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アイスランドの掘削プロジェクトで島の成り立ちを解明

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アイスランドの掘削プロジェクトで島の成り立ちを解明

アイスランドで始動したSUSTAINプロジェクトによって、島の成り立ちに関する謎が明らかになりそうです。このプロジェクトでは、火山島であるスルツェイ島の中心に2つの穴を開け、火山岩や海水、地中微生物の相互作用に関する分析を行います。

アイスランドで始動したSUSTAINプロジェクトによって、島の成り立ちに関する謎が明らかになりそうです。同プロジェクトでは、火山島であるスルツェイ島の中心に2つの穴を開け、火山岩や海水、地中微生物の相互作用に関する分析を行います。


地球上でもっとも若い島であるスルツェイ島は、19631967年の海底火山噴火によって形成されました。スルツェイ島誕生という地質学事象については、研究や調査がきわめて盛んに行われています。集められたデータやサンプルのほとんどは、マグマ水蒸気爆発などの火山活動の性質を理解するためのものですが、ほかの分野への恩恵も期待されています。


今回のプロジェクトには、アイスランド大学地球物理学科のマグナス・トゥミ・グズムンドソン(Magnús Tumi Guðmundsson)教授、ユタ大学のマリー・ジャクソン(Marie Jackson)准教授を中心として、世界中の科学者が参加します。プロジェクトでは、地面に垂直な200メートルの穴と、斜めの300メートルの穴を掘り、島の地中構造や地熱の発生などの分析をはじめ、微生物や植物・動物相が島の形成に果たした役割についての調査を行います。島を形成する岩には未知の有機体が複数存在しているため、島の生態系を調査する上で、地質学や進化論的観点から興味深い知見が得られそうです。


スルツェイ島は、島の誕生と成長の過程を追跡するための「天然の研究所」のようなものと言えるかもしれません。グズムンドソン教授は、「スルツェイ島が誕生したことで、島の形成過程を観測できるようになりました。この小島は、科学にとって特別な場所です」と語っています。


平壌科学技術大学、米政府による渡航禁止措置を懸念

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平壌科学技術大学、米政府による渡航禁止措置を懸念

米政府は、自国民の北朝鮮への渡航を禁じることを発表しています。この措置により、すべての米国民が北朝鮮に渡航できなくなります。また、北朝鮮に滞在中の米国人にも出国を求めているため、米国籍職員が在籍する平壌科学技術大学(PUST)には、深刻な影響がありそうです。

米政府は、「長期に渡る拘束」のリスクがあるとして、自国民の北朝鮮への渡航を禁じることを発表しています。この措置により、すべての米国民が北朝鮮に渡航できなくなり、例外的状況下で渡航する場合も、特別に承認を受ける必要が生じます。米政府は北朝鮮に滞在中の米国人にも出国を求めており、禁止令が実施されれば、総長をはじめとする40人の米国籍職員が在籍する平壌科学技術大学(PUSTに、深刻な影響を及ぼすことになりそうです。


ここ数年の北朝鮮による米国民への処遇や、金正恩氏による大陸間弾道ミサイル発射実験の影響で、両国の緊張状態は高まっています。2016年には米国籍の学生1人が北朝鮮に拘束され、PUSTで働く2人の韓国系米国人研究者は現在も捕虜として拘留されています。数か月間PUSTで会計学を教えていたキム・サンドク(Sang-duk Kim)氏と、同大学の試験農場の管理を任されていたキム・ハクソン(Hak-song Kim)氏は、大学の職務とは関係のない「敵対行為」を行なった疑いで、北朝鮮当局に拘束されました。


PUSTは、北朝鮮で外国籍職員を採用している数少ない学術機関の1つですが、この禁止措置によって40名の職員の入れ替えを迫られるため、厳しい運営事情に直面することが予想されます。政治的な緊張によって米国人の雇用ができなくなるばかりか、韓国人研究者の招聘も難しくなる可能性があります。韓国系米国人で、コンピューター科学を専門とするPUSTの学長、パク・チャンモ(Chan-Mo Park)氏(82歳)は、今回の禁止措置が、英語で授業を行う教育プログラムに大きな影響を及ぼすことを懸念しています。同氏は、同大学がほかにも複数の問題に直面していると説明しています。国連の制裁決議によって中国からの研究資材の購入が困難になっているほか、卒業生に、サイバーテロリズムへの関与の疑いがかけられています。これに対し同氏は、「PUSTがハッカーや“サイバー戦士”の育成と一切関係がないことは、私が保証できます」と明言しています。


外国人に門戸を開いているPUSTは、北朝鮮において貴重な存在であり、その学術的交流が讃えられてきました。しかし、20175月、CNNは同大学の職員と学生への統制疑惑を報じています。ジョンズ・ホプキンス大学米韓研究所のマイケル・マッデン(Michael Madden)客員研究員は、PUSTは入学前の学生に対して「政治思想に関する厳しい調査」を行なっており、「外国人職員と接触した場合は報告すること」を義務付けていると述べています。記事では、海外留学を希望する学生に対して、PUSTが授業料の免除を提示していることにも触れています。

校正刷り(Proof)はいつ頃届くものでしょうか。

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Question Description: 

editageの迅速な英文校正や,沢山の参考になる記事のおかげで,人生初の論文が無事acceptされました。 しかし,accept通知のメールが届いてから4週間弱,proof版が送られて来ず,不安に思っています。 通常どの程度の時間がかかるものなのか,教えてほしいです。

回答

論文のアクセプト獲得、おめでとうございます!

通常、ジャーナルが著者に最終チェックのためのオンラインproof(校正原稿)を送るまでには、34週間かかります。アクセプトからproof送付までの間には、書式上の不備を確認するための編集作業や、著者への確認事項を整理しながら論文を仕上げていく組版作業があります。ジャーナルによって作業量や作業フローがまちまちであることを考えると、proofが出るまでの期間もさまざまです。とはいえ、オープンアクセスジャーナルでアクセプトされたのなら、作業プロセスは比較的迅速で、3週間以内にはproofを受け取れるでしょう。


また、同じジャーナルから最近出版された論文の「受領日」、「受理(アクセプト)日」、「オンライン出版日」を確認してみてもいいかもしれません。こうすれば、proofが出るまでの期間の検討をつけることができます。この方法が使えない場合は、ジャーナル編集者にメールを送って論文のステータスを問い合わせてみましょう。

 


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ジャーナルからの返事はどのくらい待てばいいでしょうか

The status shows my paper is accepted, but the editor sent me a message. What should I do?

論文投稿後のCurrent Statusについて

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Question Description: 

繰り返し質問が出ている内容であり、恐縮ですがおうかがいいたします。   original article投稿後、1週間ほどでCurrent Statusが "Out For Review"となりました。その後3週間変わらず、4週間経過したところで "Editor To Complete"に戻っています。 問い合わせのメールをすべきか、待つのであればまだどれくらい待つべきか、別ジャーナルに投稿し直すのが得策か、いかがでしょうか。 ご教授お願い申しあげます。

回答

ジャーナルに論文原稿を投稿して、ステータスが最近“Out for Review”から“Editor to Complete”に変わったということですね。あなたの原稿は編集者のチェックを通過して、査読も終えたところかもしれません。査読が終わったら、編集者が最終判定を下すので、論文に対する結果はまもなく通知されるでしょう。“Editor to complete”というステータスは、編集者が査読報告書を読んでいて、あなたの論文に最終判定を下そうとしている最中だということを示していると思われます。


ジャーナルにもう一度フォローアップのメールを送ってみるか、編集者に電話をして進捗状況を聞いてみてもよいでしょう。最終判定はまもなく出るはずなので、このジャーナルからの判定結果を受け取るまで、別のジャーナルに論文を投稿し直すべきではないでしょう。

 


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ジャーナルにおける査読と、編集者の意思決定

The peer review process: challenges and progress

「デジタルネイティブ」という観念は幻想か?

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「デジタルネイティブ」という観念は幻想か?

テクノロジーに精通している1980年以降生まれの世代が「デジタルネイティブ」と命名されたときは、誰もが納得したものです。しかし、最近発表された研究は、デジタルネイティブという観念は幻想で、世代によって情報の取り入れ方が異なることを示す証拠は何もないと主張しています。

現代の若者世代の世界には、バズワードやキャッチフレーズ、略語、絵文字が溢れています。テクノロジーに精通している1980年以降に生まれた世代が「デジタルネイティブ」と命名されたときは、誰もが納得したものです。1980年以降生まれの世代がデジタルネイティブなら、1980年よりも前に生まれた世代は「デジタル移民」と呼ばれています。しかし、最近発表された研究は、デジタルネイティブという観念は幻想で、世代によって情報の取り入れ方が異なることを示す証拠は何もないと主張しています。


デジタルネイティブ世代は、新しいサービスや製品を早い段階で導入する「アーリー・アダプター」であり、情報強者とみなされています。社会学者は、彼らの学習方法は上の世代と異なるので、各種マルチメディアを含む教育戦略の改編が必要であると考えてきました。しかしながら、Teaching and Teacher Education誌に発表されたレビュー論文は、スマートフォンやインターネットと共に育った「デジタルネイティブ」世代が、テクノロジーに強く、異なる学習方法を持ち、上の世代よりもマルチタスクが得意であるという定説を裏付ける証拠はどこにもない、と主張しています。


「デジタルネイティブ」という観念は、教育者のマーク・プレンスキー(Marc Prensky)氏によるエッセイが発端とされています。プレンスキー氏は、この新たな世代は、テクノロジーを駆使して複数の情報の流れを処理することに長けていると述べており、彼らに合わせた教育手法やカリキュラムの改編が必要であるという主張を生み出しました。しかし、今回の研究の共著者であるオープン大学(オランダ)教育心理学教授のポール・キルシュナー(Paul Kirschner)氏は、特定のグループを特別扱いすることに警鐘を鳴らしており、新世代がテクノロジーに関する特別なスキルを必ずしも備えているわけではないことを論文の中で示しています。


また、マルチタスクが若者の専売特許ではないことも断言しています。「デジタルネイティブ」という言葉はマーケティング用語として使われているだけでなく、カリキュラム編成や企業の労働環境といった、人生の重要な側面にも影響を及ぼしています。教育機関は、この新たな世代のために共同学習やe-ラーニングなどを導入し、教育制度を一新しています。彼らがさまざまなデジタルテクノロジーに触れていることは事実ですが、その利用方法が上の世代と異なっているわけではありません。


キルシュナー教授は、新しい世代が固有のスキルを持っていると想定することは、メリットよりもデメリットの方が多いと述べています。働くことへの考え方や人生の目標がこれまでの世代と多少異なっているのは事実かもしれませんが、人間としての価値観は、世代によって変化するものではないのです。

論文出版者への賞与が世界で流行中

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論文出版者への賞与が世界で流行中

中国の研究機関は、インパクトファクターが高い有名な査読付きジャーナルで論文を出版した研究者への賞与システムがあることで知られていますが、その他の国にも同様のインセンティブ制度があることが明らかになりました。

中国の研究機関は、インパクトファクターが高い有名な査読付きジャーナルで論文を出版した研究者への賞与システムがあることで知られていますが、その他の国にも同様のインセンティブ制度があることが明らかになりました。一流ジャーナルに論文が掲載された研究者にボーナスを授与することが流行している現状について、Science誌が報告しています。


論文を出版した研究者への賞与システムがある国のうち、金額面でトップに位置するのは中国で、最高額は165,000ドルに上ります。同国の大学は、Nature誌などの一流ジャーナルに掲載された論文の筆頭著者に43,000ドルを授与しています。中国に続くのはサウジアラビアとカタールの中東2ヶ国で、両国の研究機関は、一論文当たり最高13,700ドルの賞金を著者らに授与しており(筆頭著者のシェアが最大)、インパクトファクターが1未満のジャーナルに論文が掲載された場合でも、820ドルの賞金を授与しています。また、インドやパキスタンなどの発展途上国や、英米を含む先進国の大学も、論文を出版した研究者にボーナスを与えています。


このような傾向は、引用データやインパクトファクターの過度な重視につながりかねません。ジョージア州立大学(アトランタ)の経済学者、ポーラ・ステファン(Paula Stephan)氏は、「人間はインセンティブに反応する生き物であり、研究機関は、計量書誌学的指標に依存しすぎている」と述べています。論文出版に伴うボーナスによって、研究者たちの競争がさらに熾烈になり、画期的な科学的発見という研究の「質」よりも、「量」にフォーカスが移っています。


また、論文出版ボーナスのもう1つの欠点は、投稿が一流誌に集中することで、これらのジャーナルの編集者の負担が増大するという点です。ステファン氏は、「特定のジャーナルのみをインセンティブの対象とすることは、システム上、非効率的」としながらも、インセンティブに研究者同士の協力を促すポジティブな側面があることも指摘しています。


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Does China need to look beyond SCI?

インパクトファクターを追い求めて―その労力に見合った価値はあるか?

インパクト・ファクターの発展と衰退

犬が人懐こい理由は発達障害にあり?

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犬が人懐こい理由は発達障害にあり?

犬は、人間にいつでも無償の愛を与えてくれる存在ですが、両者の相性がこれほど良いのはなぜでしょうか。このほど新たな研究で、犬が人間との接触を望む、とても優しい性格の持ち主である理由がついに明かされました。

 

 

 

犬は、人間にいつでも無償の愛を与えてくれる存在ですが、両者の相性がこれほど良いのはなぜでしょうか。このほど新たな研究で、犬が人間との接触を望む、とても優しい性格の持ち主である理由がついに明かされました。犬には、人間の相棒としての素質が遺伝子レベルで備わっているようです。


Scientific Advances誌で発表されたオレゴン州立大学の研究者らによる新たな研究では、犬の愛らしさに関する科学的な説明が試みられました。数万年前に狼から進化する過程で起きた遺伝子の変異が、犬たちの人懐こさを決定付けるカギを握っているようです。


この遺伝子の変異は、ある発達障害と深い関わりがあります。研究者らは、犬が、ウィリアムズ症候群の人々が持つ遺伝子の変異と類似したものを持っていることを発見しました。ウィリアムズ症候群は1万人に1人の割合で発症し、社会的抑制の欠落や、外向的性格、知的障害などの症状を伴います。


研究では、飼い犬18頭と捕獲した野生の狼10頭を対象に、社会的刺激への注意バイアス、超社会性、他者への社会的関心という3つの基本的特性の調査が行われました。ある課題が与えられたとき、犬には人間に気を取られる傾向がありました。これは、社会的刺激への注意バイアスの高さを示すものです。また、犬は狼よりも人間に接近する傾向が強く、超社会性の高さも示唆されました。一方、他者への社会的関心という面では、犬と狼の間に有意な差は見られませんでした。


この研究結果は、人間に対する犬の愛想の良さや、熱心さ、従順な性格の理由を理解するための一助となるでしょう。研究者らは、将来的には猫などのペットにも同様の遺伝子が備わっているかどうかの調査を進めていく予定です。

ジャーナル編集者とのコミュニケーション方法

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ジャーナル編集者とのコミュニケーション方法

編集者にとって、著者とのコミュニケーションは大事な日常業務の1つです。著者にとって、編集者とのコミュニケーションは、論文出版に関する重要情報を得る機会です。この記事では、論文出版プロセスにおいて編集者とのスムーズかつ明快なやり取りを助ける、さまざまなコミュニケーション形態を紹介します。

[本記事は、ウォルターズ・クルワー(Walters-Kluwer)社の著者向けニュースレターAuthor Resource Reviewに掲載されたものを、許可を得てここに再掲載したものです]


編集者にとって、著者とのコミュニケーションは大事な日常業務の1つです。情報や意見の交換は、投稿から出版に至るまでの出版プロセスを円滑に進めるための潤滑油となります。また、著者にとって編集者とのコミュニケーションは、疑問を解消するほか、論文出版に関する検討事項や、アクセプト後の出版状況などに関する重要な情報が得られる機会です。この記事では、論文出版プロセスにおいて編集者とのスムーズかつ明快なやり取りを助ける、さまざまなコミュニケーション形態を紹介します。


投稿前の質問状

適切な論文投稿先を選ぶことは、出版プロセスにおける重要な第一歩です。この一歩を踏み間違えないためには、興味のあるジャーナルの編集者に質問状を送るとよいでしょう。質問状は編集者にとって、自誌の対象領域や論文タイプに適さない論文の投稿を思い留まらせることのできる機会となります。自誌にふさわしいと判断した場合は、論文の改善に繋がるプロセスとなります。編集者は、質問状と一緒に受け取ったアブストラクトをもとに、投稿前に修正しておくべきこと(異なる手法でのデータの再分析など)や、フォーマットに関するフィードバックを著者に伝えることができます。一方、著者は、論文の執筆と投稿および査読の方法や、アクセプト論文の出版スケジュールなど、実務的なことを確認することができます。編集部は、質問状を受け取ることで、これから投稿されるかもしれない論文について把握でき、査読者選定の準備をこの時点で始めることができます。以上のようなメリットがあるものの、すべてのジャーナルが質問状を受け付けているわけではありません。質問状に答えてくれるかどうかは、ターゲットジャーナルの投稿規定をよく読んで確認しましょう。


質問状は、編集者宛てにEメールまたはジャーナルの編集管理ソフトで送ります。書き出しは、論文のテーマと論文タイプを明確にするところから始めましょう。次に、自分が投稿する予定の論文タイプに近い投稿規定をよく読んで、論文の仮題とアブストラクトを用意しましょう。そして、自分の論文がそのジャーナルに合うと思う理由を整理しながら、編集者への質問リストを作ります。文面は、簡潔明瞭を心掛けましょう。質問状をEメールで送る場合の件名には、質問状であることと、論文の内容を記載しましょう(例:「質問状:疼痛管RCT」)。論文の内容を記載せずに送ると、編集者の受信ボックスの中の膨大な類似メールに埋もれてしまうかもしれません(件名に「質問状」とだけ書かれたメールが複数あると、それらを見分けることが難しくなります)。1週間程度で回答が来るはずですが、1週間を過ぎても返答がない場合は、再送してみましょう。


カバーレター

ジャーナルに論文を投稿する準備ができたら、カバーレターを用意しましょう。カバーレターは、論文の管理システムにおいて重要な記録であり、論文、研究、臨床試験、法的基準や規制基準の順守に関する重要情報が含まれたビジネスレターと言えます。カバーレターは、共著者を代表して責任著者(corresponding author)が書くものですが、責任著者が筆頭著者である必要はありません。


論文の関連書類の中で、編集者が最初に目を通すのがカバーレターです。複雑かつ重要な情報が含まれる文書なので、慎重に構成、整理、書式設定を行いましょう。文書には以下の項目を記載します:
 

  • 論文の内容:論文のタイトルと共に、内容と論文タイプがどのようにジャーナルの方針に合致しているかを説明しましょう。また、既存の知見に対してどのような知見が加えられるのか、また、その知見がなぜ重要なのかを説明しましょう。
  • 新規性:論文が別の形で公開されているか否かを申告しましょう。公開されている場合は、学会名や公開日などの詳細情報を記載します。
  • 重複性:ほかの出版物と内容が重なっている部分がある場合は、その旨を申告しましょう。研究結果を報告する論文の場合、同じ研究プロジェクトのデータセットまたはデータセットの一部(事例、変数、回数)を使用しているすべての論文(出版済み/出版準備中/査読中を含む)書き出し、各論文の引用情報を漏れなく示す必要があります。また、査読中の論文の対外秘のコピーの提出を義務付けているジャーナルもあり、編集者が直接コピーを求めてくる場合もあります。
  • オーサーシップ:すべての共著者がオーサーシップの基準を満たしていて、論文の最終版を確認済みで、著者名の順番に同意していることを保証する必要があります。各共著者が論文にどのような役割を果たしたかを簡潔に説明しましょう(著者名の順番の変更や、著者の追加/消去を行うには、共著者全員の同意が必要です。著者としてふさわしいはずでありながら共著者として加えられていない場合は、オーサーシップについて編集者に問い合わせてみましょう)。オーサーシップに関する問題が完全に解消されるまで、論文は出版されません。
  • 利益相反:共著者は全員、ジャーナル出版社が用意している方法で、利益相反(COI)に関する情報を個別に申告する必要があります。COIに関する概要は、カバーレターと表紙に記載しなければなりません。COIがない場合は、「The authors have no conflicts of interest to report.(報告すべき利益相反はありません)」という文言を添えましょう。
  • 著作権:著作権で保護されている情報(テキスト、図表、動画)が論文に含まれる場合は、編集者に申告しましょう。著作権保持者を示し、その素材の再利用許可書を添える必要があります。許可書は通常、コピーライト・クリアランス・センター(CCC)www.copyright.com)からリクエストできますが、著作権保持者の特定や問い合わせが困難な場合は、編集者にその旨を伝えましょう。
  • 研究倫理:研究の監視に関する倫理委員会のプロトコルの承認と、研究倫理の指針や手順の順守を、カバーレターと表紙または本文中(ジャーナルの規定による)で示す必要があります。
  • 臨床試験登録:医学雑誌編集者国際委員会(ICMJE)は、「論文が査読に進むためには、最初の被験者の募集に先立って臨床試験登録が行われていなければならない」と定めています。臨床試験の結果に基づく論文には、登録書、登録番号、登録日、最初の被験者募集日を記載する必要があります。詳しくは、以下のICMJEのウェブサイトをご覧ください:www.icmje.org/recommendations/browse/publishing-and-editorial-issues/clinical-trial-registration.html.
  • 査読者:論文を公平に評価できない恐れがある査読者候補の存在をあなたが特定した場合は、その人物を査読者として選定しないよう依頼しましょう。そのような結論に至った理由は説明しなくても構いません。また、ジャーナルが査読者の推薦を認めている場合は、推薦したい人物を挙げましょう。ただし、その場合は、共同研究者や指導教官などを避け、あなたと利益相反がない人を選びましょう。
  • 連絡先:Eメールアドレスや電話番号など、責任著者の確実な連絡先を示しましょう。論文のレビューが予定される時期に連絡が取れない状況にある場合は、その旨を編集者に知らせましょう。


査読者・編集者のコメントへの返答

論文の修正・再投稿が認められた著者は、査読コメントへの回答をまとめた文書の提出を求められます。修正論文と共に、「Rebuttal letter(反論の手紙)」や、査読コメントに沿って修正した箇所を示す表を提出します。フォーマットにかかわりなく、どのような修正を行なったのかを示す回答を用意しなければなりません。指摘に関する修正を行わなかった場合は、その理由を明確に説明しましょう。ここでは、修正の全体像とそれぞれの詳細を伝えることが重要です。


一般的に「査読者への返答」と呼ばれる文書ですが、実際は編集者も目を通し、修正箇所の妥当性や精度(または修正を行わなかった理由)を検討します。査読者への回答は、論文を出版に近付けるためのプロセスなので、説得力のある文章でなければなりません。査読者からのコメントを慎重に検討したことを編集者に示し、包括的な回答を心掛けましょう(ただし、文法や誤字脱字に対する指摘に逐一回答する必要はありません)。内容の正確性に関する懸念については、エビデンスを提示しましょう。査読者側に誤解がある場合は、その問題を説明しましょう。内容の曖昧さを認めることを恐れる必要はなく、卑屈になる必要もありません。慎重に言葉を選んで論理的に説明しましょう。重要なのは、修正版が元の論文よりいかに優れたものになり、出版に値するものになったかを示すことです。


電話連絡

編集者とのコミュニケーションは、文書でのやり取りが一般的です。カバーレター、反論の手紙、添付書類、抗議文書は、投稿から出版までの間だけでなく、論文出版後も記録として残ります。したがって、電話でのやり取りは稀ですが、直接話し合うことで問題を解決できるような状況では有効です。緊急を要する場合もあるので、編集者からの電話にはいつでも出られるようにしておきましょう。論点をしっかり把握し、適切な議論ができるように準備しておきましょう。声はコミュニケーションツールなので、ポジティブなトーンを心掛け、言葉は慎重に選びましょう。


電話中は、後で会話の内容を確認できるように、メモを取っておきましょう。また、電話を切る前に、話した内容の理解度や、スケジュールや締め切りの変更などについて合意した結果を確認しておきましょう。


編集者の決定への抗議

編集者とのコミュニケーションの中でもっとも難しいのは、リジェクト判定への抗議でしょう。論文のリジェクトを告げるメッセージを読むのは辛いもので、感情的になってしまうことも珍しくありません。査読者のコメントに不満を抱いたり、編集者の判断を不可解だと感じたりすることもあるでしょう。それでも、不満の感情だけでは、編集者の判定に対する抗議にはなりません。加えて、感情論だけで抗議をするようなことがあってはなりません。まずは、時間を置いて感情を落ち着けた後で、編集者の判定への抗議に関するジャーナルの方針や手順を確認しましょう。その上で、査読コメントと判定レターを再読しましょう。不公正と考えられる査読や、誤解に基づいた査読は、抗議を行う根拠となります。この場合は、ジャーナルが定める手順通りに抗議を行なってください。判定に対して抗議する旨と、その理由を説明しましょう。抗議の手続きには期限が設けられているケースが多いので、注意が必要です。


編集者へのレター

科学者にとって、出版論文は情報を伝え合うための媒体です。過去の知見は、引用文献に反映されます。論文が科学の記録に組み込まれることで、未来の科学者とコミュニケーションを取れるようになります。現在の読者とは、索引サービスなどを通して論文を公開することで、コミュニケーションがとれます。同時代の読者は、編集者にレターを送ることで、出版論文について対話を行うことが可能です。通常、論文に関するレターを受け取った編集者は、著者にそのレターに返答する機会を与えます。読者からのレターや著者の返答は、公開されたり、索引に含まれたりすることもあります。


レターは、簡潔で要領を得たものでなければなりません。どの論文にコメントしているのか、どのような意見(補完、批判、新たなアイデアや応用方法に関する提案など)を表明したいのかを明確にし、エビデンスも提示しながら、論理的にコメントを展開しましょう。レターの書き方や送り方については投稿規定を確認しましょう。


まとめ

出版プロセスにおいて、編集者とのコミュニケーションは重要な要素です。フォーマルで、丁寧で、礼儀正しく、明快で、よく練られたメッセージやレターは、コミュニケーションを円滑にして出版プロセスを前進させます。プロセス全体を通して、編集者とのやり取りが滞りなく行われるよう心掛け、編集者からの質問には常に対応できる態勢でいるように努めましょう。


異常に長いレビューと、投稿時のレビュー代金について

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International Surgery http://www.internationalsurgery.org/?code=icsu-siteという、比較的歴史があるジャーナルにケースレポートを投稿しています。 投稿時に投稿代金として代金として100ドル支払っています。 しかし、査読に回ってから1年2ヶ月がたち、この間4回も催促のメールを送ったのですが、 レビューワーからまだ返事が来ないと、状況が全く改善しません。 あまりに査読期間が長いと思うのですが、強く抗議する(あるいは、投稿を撤回し、投稿代を返却してもらう)ことは可能でしょうか。 まあその際、その意思をどう英語で伝えたら良いでしょうか?

回答

1年以上も査読コメントを受け取れていないとは、お気の毒な状況です。査読プロセスには1~4か月程度を要するジャーナルがほとんどですが、今回はすでに14か月たっているので、原稿の取り下げを検討してみるべきでしょう。

 

ジャーナルのウェブサイトには、投稿費は返金不可との記載がありますが、ジャーナル編集者に連絡して、原稿の取り下げと投稿費の返金を依頼してみることをお勧めします。編集者へのメールには、1年以上に渡る査読期間が、論文出版計画の大幅な遅れにつながっているということを強調しましょう。

 

取り下げが完了したら、論文の専門分野にマッチした別のジャーナルに投稿し直すことをお勧めします。

 

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校正済み原稿に対する指摘について

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Question Description: 

他社で校正された原稿についての質問で失礼いたします。   reviwerからの指摘/質問に対して回答/加筆修正した原稿が、"minor rivision"で返ってきました。 editorからは"potentially acceptable"であるとコメントいただいていますが、reviwerからのコメントは"the manuscript still requires additional professional linguistic editing"とのことでした。 すでに校正すみ(他社)であり、本文中にはAcknowledgmentsとして校正者と社名とを記載しています。 このような場合は再度校正依頼すべきであるのか、editorに校正すみである旨を伝えるべきであるのか、他のアプローチがあるのか、ご教授いただければと存じます。

回答

すでに英文校正会社の校正を受けたにもかかわらず、レビュアーが修正原稿の英文校正を求めているということですね。校正済みであることは原稿に書いてあるとのことなので、「校正済みである旨を伝える」よりも、再度校正を行うのが得策かと思います。レビュアーはおそらく、校正済みであることは承知の上で、再度の検討を求めているのだと思います。


校正を受けた会社に今回の査読コメントについて伝え、再校正を依頼してみてはいかがでしょうか。もしくは、英語が得意な同僚や友人にチェックを頼んでみるのもよいでしょう。これらの対応が取りにくい場合は、エディテージをはじめとする別の校正会社の利用を検討してみましょう。


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英文校正サービスを最大限に活用するには?

Where can I get my manuscript edited?

共著者以外の人に論文の修正を手伝ってもらってもいいですか?

ヒト胚の遺伝子編集に初めて成功―医療の未来は明るいか?

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ヒト胚の遺伝子編集に初めて成功―医療の未来は明るいか?

遺伝子編集技術が日常的に使われる時代が目前に迫っているようです。米国の科学者が世界で初めて、ヒト胚の遺伝子編集に成功しました。これは、遺伝子編集技術の発展において画期的な出来事として受け止められている一方、新たな懸念の種となりそうです。

科学者や一般の人々を巻き込んで論争を呼んでいる遺伝子編集ですが、この技術が日常的に使われる時代が目前に迫っているようです。米国の科学者が世界で初めて、ヒト胚の遺伝子編集に成功しました。これは、遺伝子編集技術の発展において画期的な出来事として受け止められている一方、新たな懸念の種となりそうです。

今回ヒト胚の遺伝子編集に成功したのは、オレゴン健康科学大学のシュークラト・ミタリポフ(Shoukhrat Mitalipov)氏率いる研究チームですが、これ以前にも、中国でがん患者に遺伝子編集細胞を注入するという実験が2度行われていました。その結果、欠陥遺伝子を安全、安価、効果的に修正できることが明らかになっています。

遺伝子編集には、複数の短期的/長期的なメリットが考えられます。研究者らは、嚢胞性線維症に関係したヒト遺伝子を編集するための技術として、CRISPRの使用を検討しています。遺伝子編集によって遺伝性疾患を取り除くことも考えられるほか、絶滅種の復活や、栄養満点で味も良い作物の作成計画も可能でしょう。


しかし、安全性や生命倫理の観点から、遺伝子編集技術にはいくつかの懸念事項があります。遺伝子編集に秘められた大きな可能性と比較的安価なCRISPR技術には、多くの研究者が懸念を表明しており、遺伝子編集の倫理的・法的ガイドラインの制定が模索されています。CRISPR技術を悪用すれば、きわめて大きな危険が伴います。たとえば、何百万人もの人々を殺戮する危険な病原菌を作ることが可能ですし、あるいは、富裕層が理想の子どもを産むために遺伝子を操作する、といった状況が生まれるかもしれません。


今回のヒト胚の遺伝子編集の成功は、医療に商業的要素を加え、富裕層だけがより良い遺伝子を獲得してより健康で長生きできるようになる時代の到来を告げるものとなるのでしょうか?

評価尺度の使用にあたっての著作権違反について

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ある治療の効果を検討する臨床研究で、外国で作成された評価尺度を用いました。 その尺度の使用にあたっては作成者との使用契約が必要だったので、作成者と直接やり取りをして、使用にあたっての金額を支払い、いくつかの契約条件が書かれた書面に署名し契約を交わしました。 効果検証を行った研究は論文化して公表されたのですが、その後に評価尺度の作成者側から尺度の使用について契約内容に違反しているとの旨の連絡をいただきました。 確認すると自分の確認不足で確かに契約書に書かれた内容に反していること(具体的には、1年の使用期限が定められていたが2か月間程超過してしまったこと、結果・謝辞に使用した尺度が著作権上保護されている旨の文章を記載しなかったこと、指定された引用文献に不足があったこと)がありました。 これらを解決するために先方からは、2つのオプションを提示されました。一つは、尺度の作成者達を外国から招いてその尺度の使用についての講習を研究に参加した全施設が受けること(+日本円で130万円程の要求)、もう一つは、論文を発表した雑誌に(可能かどうかわかりませんが)論文への追記を求めて修正を図ること(+日本円で170万円程の要求)、それらがありました。 上記のような状況なのですが、こういった場合にはどのような対応がよいのでしょうか?

回答

著作権侵害は出版界では大変深刻な問題なので、慎重な対応が必要です。契約書に定められた期限を2か月超過したとのことなので、著作権保持者が懸念するのも無理はないでしょう。今回は、提示されたオプションのいずれかを取るしかないと思われます。対応を取らないでいれば、ジャーナル論文の撤回や法的措置などの深刻な問題につながりかねません。そうなれば、現在示されているオプションよりもずっと高額な費用がかかる可能性があります。著作権手続きについての同僚たちの認識が十分でない場合は、提案されている講習は有益だと思いますので、ぜひアレンジしてください。そうすれば、多くの人にメリットがもたらされます。2つ目のオプションとして示された論文の修正は、ジャーナルの規定によっては、必須の要求事項になります。

今回の件には真摯に対処し、同僚や上司と相談した上で、できるだけ早くスマートな対応を取りましょう。

 

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編集の公正性に目を向けよう

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編集の公正性に目を向けよう

信頼性が高く根拠の確実な科学コンテンツの出版は、危機に瀕しています。学術出版界では、これまで機能してきたプロセスが損なわれつつあり、疑わしい出版社の存在が脅威となっています。学術出版界は今、編集の公正性を確保できる方針や慣行に目を向ける局面に差し掛かっていると言えるでしょう。

 [本記事はウォルターズ・クルワー(Walters-Kluwer)社の著者向けニュースレター、Author Resource Reviewに掲載されたものを、許可を得てここに再掲載したものです。]


本記事は、コネチカット大学看護学部名誉教授、看護師、米看護師協会会員のペギー・L・チン(Peggy L. ChinnPhD)氏が執筆したものです。1978年から最先端の看護学の論文出版を続けるAdvances in Nursing Science誌の創刊者にして編集者であるチン氏は、看護理論、フェミニズムと看護、看護術、執筆と出版、LGBTQの保健をテーマとした書籍・論文を出版しています。2014年の著書「Philosophies and Practices of Emancipatory Nursing: Social Justice as Praxis(開放的看護の理念と実践:慣習としての社会正義)」は、AJN 20152つのカテゴリーで大賞を受賞しました。最近は、「the 2nd edition of LGBTQ Cultures: What Every Healthcare Professional Needs to KnowLGBTQの文化:すべての医療従事者が知っておくべきこと、第2版)」、「Writing in the Digital Age: Savvy Publishing for Healthcare Professionals(デジタル時代の執筆:医療従事者のための執筆の手引き)」という電子書籍を共著出版しています。


信頼性が高く根拠の確実な科学コンテンツの出版は、危機に瀕しています。学術出版物の編集者、出版社、著者、読者は、一般社会の不信感の影響を受けており、科学と学術の構造を含め、これまで伝統的に機能してきたプロセスが損なわれつつあります。出版業界は、従来の編集基準を満たしていないとされる、オンライン出版を利用する疑わしい出版社の存在に脅かされています。その多くは、科学の基礎となる公正性を満たしておらず、社会貢献を果たしていません。この脅威は「ハゲタカ」や「悪徳出版社」とも呼ばれていますが、名称はどうあれ、学術出版界は今、編集の公正性を確保できる方針や慣行に目を向ける局面に差し掛かっていると言えるでしょう。


問題の範囲

20172月、Scholarly Kitchenのアリス・メドウズ(Alice Meadows)氏は、一般社会からの不信が科学や科学者に及ぼし得るリスクと、主要メディアがその不信を煽っていることに関する記事を投稿しました1。その中で提示された複数の重要なリソースは、すべてのジャーナル出版社や編集者に公開されており、一般の人々への教育、出版物の信頼性の確認、透明性の改善のために使用することができます。これらの行動規範や方針の多くは、オーサーシップや編集管理、最良の出版慣行のために長らく基準とされてきたものですが、昔と違う点は、現在は、これらの行動規範や方針を明確化、透明化した上で、確認可能な状態にすることが求められているということです。編集者や出版社が、これらの慣行の多くを当然のものとして受け入れていたのは過去の話です。すべての学術関連組織が直面している脅威に対し、自分たちの行為がどのように行われているのかに目を向けることの重要性と、その方針や慣行を研究者や一般社会に公開する必要性に気付いたのは、ごく最近のことなのです。


ある看護師の研究者チームが最近発表した研究では、ハゲタカジャーナルと見なされているジャーナルで過去4年間に出版された4000本以上の論文を対象とした調査が行われました2。その中からランダムに抽出された358本の論文のうち、96.1%は質が低いまたは平均的と評価されました。これは、看護学の分野に質の低い論文が多く存在していることを示しているだけでなく、質の低い論文が出版され、読者や施術者の手元に届いてしまっているということです2。看護は、非倫理的行為が許されない専門職です。実際、ギャラップの最新の世論調査でも、看護は15年連続で信頼できる職業のトップに選ばれています3。したがって、その他多くの分野と同様、看護師が悪意を持った行動をとることは稀であると考えられますが、それでも他分野の研究者と同様に、看護師も質の低い研究や論文につながる数々の要因に流されてしまうことがあるのです。研究者たちが質の高い科学的行為・報告の基準を意識しない限り、または質の低い研究や質の低い報告・出版について認識しない限り、悪質なジャーナルで質の低い論文を出版する罠に引きずり込まれてしまいます。これは、研究者個人にとって悲劇であり、科学的公正性には深刻な脅威がもたらされます。さらに、悪意を持った人々に悪用されて、分野全体の信頼性を貶めることにも繋がる可能性があります。


悪徳出版社は、自分たちが信頼できる企業であると見せかけるために、あらゆる手段を尽くします。たとえば、偽の「インパクトファクター」や指標を使う、編集委員会に著名な研究者の名前を無断で加える、査読プロセスについて虚偽の説明をする、などの行為です。一方で、彼らにできないのは、編集基準に関するディテールの作成や決定、そして編集の公正性を保証するエビデンスの提示です。著者は、ジャーナル編集部の設ける基準に関して、いつでも問い合わせができるということを念頭に置いておきましょう。


改善策の検討

学術出版を脅かす2つの脅威(一般社会からの不信、質の低い出版物や悪質な出版物の存在)は、自然消滅が見込めるものではなく、事実や証拠の提示による反論という通常の改善策で解決できる問題でもありません。したがって、これらの脅威に対抗するためには、科学的価値や信頼性を保証するコミュニケーションや行動に注目する必要があります。編集者や出版社は、各自の方針や慣行が最良であるどうかを検討し、それらを順守するために必要な手順を踏み、これらの行為が一般社会からの要求に合致しているかどうかを確認する手段を設ける必要があります。これは一時的な取り組みではありません。出版慣行への継続的な評価が必要です。また、出版プロセスのみならず、そのプロセスを一般社会に伝える方法を改善するために必要な手段への継続的な評価も必要です。


下の表は、編集者が実際にどのように行動しているか、そしてその行動をオンラインや印刷媒体でどのように示しているかという観点から、監視が必要な編集上の方針と慣行をまとめたものです。信頼性の高いジャーナルの編集者や出版社にとっては、これらの慣行はごく一般的なものかもしれませんが、今、その行いの透明性を開示することが、かつてないほど求められています。表の要素は、看護学におけるハゲタカ出版に関する研究や、ジェフリー・ビオール(Jeffrey Beall)氏による悪徳出版社についての調査、Scholarly Kitchenによる関連問題についての記事に基づいて決定しました1,2,4-7。信頼性の高い看護学のジャーナルは、この表で示した情報やエビデンスのほとんどを提供していましたが、情報を著者や一般に向けて公開するという点においては、改善の余地が見られました。


表の左欄の、「編集のリーダーシップ」、「編集コンテンツのオリジナリティ」、「著者の識別、資格およびオーサーシップの確認」、「論文執筆基準」、「論文の査読プロセス」、「論文出版基準」、「出版後のアーカイブ、リポジトリ、ソーシャルメディアでの扱い」は、信頼できる学術コンテンツとそうでないものを識別するための判断項目です。ただしこの識別は、信頼性の高いジャーナルが自誌の方針の詳細を説明し、慣行がその方針に一致していることを示す証拠が提示されている場合に限り、有効です。


【表】着目すべき編集部の特徴、証拠となる情報源、ウェブサイトや資料の特徴

方針/慣行

証拠となる情報源

ウェブサイトでの著者向け情報

ウェブサイトでのジャーナルの説明・情報

編集のリーダーシップ

・編集長、編集者、すべての編集顧問委員の経歴、ジャーナルの理念との適格性を示した情報

・出版倫理基準の順守を保証するCOPE会員であることを示す情報

・ジャーナルの理念や将来の方向性、専門分野への貢献を示したシニアエディターによる論説

・シニアエディター、編集者の確実にアクセス可能な連絡先情報

・編集委員や査読者の任命に関する方針

・ジャーナルが適用しているCOPEガイドラインの説明

・編集スタッフ全員の名前と資格証明

・査読者全員の名前と資格証明

・編集の責任を負うすべての人物の資格に関する概要

COPE会員であることを示す記述、COPEウェブサイトへのリンク

編集コンテンツのオリジナリティ

・著者全員の署名を要求しているか

CrossCheckなどのツールでオリジナリティを確認しているか

・先行論文の使用許可書を要求しているか

・オリジナリティの要件に関する説明

・先行論文の使用許可に関する詳細情報

・不正行為に関する方針

・オリジナリティおよび論文タイプに関する記述

著者の識別、資格およびオーサーシップの確認

ORCIDの使用

・全著者が論文に寄与していることを認める署名入り証書(ICMJEが推奨する医学誌における学術活動の実施、報告、編集、出版に基づくもの)

・利益相反に関する署名入り証書

ICMJEのオーサーシップ要件

・著者以外の貢献者の申告を推奨しているか

・著者の資格要件の有無

論文の査読プロセス

・査読プロセスの詳細説明

・編集者によるレビューおよび判定に関する流れが書かれた年次報告書

・査読に要する期間を含めた査読プロセス(またはその代替プロセス)の詳細

・査読者の選定基準

・論文の評価基準、リジェクト/アクセプトの基準

・査読結果を踏まえた編集者の判定基準

・査読プロセス(またはその代替プロセス)の概要

論文出版基準

・各巻の出版時期が記載されている年次報告書

・適時出版されている巻

・論文アクセプト後に発生するプロセスと、その所要期間に関する説明

1年に出版される巻数と、その出版頻度

出版後のアーカイブ、リポジトリ、ソーシャルメディアでの扱い

・専門領域でもっとも著名なインデックスに掲載

・すべての編集コンテンツのDOI

・リポジトリやソーシャルメディアでの扱いに関する明確な方針

・ジャーナルのコンテンツが収録されているインデックス情報

・ジャーナルのソーシャルメディアアカウントへのリンク

 


シニアエディターが重要な役割を担っていることは言うまでもありません。豊かな伝統を守りながら、進化や変化を求められる立場です。この熟練した編集者たちによる強力なリーダーシップは、昔も今も、学術出版の信頼性の根幹をなすものです。編集者や編集顧問委員会(またはその類似組織)も、出版物の質や信頼性を担保する上で重要な役割を果たしますが、ジャーナルのビジョンや方向性、基準を定めるのはシニアエディターの役割です。Scholarly Kitchenの最近のいくつかの投稿でも、シニアエディターの重要性が述べられています。ジャーナルのコンテンツの信頼性を確保する上で「査読」は重要な要素ですが、編集チームもまた、ジャーナルの方針や基準を順守しつつ、査読プロセスを管理し、査読の整合性を保ちながら11つの論文に最終判定を下すという重大な責任を負っているのです8-10。出版社や関連団体も編集を支援するキープレイヤーと言えますが、健全な編集のリーダーシップは、出版社の利益から独立したものでなければなりません。


編集のリーダーシップ

学術誌で管理職に就いているすべての編集者は、学術や出版を支援する専門組織と、全体的および分野別の繋がりを持つ必要があります。COPE(出版倫理委員会:https://publicationethics.org)の会員になると、倫理上のジレンマに陥ったときに、倫理審査などの出版倫理に関する豊富な情報にアクセスすることができます。以下は、特定の分野で出版基準を支援している組織の一例です:
 

・世界医学雑誌編集者協会(www.wame.org

・看護学編集者国際団体(https://nursingeditors.com

African American Intellectual History Societywww.aaihs.org


編集コンテンツのオリジナリティ

表に示したように、論文のオリジナリティを証明する情報源は、著者の自己申告と査読に大きく依存しています。オンライン上で剽窃チェックを行うことも重要ですが、何より重要なのは、ジャーナルが求めるオリジナリティを明確に示すことでしょう。


著者の識別、資格およびオーサーシップの確認

固有のオンラインIDORCiDなど)により、著者の特定や追跡が容易になりました。また、健全なオーサーシップを構築する上で、利益相反に関する情報は重要です。そして、もっとも重要なのは、何をオーサーシップと見なすかに関する方針です。これは、倫理的課題の共有を示す問題です。医学雑誌編集者国際委員会(International Committee of Medical Journal Editors, ICMJEwww.icmje.org/recommendations)は、すべての著者は以下の4つの基準を満たさなければならないと定めています:
 

  • 研究の構想やデザイン、または研究データの収集、分析、解釈に多大な貢献をしていること
  • 論文の重要な知的コンテンツを執筆している、またはその重要な修正を行なっていること
  • 出版の最終承認を行なっていること
  • 論文のあらゆる部分の正確性や公正性に関する疑問を適切に調査し解決することを保証し、論文のすべてに責任を負うことに同意していること


論文執筆の基準

論文執筆に関する指示は、査読や出版においてのみ重要な意味を持っているわけではありません。この指示は、ジャーナルが投稿論文に求める品質基準を反映するものでもあります。以下の項目を満たす投稿規定(Information for Authors)は、一定の質を保持していると考えられます:
 

  • ジャーナルの目的についての明確な説明
  • 出版プロセスに関する詳細な説明(科学的な質を確保するために要する期間について著者が納得できるように)
  • 査読者の選定に関する方針
  • 編集者による最終判定の基準
  • 論文執筆についての明確な規定(引用や参考文献の書式など)
  • 引用や図表の使用および借用の同意に関する方針
  • ソーシャルメディアの利用に関する方針


論文の査読プロセス

査読プロセスや査読者の選定方針に関する透明性については、明確な説明がなければなりません。出版論文の選定基準についても、査読の有無に関わらず、透明性について明確な説明が必要です。一般社会への科学の普及促進に取り組むSense about Scienceプロジェクトでは、従来の査読や代替的な査読についてのより良いコミュニケーションを促す、ジャーナル向けの査読ワークショップや若手研究者向けのワークショップを開催しています(http://senseaboutscience.org/activities/peer-review)。


論文の制作基準

論文の質を確実に保証するものの1つは、出版プロセス全体が、編集コンテンツの科学的信頼性に忠実であることです。過去10年間、これらのプロセスの詳細や、校正やフォーマット作業の基準が説明されることはほとんどなかったため、今、これらのプロセスを監視し、方針/慣行を明確にする重要性が高まっています。科学論文の校正はこれまで、論文の科学的価値を損なわないための文章の明瞭さの改善と、スタイルやフォーマットの修正に限られてきました。しかし現在は、編集および校正の基準や関与度合は、論文の質に関する重要な指標と位置付けられています。


出版後のアーカイブ、リポジトリ、ソーシャルメディアでの扱い

DOI(デジタルオブジェクト識別子)によって実現している科学論文の永続性の保証は、すべての学問分野にとって不可欠であり、一般社会も、オンラインでそれを簡単に確認することができます。リポジトリやソーシャルメディアの問題は依然として流動的ですが、すべてのジャーナル(オープンアクセスも購読型も)に、出版後のコンテンツの使用について説明する関連方針を設けることが推奨されています。


結論

学術の公正性に関する問題は、近年になって急増しています。これらの問題に対処するにあたって、オープンアクセスか購読型か、従来型か新型かによらず、ジャーナルの編集者は、コンテンツの信頼性を左右する著者に向けて、自分たちの慣行を明文化して説明する義務があります。この記事で、信頼できる編集者やジャーナルを見分ける方法をご理解頂けたと思います。今後は、編集プロセスの透明性について、ジャーナルのウェブサイトを閲覧すれば、そのジャーナルの質を評価することができるでしょう。


参考資料

  1. Meadows A. 15 things we can do to stand up for science! 2017. https://scholarlykitchen.sspnet.org/2017/02/27/15-things-we-can-do-to-stand-up-for-science. 
  2. Oermann M, Nicoll LH, Chinn PL, et al. Quality of articles published in predatory nursing journals. Nurse Outlook. 2017; in press.
  3. Norman J. Americans rate healthcare providers high on honesty, ethics. 2016. www.gallup.com/poll/200057/americans-rate-healthcare-providers-high-honesty-ethics.aspx.
  4. Anderson K. Publishing in a time of information warfare—a wakeup call. The Scholary Kitchen. 2017. https://scholarlykitchen.sspnet.org/2017/04/03/publishing-in-a-time-of-information-warfare-a-wakeup-call.
  5. Beall J. Scholarly Open Access (archived). 2017. https://web.archive.org/web/20170103170903/https:/scholarlyoa.com.
  6. Oermann MH, Conklin JL, Nicoll LH, et al. Study of predatory open access nursing journals. J Nurs Scholarship. 2016;48(6):624-632.
  7. International Academy of Nursing Editors. Best practices for journal websites. 2016. https://nursingeditors.com/inane-initiatives/best-practices-for-journal-websites-2.
  8. Anderson K. The editor—a vital role we barely talk about anymore. The Scholarly Kitchen. 2014. https://scholarlykitchen.sspnet.org/2014/09/23/the-editor-a-vital-role-we-barely-talk-about-anymore.
  9. Anderson K. Revisiting: The editor—a vital role we barely talk about anymore. The Scholarly Kitchen. 2015. https://scholarlykitchen.sspnet.org/2015/09/17/revisiting-the-editor-a-vital-role-we-barely-talk-about-anymore.
  10. Michael A. Ask the chefs: what is editorial independence and how does it impact publishing? 2015. https://scholarlykitchen.sspnet.org/2015/04/30/ask-the-chefs-what-is-editorial-independence-and-how-does-it-impact-publishing

慢性疲労症候群の原因は炎症にあり?

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慢性疲労症候群の原因は炎症にあり?

疲労や不調を感じている日は、集中力や生産性が低下し、仕事に支障をきたすことがあります。毎日のように不調が続いた場合のことは、想像もしたくないでしょう。しかし、慢性疲労症候群を患う人々は、長期にわたる極度の疲労感に悩まされています。この度、この病気の原因を説明する新たな研究結果が発表されました。

疲労や不調を感じている日は、集中力や生産性が低下し、仕事に支障をきたすことがあります。毎日のように不調が続いた場合のことは、想像もしたくないでしょう。しかし、慢性疲労症候群を患う人々は、長期にわたる極度の疲労感に悩まされています。この度、この病気の原因を説明する新たな研究結果が発表されました。


スタンフォード大学医学部の研究者らは、ハイスループット分析を用いた慢性疲労症候群と炎症との関係に関する研究結果を発表しました。Proceedings of the National Academy of Sciences誌に掲載されたこの論文によると、米国には少なくとも百万人の慢性疲労症候群発症者がいるということです。研究者らは今後、この病気を診断するための臨床検査を実施する計画です。


慢性疲労症候群は、日常的な疲労や気分の落ち込みと混同されやすく、患者自身に原因があると考えられがちですが、研究者たちは、この病気には極度の疲労、インフルエンザに似た症状、筋肉痛、ブレイン・フォグ(頭に霧がかかったような状態)などの症状が伴うと説明しています。また、少しでも無理をすると症状が悪化します。寝たきりになる患者もおり、サポートなしでは生活ができなくなるケースもあります。


今回の研究結果が発表された背景には、炎症に効く薬を発見することへの期待がありました。依然として不明な点が多い慢性疲労症候群ですが、研究者たちは、製薬会社が積極的に治療薬の開発に取り組んでくれることを望んでいます。今から10年後には、研究がさらに進み、症状を和らげるために具体的に何をすべきか、そして何ができるのかを、研究者たちが把握できるようになっていることが望まれます。


ソース:
DOI: 10.1073/pnas.1710519114

東アジアのジャーナル編集者に、ISMTE年次大会参加のためのトラベルグラントを支給

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東アジアのジャーナル編集者に、ISMTE年次大会参加のためのトラベルグラントを支給

エディテージは大会参加費込みのトラベルグラントの提供を通じ、東アジアのジャーナル編集者に、ISMTE 2018 北米年次大会もしくはISMTE 2018 ヨーロッパ年次大会に参加できるまたとない機会を提供します。このグラントは、2017年に設けられました。

国際編集者会議(ISMTE)は例年、世界各地で一連の会合を開催しています。これらの会合はジャーナル編集者にとって、ほかの編集者と交流し、ジャーナル出版における重要テーマについての意見を交換する、貴重な機会となっています。

エディテージは、大会参加費込みのトラベルグラントの提供を通じ、東アジアのジャーナル編集者に、ISMTE 2018 北米年次大会 (823日、メリーランド州ボルチモア)もしくはISMTE 2018 ヨーロッパ年次大会 (118日、英国ロンドン)に参加できるまたとない機会を提供します。

東アジアのジャーナル編集者に、世界各地の業界リーダーと交流する機会を持ってもらうため、ISMTEとエディテージの協力により、エディテージ・トラベルグラントを最大4件まで提供します。大会への参加に先立ち、本企画の授賞式でグラント受賞者を祝福します。このグラントは、2017年に設けられました。



エディテージ・トラベルグラント2017の受賞者は?

 

エディテージとISMTEは、昨年もトラベルグラントの支給を行いました。複数の応募者の中から3名のアジア人ジャーナル編集者が選ばれ、2017 ISMTE 年次大会(英国ロンドン)への参加を果たしました:

  • Shanshan Xie, Genomics, Proteomics & Bioinformatics(中国) 
  • Suk-Gyeong Kim, マネージングエディター、Journal of Astronomy and Space Sciences(韓国)
  • Pravin Chhetri, マネージングエディター、Birat Journal of Health Sciences(ネパール)

詳しくは、本人たちの体験談をお読みください。



エディテージ・トラベルグラント2018の申請方法は?

 

ISMTE 2018年次大会のいずれかに参加を希望する方は、グラント申請のためのガイドラインと応募資格を参照の上、今すぐお申し込みください! 

申し込み期限は以下の通りです:

  • 北米大会のグラント申請の締切日2018511
  • ヨーロッパ大会のグラント申請の締切日2018810


さあ、今すぐ申し込みましょう!このチャンスを逃さないよう、周りの人にもぜひ教えてあげてください。


論文の取り下げ依頼は認められるか

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Question Description: 

ジャーナルに昨年の11月に投稿をしました。1か月ほどたち、ステータスが「Reviewer Selection」になり、それ以降変化がありません。この間、3度ほど問い合わせをしていますが、エディターからは「現在、査読者を探している最中」という返答のみです。当ジャーナルでは平均で2-4週間で査読者が決まると返答を得ています。6か月ほど待たされている状況というのは、査読取り下げの理由として認められるものでしょうか。

回答

ジャーナルから投稿論文を取り下げる場合は、相応の理由を求められます。しかしながら、編集者が6か月間も査読者を見つけられないでいるのであれば、著者としては、取り下げを検討するのもやむを得ません。あなたの原稿はまだ査読に送られてもいないので、この段階で取り下げを申し出ても、非倫理的な振る舞いにはならないでしょう。取り下げを希望するメールを編集者宛て送り、取り下げを希望する理由を明確に説明してください。今のあなたには時間が重要で(卒業やキャリアアップのために出版論文が必要である、など)、これ以上は待てないということを伝えましょう。取り下げを申し出る文書(メール)には、論文著者全員の署名を入れるようにしてください。また、論文の取り下げを承認する正式な通知を受け取るまでは、ほかのジャーナルに論文を投稿しないようにしてください。さもないと、科学における不正行為とみなされてしまいます。

 

関連記事:

査読期間の長さと出版の可能性に、相関はありますか?

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Question Description: 

2つの論文を、それぞれ異なる査読付きジャーナルに投稿しました。1つのジャーナルからは、修正が必要であること、編集者自身がそれを行うこと、20179月号に論文を掲載するかどうかの承認メールが20177月に送られてくること、が伝えられました。もう1つのジャーナルからは、論文が予備審査を通過し、6ヶ月~1年を要する査読プロセスに進むとの連絡がありました。このような状況なのですが、論文は、待ち時間が長いほど出版される可能性が高まるのでしょうか?私が置かれている状況について解説して頂けますか?長期間待てば、最終的に論文は出版されるのでしょうか?ご助言を頂ければ幸いです。よろしくお願いいたします。

回答

最初の論文に関して言えば、出版される可能性は比較的高そうです。もう一方の論文については、確かなことは言えません。ジャーナル側は、単に査読に要する期間を伝えてきたにすぎないからです。あくまで自誌の方針として査読期間を著者に伝えているものと考えられるので、この連絡と出版の可能性には、何の関係もないでしょう。また、査読期間と出版の可能性にも、相関はありません。6ヶ月~1年待ったとしても、リジェクトされる可能性はあります。伝えられた期間が、専門分野の平均査読期間よりも極端に長い場合は、そのジャーナルでの投稿プロセスを続行するかどうか再検討してみましょう。

効果的な共同研究を行うコツと、研究に注目を集めるためのヒント

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効果的な共同研究を行うコツと、研究に注目を集めるためのヒント
20年以上のキャリアを持つ海洋生態学者。沿岸部の管理や絶滅危惧種の保全に関する研究に取り組んでいる。学術出版と査読で豊富な経験を持ち、2誌で編集委員を務める。最近は、ビデオ・アブストラクトや一般語訳などの代替フォーマットを利用して研究結果を伝え、保全管理に関する自身の研究のインパクトを発信している。研究の影響度を高めるために、さまざまな研究プロモーション方法を試している。

20年以上のキャリアを持つ海洋生態学者のゲイル・スコフィールド(Gail Schofield)氏は、沿岸部の管理や絶滅危惧種の保全に関する研究に取り組んでいます。これまで、スウォンジー大学カレッジ・オブ・サイエンス(英)、テッサロニキ・アリストテレス大学生物学科(ギリシャ)、ディーキン大学(豪)でポスドク研究員として精力的に研究を行なってきました。現在は、ディーキン大学総合生態学センター(ウォーナンブール・キャンパス)に勤務しています。また、環境系企業や国立公園の科学コンサルタントとしての経験や、学術出版の経験も豊富です。過去には書籍を出版したほか、40誌以上の学術誌で査読者を務めたこともあります。また、レビューエディターとして複数の受賞歴があり、Frontiers in Marine Science誌とJournal of Biological Research – Thessaloniki誌の2誌では編集委員を務めました。


スコフィールド氏は、気候変動による野生生物の現在と未来の需要の変化を考慮しながら、研究結果を保全管理につなげる方法を模索し続けています。本インタビューでは、絶滅危惧種であるウミガメや、ウミガメが持つ影響力に関する最新の研究について伺いました。また、ご自身の研究経験をもとに、新たなフォーマットを駆使した研究発信の重要性や、学術出版界のオープンアクセス化が今まで以上に欠かせなくなっている理由についてお話し頂きました。


このインタビューから、研究の発信、世界中の研究者との共同研究、研究に然るべき注目を集める方法についてのヒントを得て頂ければ幸いです。


ウミガメの保護に関する取り組みについて、詳しく教えてください。

この分野に初めて足を踏み入れたのは学生時代です。フィールドワークの経験を得るために、とあるNGO主催のボランティアに参加したことがきっかけでした。現在生存しているウミガメは7種で、生息地や食性、移住性、繁殖性などの生態は類似しているものの、それぞれの習性は異なっています。研究は、雌のウミガメと、産卵地となる海辺に焦点を絞って進めています。そのため、7種の生息海域、繁殖活動、雄のウミガメ、個体数に関して不足している知見を埋める作業が多いように思います。ウミガメは、気候変動による将来的な悪影響を評価する上で、最適な調査対象です。なぜなら、外温動物であるウミガメの子どもの性別は、砂の温度に依存している(温度依存性決定である)ので、気候変動によって性別分布が偏る可能性があるためです。子どもの性別の偏りが大人のウミガメにどういう形で表れるのかに関する知見を経験的に定量化するのは、難しいことです。

この研究分野を専門にしようと思った動機は何ですか?

私は長年に渡り、さまざまなNGOのもとで、環境コンサルタント・国立公園にエビデンスベースの情報を提供する科学者・学術研究者としてウミガメに関わってきました。これらの経験が、科学的なインパクトだけを目指すわけではない、長い歴史を持つ唯一無二の動物たちを保護・保全するための説得力を備えたリサーチクエスチョンの構築や、結果の解釈方法に影響していると感じています。「変化を起こしたい」という想いが、一番の動機です。

種の保全に関する研究は、将来的にどのような変化を起こすことが期待できますか?

私は常に、種の保全に直接的に役立つ研究を模索しています。その手段になっているのは、動物をモニタリングするための新技術の開発および改良や、特定の場所での保護指標の導入・強化を目指すデータ分析です。とくに、実行可能な保全活動の提案や、現在および将来の保全地域の把握を目的とした(個体群動態、採餌エリアとその分布、繁殖時期などを含めた)、将来の動向を高精度で予測できる長期的データセットを構築することを目指しています。ウミガメは、繁殖と採餌のために約1000kmの距離を移動する高度回遊性の種であるため、その保全のためには、グローバルスケールでの活動が必須です。つまり、繁殖エリアと採餌エリアが別々の国にあることが多いため、政府レベルでの国際協力が不可欠なのです。地域・国単位で活動する組織が多い中、この分野では、ボトムアップとトップダウン両方の関与が必要になります。


ウミガメは海辺で産卵するため、海辺の開発、光害、巣や産卵の破壊や妨害につながるビーチ利用の制限など、社会の一定の協力が必要です。したがって、ウミガメが特定の場所(繁殖地、採餌地)を使う理由や、それに伴う行動について一般社会に知ってもらい、ウミガメに対する意識を高めながらウミガメを尊重してもらうことが重要なのです。ですから、私は、この分野でインパクトの高い科学論文を発表することや、一般社会の興味を引くことに力を入れています。私の論文の中には、科学的には平凡なものもあるかもしれませんが、これらは科学者でない人々を啓発する目的で書かれたものです。たとえば、最近発表した、水中観察と空中ドローン撮影によって収集したウミガメのクリーニング・ステーションの利用に関するデータをまとめた論文は、12000ビュー以上の関心を集めました。

最近、ウミガメの繁殖活動に関する国際共同研究の結果をまとめた論文を共著で出版されました。国際共同研究のマネジメント方法について教えて頂けますか?

異なる組織に属する研究者同士で共同研究を行う場合は、Eメールやテレビ会議などで日常的にコミュニケーションを取り、研究の目的を共有することが重要です。共同研究者は、前所属先の同僚でもいいですし、学会で意気投合した研究者でも構いません。あるいは、直接面識はなくても、研究目的の達成に役立つスキルや知識を有する研究者でもいいでしょう。通常は、一人の研究者/著者が研究チームを組織します。私が論文と研究プロジェクトの概要をまとめるときは、各セクションで各著者がどのような役割を果たすべきかをまとめる作業を行います。この作業により、すべての共著者が研究目的に焦点を合わせながら、さまざまな意見を出し合って、論文をブラッシュアップしていくことができます。


さまざまなスキルを持つ研究者との共同研究は、幅広い科学分野から注目を集める論文を出版するために、とても重要です。プロジェクトを開始する時点で、それぞれの共同研究者の要求、共同研究期間、研究目的を明確に共有しておくことが大切です。私は、論文の投稿から査読、査読者への返答、最終校正を含むすべての出版プロセスの状況を、共著者たちが認識しているか確認するようにしています。このようなアプローチによって、共同研究者たちと直接会う機会がなくても、彼らの仕事の進め方を知ることができ、将来的な論文出版に向けた共同作業におけるノウハウを積み上げることができます。

研究プロジェクト(実験から論文出版まで)を共同で進める上で、研究者がクリアにしておくべき重要事項を教えて頂けますか?

  1. 通常、12人が論文の初期コンセプトを描きます。これをベースに、どのような役割を任せたいかを明確にした上で、適切な共同研究者を選びます。この作業によって、各研究者の強みを活かしやすくなります。研究のコンセプト、範囲、各自の役割、スケジュール、著者名の順番などを明確にしておきましょう。著者名の順番は、プロジェクト開始時点で明確にしておく必要があります。この順番に関するトラブルは、各著者の貢献について、独立したセクションを設けるか、もしくは謝辞で触れることで解決できることもあります。
  2. 論文執筆プロセスの全段階(草稿から投稿まで)における情報を共著者と共有し、それらについて話し合う機会を設けましょう。この情報には、内容の変更、ターゲットジャーナルの変更の判断、査読者からのコメント、校正なども含みます。共著者は、論文の進捗を常に把握していなければなりません。共著者の名前も論文に掲載されるので、論文のあらゆる変更に、共著者の承認が必要です。
  3. 共著者からの意見は慎重に検討し、適切な返答を心掛けましょう。私は、査読コメントへの返答と同じように、時間をかけて明快な回答を用意するよう努めています(共著者=査読者だと思っています)。
  4. 共著者が多ければ、それだけ多くのアイデアが出てきます。良質な論文で示される重要な発見は、通常23個程度です。したがって、核となる目的がブレないようにして、途中で出てくるアイデアが、その論点や将来的な研究課題として、この目的に合致したものかどうかを判断しなければなりません。

ご自身の活動についてもう少し教えてください。研究発信のために行なった取り組みなどはありますか?

今日では、あらゆる方法で研究について発信することが重要です。一般的に、研究の発信を行うかどうかは著者の判断に委ねられていますが、多くのジャーナルは、テキスト、画像、動画を含むマルチメディア・プラットフォーム(TwitterFacebookYouTube、その他のブログプラットフォーなど)での宣伝に関する規定を設けています。多くの研究機関は自前のメディア対応チームを持っており、(国内的/国際的に重要と考えられる研究に関する)プレスリリースを一般向けに発信しています。そして、マスメディアがこれらのプレスリリースを取り上げます。ジャーナルの中には、ニュースレターやブログで情報を発信し、幅広い注目を集めそうな論文のプロモーションを行なっているところもあります。一部の大手ジャーナルは、自誌のメディア対応チームを持っていますが、社会に大きなインパクトを与える可能性のある論文に公開制限を設け、テレビやラジオ、記事(主に著者のインタビュー記事)などの主要国際メディアを利用して大々的な宣伝活動を行なっています。それと並行して、私は自分の研究について国内学会や国際学会での宣伝を行なっています。したがって、自分の論文の主要メッセージ、他分野の研究者との関連性、この2点が論文のタイトルとアブストラクトに明記されていることを、事前に確認しておくことが重要です。


宣伝を行うかどうかは、論文そのものと、論文が科学や社会に与えるインパクトの大きさに左右されます。たとえば、私が最近発表した、ウミガメによるクリーニング・ステーションの利用に関する論文(Marine Ecology Progress Series誌で出版)は、科学的側面の強いものでしたが、YouTube12000回視聴されたことから、大きなインパクトがあったと考えています。この研究は、ウミガメの生態と保全に関する国際学会でも発表しています(37th International Symposium on Sea Turtle Biology and Conservation、ラスベガス、20174月)。


2017年に私が発表したその他の論文(Proceedings of the Royal Society B Biological Sciences誌、Functional Ecology誌で出版)も世界中の科学者の関心を集めましたが、これらについては、ジャーナルのニュースレターやブログTwitterFacebookなどのプラットフォーム、論文との関連が深い著名研究者とのネットワークを通して宣伝を行いました。Science Advances誌で発表した論文は、出版されるまでの間、ほかのメディアでの公開が制限されたため、ジャーナルと大学によるプレスリリースは国際的に大きな注目を集め、世界中のテレビやラジオでのインタビューを含めて、70誌以上に記事が掲載されるほどの反響を呼びました。Altmetricによるスコア475点、20171026日現在)は、このシステムで計測された全研究の上位5%に入っており、この論文がいかにメディアで幅広く扱われたかを物語っています(とは言え、このスコアは、私たち自身が発信したメディア報道の一部しか網羅していません!)。この論文に関する報道記事の一部をこちらからご覧頂けます。
 

Gail Schofield presenting her research at an academic conference

 [写真:26th Annual Symposium on Sea Turtle Biology and Conservation(国際ウミガメ学会、クレタ島、2006年)でポスター発表を行うスコフィールド氏]

 

論文の一般語訳(Plain-language summary)も作成されています。この作業はどのように行うのでしょうか。専門家の力を借りましたか?

論文に一般語訳を付けることは、多くの著名ジャーナルが奨励しています。私は、一般語訳を付けることを出版要件にしているScience Advances誌とFunctional Ecology誌の2誌に発表した論文で、一般語訳を作成しました。この作業のために専門家の力は借りていませんが、書き上げたものを、科学的背景を持たない友人に読んでもらって、フィードバックをもらうようにしました。

一般語訳を使ったコミュニケーションは、なぜ重要なのですか?また、一般語訳を書く際のアドバイスを頂けますか?

一般語訳は、一般の人々に研究を理解してもらい、興味を持ってもらうために欠かせないものです。このような文章を書くときは、自分の研究に興味がありながらも専門知識を持たない人を想定し、さまざまな背景を持つ読者に対して、自分の研究結果がいかに興味深いかを伝えるよう意識する必要があります。私は学部時代に、どんな人でも理解できるような文章を書く訓練を受けました。具体的には、専門用語を省くこと、重要な用語を丁寧に定義することなどです。このようなスキルは、とくに助成金申請を書くときに役立ちます。なぜなら、申請書の審査員が自分の専門分野に詳しいとは限らないからです。私は、自分の論文草稿や申請書や一般語訳を、可能な限り友人や同僚に読んでもらって、メッセージがしっかり伝わるかどうかを確認するようにしています。

研究を宣伝することの直接的/長期的メリットは何だとお考えですか?また、学術誌以外のプラットフォームで自分の研究を宣伝することで、どのようなメリットがありましたか?

研究者個人に限らず、所属先の研究機関にも、研究を宣伝することの長期的なメリットは多くあります。研究者個人で言えば、就職、昇進、研究予算獲得のためのアピールになりますし、専門分野内外のほかの研究者とのネットワークの構築にも繋がり、良質な論文を生産し続けるための環境作りに役立ちます。一方、研究機関にとっては、宣伝をすることで、論文出版の先にある社会や科学へのインパクトを定量化することができ、最終的には予算や学生の獲得につながります。国内の大学の研究アウトプットを評価するためのシステムは、各国ごとにあるのが一般的です。これらの評価システムは、英国のResearch Excellence FrameworkやオーストラリアのExcellence in Research for Australia(どちらのも、私が関わったことのある機関です)などのように、国内における研究貢献度の質を定量化することを目的としています。このようなシステムでは、論文が世界最先端のものか、国際的水準にあるか、国内外で認知されているか、という点が、明白な実績や社会的利益などの基準と同列に評価されます。したがって、研究を宣伝することで、学術誌という枠を超えた注目が国内外から集まり、より広範なコミュニティにその研究の重要性が伝えられるのです。


また、個人の研究を宣伝することは、所属機関の取り組みを宣伝することと同義であり、学生だけでなく、政府レベルの出資者へのアピールになります。加えて、研究の核となる要素を宣伝することで、たとえば一般の人々が特定の生物種やその種が直面している苦境を知り、認識を強化および構築する機会になります。ひいては、それが種の保全につながっていくのだと思います。

研究の宣伝を行う研究者にアドバイスをお願いします。

論文をまとめるときに検討すべきなのは、データが示しているもの、ターゲットジャーナルの目的と範囲(読者が何を求めているか)、そして将来的な研究の方向性(すなわち、これから出版する論文や、将来的な共同研究を見据えてどの層の興味を引き付けたいかという明確なアイデア)です。論文の質が高ければ、研究を宣伝し、共同研究者や研究予算や新たな仕事の機会をたぐり寄せるツールとして利用できます。したがって、論文で引用する参考文献についても、その文献の著者にどう反応をしてほしいかというところまで考えて、11つを選択する必要があるでしょう。


研究の枠組みを作る過程では、結果の視覚的要素について検討しましょう。どのような画質、画像、動画であれば、ジャーナル、メディア、科学者、一般市民の注目を集められるかを考えましょう。一部のジャーナルは、あらゆるメディア・プラットフォームに自分の研究を張り付けられるビデオ・アブストラクトを強く奨励しています。

研究や研究データの無料公開に関するご意見を伺いたいと思います。研究のインパクトを最大化するためには、オープンアクセスをどのように利用すればよいでしょうか。研究の宣伝活動の中に組み込むことは可能ですか?

オープンアクセスについては、その重要性についての論文を出版したばかりなので、私の専門分野の観点から幅広くお話ししたいと思います。私たちが現在置かれている状況では、オープンアクセスは研究に不可欠な要素です。今は論文出版数があまりにも多いため、きわめて幅広いスケールでの汎用性が示されていない限り、単一の生物種や単一の地域に焦点を当てた論文は受け付けないジャーナルがほとんどです。したがって、共同研究体制を組み、複数の種や地域にまたがったリサーチクエスチョンについて調査し、さまざまな情報源から利用可能なデータを集めることが重要です。すべての研究分野が前進するためには、研究者たちが自分の研究データを公開することが必要です。オープンアクセスではそれが可能になります。オープンアクセス化によって、既存の知見に等しくアクセスできるようになり、さまざまな分野の専門家がそれぞれのスキルを活かし、各種の課題に多様なアプローチで取り組めるようになります。

スコフィールドさん、共同研究、研究の伝達、研究の宣伝についてのヒントになる素晴らしいお話をありがとうございました。このインタビューは、ジャヤシュリー・ラジャゴパランJayashree Rajagopalan、エディテージ・インサイト、シニアライター/エディター)とネハ・ミルチャンダニ(Neha Mirchandani、カクタス・コミュニケーションズ/エディテージ、リサーチ・コミュニケーション・サービス、マネージング・エディター)が共同で行なったものです。


情報開示:スコフィールド氏は、エディテージのフリーランス・アカデミックエディターです。本インタビューにおいて開示すべき利益相反はありません。

研究の露出度を高めることについてどう考えますか?

研究の宣伝方法について不明な点はありませんか?

研究について発信し、その露出を高める作業は、大変なことのように思えるかもしれません。でも、心配はいりません。研究の宣伝に効果的な8大戦略について説明する学習コースをご用意しています。このコースに興味のある方は、下の画像をクリックしてください。

Learning course on research promotion

論文投稿とFigshareとの関係について

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Question Description: 

PLOS ONE に投稿するためにdataだけをFigshareに公開すればよいところを、Figure,Tableも公開してしまいました。同じFigure,TableをPLOS ONE投稿しても二重投稿にはなりませんか?

回答

Figshare(フィグシェア)は、研究者が自分の図版、データセット、画像、動画を公開して、引用、検索、認識してもらえるようにするプラットフォームです。ワイリー、シュプリンガー・ネイチャー、PLOSなどの著名な出版社は、データ共有サービスでFigshareと連携しています。BioMed CentralSpringerOpenのジャーナルの多くは、補足データをFigshareに登録できるようになっています。Figshareに登録されたすべてのデータにDOIが付与されますが、データセットの著作権は引き続き著者が保持します。

PLoS ONEは、あらゆる追加データ、調査中に収集した生データ、Figshare上のデータセットを受け付けています。通常は、原稿に関係のある主要な図表をFigshareに登録するよう求められることはありませんので、編集者に連絡して事情を説明しましょう。今回の件が最終的にどう判断されるかは、編集者次第です。

 

関連映像(ビデオ記事):


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年々早まる地球資源の「赤字転換日(アース・オーバーシュート・デー)」

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年々早まる地球資源の「赤字転換日(アース・オーバーシュート・デー)」

私たち人間は、地球環境に負担をかけずに消費できる1年分の水や土壌、空気資源を、2017年は82日の時点で使い果たしてしまいました。したがって、この日以降の資源消費は、環境に優しくない行為ということになります。グローバル・フットプリント・ネットワークは、地球資源が「赤字」に転じる日を毎年発表しています。

私たち人間は、地球環境に負担をかけずに消費できる1年分の水や土壌、空気資源を、2017年は82日の時点で使い果たしてしまいました。したがって、この日以降の資源消費は、環境に優しくない行為ということになります。グローバル・フットプリント・ネットワークは、地球資源が「赤字」に転じる日を毎年発表しています。アース・オーバーシュート・デーと呼ばれるこの日は、残念ながら祝日などではありません。


この取り組みは、地球の資源が限られていることを啓蒙するキャンペーンとして、イギリスのシンクタンク、ニュー・エコノミクス財団のアンドリュー・シムズ(Andrew Simms)氏によって提唱されました。具体的な日にちは、同財団の姉妹組織であるグローバル・フットプリント・ネットワークが、1年間に生産される自然資源の量を人間の資源消費量で割った値に365を乗じることで算出しています。つまり、アース・オーバーシュート・デーは、人間の資源の需要量と自然資源の供給量を定量化して計算することで、1年のどの時点で地球に負担をかけ始めるかの指標となるのです。

(地球の自然資源供給量÷世界のエコロジカル・フットプリント)×365=アース・オーバーシュート・デー


この単純明快な計算方法は、水資源や土地資源に関する不十分なデータや、森林や水産物の再生産を考慮していないことを理由に、長年批判の対象になっています。


このような批判はさておき、過剰漁獲や過剰伐採、森林破壊、CO2の排出により、自然資源はかつてないほどのスピードで枯渇に向かっていることを、いくつかの研究結果が指摘しています。1980年代のアース・オーバーシュート・デーが11月であったのに対し、1993年は10月に早まっています。2000年には9月、2016年にはとうとう8月にこの日が訪れるようになりました。これは、私たちが現在消費している資源を賄うためには、地球が1.7個必要という計算になります。


グローバル・フットプリント・ネットワークは、フルーツや野菜の消費を増やす代わりに肉の消費を抑え、食品廃棄量を全体的に減らす努力をすることを推奨しています。持続可能な地球を推進する同団体のCEO、マティス・ワッカーナーゲル(Mathis Wackernagel)氏は次のように述べています。「地球は有限ですが、人間の可能性は無限です。地球のサイズに合った暮らしをしていくことは、技術的に可能であり、経済的にも都合が良いことです。また、それが、私たちが明るい未来を得るための唯一の手段なのです」。

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