アメリカ国立衛生研究所(NIH)が、CRISPR-Cas9ゲノム編集技術を使ったがん治療の臨床試験申請を承認し、同技術を使う臨床試験の実現が一歩近づくことになりました。2年間にわたる臨床試験に参加するのは、骨髄腫、肉腫、黒色腫の患者18名です。
アメリカ国立衛生研究所(NIH)が、CRISPR-Cas9ゲノム編集技術を使ったがん治療の臨床試験申請を承認し、同技術を使う臨床試験の実現が一歩近づくことになりました。
6月21日、NIHで倫理と生物安全性に関する審査を行う「組み換えDNA諮問委員会(RAC)」 は、ペンシルベニア大学(フィラデルフィア)の医師、エドワード・スタッドマウアー(Edward Stadmauer)氏を責任者とする臨床試験を承認しました。この臨床試験は、フェイスブック前社長のショーン・パーカー(Sean Parker)氏が設立したパーカーがん免疫療法研究所の資金援助を受けています。
2年間にわたる臨床試験に参加するのは、パーカーがん免疫療法研究所で現在受けられる治療では改善が見られなくなっている、骨髄腫、肉腫、黒色腫の患者18名です。研究チームの主な目的は、患者の体内のT細胞、すなわち免疫細胞の遺伝子を組み替え、がん細胞を探知して攻撃させるというものです。
スタッドマウアー氏は、組み換えDNA諮問委員会以外からも、臨床試験開始の許可を取り付ける必要があります。臨床試験が行われる医療センター、食品医薬品局(FDA)、さらに研究チームのメンバーが所属する研究所の審査委員会の許可も必要となります。ペンシルベニア大学の免疫学者で同プロジェクトの科学アドバイザーを務めるカール・ジューン(Carl June)氏によると、臨床試験は2016年末に開始される見込みです。同氏はCRISPRの使用における主な課題について、ゲノムの意図しない突然変異を回避することだと述べています。
多くの企業がこの技術の商品化にしのぎを削っています。また、この技術を臨床試験に使用したいと表明している研究機関や研究グループは複数あります。遺伝学者たちはこの臨床試験の承認を歓迎していますが、CRISPRに対する理解が深まり、この技術を使用した臨床試験がさらに承認される道が開かれるのかどうか、今後が注目されます。
参照記事:
First CRISPR clinical trial gets green light from US panel
First proposed human test of CRISPR passes initial safety review