イツ政府は、研究者の雇用状況を改善する試みとして、テニュアトラックの大学教員職を新たに1000件創出するという協約に合意しました。この合意は、才能ある若手研究者を国内に留まらせようというドイツ政府の努力を反映したものです。
ドイツ政府は、研究者の雇用状況を改善する試みとして、テニュアトラックの(終身雇用への道が開かれている)大学教員職を新たに1000件創出するという協約に合意しました。6月16日にメルケル首相が発表したこの合意は、才能ある若手研究者を国内に留まらせようというドイツ政府の努力を反映したものです。
ドイツは科学研究で世界をリードしているものの、学術界の常勤職は不足しています。ドイツの大学を卒業する博士号取得者や医学部生は年間2万8千人ですが、教授職につける人数は多くありません。しかも、ドイツの大学における常勤の大学教授の雇用数は限られているため、若手研究者の多くは非常勤職にしかつけないのが実情です。常勤職を確保できるのは40代に入ってからなので、そこからキャリアアップをしていくのは困難です。
2017年から2032年にかけて実施されるこの取り組みでは、ドイツ政府が最初の6年間に教授職への資金助成を行うことになっています。テニュア(終身雇用権)が得られた人材に対しては、資金助成がさらに2年間延長されます。ただしこの期間が過ぎたら、政府から財政援助を受けている大学が財源を確保しなければなりません。今回の合意で助成される資金は、主に給与の支払いに充てられるため、研究のための助成金は研究者自身が確保しなければなりません。研究者の雇用は、主に2017年と2019年の2期に分けて実施されます。
ドイツ政府のこの動きは、国内の研究者たちに希望をもたらしました。ドイツ学術交流会(German Academic Exchange Service)のクリスチャン・シェーファー (Christian Schäfer) 氏は、「ドイツ政府が若手科学者にこれほど莫大な投資を行うのは、私の知る限り初めてのことだ」と述べています。ただ、1000件の雇用では少なすぎるため、若手研究者全員を雇用できるように職の数を増やすべきだと主張する研究者もいます。ゲッティンゲンの構造生物学者アンドレア・スカツィオク(Andreea Scacioc)氏は、協約に女性研究者数の割合が定められていないため、雇用される研究者の男女比が崩れる可能性があると述べています。
ドイツ政府は学術界の支援策に乗り出しましたが、大学側にも、現在の学術環境を改善していく努力が求められています。
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