者によってさまざまな定義があります。サイエントメトリクス分析とは、簡単に言えば、主にビブリオメトリクスと特許指標に基づいて、イノベーションシステムを定量的に評価することです。この評価では、分野ごとの論文出版数が研究活動の指標になります。同様に、特許分析においては、研究機関/国の特許数(申請数および取得数)が科学技術活動の指標になります。つまりこの論文では、エビデンスベースの政策立案によって、アフリカの研究環境を整備していくことの重要性を主張したのです。

サイエントメトリクスのどの部分に関心をお待ちなのでしょうか。

出版に関連した指標に関心があります。とくに、生産性や引用の影響度、科学的コラボレーションの指標の評価に関するものです。また、研究のアウトプットとインパクトに関する、国や研究機関単位での比較も行なってみたいと思っています。

発展途上国をはじめとして、全世界の持続的成長や発展に繋がる政策研究への関与が目標だと述べておられますが、これについて詳しく教えて頂けますか?

ナイジェリアが抱えている問題は、政策を作れないことではなく、それを実行する術を知らないことです。この状況については、「Breaking the jinx: A Neo-Synthesis Approach to Successful Implementation of Nigeria’s National ICT Strategic Framework 2015-2020(ジンクスを破ろう: 2015~2020年のナイジェリアのICT戦略的構想を実現するための新たな総合的アプローチ)」と題した学会論文の中で詳しく論じ、ニューデリーで開催された国際学会(Innovative Research in Mechanical, Electrical, Civil, Computing and Information Technology、MECIT-2017)で発表しました。ナイジェリアの研究活動は、社会的な問題や課題を解決するためではなく、研究者が所属機関で昇進することが目的になっています。目的が達成されれば、研究成果を、人類や周辺環境に価値を与える手段に転換しようとする努力をしなくなってしまいます。2012年8月にInternational Journal of Innovation Management and Technology(IJIMT)誌に掲載された私の初めての論文「Strategic Approach to Research and Development (R&D) Commercialization in Nigeria(ナイジェリアにおけるR&Dの商業化のための戦略的アプローチ)」(vol 3 No 4 pp 382-386)では、連邦科学技術省(FMST)の各研究機関が任務として作り出した200以上のR&Dアウトプットを利用して、失業中の若者の雇用創出を含む、ナイジェリアの社会経済的発展を目指すセーフティネットとしての状況解決モデルを提唱しています。このように、私はいつも社会の重大課題を特定し、それを解決するための適切なモデルの提唱を目指して研究に取り組んできました。

研究と政策にはどのような関係/繋がりがありますか?研究者と政策決定者はどの部分で協力できるのでしょうか。また、どのように協力すべきだとお考えですか?

政策が上手くいくかどうかは、それが研究によってどの程度裏付けられたものであるかによって決まります。研究が完了すると、結果をもとに立案した政策を、政策決定者に提案します。ほとんどの政策は、それがいかに環境やシステムを改善するかという観点で政策決定者を説得することに焦点が当てられます。したがって、研究と政策は共生関係にあると言えるでしょう。また、政策は研究の方向性や重要性を決定するものでもあります。すべての政策文書には、いわゆる「実行計画/構想」が含まれており、「実行計画書」という書類が別途用意されている場合もあります。いずれにせよ、すべての政策は、変化を必要とする理由が示された研究によって裏付けられている必要があります。政策立案プロセスでは、課題設定の段階から監視・評価の段階まで、研究が鍵になります。研究によって示されたエビデンスが確かであるほど、政策提案の説得力も強化されます。したがって、研究者と政策決定者は、政策の立案と施行において、効率的かつ持続的なコミュニケーション体制の中で協同する必要があります。

研究者が、「政策に影響を与える立場にある」ことへの意識を高めるには、どのようなことが必要ですか?

研究者は、政策の立案と施行のあらゆる段階に関わっていなければなりません。研究者が政策に影響を与え続けるには、政府や関連助成機関が、研究・学術機関と政策決定者間のコミュニケーションを強固なものにする必要があります。政府や政策決定者が政策を動かす「運転手」であるなら、研究者はその効果的な施行に責任を負う「整備士」と言えるでしょう。


アデレケ氏、興味深いお話をありがとうございました!

自然科学分野の論文を書くときに注意すべき5つのこと

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自然科学分野の論文を書くときに注意すべき5つのこと

研究論文の執筆では、自然科学分野をはじめとする学問分野ごとに、独自の慣習があります。言葉を正しく使うことは常に重要ですが、他分野と比較して、自然科学分野の論文に頻発するミスというものがあります。本記事では、非英語ネイティブの著者が論文執筆時に犯しがちなミスの例を、いくつか紹介します。

研究論文の執筆では、自然科学分野をはじめとする学問分野ごとに、独自の慣習があります。言葉を正しく使うことは常に重要ですが、研究者/学術編集者として経験を重ねる中で気づいたことがあります。それは、他分野と比較して、自然科学分野の論文で頻発するミスがあるということです。この記事では、非英語ネイティブの著者が論文執筆時に犯しがちなミスの例を、いくつか紹介したいと思います。


1. 離散値には可算名詞を使う


数量を示す単語の使用に、混乱が見られるケースがあります。離散値であるかどうかが明示されている場合には、可算名詞を使う必要があります。可算名詞とは、数えられるものを指します(apple/apples、mole/moles、atom/atomsなど)。たとえば、反応によってさまざまな「functional groups」(官能基)が生成されることや、反応によって特定の「functional group」が増加することを説明する場合、数えることができる「functional group/functional groups」は、可算名詞です。これを踏まえて、次の例文を見てみましょう:


It was observed that the alcohol produced increased.


この場合、「functional groups」が増加したと説明すると混乱が生じます。増加や減少は量の変化を表す言葉ですが、「alcohol」は量では表せないからです。したがって、適切な語を使って、何が変化したのかを明確に説明しなければなりません。上の例文は、意図する内容によって以下の2通りの表現に書き換えることができます:


A variety of different alcohols–primary and secondary–were produced. (さまざまなアルコール[第一および第二]が生成された。)


または


The number of alcohol groups produced increased. (生成されたアルコール基の数が増加した。)


2. 図について適切な言葉で説明する


スペクトルは、材料やプロセスに関する何らかの事実を把握しやすくする視覚資料で、位置の違いで異なる意味を表します。たとえば、赤外線スペクトルは、所定の範囲のさまざまな吸収周波数を表し、質量スペクトルは、質量対電荷比それぞれの同位体比を表します。しかし、スペクトルはあくまで「図」であり、その他すべての図表がそうであるように、「measure(測定)」できるものではありません。したがって、スペクトルを得る過程について述べる場合は、「obtaining(取得)」、「acquiring(入手)」、「recording(記録)」といった言葉を使わなければなりません。言及すべきスペクトルが複数あって、繰り返し表現を避けたいときは、これらの言葉を代わる代わる使うとともに、さらに受動態・能動態表現を組み合わせれば、表現豊かな文章に仕上がるでしょう。また、スペクトルのピークには値が、バンドには範囲がありますが、ピーク/バンドは「measured(測定された)」ではなく、「observed(観察された)」、「seen(見られた)」といった表現が適切です。なぜなら、分光法は手動で測定するものではなく、機器が自動的に測定するものであり、私たちは表示された結果を使用しているにすぎないからです。


以上の注意点を踏まえて、次の例文を見てみましょう:


誤: The IR spectrum for compound X was measured (Figure 5).


正: The IR spectrum for compound X was acquired (Figure 5). (化合物XのIRスペクトルを得た[図5]。)

誤: A diffraction peak was measured at 2θ = 65.5°.

正: The sample showed a diffraction peak at 2θ = 65.5°. (サンプルは2θ = 65.5°で回析ピークを示した。)


または


正: A diffraction peak was observed at 2θ = 65.5°. (2θ = 65.5°で回析ピークが観察された。)


3. 前置詞/記号を正しく使って 範囲を表す


前置詞は、連続した組み合わせで使うことで、作用/現象を示すことがよくあります。しかしながら、呼応していない前置詞同士を組み合わせると、意図する内容が変わってしまったり、文法的に不正確な構造になってしまったりする可能性があります。


例:  I travelled from New York to San Francisco. (私はニューヨークからサンフランシスコまで移動した。)


この場合は「from」と「to」が対になり、移動したことを示しています。次の例文のように、どちらか一方を別の前置詞に置き換えると、意味の変化や文法的な誤りに繋がります:


I travelled between New York to San Francisco.


ただし、次の文は適切です:


The train travels between New York and San Francisco. (その電車はニューヨークサンフランシスコの間を走っている。)


また、以下の文章は不適切です:


The concentration was varied between 10–25 moldm-3.


「10–25」の「–」は、「to」の省略表現です。範囲を示すときは、以下が適切です:


The concentration was varied from 10 to 25 moldm-3. (濃度は10から25 moldm-3の範囲で変化した。)


または


The concentration was varied between 10 and 25 moldm-3. (濃度は10から25 moldm-3の間で変化した。)


もしくは


The concentration was in the range 10–25 moldm-3. (濃度は10–25 moldm-3の範囲だった。)


4. 修飾語での単数形の使い方


単語を形容詞や複合形容詞の一部として使う際に、複数形にしているケースがよく見られます。たとえば、「The reactant concentrations were monitored(反応物質の濃度をモニターした)」という文の「reactant」は、形容詞として使われています。形容詞は名詞を修飾する言葉で、たとえば、「red rose」の「red」は、「rose」を修飾する形容詞です。


同様に、「nanoparticle-modified electrode(ナノ粒子修飾電極) 」の下線部は、複合形容詞です。複合形容詞とは、それに続く名詞を修飾する、2語以上の形容詞のことです。この例では、複合形容詞で「electrode」を修飾しており、「nanoparticle」によって「modified」されていることを説明しています。したがって、「reactants」や「nanoparticles」が複数であっても、「reactants concentration」や「nanoparticles-modified electrode」という表現は誤りであることが分かります。なぜなら、形容詞は複数形にならないからです(「a five-dollar note」とは言っても、「a five-dollars note」とは言いません)。


おまけ:  略語を最初に用いるとき(括弧で定義するとき)は単数形で表記しなければならないと誤解しているケースをよく見かけますが、これは誤りです。略語であっても、元の単語が単数か複数かを、正しく反映させなければなりません:


誤: Advanced oxidation processes (AOP) are relatively cost-effective options for water purification and wastewater treatment.


正: Advanced oxidation processes (AOPs) are relatively cost-effective options for water purification and wastewater treatment.(促進酸化処理(AOPs)は、浄水や廃水処理において相対的に費用対効果の高い方法である。)


5. 大文字の使い方


定数(Avogadro numberなど)、技術名(Raman spectroscopyなど)、反応名、プロット名(Koutecky–Levich plotなど)が人物にちなんで名付けられている場合、それらは固有名詞なので、語頭を大文字にします。ただし、「faradaic(ファラデー)」(faradaic currentなど)や「coulombic(クーロン)」(coulombic efficiencyなど)、「ohmic(オーム)」(ohmic dropなど)などのように、人物由来の名称であっても大文字にしない場合もあります。これらの用語は、現象を表す一般用語と見なされ、形容詞や副詞として使われるため、大文字を使わないのです。また、特定のプロセスやメソッドが、発見者にちなんで名付けられている場合も同様です(galvanisationなど)。一方、「Haber process(ハーバー法)」の「Haber」は、形容詞や副詞ではなく、名詞としてそのまま使われています。このような場合は、語頭を大文字にしなければなりません。また、「Å」、「W」、「J」、「K」などの単位は大文字で表記しますが、正式名称で表す場合はそれぞれ、「angstrom」、「watt」、「joule」、「kelvin」のように、語頭は小文字にします。


ミスを避けながら明瞭に述べるための重要なチェックポイントを、以下にまとめました:
 

  1. 数量と質を明確に区別する
  2. スペクトル、ピーク、バンドなどに言及する場合は、言葉の選択に注意する
  3. 前置詞を正しく選ぶ
  4. 単数形/複数形を適切に使い分ける
  5. 大文字/小文字を正しく使い分ける


見過ごされがちなディテールに目を向けることで、皆さんのライティングスキルが向上し、明らかなミスを回避できるようになることを願っています。


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雑誌編集局からの大学倫理審査委員会の直接接触

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日本の医系学会の英文誌に投稿しました(結果はリジェクト)。審査過程で、英文誌事務局から著者の所属大学の倫理審査委員会にあてに、当該研究に関する倫理審査書類を提出するように連絡が入りました。既に投稿論文中に倫理審査番号は記載してあり、投稿規定に従い承認通知のコピー(日本語)も雑誌に送った後の事で大変驚いたと同時に非常に憤慨しました。一応倫理員会からは全書類を送付してもらいました。しかし、投稿規定にも書かれていない事を要求しており、納得がいきません。日本学会の英文誌ですが、外国人投稿者も多数おり、同様な問い合わせをしているとも思えません。このようなことは最近の常識となっているのでしょうか?お教えください。

回答

一般的に、すでに著者から文書が提出されているのであれば、ジャーナルが倫理審査委員会に個別に接触を行なって文書を要求することはありません。しかしながら、とくにそうする必要があると判断されれば、絶対にないとも言えません。たとえば、テーマがセンシティブなもので、念のために倫理審査委員会から確認を取っておきたいときなどです。あるいは、あなたが提出したもの以外の別の文書が必要な場合や、特殊な様式の承認書が必要なケースもあるでしょう。今回のことで、とくに憤慨する必要はないと思います。もちろん一般的なケースとは言えませんが、こうした例外はときには起こるものです。また、学術不正の疑いが生じているのであれば、ジャーナルはもっと注意深く対処したはずです。むしろ、倫理審査書類が真正なものであるかどうかをわざわざ確認したという意味で、このジャーナルは褒められるべきかもしれません。あなたが不正な行為をしていない限り、何も心配する必要はありません。今回の件は、倫理的な出版に配慮している良質なジャーナルを選んだことの証とも言えるでしょう。


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論文へのLetter to the Editorに対する対応

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自身の論文に対するletter to the editorで疑問・反論が出された時、どのように対応するのでしょう? 無視してよいのか、施設が移りデータアクセス権が無いときどうするか、もうほかの分野の研究に移ってしまい時間が無い等々。 教えていただけますでしょうか。

回答

「データアクセス権が無い」とは、ご自身の論文を書いたときに使ったデータにアクセスできないということでしょうか?あるいは、論文が掲載されたジャーナルをもう購読していないので、自分の論文を閲覧することができないということでしょうか。


いずれにせよ、まずは"Letter to the Editor"によく目を通すことをお勧めします。"Letter to the Editor"自体にアクセスできないということであれば、ジャーナル編集者に連絡して、コピーを送ってもらうよう頼んでみましょう。よく読んだ上で、返事をすべきか無視すべきかどうかを見極めてください。


返事をすることに決めたら、一つ一つの指摘に回答する反論レターを書いて、編集者に送りましょう。編集者は、それをLetterへの回答として出版することができます。あるいは、論文は出版された状態が保たれているので(ジャーナルがあなたの論文を撤回したわけではないと思いますので)、Letterを無視することも可能です。しかしながら、Letter to the Editorもまた、あらゆる読者の目に触れる状態にあるので、それに基づいた見方が形成されていく可能性があります。したがって、そのLetterがあなたの研究の信頼性に疑問を投げかけるものなら、無視せずに回答することが望ましいでしょう。その「結果」が、なぜどのように導かれたのかを説明するのは、著者であるあなたの責任であるからです。


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ハゲタカ出版社を見抜くためのチェックリスト

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ハゲタカ出版社を見抜くためのチェックリスト

ハゲタカ出版社がちらつかせる安易な出版ルートは、研究者にとって好都合な申し出であるため、その罠に多くの研究者が引っかかってしまっています。学術出版界を守るためにも、著者は、本物と偽物のジャーナルを見分ける術を学び、自己防衛を行う必要があります。

ハゲタカ出版社とは、多くの場合、査読という重要なプロセスを経ずに、著者に高額な論文掲載料を要求したり、出版を保証したりする出版社を指します。ハゲタカ出版社がちらつかせる安易な出版ルートは、研究者にとって好都合な申し出であるため、その罠に多くの研究者が引っかかってしまっています。このような疑わしい組織が低品質な研究を生産するビジネスを行うと、研究者のみならず、学術出版全体が損失を被る危険性があります。学術出版界を守るためにも、著者は、本物と偽物のジャーナルを見分ける術を学び、自己防衛を行う必要があります。以下の図は、論文を投稿するジャーナルを選ぶ際の注意点をまとめたチェックリストです。(ジャーナルのウェブサイトをチェックする際の確認事項を中心にリスト化したものです。)


※こちらの図は、PDF版のダウンロードが可能です。プリントするなどして、参考資料としてお気軽にご利用ください。


ハゲタカ出版社を見抜くためのチェックリスト
 

確認事項

チェック内容

連絡先

・ジャーナルのウェブサイトに正式な連絡先情報が記載されているか

・有効な連絡先が記載されているか

対象領域

・複数の領域が対象となっていないか

・相互の関連性が低い、広範な分野が対象となっていないか

編集委員会

・専門分野とのつながりが深い、著名な研究者が含まれているか(ヒント: ジャーナルとの関係について、何人かに問い合わせてみましょう)

論文掲載料の方針

・高額な論文掲載料を要求していないか(ヒント:投稿前に確認すること)

掲載論文の質

・良質な論文を掲載しているか(ヒント: 上司や指導教官の評価を聞いてみましょう)

査読プロセス

・ウェブサイトに査読プロセスが明記されているか(ヒント: 信頼できるジャーナルであれば、たいがい明記されている)

インデックス情報

・著名な出版社協会のメンバーか

・ICV*を採用していないか

論文の撤回方針

・論文の撤回方針を明確にしているか(ヒント: 投稿規定などを確認しましょう)

著者へのアピール

・出版や迅速な査読を保証していないか(ヒント: 話がうますぎる場合は疑ってかかりましょう)

Eメールによる招待

・編集者やスタッフのEメールアカウントは、出版社/ジャーナル固有のものか

*ICV(Index Copernicus Value):疑わしいジャーナルの評価基準で、ハゲタカジャーナルが好んで使用しています。高名なジャーナルがICVをウェブサイトに記載していることはありません。
 

A checklist for identifying predatory puiblishers

 

参考記事:

                                                                                   


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論文のキーワードはなぜ重要なのですか?

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論文のキーワードの重要性について教えてください。

回答

論文執筆において、文献調査は欠かせない作業です。インターネットで文献検索を行うときは、関連性の高い文献を探り当てられなければなりません。キーワードを設定する目的は、ほかの研究者が関連テーマを検索したときに、その検索網に自分の論文が引っかかりやすいようにすることです。キーワードを設定することで、専門分野、関連分野、テーマ、研究課題などを定義づけることができます。多くの検索エンジン、データベース、ジャーナルウェブサイトは、キーワードを使って、関連分野の読者向けにその論文を掲載するかどうかや、掲載のタイミングを判断しています。キーワードによって論文が検索されやすくなれば、被引用数も増えます。だからこそ、論文のテーマと関連性が高く、検索されやすいキーワードを設定することが重要なのです。


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エルゼビア社のジャーナルの”Data in Brief"について

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エルゼビア社医系雑誌の査読後に再投稿となりました。再投稿に際して、”Data in Brief"への補足データの投稿もオプションで勧められました。”Data in Brief"はいわゆるデータジャーナルかと思います。今回のように他雑誌投稿時にデータジャーナル投稿を勧められることは常態化するのでしょうか?データジャーナル投稿内容が元の論文と類似してしまうと二重投稿になるように思えますが、如何でしょうか?お教え下さい。宜しくお願いします。

回答

Data in Brief誌は、公になっているリサーチデータをリポジトリで公開したり、Data in Brief論文としてそのまま出版したりするものです。エルゼビアの医系雑誌に論文を投稿しているとのことなので、原稿に関連するデータをData in Brief誌に送るか否かは、あなたが決めることができます。どちらを選んだとしても、原稿の査読プロセスに影響はありません。


投稿中のジャーナルでのアクセプトが決まったら、あなたの原稿の補足データは、その後の出版のために、Data in Brief誌に直接送られます。データは、別途査読を受けて出版されることになります。これは、データの利用と再現性の拡大を目指す倫理的行為と言えるので、二重投稿には当たりません。


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博士論文の審査メンバー

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博士論文の審査メンバーに指導教官は入ることができるのでしょうか。また、審査メンバーは最終結果を出す投票権があるのですが、指導教官に投票権は与えられるべきなのでしょうか?そのようなシステムを採用している国等があれば、示唆頂ければ幸いです。

回答

たいていの国では、博士課程の指導教官も、博士論文の審査メンバーの一人となっています。そして、博士論文の評価と最終判定について、他メンバーと同じ責任を負います。また、博士論文は英語ネイティブの審査員か外国人審査員のレビューを受けなければならない、という国も多いようです。論文審査の後は通常、口頭試問を行いますが、博士課程の指導教官は、この口頭試問の審査員も務めるのが一般的です。


博士論文の評価は、ほとんどの国がこの方式で行なっているようです。


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Should my professor be the first author of my research?

Sci-Hub、エルゼビアに対する著作権侵害で1500万ドルの賠償を命じられる

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Sci-Hub、エルゼビアに対する著作権侵害で1500万ドルの賠償を命じられる

米連邦地方裁判所は2017年6月、学術論文の海賊版を無料で提供するウェブサイト、Sci-Hubに対し、エルゼビアに1500万ドルの賠償金を支払うよう命じました。エルゼビアは、科学・技術・医療情報を提供する世界最大手の出版社で、Sci-Hubで公開されている論文数がもっとも多い組織の1つです。

 米連邦地方裁判所は2017年6月、学術論文の海賊版を無料で提供するウェブサイト、Sci-Hubに対し、エルゼビア社(オランダ)に1500万ドルの賠償金を支払うよう命じました。エルゼビアは、科学・技術・医療情報を提供する世界最大手の出版社で、シュプリンガー・ネイチャー、ワイリー・ブラックウェル、米国化学会と並び、Sci-Hubで公開されている論文数がもっとも多い組織の1つです。


エルゼビアは、Sci-HubとLibrary Genesis Project(Libgen)に対し、「自社が著作権を持つ論文に違法にアクセスし、公開している」として、2015年に訴訟を起こしていました。ニューヨーク地方裁判所の裁判官、ロバート・スウィート(Robert Sweet)氏は、「米国の著作権法に違反しているため、これらのサイトはサービスを停止すべき」との判断を下しました。しかし、Sci-Hubの運営者が異なるドメイン名やIPアドレスを駆使してサイトの運営を続けていたことを受け、エルゼビアは、永続的なサイトの閉鎖と併せ、100点以上の論文を違法に公開されたことへの損害賠償1500万ドルを要求しました。公判では、Sci-Hub創始者のアレクサンドラ・エルバキアン(Alexandra Elbakyan)氏に弁護士が付いていなかったこともあり、判決はエルゼビア側の言い分に沿ったものとなりました。ただ、エルバキアン氏が損害賠償の支払いに応じるかどうかは不透明です。


同氏は、研究者の文献アクセスの障壁をなくすためにサイトを立ち上げた、との主張を崩していません。米国出版社協会(AAS)のマリア・A・パランテ(Maria A. Pallante)会長兼CEOは、「裁判所は、公共の利益のための違法行為を容認しないという点で正しい判断を下した」と述べています。しかし、同サイトが違法であるとの見解を示す研究者がいる一方、高い支持を集めているという事実は、学術論文のアクセシビリティの問題を浮き彫りにしています。エルゼビアの高額な購読料を図書館や研究機関が賄うことが難しくなってきている現状には反発があり、台湾、ドイツ、オランダなどの学術機関は、より公正な購読料での契約を求めています。また、Sci-Hubはロシアで運営されているため、海賊版論文の公開を続けるサイトを米国の法律で取り締まれるのか、という点にも注目が集まっています。


続報: 2017年6月28日、米国化学会(ACS)はSci-Hubに対し、米連邦地方裁判所で訴訟を起こすという行動をとりました。ACS対外関係広報部長の グレン・ラスキン(Glenn Ruskin)氏は、Sci-HubがACSの偽サイトを運営しているとし、「Sci-Hubは、ACSから盗んだ著作物(科学論文、書籍)を偽サイトで違法に公開している上、ACSの複数の商標を違法に偽造・複製している」と主張しています。ACSは裁判所に対し、Sci-Hubへの指導、ACSの裁判費用の負担、ACSのコンテンツの違法公開の停止などを含め、Sci-Hubへの処置を求めています。


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60以上の学術機関がエルゼビア発行誌へのアクセスを失う(ドイツ)

Sci-Hub: The ongoing debate over piracy versus universal access to research

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