エルゼビアは昨年、米国特許局からオンライン論文トランスファー・サービスに関する特許を取得しました。しかし、同様のサービスを利用する出版社はすでに多数存在するため、特許取得のニュースは、オープンアクセス出版を推進する人々からの強い反発を招きました。
大手学術出版社のエルゼビアは2016年8月30日、米国特許局から「オンラインでの査読システムと方法」という名称の特許を取得しました。この特許は、エルゼビアのオンライン論文トランスファー(転送)・サービスに関するもので、論文投稿と査読の管理に利用されているものです。投稿論文をリジェクトされても、同じ出版社の別のジャーナルが紹介され、そちらに論文原稿を転送できるという仕組み(「ウォーターフォール(waterfall)」とも呼ばれる)と同様のサービスを利用する出版社は、すでに多数存在します。このため、今回の特許取得のニュースは、オープンアクセス出版を推進する人々からの強い反発を招きました。
オープンアクセスは、学術出版界での足場をしっかりと固めてきました。オープンアクセス方針を掲げるジャーナルや大学も多数あります。このため、エルゼビアの特許取得には、ソーシャルメディアやインターネット上で多くの批判が寄せられました。米シリコンバレーで活動するウェブ技術者のベン・ベルトドミュラー (Ben Werdmüller) 氏は、この特許は革新を阻みかねず、「きわめて有害」だと発言。また、デジタル著作権に関する非営利組織「電子フロンティア財団(lectronic Frontier Foundation)」は今回の特許について、「ばかげていて妥当性のない、システムに対する告発」だとして激しい批判を展開しています。エルゼビアのトム・レラー (Tom Reller) 氏(バイスプレジデント)は、「本特許についての心配は無用です。これはあくまで、当社独自の論文転送システムを複製から守ることが目的です」と述べて自社の立場を擁護しています。
論文転送システムのアイデアは目新しいものではないため、多くの専門家は今回の特許に懐疑的で、特許発行について軽蔑的な目が向けられています。電子フロンティア財団によると、エルゼビアが特許を申請した2012年当時にも、他のジャーナルを提案するという考え方は学術界ですでに知られているものでした。
今回の特許がほかのジャーナルにどのような影響を及ぼすかについては、エルゼビアが特許権を行使するまでは不透明です。
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参考記事:
Elsevier’s New Patent for Online Peer Review Throws a Scare Into Open-Source Advocates
Stupid Patent of the Month: Elsevier Patents Online Peer Review