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論文執筆で避けるべき6つのミス(前半)

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ジャーナルに投稿する論文を書くことは、ストレスがつきまとうものです。句読点や校正、文体や書式など、気をつけるべき点を挙げたら枚挙にいとまがありません!著者が犯しがちなミスを誰かが教えてくれて、同じミスを避けることができたら、ありがたいと思いませんか?エディテージのベテラントレーナーを務めるJohn McDonaldが、論文執筆でよくあるミスをリストアップし、その避け方を解説します。


前半では、数字や記号の使い方でよくあるミスを、原稿を見直すことで簡単に防げる方法をご紹介します。


後半もお楽しみに!

 


惑星滞在シミュレーションとして、200日間の隔離実験を開始―中国

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惑星滞在シミュレーションとして、200日間の隔離実験を開始―中国

4人の学生が2部屋の密室で、200日間にわたって外界から遮断された生活を送る――これは、宇宙ステーションを模した閉鎖環境での長期滞在実験、Lunar Palace 365の概要です。2017年7月初旬、将来の宇宙探索を見越した予備的プロジェクトの一環であるこの実験を、北京航空航天大学に所属する宇宙飛行士候補生である4名の学生たちがスタートさせました。

4人の学生が2部屋の密室で、200日間にわたって外界から遮断された生活を送る――これは、宇宙ステーションを模した閉鎖環境での長期滞在実験、Lunar Palace 365の概要です。2017年7月初旬、将来の宇宙探索を見越した予備的プロジェクトの一環であるこの実験を、北京航空航天大学に所属する宇宙飛行士候補生である4名の学生たちがスタートさせました。


この実験のため、北京郊外に、最小限の資源で生活できる自律型施設が建設されました。閉鎖環境での生活には、さまざまな身体的・精神的困難が伴います。月や火星での限られた資源環境での滞在を想定して、酸素は施設内の植物から生産し、飲料水は尿を再利用したもので賄います。


これだけでも厳しい生活環境ですが、さらに、外界から遮断されて暮らすことによる精神的影響とも向き合う必要があります。日の射さない閉ざされた環境に長期間滞在することによって、うつ症状が引き起こされる可能性も指摘されています。このため、学生らの意欲や幸福度を維持できるよう、日々こなすべきタスクが設定されています。


中国はこの実験を、閉鎖環境での長期間の生活に伴うリスクを把握するためのもの、と位置付けています。中国は、2018年に月の裏側に初の探査機を送り込むことを目指し、宇宙探査で世界をリードすることを見据えています。この実験から得られる知見は、他国の宇宙探査プログラムに追いつくための足掛かりとなるでしょう。

ジャーナルの剽窃チェックをクリアするには、どのような点に気を付けて論文を修正すればいいですか?

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Question Description: 

剽窃チェックで類似度19%と判定されたため、SCIジャーナルに論文がリジェクトされました。できる限りの手直しは行いましたが、剽窃チェックをクリアするために、とくに気を付けるべき点はありますか?

回答

ご苦労をお察しします。英文の書き換えは、非英語ネイティブにとってはとても難しい場合があります。剽窃チェックの後に論文を手直しされたということなので、重複度は確実に下がっているはずです。それでもまだ安心できないという場合は、剽窃チェックサービスや、剽窃チェックができる学術論文執筆用のツール/ソフトの助けを借りてみるのもよいでしょう。オンライン上では、iThenticatePlagTrackerViperなど、さまざまなサービスが提供されています。中には無料のサービスもありますので、まだ重複した箇所が多いかどうかを見極めるのに役立つでしょう。重複度がまだ高そうなら、論文にさらに手を加える必要があるでしょう。


論文を修正する際は、以下のことに注意してください:

·         概念やアイデアをほかの論文から借用する際は、たとえ自分の言葉で言い換えたとしても、必ず出典を明記する。

·         原典と同じ言い回しを使用する際は、必ず引用符を使う。

·         自分の過去の論文に書いた概念やアイデアを使う場合も、出典を明記する必要がある。これを怠ると自己剽窃とみなされる。


可能であれば、英語ネイティブの同僚や友人に、パラフレーズ(言い換え)を手伝ってもらえるよう頼んでみましょう。もしくは、プロに頼るも一案です。エディテージでも、剽窃チェックサービスを提供しています。


こちらの記事も参考にしてください:

剽窃検知ソフトを使用している編集者はどれくらいいるでしょうか?

回避可能なミストップ10

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回避可能なミストップ10

論文投稿から最終判定までには長い時間を要しますが、よくあるミスをなくすことで、このプロセスを速めることができます。米国医師会(AMA)のスタイルマニュアルを編集したジャーナル編集者委員会が、投稿論文でよく目にするミスのトップ10リストを作成しました。

ジャーナルに論文を投稿してから最終判定を受けるまでには、長い時間を要します。著者は、よくある単純なミスをなくすことで、このプロセスを速めることができます。これらのミスが具体的にどのようなものか、ご存知ですか?


米国医師会(AMA)のスタイルマニュアルを編集したジャーナル編集者委員会が、投稿論文でよく目にするミスのトップ10リストを作成しました。以下の図は、トップ10のミスと、その避け方をまとめたものです。これらのミスを解消できればリジェクトを避けられるというわけではありませんが、出版プロセスの無用な遅延は、間違いなく防げるでしょう。


※こちらの図はPDF版のダウンロードが可能です。プリントするなどして参考資料としてお気軽にご利用ください。


回避可能なミストップ10(ジャーナル編集者によるリスト)
 

1.     ジャーナルの投稿規定を無視している

  • 字数制限、ページの余白、ページ番号の振り方、スペーシング、引用方法、(参考文献やアブストラクトなどの)フォーマットなど、すべての投稿規定に従いましょう。
  • カバーレターの中に、投稿規定を読んでいないことやそれに従っていないことを示唆するような文言を含めないよう注意しましょう。

2.     データが矛盾している

  • 本文中のデータの数値や単位が、図表と一致していることを確認しましょう。
  • 投稿前に、引用したデータに誤りがないことを必ず確認しましょう。

3.     参考文献・引用に関するジャーナルの規定を無視している

  • 参考文献に抜けがないか、記載した参考文献に不正確な部分がないか、フォーマットに誤りがないかを確認しましょう。
  • 引用箇所に番号を振って、参考文献リストと対応させましょう。引用回数に関係なく、それぞれの固有の番号を変更しないようにしてください。

4.     被験者の個人情報を晒す

  • 被験者が特定される可能性のある情報が論文に含まれている場合は、インフォームドコンセントを得る必要があります。
  • 被験者と連絡が取れない、同意が得られないなどの場合は、除外すべき個人情報について編集者と相談しましょう。

5.     結論を誇張している

  • 結論は、得られたデータのみから導くものです。研究のインパクトを過度に主張しないようにしましょう。
  • 選択的に結果を解釈するのは控えましょう。ネガティブまたはニュートラルな結果を無視して、ポジティブな結果だけに目を向けることのないようにしてください。

6.     句読点や書式にミスがある

  • 間違えやすい句読点のミスに気を付けましょう。emダッシュ、カンマ、括弧を使用すべき箇所など、正しい句読点の使い方をマスターしましょう。
  • 略語は正式名称で記します。同じ用語が複数回登場する場合は、表記の揺れがないか確認しましょう。

7.     補足説明が不足している

  • 著者にとって自明なことが、読者にとっても自明とは限りません。説明を怠らないようにしましょう。
  • 補足説明(例 「表に示したデータは丸めた数値である」など)は脚注で行いましょう。

8.     必要書類に記入漏れや誤りがある

  • ジャーナルが求めるすべての書類(オーサーシップや利益相反についてなど)に、誤りや記入漏れがないか確認しましょう。
  • 不足している書類がないか確認しましょう。ここを確実にすれば、出版プロセスのむやみな遅延を防げるでしょう。

9.     二重投稿の可能性がある

  • 同じ論文、または論文の一部を2誌以上のジャーナルに同時に投稿してはいけません。このような行為は、出版倫理違反とみなされます。
  • 投稿先が国内誌でも国際誌でも、また読者層が異なっていても、二重投稿であることに変わりはありません。

10. 編集者による変更を理解していない

  • 編集者が変更を加えた理由を理解しないまま、変更の理由を問い合わせるのはやめましょう。
  • 変更について慌てて質問する前に、編集済みの論文と編集者からのカバーレターをよく読みましょう。

 

Top 10 avoidable mistakes as an author


関連記事:
論文投稿における著者によるミストップ10

論文執筆で避けるべき6つのミス(後半)

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本ビデオの前半では、エディテージのベテラントレーナーJohn McDonaldが、論文執筆時に著者が犯しがちな、数字に関する3つのミスを紹介しました。後半の今回は、その他の3つのタイプのミスを紹介します。
 

·         原稿内の図表を参照するときの時制

·         主語と動詞の一致

·         単文の使いすぎによる、伝達情報の重複 


また、'respectively'という単語を使う際の役立つヒントもご紹介しています。本シリーズ記事での説明から明らかなように、校正は、原稿準備に欠かせない作業です。徹底的な校正を行なって、安易なミスや明らかなミスをなくしましょう。

投稿時にSCI-Eに収載されていたジャーナルが、現在はリストから外されているようです。

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Question Description: 

2015年に論文を投稿したジャーナルは、当時SCI-E(Science Citation Indexed Expanded)に収載されていました。論文は現在(2016年11月24日)も査読中ですが、2016年になったら、そのジャーナルはSCI-Eの索引から外れてしまいました。この場合、論文は大学からどのように評価されますか?論文を投稿した時点では、確かにSCI-Eに掲載されていました。ご回答よろしくお願いいたします。

回答

トムソン・ロイターのジャーナル選定プロセスによると、「Web of Science Core Collectionに追加/削除されたジャーナルの審査は年間を通して継続的に行われており…(中略)…さらに、Web of Science Core Collectionに収載中のジャーナルも常に見直しを行なっています。収載中のジャーナルについては、その高い水準を維持しているかどうか、収載載に値するかどうかをモニターしています」と記載されているので、基準を満たせなくなったジャーナルがリストから外れたとしても不思議はありません。大学側がこのことを把握していればベストですが、念のため、論文を投稿したジャーナルが2015年時点では収載されていたことを示す証拠のコピーを取っておきましょう。そうすれば、大学から何か指摘された場合に、明確に回答することができます。また、履歴書や業績リストなど、ジャーナル名を記載しなければならない書類には、「2015年にSCIEに収載」と補足するとよいでしょう。


関連記事:

惑星科学者らが待ち望む本格的な「模擬砂」の開発

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惑星科学者らが待ち望む本格的な「模擬砂」の開発

惑星科学者は、実験やシミュレーションで、月面を再現するために開発された人工の模擬砂を使用しています。しかし、この模擬砂は、実際の宇宙の砂とは物理的・化学的に特性が異なるため、誤った研究結果が生み出される危険性があります。

宇宙研究に影響を及ぼす可能性があるさまざまな要素の中で、もっとも懸念されているのは、宇宙の砂を再現した実験用の「模擬砂」の再現度が低いということでしょう。惑星科学者は、実験やシミュレーションで、月面を再現するために開発された人工の模擬砂を使用しています。しかし、この模擬砂は、実際の宇宙の砂とは物理的・化学的に特性が異なるため、誤った研究結果が生み出される危険性があります。


模擬砂は主に、灰、砂岩、砂、れんが粉、ガラスビーズなどで構成されており、基本的には、宇宙開発機関や研究機関が製造しています。現在までにさまざまな模擬砂が開発されており、月面の土壌を再現したものだけでも30種類以上があります。しかし、模擬砂の開発プロセスは非科学的である場合が多く、これらを使用した研究からは、誤った結果が生み出される可能性があるのです。たとえば、ローバー(探査機)の走行試験のために開発された模擬砂を、月の地球化学的特性についての研究に用いることはできません。


NASAは、このような懸念の解消を目指し、既存の模擬砂の物理特性を分析するためのチームを結成しました。また、ある小惑星探査企業は、科学的手法に基づくより本物に近い模擬砂の開発に着手して、4種類の小惑星の土壌を再現することを目指しています。


模擬砂は、宇宙で使用するローバーやドリルなどの性能試験に欠かせない材料です。科学的手法に基づいた、高精度で信頼性の高い模擬砂の開発方法が確立されれば、誤った研究結果を招く危険性を大幅に抑えられるでしょう。


イメージソース: Google images

分析法バリデーションのガイドライン: 論文の再現不可能性と撤回を避けるには

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分析法バリデーションのガイドライン: 論文の再現不可能性と撤回を避けるには

研究結果が再現不可能であった場合、その論文は出版されるべきではありません。なぜなら、再現不可能な手法を用いれば、ほかの科学者の時間、労力、資源、予算を無駄遣いすることになるからです。再現不可能な論文は撤回されるべきであり、その欠陥を明らかにする必要があります。

とくにハードサイエンス(自然科学)や工学の分野において研究者としてのキャリアを築く上で、実際の実験を行うのは、プロセス全体の一部でしかありません。ハードデータの収集を含む研究開発を進めるためには、事前にデータ収集戦略(一般的に「研究手法」という)を練る必要があります。 研究手法とは、有効なデータを導く実験を行うための具体的な方法のことで、論文の出版前に、再現性や反復性を実証することができるものです。研究者には、研究を慎重に進め、得られたデータの検証(バリデーション)を行い、再現・反復が可能であることを立証する責任があります。生物学、生物化学、生物医療を始めとする分野での研究開発では、実用的で有効な分析データの収集に依存する部分が大きいため、何らかの形の分析手法が必要なのです。


分析法バリデーション(Analytical Method Validation、AMV )


メソッドバリデーションにおいては、分析方法に関する医薬品規制調和国際会議(ICH)など、一般に認められた組織が定めた基準を満たす、最適化された手法を採用する必要があります。ICHは基本的に、規制機関や医薬品、バイオ医薬品業界からの分析法のバリデーション方法に関する情報を取り入れています。ICHのガイドラインの一部は、それらの分析法を検証するために認められたアプローチについて、すべての加盟国の合意が得られています。その後これらが国際製薬機関(米国食品医薬品局、欧州医薬品庁、日本薬剤師会など) による承認を受け、一般的な処方薬としての承認や取引の管理が行われるのです。これらのガイドラインは、機関に管理されていない店頭医薬品には適用されません。分析法バリデーション(AMV)には、併行精度(repeatability)、室間再現精度(reproducibility)、頑健性(robustness)、堅牢性(ruggedness)、システム適合性(system suitability)、検出限界(limits of detection)、定量限界(limits of quantitation)など、多くの項目があります。基本的には、医薬品や生物医薬品および規制対象分野において、最終的に使用される分析科学的手法の妥当性、有用性、再現性を保証することを目的としています。動物実験、ヒト臨床研究、およびマーケティングに関する規制認可を得ようとする企業は、これらのICHガイドラインに準拠する必要があります。ただし、学術誌に論文を投稿する個人は、このガイドラインに従う必要はありません。実際、ジャーナルや編集者、査読者は、著者にAMVの使用に関するガイドラインに従うことを義務付けていません。


分析法の基準を設ける組織はICH以外にも存在しますが、ICHほど知名度の高い機関はありません。ICHは、すべての医薬品や生物医薬品関連企業、関連する慣行、米国食品医薬品局を含む主要規制機関を管理しています。ICHに加え、米国立標準技術研究所(NIST)やその他の科学機関も、バリデーション法の開発・適用に関する独自のガイドラインを設けています。たとえば、バリデーション・テクノロジー研究所(I VT)は、バリデーションを専門とする有名な民間組織で、バリデーションに関するあらゆるテーマを扱う老舗オンライン・ジャーナル、Journal of Validation Technology(JVT)誌を定期刊行しています。


多くの書籍、学術誌、レビュー論文、雑誌、ウェブサイトなどで、AMVについて熱心な議論が展開されています。たとえば、ICHのAMVガイドラインは、オンライン上で簡単に見つけることができます。このガイドラインに関連するキーワードで検索すると、あらゆる機関が発行している文献がヒットします。研究者は、論文投稿に先立ち、独自の手法でAMVを実施するために、これらの基本的ガイドラインを認識しておかなければなりません。また、薬事的承認や規制当局の承認を得るためのメソッドバリデーションは、その他の産業や組織の慣例と異なる場合があることも理解しておく必要があります。一般的に、AMVを実施する科学者のほとんどが、ICHのガイドラインに従っています。しかしながら、米国または海外の規制当局への提出書類において、同ガイドラインの遵守を義務付けられているのは、医薬品・生物医薬品分野だけです。世界中の科学誌の中でも、論文投稿時にこの要求をしているジャーナルはありません。すべてはその場その場の著者の判断に任されているのが現状です。査読者が稀に判断を下すケースもありますが、著者への投稿規定の中で、ICHやAMVに触れられていることはありません。


AMV実施のための基本的ガイドラインの一部を以下で紹介します。
 

1. 併行精度と室間再現精度


化学、生物学、生物化学、医・薬学的な目的において、比較的新しい分析法は、基本的なAMV基準を満たしている必要があります。科学研究の大半は、ハードデータ(平均値を持つ数値、その平均値の標準偏差[SD]、相対標準偏差[RSD、%RSD]、変動係数[CV]など)の収集を目的としています。そして、各測定を何度繰り返したか(n数)を示さなければなりません。米国食品医薬品局は、少なくとも3回は必要、6回以上が望ましい、としています。


測定データが1点しかない科学論文をよしとする査読者や編集者はいないでしょう。しかし、ICHの基準はジャーナル論文には適用されないので、通常は、査読者がAMVに含めるべき項目を定義しています。このため、AMVの定義は、著者や査読者によって異なり、ジャーナルや編集者による指示もありません。


n=1の論文を投稿すれば、著者の信頼が下がるでしょう。ただし、私の知る限り、どの分析ジャーナルもこのような規定を明記していないということを強調しておきたいと思います。著者への投稿規定の中で、ICHのAMVガイドラインに触れている科学誌はありません。つまり、AMVは重要事項であるにも関わらず、その実施に必要なAMVガイドラインは、著者や査読者の判断に委ねられているということです。


すべての分析データは、平均値ごとのすべての数値(およびデータ)と、併行精度、測定回数nを示さなければなりません。また、それぞれの測定値のバラつきをSDや%RSDなどで示します。実験が適切に実施されたなら、これらの偏差は、ごく小さな値であるはずです(1~2%以下)。この場合、併行精度が優れていると言えます。


通常、1人の測定者がすべての測定を一貫して行います。そして、元の測定者と同様の方法と器具を用いて、同様の専門知識、能力を有する別の測定者によって反復されることがあります。基本的に、元の測定者が併行精度の測定を行い、その後同等の資質を持つ別の測定者が、同じ方法で、異なる実験室、器具、試薬、化学薬品などを用いて再現実験を行います。これにより、総合的な室間再現精度が示されます。定量的には、これらの数値のRSD(%RSD)は、数パーセント以下に収まることが求められます。しかしながら、現在のところ、著者に室間再現精度を示すことを求める科学誌は存在せず、著者や査読者の多くも、アクセプト・出版に値する論文に室間再現精度を含める必要があることを認識していません。この事実を言い換えると、ジャーナルのガイドラインや編集者の希望に関わらず、AMVや併行精度、室間制限精度を試行せず、各測定値のデータプロットが1点しかないような論文であっても、出版に値すると考えている著者が存在しているということです。


あるいは、科学は、一個人の独自の手法によって示された知見が、同等の技能や専門性を持つ別の研究者の手に渡り、さらに研究開発が進められて行く、という繰り返しで成り立っているとも言えます。ただし、その結果が再現不可能であった場合、その論文は出版されるべきではありません。なぜなら、再現不可能な手法を用いれば、ほかの科学者の時間、労力、資源、予算を無駄遣いすることになるからです。再現不可能な論文は撤回されるべきであり、その欠陥を明らかにする必要があります。


2. 頑健性と堅牢性


良好な分析法バリデーションを示す指標として、ほかに頑健性や堅牢性などがあります。頑健性は、温度、湿度、溶媒の純度、試薬の原産地、器具の状態、器具の品質、大気圧などのパラメータの変動があっても、その手法が有効であることを示します。頑健性が高いほど、%RSDが(正負に関わらず)0に近い値に収まっていることを示します。測定結果の%RSDが小さいほど、パラメータの微小な変動に対して反応しにくい(信頼性が高い)ということです。頑健性に乏しいということは、測定結果のRSD(%RSD)が大きく、正確な測定を行うためには、きわめて限定的な範囲で実験パラメータの設定を行わなければならないことを意味します。


一方、堅牢性は、反復測定や変動したパラメータ下でも長期的に機能することを示し、RSDが小さいほど、実用的で再現性が高いデータであることを保証するものです。ほとんどの研究者が、実用性、コストパフォーマンス、別の研究施設へのデータ転送のしやすさなどと並んで、頑健性や堅牢性が保証されている分析法を採用するはずです。ICHガイドラインに準拠していない科学論文で、頑健性や堅牢性について議論しているものは皆無です。このような論文のほとんどが、単一の(最適化された)実験パラメータのみを用いてすべて(またはほとんど)のデータを提示しており、頑健性や堅牢性という重要な指標に触れていません。


3. システム適合性試験


最終的には、分析法のシステム適合性試験を行う必要があります。つまり、目的に適う測定結果が得られることを立証しなければなりません。これには、実際の既知のサンプル(実際に同定・定量化する分析物)において、少なくとも2つ以上の成分のシステム適合基準が必要です。この基準は、標準サンプル中に存在するほかの成分からのピークの分離度の基準値を示すために必要です。また、分析対象成分のピークは、標準的な定量分析方法により、高真度かつ高精度で同定・定量が可能である必要があります。ただし、真の定量研究は、事前に実施されたシステム適合性試験を基にして、別の研究として行われます。システム適合性は、実際にサンプルの測定を行う前に、分析システムが適切に動作していることを証明するものです。しかしながら、学術界における研究開発の多くの現場では、これが実施されていないのが現状です。一方、産業界では、実際の測定が実施される前に、システム適合性を評価するのが一般的です。


4. AMVのその他の要素(真度、精度、検出限界など)


研究でデータを収集するための有効な分析法を構成する要素には、ほかにどのようなものがあるでしょうか?設定が簡単、初心者でも使いやすい、メンテナンスが簡単、動作が安定している、コンピュータ制御ができる、素早くデータが取得できる、などの要素は当然重要です。このような基準を満たす分析法があれば、科学の発展は加速するでしょう。ほかにも、真度(分析値と測定値の一致度合い)が高い、各測定値の精度が高い(RSDが小さい)、検出限界/定量限界が小さい、直線性の範囲が広い、などのデータ収集が可能な手法が重要になりますが、何よりもデータの頑健性が大切です。これらの望ましい特性が、自分の、またはその他の測定結果における分析法の中に組み込まれていることが肝心です。

 

AMVを実施するための既存ガイドラインは容易に入手できるにも関わらず、再現不可能な分析法や結果は、依然として頻繁に見られます。このような結果は、しばしば公開済みデータの撤回に繋がり、研究者の評判に深い傷を付けることになります。再現不可能な結果の公開を防ぐ方法はあるでしょうか?統計処理のための十分なデータポイントを含む、すべてのデータ(最低でも、併行精度と室間再現精度)を示すことを研究者が義務付けられていれば、再現不可能なデータが公開されることも、再現不可能性を理由に論文が撤回されることもなくなるでしょう。研究者も、論文撤回によるキャリアや信頼の喪失を免れることができます。つまり、データの発信者とその発信源(実験室)が上記の慣行に従い、良質な科学と確かなデータ/結果を生み出している限り、科学の信頼性と未来は保証されるのではないでしょうか。そしてそれは、あなた自身の未来にも言えることかもしれません。


論文の図表をカラーで出版すると、追加費用が発生しますか?

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Question Description: 

ジャーナルの投稿規定の、次の文章がよく理解できませんでした: 「図表のカラー表示について、オンライン版では追加費用は発生しません。印刷版でもカラー表示は可能ですが、カラー印刷に掛かる費用は著者が全額負担するものとします。カラー印刷費用をお支払い頂いた場合のみ、カラー印刷を承ります」。これは、論文が受理または出版された場合、追加費用の支払いを義務付けられるということですか?印刷版の出版は義務なのでしょうか?ご回答よろしくお願いいたします。

回答

この文章の意味するところは、オンライン版では図表を無料でカラー表示にでき、追加費用は発生しないけれども、印刷版で図表をカラー表示したい場合は、追加費用が発生するということです。一般的に、有料のカラー印刷を選択するかどうかは任意です。論文がアクセプトされたら、編集者から、図表をカラーと白黒のどちらで掲載したいかの意思確認があるはずです。白黒で問題なければ、追加費用は発生しません。現在では、ほとんどのジャーナルがオンライン版と印刷版の両方を発行しており、どちらにも、同じ内容が掲載されます。とくに断りを入れない限り、アクセプトされた論文は、オンライン版と印刷版の両方に掲載されます。

理不尽な掲載料請求に対して

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Question Description: 

先日、ある雑誌の編集部からメールが来て、創刊号に2ページ程度の掲載文のinvitationがありました。オープンジャーナルなので、当方は一切お金を払わない旨を明言し、医学展望のような雑文を送りました。その後一ヶ月くらいたってメールでUS$3600のinvoiceとHPにEdirorialとして文がアップされていました。今回は、雑種HPの投稿の窓口からでなく、編集者に雑文を送っただけです。雑誌のHPを確認したところはオープンジャーナルの掲載手数料にはUS$1800と載っています。この雑誌をしらべたらBeall’s listにのっているハゲタカ雑誌でした。1週間に一回くらいpaymentとメールをよこします。 この場合、反応しないで放置するか、それとも掲載撤回の申し出と上記の経緯から料金は払えない旨の返事をしたほうがよいのでしょうか。(おそらく撤回を認めないなどといってくるでしょうが。)なを、今回は論文でなく雑文なので、HPが閉じられてもなんら影響はないです。

回答

文章を送る前に、背景を調べてみるべきでした。ジャーナルが文章の取り下げの申し出に応じるとは思えませんが、かかわりを断ちたいのであれば、一度試してみましょう。支払いは一切行う気がないこと、文章を非公開にしてほしいことを伝えてみてください。支払いを行わないことは最初に明言しているので、ジャーナルとしても強制はできないはずです。


ジャーナルがあなたの文章を取り下げない場合、それについてはどうしようもありません。支払い請求のメールを無視し続け、ジャーナルとのやり取りをストップするしかないでしょう。


ハゲタカジャーナルとの接点が、研究者としてのあなたの信用や評判に傷をつけないとも限らないので、今後いかなる場合も、Editorialとして公開された今回の文章を、CVやプロフィールに含めないようにしましょう。


関連記事:

論文執筆で避けるべき6つのミス(前半)

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ジャーナルに投稿する論文を書くことは、ストレスがつきまとうものです。句読点や校正、文体や書式など、気をつけるべき点を挙げたら枚挙にいとまがありません!著者が犯しがちなミスを誰かが教えてくれて、同じミスを避けることができたら、ありがたいと思いませんか?エディテージのベテラントレーナーを務めるJohn McDonaldが、論文執筆でよくあるミスをリストアップし、その避け方を解説します。


前半では、数字や記号の使い方でよくあるミスを、原稿を見直すことで簡単に防げる方法をご紹介します。


後半もお楽しみに!

 

惑星滞在シミュレーションとして、200日間の隔離実験を開始―中国

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惑星滞在シミュレーションとして、200日間の隔離実験を開始―中国

4人の学生が2部屋の密室で、200日間にわたって外界から遮断された生活を送る――これは、宇宙ステーションを模した閉鎖環境での長期滞在実験、Lunar Palace 365の概要です。2017年7月初旬、将来の宇宙探索を見越した予備的プロジェクトの一環であるこの実験を、北京航空航天大学に所属する宇宙飛行士候補生である4名の学生たちがスタートさせました。

4人の学生が2部屋の密室で、200日間にわたって外界から遮断された生活を送る――これは、宇宙ステーションを模した閉鎖環境での長期滞在実験、Lunar Palace 365の概要です。2017年7月初旬、将来の宇宙探索を見越した予備的プロジェクトの一環であるこの実験を、北京航空航天大学に所属する宇宙飛行士候補生である4名の学生たちがスタートさせました。


この実験のため、北京郊外に、最小限の資源で生活できる自律型施設が建設されました。閉鎖環境での生活には、さまざまな身体的・精神的困難が伴います。月や火星での限られた資源環境での滞在を想定して、酸素は施設内の植物から生産し、飲料水は尿を再利用したもので賄います。


これだけでも厳しい生活環境ですが、さらに、外界から遮断されて暮らすことによる精神的影響とも向き合う必要があります。日の射さない閉ざされた環境に長期間滞在することによって、うつ症状が引き起こされる可能性も指摘されています。このため、学生らの意欲や幸福度を維持できるよう、日々こなすべきタスクが設定されています。


中国はこの実験を、閉鎖環境での長期間の生活に伴うリスクを把握するためのもの、と位置付けています。中国は、2018年に月の裏側に初の探査機を送り込むことを目指し、宇宙探査で世界をリードすることを見据えています。この実験から得られる知見は、他国の宇宙探査プログラムに追いつくための足掛かりとなるでしょう。

ジャーナルの剽窃チェックをクリアするには、どのような点に気を付けて論文を修正すればいいですか?

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剽窃チェックで類似度19%と判定されたため、SCIジャーナルに論文がリジェクトされました。できる限りの手直しは行いましたが、剽窃チェックをクリアするために、とくに気を付けるべき点はありますか?

回答

ご苦労をお察しします。英文の書き換えは、非英語ネイティブにとってはとても難しい場合があります。剽窃チェックの後に論文を手直しされたということなので、重複度は確実に下がっているはずです。それでもまだ安心できないという場合は、剽窃チェックサービスや、剽窃チェックができる学術論文執筆用のツール/ソフトの助けを借りてみるのもよいでしょう。オンライン上では、iThenticatePlagTrackerViperなど、さまざまなサービスが提供されています。中には無料のサービスもありますので、まだ重複した箇所が多いかどうかを見極めるのに役立つでしょう。重複度がまだ高そうなら、論文にさらに手を加える必要があるでしょう。


論文を修正する際は、以下のことに注意してください:

·         概念やアイデアをほかの論文から借用する際は、たとえ自分の言葉で言い換えたとしても、必ず出典を明記する。

·         原典と同じ言い回しを使用する際は、必ず引用符を使う。

·         自分の過去の論文に書いた概念やアイデアを使う場合も、出典を明記する必要がある。これを怠ると自己剽窃とみなされる。


可能であれば、英語ネイティブの同僚や友人に、パラフレーズ(言い換え)を手伝ってもらえるよう頼んでみましょう。もしくは、プロに頼るも一案です。エディテージでも、剽窃チェックサービスを提供しています。


こちらの記事も参考にしてください:

剽窃検知ソフトを使用している編集者はどれくらいいるでしょうか?

回避可能なミストップ10

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回避可能なミストップ10

論文投稿から最終判定までには長い時間を要しますが、よくあるミスをなくすことで、このプロセスを速めることができます。米国医師会(AMA)のスタイルマニュアルを編集したジャーナル編集者委員会が、投稿論文でよく目にするミスのトップ10リストを作成しました。

ジャーナルに論文を投稿してから最終判定を受けるまでには、長い時間を要します。著者は、よくある単純なミスをなくすことで、このプロセスを速めることができます。これらのミスが具体的にどのようなものか、ご存知ですか?


米国医師会(AMA)のスタイルマニュアルを編集したジャーナル編集者委員会が、投稿論文でよく目にするミスのトップ10リストを作成しました。以下の図は、トップ10のミスと、その避け方をまとめたものです。これらのミスを解消できればリジェクトを避けられるというわけではありませんが、出版プロセスの無用な遅延は、間違いなく防げるでしょう。


※こちらの図はPDF版のダウンロードが可能です。プリントするなどして参考資料としてお気軽にご利用ください。


回避可能なミストップ10(ジャーナル編集者によるリスト)
 

1.     ジャーナルの投稿規定を無視している

  • 字数制限、ページの余白、ページ番号の振り方、スペーシング、引用方法、(参考文献やアブストラクトなどの)フォーマットなど、すべての投稿規定に従いましょう。
  • カバーレターの中に、投稿規定を読んでいないことやそれに従っていないことを示唆するような文言を含めないよう注意しましょう。

2.     データが矛盾している

  • 本文中のデータの数値や単位が、図表と一致していることを確認しましょう。
  • 投稿前に、引用したデータに誤りがないことを必ず確認しましょう。

3.     参考文献・引用に関するジャーナルの規定を無視している

  • 参考文献に抜けがないか、記載した参考文献に不正確な部分がないか、フォーマットに誤りがないかを確認しましょう。
  • 引用箇所に番号を振って、参考文献リストと対応させましょう。引用回数に関係なく、それぞれの固有の番号を変更しないようにしてください。

4.     被験者の個人情報を晒す

  • 被験者が特定される可能性のある情報が論文に含まれている場合は、インフォームドコンセントを得る必要があります。
  • 被験者と連絡が取れない、同意が得られないなどの場合は、除外すべき個人情報について編集者と相談しましょう。

5.     結論を誇張している

  • 結論は、得られたデータのみから導くものです。研究のインパクトを過度に主張しないようにしましょう。
  • 選択的に結果を解釈するのは控えましょう。ネガティブまたはニュートラルな結果を無視して、ポジティブな結果だけに目を向けることのないようにしてください。

6.     句読点や書式にミスがある

  • 間違えやすい句読点のミスに気を付けましょう。emダッシュ、カンマ、括弧を使用すべき箇所など、正しい句読点の使い方をマスターしましょう。
  • 略語は正式名称で記します。同じ用語が複数回登場する場合は、表記の揺れがないか確認しましょう。

7.     補足説明が不足している

  • 著者にとって自明なことが、読者にとっても自明とは限りません。説明を怠らないようにしましょう。
  • 補足説明(例 「表に示したデータは丸めた数値である」など)は脚注で行いましょう。

8.     必要書類に記入漏れや誤りがある

  • ジャーナルが求めるすべての書類(オーサーシップや利益相反についてなど)に、誤りや記入漏れがないか確認しましょう。
  • 不足している書類がないか確認しましょう。ここを確実にすれば、出版プロセスのむやみな遅延を防げるでしょう。

9.     二重投稿の可能性がある

  • 同じ論文、または論文の一部を2誌以上のジャーナルに同時に投稿してはいけません。このような行為は、出版倫理違反とみなされます。
  • 投稿先が国内誌でも国際誌でも、また読者層が異なっていても、二重投稿であることに変わりはありません。

10. 編集者による変更を理解していない

  • 編集者が変更を加えた理由を理解しないまま、変更の理由を問い合わせるのはやめましょう。
  • 変更について慌てて質問する前に、編集済みの論文と編集者からのカバーレターをよく読みましょう。

 

Top 10 avoidable mistakes as an author


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論文投稿における著者によるミストップ10

論文執筆で避けるべき6つのミス(後半)

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本ビデオの前半では、エディテージのベテラントレーナーJohn McDonaldが、論文執筆時に著者が犯しがちな、数字に関する3つのミスを紹介しました。後半の今回は、その他の3つのタイプのミスを紹介します。
 

·         原稿内の図表を参照するときの時制

·         主語と動詞の一致

·         単文の使いすぎによる、伝達情報の重複 


また、'respectively'という単語を使う際の役立つヒントもご紹介しています。本シリーズ記事での説明から明らかなように、校正は、原稿準備に欠かせない作業です。徹底的な校正を行なって、安易なミスや明らかなミスをなくしましょう。


投稿時にSCI-Eに収載されていたジャーナルが、現在はリストから外されているようです。

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Question Description: 

2015年に論文を投稿したジャーナルは、当時SCI-E(Science Citation Indexed Expanded)に収載されていました。論文は現在(2016年11月24日)も査読中ですが、2016年になったら、そのジャーナルはSCI-Eの索引から外れてしまいました。この場合、論文は大学からどのように評価されますか?論文を投稿した時点では、確かにSCI-Eに掲載されていました。ご回答よろしくお願いいたします。

回答

トムソン・ロイターのジャーナル選定プロセスによると、「Web of Science Core Collectionに追加/削除されたジャーナルの審査は年間を通して継続的に行われており…(中略)…さらに、Web of Science Core Collectionに収載中のジャーナルも常に見直しを行なっています。収載中のジャーナルについては、その高い水準を維持しているかどうか、収載載に値するかどうかをモニターしています」と記載されているので、基準を満たせなくなったジャーナルがリストから外れたとしても不思議はありません。大学側がこのことを把握していればベストですが、念のため、論文を投稿したジャーナルが2015年時点では収載されていたことを示す証拠のコピーを取っておきましょう。そうすれば、大学から何か指摘された場合に、明確に回答することができます。また、履歴書や業績リストなど、ジャーナル名を記載しなければならない書類には、「2015年にSCIEに収載」と補足するとよいでしょう。


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惑星科学者らが待ち望む本格的な「模擬砂」の開発

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惑星科学者らが待ち望む本格的な「模擬砂」の開発

惑星科学者は、実験やシミュレーションで、月面を再現するために開発された人工の模擬砂を使用しています。しかし、この模擬砂は、実際の宇宙の砂とは物理的・化学的に特性が異なるため、誤った研究結果が生み出される危険性があります。

宇宙研究に影響を及ぼす可能性があるさまざまな要素の中で、もっとも懸念されているのは、宇宙の砂を再現した実験用の「模擬砂」の再現度が低いということでしょう。惑星科学者は、実験やシミュレーションで、月面を再現するために開発された人工の模擬砂を使用しています。しかし、この模擬砂は、実際の宇宙の砂とは物理的・化学的に特性が異なるため、誤った研究結果が生み出される危険性があります。


模擬砂は主に、灰、砂岩、砂、れんが粉、ガラスビーズなどで構成されており、基本的には、宇宙開発機関や研究機関が製造しています。現在までにさまざまな模擬砂が開発されており、月面の土壌を再現したものだけでも30種類以上があります。しかし、模擬砂の開発プロセスは非科学的である場合が多く、これらを使用した研究からは、誤った結果が生み出される可能性があるのです。たとえば、ローバー(探査機)の走行試験のために開発された模擬砂を、月の地球化学的特性についての研究に用いることはできません。


NASAは、このような懸念の解消を目指し、既存の模擬砂の物理特性を分析するためのチームを結成しました。また、ある小惑星探査企業は、科学的手法に基づくより本物に近い模擬砂の開発に着手して、4種類の小惑星の土壌を再現することを目指しています。


模擬砂は、宇宙で使用するローバーやドリルなどの性能試験に欠かせない材料です。科学的手法に基づいた、高精度で信頼性の高い模擬砂の開発方法が確立されれば、誤った研究結果を招く危険性を大幅に抑えられるでしょう。


イメージソース: Google images

ステータス「pending recommendation」の意味は?

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Question Description: 

6ヶ月ほど前に投稿した論文のステータスが、最近になって「under review」から「pending recommendation」に変わりました。これはどういう状況ですか?

回答

ステータスが「Under review」から「Pending recommendation」に変わったということは、査読が完了し、担当編集者が査読結果を検討した上で、論文をアクセプトまたはリジェクトするか、修正を求めるかを検討中であるということです。「recommendation」という言葉が使われているのは、最終決定権のない担当編集者は、最終判定者である編集長に提言する立場にあるためです。担当編集者が編集長に提言を行うと、ステータスは「Decision in process」に変わります。


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なぜ科学者は疑い深くあるべきなのか

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なぜ科学者は疑い深くあるべきなのか

「科学者は疑い深くなければならない。手ごわい問題について、安易な答えで満足してはいけない。もっともらしいことを簡単に信じてはならない。もっともらしい論文の結論を真に受けてはいけない」―ある博士課程学生のブログをご紹介します。 

 

[本記事は、ティム・ファン・デル・ジー(Tim van der Zee)氏によるブログ記事を、許可を得てここに再掲載したものです。]


あくまで個人的な見解ですが、科学者は疑い深くなければなりません。


手ごわい問題について、安易な答えで満足してはいけません。


もっともらしいことを簡単に信じてはいけません…


…もっともらしい論文の結論を真に受けてしまってはいけないのです。
 

「疑念の生じる瞬間、教育に関する以下のような主張で合点がいくことがあります:


(a) エビデンスから導き出されたものではない(成人学習理論)


(b) 反証があっても続行される(学習スタイル、自己評価能力)


(c) 存在するエビデンスを超越する」


– ジェフ・ノーマン(Geoff Norman)

 

学術論文にはバイアスがかかっています。ポジティブな結果が広く知れ渡るのに対し、ネガティブ/無効な結果は、引き出しの中でホコリを被っています1,2。このバイアスは、論文の投稿から出版まで、あらゆる段階で発生しています3,4。これはときに、研究者を(意識的か無意識的かによらず)、「p-ハッキング」(統計試験を複数回繰り返した中から「成功」したものだけを報告する行為)などの問題行為に走らせることがあります5。さらに、研究者は、自分の研究結果にバイアスのかかった解釈をし、根拠のない表面的な言葉を使って、誤解を招くような引用をすることが多々あります6。引用の約28%が誤りまたは誤解を招くものであるにも関わらず、大半の読者は参考文献を確認したりはしないので、誤りに気付かれることはほとんどありません7


問題はこれだけに留まりません。事前登録したプロトコルに準拠する必要のある臨床研究では、結果の報告を行わない、承認を受けずに結果を追加する、など、プロトコルに従わないケースが多発しています8。また、ポジティブな結果は積極的に報告されるのに対し、ネガティブなものは隠されがちです9。このような問題は臨床研究に限られたものではありません。一般的な学術論文でも統計データの誤りは頻出しており、全体の35%の論文で、結論に影響を及ぼし得るエラーがみつかっています10,11,12。産業界に関わる著者らがメタ分析論文を大量に発表していますが、問題の解決には至っていません13。もっとも、元の研究の質が低ければ、メタ分析をする意味もありません(「garbage in, garbage out(ゴミを入れても、出てくるのはゴミ)」の原理とも呼ばれる)。質の低い研究の特徴の1つは、対照実験におけるコントロールグループ(対照群)を設定していないことです。また、より深刻なのは、想定外のプラシーボ効果が発生し得る不適切なコントロールグループを設定していることです14。これらの問題は、定量的研究や(準)実証主義的研究に限られたものではなく、より自然主義的な定性的研究でも同様の問題が見られます15,16,17


人間は嘘をつく


問題を挙げればきりがありませんが、1つだけ確かなことがあります。それは、人間は嘘をつく生き物だということです。現在のシステムは、嘘をつくことやミスリードすることがきわめて容易であるばかりか、それが助長される状態になっています。その一因と言えるのが、ポジティブな結果を歓迎する現在の出版システムです。出版システムの中にそのような動機が組み込まれているのに加え、個々の研究者が根本的な原因であることは言うまでもありません。ただし、事態を複雑化させているのは、とくに「技術実証」の術を持たない分野をはじめとする多くの分野で、このような問題が先天的に備わっているということです。たとえば、一般社会では、より高品質なスマートフォンを作れると考えれば、それを実行するだけですが、心理学などの分野でこれを実現するのは不可能に近いでしょう。なぜなら、心理学分野における変数は潜在的である場合が多く、直接観察することもできません。測定結果も間接的で、実測値を証明することは不可能である場合が多いからです。


よこしまな動機は、一朝一夕で消すことはできません。人間は変化に抵抗する傾向があります。それでも、多くの人々が科学を改善しようと戦っています。彼らの奮闘が実を結ぶ日が訪れるかどうかは分かりませんが、少なくとも、長い時間を要することは確かでしょう。


結論…


私がひねくれているだけなのかもしれませんが、いずれにせよ、注意深くあるに越したことはありません。情報に対し、懐疑的な姿勢を保つべきです。そして何より、自分自身の行いや自分自身の研究に懐疑的でいなければなりません。


私はしょっちゅう間違いを犯します。これが、私がブログを始めた最大の理由です。しかし、そこから学習し、間違いの頻度を少しでも減らせたらと考えています。そのためには、協力し合わなければなりません。自分をだますのは、いとも簡単だからです。


疑い深い科学者になりましょう。


そして、より良い科学者になりましょう。


参考文献

  1. Dwan, K., Gamble, C., Williamson, P. R., & Kirkham, J. J. (2013). Systematic review of the empirical evidence of study publication bias and outcome reporting bias—an updated reviewPloS one8(7).
  2. Franco, A., Malhotra, N., & Simonovits, G. (2014). Publication bias in the social sciences: Unlocking the file drawerScience345(6203), 1502-1505.
  3. Coursol, A., & Wagner, E. E. (1986). Effect of positive findings on submission and acceptance rates: A note on meta-analysis biasProfessional Psychology: Research and Practice, 17(2), 136-137
  4. Kerr, S., Tolliver, J., & Petree, D. (1977). Manuscript characteristics which influence acceptance for management and social science journalsAcademy of Management Journal20(1), 132-141.
  5. Head, M. L., Holman, L., Lanfear, R., Kahn, A. T., & Jennions, M. D. (2015). The extent and consequences of p-hacking in sciencePLoS Biol13(3).
  6. Brown, A. W., Brown, M. M. B., & Allison, D. B. (2013). Belief beyond the evidence: using the proposed effect of breakfast on obesity to show 2 practices that distort scientific evidenceThe American journal of clinical nutrition98(5), 1298-1308.
  7. Van der Zee, T. & Nonsense, B. S. (2016). It is easy to cite a random paper as support for anythingJournal of Misleading Citations33(2), 483-475.
  8. http://compare-trials.org/
  9. Jones, C. W., Keil, L. G., Holland, W. C., Caughey, M. C., & Platts-Mills, T. F. (2015). Comparison of registered and published outcomes in randomized controlled trials: a systematic reviewBMC medicine13(1), 1.
  10. Bakker, M., & Wicherts, J. M. (2011). The (mis) reporting of statistical results in psychology journalsBehavior Research Methods43(3), 666-678.
  11. Nuijten, M. B., Hartgerink, C. H., van Assen, M. A., Epskamp, S., & Wicherts, J. M. (2015). The prevalence of statistical reporting errors in psychology (1985–2013). Behavior research methods, 1-22.
  12. Nonsense, B. S., & Van der Zee, T. (2015). The reported thirty-five percent is incorrect, it is approximately fifteen percentThe Journal of False Statistics33(2), 417-424.
  13. Ebrahim, S., Bance, S., Athale, A., Malachowski, C., & Ioannidis, J. P. (2015). Meta-analyses with industry involvement are massively published and report no caveats for antidepressantsJournal of clinical epidemiology.
  14. Boot, W. R., Simons, D. J., Stothart, C., & Stutts, C. (2013). The pervasive problem with placebos in psychology why active control groups are not sufficient to rule out placebo effectsPerspectives on Psychological Science8(4), 445-454.
  15. Collier, D., & Mahoney, J. (1996). Insights and pitfalls: Selection bias in qualitative researchWorld Politics49(01), 56-91.
  16. Golafshani, N. (2003). Understanding reliability and validity in qualitative researchThe qualitative report8(4), 597-606.
  17. Sandelowski, M. (1986). The problem of rigor in qualitative researchAdvances in nursing science8(3), 27-37.

ケースレポートではジャーナル指定の同意書を使うべきですか?

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Question Description: 

患者やその代理人の署名入りの同意書には、ジャーナル指定のフォームを使用する必要がありますか?それとも、投稿要件を満たしていれば、「一般的」な同意書でも構わないでしょうか。また、投稿予定のケースレポートでは患者の個人情報を除外していますが、同意書を提出することで、編集者や出版者に患者の氏名や署名が知られてしまうことを懸念しています。国際医学雑誌編集者会議(ICMJE)がPhysician Attestation of Informed Consent (インフォームドコンセントの医師認証、PAIC)制度を採用していないのには、何か理由があるのでしょうか?

回答

ICMJEのガイドラインに準拠している同意書、または治験審査委員会(IRB)が発行する同意書で要件を満たしているものであれば、基本的には使用しても構いません。ただし、ケースレポートの場合、患者が論文を読んで出版に同意していることを証明する、特定のIC(インフォームドコンセント)フォームをジャーナル側が用意していることがあります。この場合、その同意書への記入を義務付ける旨が明記されているはずです。そのような指示が見当たらない場合は、冒頭で述べた同意書を使用しても問題ないでしょう。はっきりしない場合は、編集者に問い合わせてみましょう。


被験者保護に関するICMJEのガイドラインでは、被験者の不要な個人情報をすべて除外するよう著者に指示しています。今回は「患者の個人情報は除外している」とのことですので、この点は問題なさそうです。患者の個人情報に関して、ジャーナルは厳格な守秘義務方針を設けているので、同意書が編集者の手に渡っても心配する必要はありません。
 

ICMJEがPAICを採用していない件については、改ざんの余地があることが理由の一つではないかと考えられます。一度ICMJEに問い合わせて、PAICを採用していない意図を聞いてみてもいいかもしれません。

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