学術界で常勤職を得るのは簡単ではありません。大学はテニュア・トラックの職を減らして非常勤職員や臨時職員の数を増やしていますが、博士号取得者の数は世界中で年々増加しています。1つの求人に何百人もの応募があり、競争は熾烈です。学術界で足場を固めるためには、どうすれば自分に有利になるか、前もって考えることが必要です。
学術界で常勤職を得るのは簡単ではありません。これには2つの主な理由があります。テニュア・トラックの職を減らして非常勤職員や臨時職員に切り替える大学が増え続けていること、一方で博士号取得者の数は世界中で年々増加していることが挙げられます。1つの求人に何百人もの応募があり、競争は熾烈です。学術界で足場を固めるためには、どうすれば自分に有利になるか、前もって考えなければなりません。学術界の外で働くにしても、早めに準備をする必要があります。本記事では、皆さんが学術界で自信をもち、自らが主導権を握って職探しができるようなアドバイスをご紹介したいと思います。
1. 準備は早めに開始する。
自分の専門分野で次に何に取り組むか、またどのようなキャリアの選択肢があるのかを、なるべく早く、できれば博士課程の2年目が終了するまでに考え始めましょう。自分の専門分野の求人がどこに出ているのかを把握しておきましょう。学生向けの就職活動に関するワークショップに参加したり、所属機関や大学のキャリアセンターを訪ねてカウンセラーと話をしたりしてみましょう。おぼろげにでも、あなたがキャリア計画の青写真を考え、そのために博士号をどう利用していけるのか、アドバイスをくれるはずです。
2. 夏休み期間中に仕事やインターンシップをやってみる。
博士課程の前半は、あれこれと試すことができる時間と余裕があります。この時期の夏休みを利用して、先入観を持つことなく、仕事やインターンシップ、あるいはパートタイムの仕事など、いろいろなことを体験してみましょう。自分が興味を持てることは何なのかに気づくきっかけとなるかもしれません。インターンシップについては、キャリアセンターのカウンセラーがアドバイスをしてくれるでしょう。
3. 専門家同士のネットワークを構築する。
研究仲間やかつての同僚、教授と連絡をとれるようにしておきましょう。学術界から去っていった大学院の友人や、夏休み期間中の仕事やインターンシップで出会った人なども例外ではありません。このような人々は、将来学術界を離れる決意をすることがあった場合に、あなたを助けてくれるかもしれません。教授、博士課程の先輩、セミナーや学会で出会った人々は、学術界に留まる場合の助けとなってくれるでしょう。
4. 求人情報をどこで見ればよいのか調べておく。
自分の専門分野の求人情報を探すのにもっとも良い媒体は、学会のウェブサイトやニュースレターでしょう。Scholarly Societies Project には、分野別の何百もの学術学会のデータベースがあり、自分の分野の学術団体を見つけるツールとして有効です。その他に学術界の求人検索に利用できるのは、The Chronicle of Higher Education、AcademicCareers.com、Highered.com、Academic360.comなどの全国向けまたは地域別のウェブサイトです。これらの情報源によく目を通しておき、博士課程の後半になったら、興味を惹かれる求人があるかどうか注意して見るようにしましょう。
5. 応募書類一式を前もって準備する。
博士論文を書き終えたら、求人に提出する応募書類を準備する時期です。学術界の求人の応募書類に含まれるのは、通常、カバーレター、学術機関向けの履歴書(CV)、リサーチ・ステートメント(research statement=過去の研究概要と将来の研究の展望を示すもの)、ティーチング・ステートメント(teaching statement=教育についての抱負を示すもの)、推薦状3通ですが、さらに論文のサンプルや学部生からの評価(teaching evaluation)を求められることもあります。これらは重要な書類なので、細心の注意を払って準備しましょう。同僚研究者やアドバイザーに見てもらい、徹底的に修正・校正を行うようにします。推薦状を集め始め、これら全ての書類を準備するには、少なくとも2、3ヶ月はかかります。応募の時期に入る前に、十分な余裕をもって準備を整えるようにしましょう。
6. 募集要項を読み、理解する。
自分に適した仕事を見つけるためには、募集要項をよく読み、必須条件を理解することが極めて重要です。仕事の肩書、内容、その他の補足説明を読み、その仕事に必要とされる条件やスキルを書き出しましょう。自分の経歴がどれぐらい必要条件を満たしているか確認しましょう。オンライン上の求人情報には、その機関全体の情報や被雇用者のコメントなども含まれていることがありますので、これらにも必ず目を通すようにしてください。
7. できるだけ多くの職に応募する。
応募先を絞り込む過程では、必ずしも自分の経歴とは合致しない求人情報も、切り捨ててしまわないようにしましょう。その仕事に関するさらに詳しい情報を集めるために、求人を行なっている学部に連絡してみましょう。そして、あなたが持っているスキル水準の人材採用に関心があるかどうか尋ねてみましょう。必要な情報が手に入らなくても、ひとまず応募してみましょう。あなたの経歴とぴったり合う仕事があったら、用意したCVがその仕事の条件と対応しているか確認しましょう。
8. 応募書類を期限通りに提出する。
学術界では、求人に応募してから最終的な仕事のオファーをもらうまでにほぼ丸1年かかります。募集開始直後の応募者の方が、まだ応募者の少ない段階のため、注目されやすい傾向があります。ですから、自分が仕事を始めたい年の前年の秋(10~11月)に応募書類を提出しましょう。ほとんどの大学では、1月以降は応募書類を受け付けなくなります。一般に、面接(インタビュー)の通知は1月から始まり、3月から4月初めまで続く場合があります。こちらの記事大学・研究機関向けの履歴書(CV)の書き方、も併せてご覧ください。
学術界での就職活動は長きにわたるため、疲弊して自信を失ってしまうこともあるかもしれません。ですから、照準を絞り、自分を信じて気力を維持することが大事です。さらに、友人や同僚など、自分を支えてくれる体制が整っていれば、この重要な局面を乗り越える後押しとなるでしょう。