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現在の研究情勢にはどのような変化が必要か?

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カクタス・コミュニケーションズのエディテージ米国法人代表であるドナルド・サミュラック博士と、Altmetric(オルトメトリック)の設立者/CEOであるユアン・アディー氏が対談を行いました。


第4部の今回、アディー氏は以下のことについて語っています:

・Altmetricでは、とくにアジア諸国に力を入れながら、世界中のソーシャルメディアのプラットフォームからどのようにデータを収集しているのか

・ユーザーが研究の真の影響度を理解できるような形で代替指標データを収集する必要がある

・学術出版における変化の必要性:学術コミュニティは、影響度への理解を深め、数値に注目することを止めて研究の筋道を語ることを始める必要がある


シリーズの他の記事を読む:

Part 1: 「Altmetricは著者としての経験から生まれたものです」
Part 2: Altmetricは学術研究への注目度をどのように測っているのか
Part 3: 出版済み論文のAltmetricデータを探して解釈する

    仏で新薬治験事故:1名死亡・5名入院

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    仏で新薬治験事故:1名死亡・5名入院

    今年初め、新薬の治験で被験者1名が死亡、5名が何らかの神経系合併症を起こすという悲劇的事故がフランスで発生しました。治療にあたっている医師によると、患者には治療不可能な脳障害が残る可能性があるということです。

    今年初め、新薬の治験で被験者1名が死亡、5名が何らかの神経系合併症を起こすという悲劇的事故がフランスで発生しました。治験を行なったポルトガルの製薬会社バイアル(Bial)が、この事実をプレスリリースで公表しました。治療にあたっている医師によると、患者には治療不可能な脳障害が残る可能性があるということです。コード名BIA 10-2474という今回の新薬の詳細は完全には公表されていませんが、開発業務受託企業として有名なバイオトライアル(Biotrial)はこの新薬について、大麻に類似した化合物をもとに、パーキンソン病の不安障害、運動疾患、慢性痛、多発性硬化症、高血圧、肥満などの治療目的で開発されたものだと公表しました。

    バイアル社は動物実験での成功後、治験フェーズ1で健康な人間に治験薬を投与し、安全性と有効性を確認していました。治験は2015年7月に開始され、治験薬が投与された健康な治験参加者に副作用は見られませんでした。バイオトライアル社のウェブサイトに掲載された詳細情報によると、前回の治験では、28~49歳の参加者に対し、2週間の登録期間中に様々な量の治験薬が10日間投与されていました。しかし、2016年1月に開始された治験では、患者から健康悪化の報告があり、急きょ中止に追い込まれました。

    専門家らは、今回の事故原因は投薬量のミスか薬の品質の劣化ではないかと推測しています。同時に、事故に関する情報が欠如していることに疑問を呈しています。フランス国立医薬品・医療製品安全庁(ANSM)の科学諮問委員会でかつて委員を務めていたキャサリン・ヒル(Catherine Hill)氏は、「フランス当局の対応は迅速でもなければ透明でもない」と述べています。

    治験の初期段階で分子構造が非公表とされることは珍しくありませんが、多くの研究者はそのことを批判しています。薬の分子構造が分かれば、専門家はその薬がターゲットとしたタンパク質以外のタンパク質にも作用したかどうか、またその薬が毒となって作用してしまう人がいたかどうかを判断できるからです。バイアル社の広報担当者スザナ・バスコンセロス(Susana Vasconcelos)氏は、今回の治験はすべての国際基準に従って実施された説明し、同社は「この状況に至った原因を余すところなく徹底的に追求する所存である」と述べています。


    参考文献:
    Scientists in the dark after French clinical trial proves fatal (accessed January 19)
    More details emerge on fateful French drug trial (accessed January 19)

    出版済み論文に誤りがあることに気づきました。誰に連絡すればいいですか?

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    Question Description: 

    他人が発表した論文に、誤りがあることに気づきました。論文は3年以上前に、非常に有名なジャーナルに掲載されたものですが、引用に誤りがあるようです。その論文中では、他の論文からある事実を引用していますが、その引用元の論文には、そこで言及されている事実が述べられていません。ジャーナル編集者に連絡すべきなのか、論文の著者に連絡すべきなのか分かりません。どうしたらいいでしょうか?

    回答

    行動を起こす前に、それが絶対確実な誤りであると確認することが必要です。論文にもう一度目を通し、本当に誤りがあると言えるのかどうか、経験豊富な同僚に尋ねてみましょう。誤りが確実であると確認できたら、論文の責任著者(corresponding author)に、論文に誤りがあるようだと丁寧に伝えるのがよいでしょう。誤りは誤植の可能性もありますし、著者は、ある論文を引用するつもりで、同じ著者の別の論文を引用してしまったのかもしれません。こうした誤りは、起こるものです。著者は、誤りを指摘されたら快く返信してくれるのが普通です。

    もし適当な期間(数週間~1ヶ月)待っても返信がなければ、ジャーナル編集者にメールを出してみてもよいでしょう。

    レビュースピードについて

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    Question Description: 

    first decisionとfinal decisionと、ジャーナルのレビュースピードに書いてあるのですが、これらの2つの違いを教えてください

    回答

    多くの場合、投稿時のオリジナル原稿、つまり修正前の論文原稿に対してジャーナルが下す判断を、「first decision(初回判定)」と呼びます。first decisionは、査読に進むことなくリジェクトされるか、査読後に修正・再投稿を求めるかのいずれかになります。この段階でのアクセプトは極めて稀です。修正原稿が提出されたら2度目の査読が行われ、その後アクセプトかリジェクトかの判断が下されるのが普通です。これを「final decision(最終判定)」と言います。ただし、final decisionにたどり着くまでに3回以上の査読が行われる場合もありますので、注意してください。

    代替指標データを研究者のキャリア形成に活用する

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    カクタス・コミュニケーションズのエディテージ米国法人代表であるドナルド・サミュラック博士と、Altmetric(オルトメトリック)の設立者/CEOであるユアン・アディー氏が対談を行いました。

    ここ数年、多くの研究者たちが、論文掲載先のジャーナルのインパクトファクター以外の指標で自分の論文の影響度を測定することの重要性に 気づき始めています。研究者たちは、自分の研究が社会に貢献したかどうか(例 政策転換やヘルスケアに役立ったか)を考えているのです。インタビュー第5部の今回、アディー氏はこの傾向について掘り下げ、世界中の研究者がオルトメトリクス(代替指標)に注目してそれを活用し、自らの研究成果の根拠を示すことの必要性を強調しています。これは、ウィンウィンの状況と言えます。なぜなら、研究者が自分の研究の有益さを証明することができるのみならず、研究を評価する立場にある資金提供者もまた、自らの使命の達成にその研究がどう貢献したかを確認することができるからです。そうした意味で、Altmetricのようなツールは、研究者のキャリア形成におおいに役立つのです。


    シリーズの他の記事を読む:

    Part 1: Altmetricは著者としての経験から生まれたものです」
    Part 2: Altmetricは学術研究への注目度をどのように測っているの
    Part 3: 出版済み論文のAltmetricデータを探して解釈する
    Part 4: 現在の研究情勢にはどのような変化が必要か?

      サラミ論文を避けることの重要性:ケーススタディ

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      サラミ論文を避けることの重要性:ケーススタディ

      治験プロジェクトを終了し、得られたデータ量がかなり多いことに気づいた著者。少なくとも3つの論文を出版できると考え、データを分割して3本の論文を書く計画を立てました。つまり、方法は同じで結果が異なる研究を、それぞれ別の3論文で報告するということです。エディテージは、この著者にどのようなアドバイスをしたでしょうか。

      事例: 治験プロジェクトを終了し、得られたデータ量がかなり多いことに気づいた著者。少なくとも3つの論文を出版できると考え、データを分割して3本の論文を書く計画を立てました。つまり、方法は同じで結果が異なる研究を、それぞれ別の3論文で報告するということです。この場合、被験者と方法はすべて同じで、序論と結論が異なることになります。著者はまず、最初に書き上げた論文をあるジャーナルに投稿し、それから2本の論文を書き始めました。この時点で著者は、残りの2本の論文を同じジャーナルに投稿すべきか、それとも別のジャーナルにすべきかについて、エディテージ・インサイトにアドバイスを求めました。

      アドバイス: エディテージ・インサイトはまず、なぜ3本の論文を書こうと思ったのか、すべての研究を1つの論文として出版することは可能かどうかについて尋ねました。著者は、全データを1つの論文に含めることは可能だが、出版論文数を増やすために3本の論文を書いたと回答しました。著者は、各論文をそれぞれの参考文献に含めれば、剽窃や二重投稿にはならないと考えていました。そこで我々は、同じデータを用いて1本の論文にまとめられるはずの論文を3本に分けて書くことは、「サラミ方式」とみなされる可能性があることを説明しました。著者はこの言葉を耳にしたことがありませんでした。サラミ方式とは、論文出版の実績を水増しするために1つの研究を複数に細かく分けることで、非倫理的な行為にあたります。一般原則として、複数の論文に分けたとしても、仮説・被験者・方法が同じであり、1つの研究としての報告が可能であれば、その研究データを複数の研究として分割することは許されません。我々は著者に、すでに投稿した論文をジャーナルから撤回し、他の結果もすべて含めて書き直すことを提案しました。そうすれば、倫理的な出版となるだけでなく、論文の内容も充実したものになります。著者は、非倫理的な行為をせずに済んだと感謝し、アドバイスに従うと言いました。

      まとめ: 「サラミ方式」またはデータの断片化と呼ばれる行為は、許されないものです。科学者に不当な利益をもたらす可能性もあるため、確実に避けるべきです。履歴書に掲載する論文数をこのような形で増やすことは、妥当なスピードよりも早い昇進や、妥当な額よりも多くの資金の配分につながります。また、サラミ方式の利用があると、読者や査読者は似たような内容の論文に何度も目を通さなければならないため、時間の無駄になります。さらには、科学文献の歪曲にもつながります。

      米国研究公正局(ORI)も、1つの研究論文として発表することが可能な研究結果を分割することを、非倫理的行為とみなしています:

      「たとえ複雑なものになったとしても、1つの『包括的な』セットとして発表された方がよい研究結果を、分割して複数の論文として出版すべきではない。また、断片化されたデータを含む可能性のある論文を投稿する場合、著者は、投稿論文の一部となり得たかもしれない論文(出版済みか否かを問わず)を添えて提出すべきである」

      しかし、研究プロジェクトを複数の論文に分割することは、常に良くない行為だというわけではありません。データセットが多すぎる、あるいは最初の論文では検討されなかった二次的所見があるといった場合には、1つの研究が分割されることもあります。研究の分割という決定を下すのは、研究の利益が最優先される場合のみ、つまり分割して出版した方が読者の利益となる場合のみ、ということを、研究者たちは理解しておく必要があります。実際に分割する場合は、その旨を開示し、関連する研究論文を添えて論文投稿を行う必要があります。

      編集者の決定に抗議することはできますか?

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      Question Description: 

      一流ジャーナルに論文を投稿し、1ヶ月後に査読コメントが届きました。3人中2人の査読者は私の論文を肯定的に評価してくれ、いくつかコメントももらいました。しかし、1人の査読者(専門分野が違う可能性もあると思います)が的外れなコメントを述べて再投稿を提案し、結局論文はリジェクトされました。私はこれに対して反論すべきでしょうか? 抗議することで、掲載の望みが出てくるでしょうか。ご回答よろしくお願いいたします!

      回答

      査読者によって意見が異なるのはよくあることです。査読結果が否定的なものだからといって、必ずしも査読者のコメントが偏っているとか、的外れであるとは限りません。また、1人の査読者の意見に基づいて編集者が偏った判断をすることはまずありません。あなたの論文の最終決定権は編集者にあるということを忘れないでください。編集者は、査読者コメントを見ながらあなたの論文に目を通します。査読者ができるのは、提案だけです。

      編集者の決定に不服があるのなら、特別に禁じられていない限り、その決定に抗議を行うことは可能です。編集者の見解の1つ1つに対する反論を示して、編集委員会に抗議することができます。この場合、あなたの反論が確固としたエビデンスに基づいていることが肝心です。また、メールを送る際は、丁寧なやり取りを心がけましょう。

      編集者の意思決定については、こちらの記事も参考になると思います:
      多くの研究者が感じている疑問に回答!ジャーナルの意思決定プロセスについて

      科学の自己修正機能としての撤回通知

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      科学の自己修正機能としての撤回通知

      科学は、発表された研究の上に積み重ねて築いていくものです。撤回理由や間違いの内容が十分に明確にされないまま論文が撤回されてしまうと、その論文に基づいて書かれた他の論文の妥当性にも議論の余地が出てきてしまいます。大局的にみて、このような透明性の欠如は、科学全体にドミノ効果のように影響を及ぼします。

      撤回とは、論文の信頼性に異論が出されている旨を、科学コミュニティに通知することです。撤回には科学コミュニティの注目が大いに集まりますが、撤回通知はそれほど注意が向けられません。詳細不明で明確さに欠けた通知をジャーナルが出すことに対しては、多くの非難が寄せられます。撤回通知の書式はジャーナルによって異なりますが、典型的な文面は「本論文は著者によって撤回されました」というもので、撤回理由は明らかにされません。このようなそっけない通知は、撤回は悪だという偏見を植え付け、科学の開放性に害を与えるものです。

      「撤回」―この言葉1つだけで、科学者を縮み上がらせることができます。それは、この言葉が著者の詐欺・不正行為と関連しているとみなされるからです。そうした状況の裏にある根本的な原因の1つは、著者の不正による撤回が世間の大きな注目を集めるという事実です。その結果、不公平なことに、撤回は著者の倫理性に問題があることと同義とみなされてしまっているのです。ほとんどのジャーナルは撤回の理由を述べないので、撤回にまつわる否定的な意味合いが流布したままであるのが現状です。このため、著者はジャーナルからの撤回の申し出に合意するのを嫌がります。自分の評判や昇進に悪影響を及ぼすことになるからです。

      著者と同様に、出版社の多くも、詳細な撤回通知を発行したり、撤回の理由を説明したりすることを敬遠します。プリンセス・リスボロー(英国)在住のメディカルライターでCOPEの会長を務めるエリザベス・ウェイジャー(Elizabeth Wager)氏は、ジャーナルが論文撤回の理由を曖昧にしておくのは訴訟を恐れるためだと主張し、「出版社は、名誉棄損になりかねないものを出版することに神経質になっているのです」と述べています。また、撤回通知に詳しい内容を載せないのは、著者が撤回を希望する理由を編集者が理解していない、あるいは編集者が気づいた不正の責任が誰にあるのか分からないという理由もあります。このため、出版社は簡潔な通知を好みます。ウェイジャー氏は、編集者が無償で労働を提供している研究者である場合はとくに、時間をかけて撤回の原因を調べることは難しいだろうと述べています。

      これらの理由は確かにもっともかもしれませんが、ほとんどの専門家は受け入れがたいと感じています。   ミシガン大学アナーバー校の研究倫理学者であるニコラス・ステネック(Nicholas Steneck)氏は、次のような疑問を呈しています。「時間がないことが理由で自分のジャーナルの完全性(信頼性)を満足に確認できないようでは、ジャーナル出版業界に留まる資格がないのではないだろうか」。一方、ジャーナルAnesthesia & Analgesiaの編集長であるスティーブン・シェーファー(Steven Shafer)氏は出版社を擁護し、ジャーナルには限られた権限しかない場合もあると指摘しています。同氏によると、証拠があるにも関わらず、研究機関が著者の不正を否定したり、不正行為の調査結果を内密にするようジャーナルに圧力をかけたりする場合もあるということです。

      役に立たない撤回通知は、科学の進歩やオープンサイエンスへの取り組みに悪影響を及ぼします。科学は、発表された研究の上に積み重ねて築いていくものです。ですから、撤回理由や間違いの内容が十分に明確にされないまま論文が撤回されてしまうと、その論文に基づいて書かれた他の論文の妥当性にも議論の余地が出てきてしまいます。大局的にみて、このような透明性の欠如は、科学全体にドミノ効果のように影響を及ぼします。透明性を保ちながら科学の記録を訂正するために、ジャーナルは、詳細な撤回通知を掲載する方針を採用すべきではないでしょうか。

      では、撤回通知には何が含まれていることが理想的でしょうか?出版倫理委員会(Committee on Publication Ethics, COPE)の規定では、撤回通知には「(不正行為と単純な間違いの報告を区別するための)撤回理由を述べること」、「名誉棄損や中傷につながる可能性のある記述を避けること」と明確に記されています。また、(論文撤回監視ブログサイトである)Retraction Watchの開設者たちは、影響を受ける論文の側面、撤回を申し出た人、研究機関による調査の詳細などを撤回通知に含めることを提案しています。ジャーナルが撤回通知の標準フォーマットを採用すれば、透明性が増し、科学コミュニティ内外にとって利益となるはずです。

      喜ばしいことに、出版社の間では確実に変化が訪れており、撤回についてより明確に説明するジャーナルが増えています。最近では、The Journal of Biological Chemistry (JBC)が、詳細な撤回通知を発行すると発表しました。科学的完全性の保持を肯定的にとらえる態度として、研究者でさえも、撤回通知の発表に賛同しています。カリフォルニア大学デービス校のパメラ・ロナルド(Pamela Ronald)氏は、論文の図のラベルに誤りを見つけた際、研究結果の一部を再現できなかったとして、2013年に2本の論文を撤回し、他の研究グループの模範となる例を示しました。実験をやり直して論文に誤りがないことを確認した後、その論文は再び掲載されました。この対応は、撤回は汚名の烙印ではなく科学を訂正する機能であるということを伝えたため、非常に歓迎されました。

      科学には自己修正が必要で、研究にはミスがつきものであるということを研究者自身が認め、伝えていくことが重要です。透明性を保つことで、撤回にまつわる否定的な見方は減っていくはずです。欧州科学編集者協会(European Association of Science Editors, EASE)前会長のエルベ・メゾヌーブ(Hervé Maisonneuve) 氏と、リヨン市民病院(フランス)臨床研究ユニット上級研究員のエブリン・ドゥクリエ(Evelyne Decullier)氏は、いみじくも次のように述べています。「説明の添えられた撤回通知の発行は、科学の改善につながる第一歩です。撤回通知は魔女狩りのようなものではなく、著者がそのような状況に至った理由を説明できる機会ととらえられるべきでしょう」

      撤回通知の書き方について、どう考えますか? この記事の見解に対する補足や提案をお持ちの方は、ぜひシェアしてください。


      論文はどの部分から書き始めたらいいですか?

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      Question Description: 

      研究がほぼ完了したので、論文を書き始めたいと思っています。でも、どこから始めたらいいのかわからず、書き始めようとするたびに先延ばしにしてしまいます。助けてください。

      回答

      論文を書く順番は著者の好みによって変わりますが、序論から書き始めるのは難しいと感じる人が多いようです。最も簡単なのは、方法部分から書き始めることでしょう。どのような実験を行なったのか、どのように研究を進めたのかはよく分かっているはずですから、それらを順序立てて書いていくことは比較的容易ではないでしょうか。その後で結果と考察を書きます。ほとんどの人はこの順番でうまく書けるはずです。また、書き始める前に、それぞれのセクションで述べることをまとめた、大まかな下書きを作っておくのもよいでしょう。この方法で、スムーズに書き始められるといいですね!

      こちらの記事もご参照ください:研究論文の本文執筆に取り組もう

      ジカウィルスのデータ共有に世界中の科学コミュニティが賛同

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      ジカウィルスのデータ共有に世界中の科学コミュニティが賛同

      流行中のジカ熱の感染拡大を阻止しようと、主要学術ジャーナルや保健衛生団体、研究機関、資金助成機関は、ジカ熱に関するデータや研究結果を共有する宣言書に署名しています。現在のジカ熱の流行は、ブラジルで2015年初頭に始まり、その後20ヶ国以上に広がっています。

      流行中のジカ熱の感染拡大を阻止しようと、主要学術ジャーナルや保健衛生団体、研究機関、資金助成機関は、ジカ熱に関するデータや研究結果を共有する宣言書に署名しています。この目的に賛同した国際団体には、国境なき医師団、米国立衛生研究所(NIH)、ウェルカム・トラストを含む20の団体、そしてシュプリンガー・ネイチャー、サイエンス、New England Journal of Medicine(NEJM)など、11の出版社が含まれます。

      感染症の流行時に研究データや結果をただちに開示することは、研究者が流行パターンを理解し、予防と治療の方法を確立する上で、不可欠です。しかし、地理的・文化的・倫理的な制約から、データの共有は難しいのが常です。エボラやMERS流行時など、過去の公衆衛生上の危機でも、データ不足のために、流行を食い止めることが難航しました。このため、ロンドンのウェルカム・トラスト理事を務めるジェレミー・ファーラー 氏は、「公衆衛生の緊急時におけるデータの共有宣言」を提案し、ジカウィルスに関するすべての情報に対するアクセス制限をなくし、世界的な対応を加速させました。ファーラー氏は、「これほど多くの主要国際団体が結束し、オープンサイエンスの動きに賛同するのはかつてないことで、非常に心強い」と語っています。

      現在のジカ熱の流行は、ブラジルで2015年初頭に始まり、その後20ヶ国以上に広がっています。ジカ熱と小頭症および神経症・自己免疫合併症の関連性が疑われているため、世界保健機関(WHO)は、ジカウィルスを公衆衛生の国際的危機であると宣言しました

      Altmetricと代替指標の違い

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      カクタス・コミュニケーションズのエディテージ米国法人代表であるドナルド・サミュラック博士と、Altmetric(オルトメトリック)の設立者/CEOであるユアン・アディー氏が対談を行いました。

      第6部の今回、アディー氏はAltmetricと代替指標の違いを説明しています。 Altmetricとは、研究のインパクトに関するデータを収集して整理する企業の名前ですが、代替指標は、インパクトファクターを用いずに研究のインパクトを測定する方法を指します。ここ数年で、研究のインパクトを測定する姿勢には大々的な転換が見られました。今日では、代替指標からデータを抽出し、それを利用することによって、発表された研究の経済的、社会的、さらには文化的な影響度を理解することにますます主眼が置かれるようになっています。そのような中、Altmetricのようなツールは、この理解を引き出すための道具と言えるでしょう。


      シリーズの他の記事を読む:

      Part 1: Altmetricは著者としての経験から生まれたものです」
      Part 2: Altmetricは学術研究への注目度をどのように測っているの
      Part 3: 出版済み論文のAltmetricデータを探して解釈する
      Part 4: 現在の研究情勢にはどのような変化が必要か?
      Part 5: 代替指標データを研究者のキャリア形成に活用する

        出版の未来:出版プロセスを円滑にする新しいツール

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        出版の未来:出版プロセスを円滑にする新しいツール
        マティアス・ピーパリ(Matias Piipari) 氏は、「Manuscripts」の最高経営責任者(CEO)/共同設立者です。Manuscriptsとは、研究者が複雑な研究論文の構成を考え、執筆するのを支援するアプリです。ピーパリ氏は、研究者の間で人気の引用文献管理ツール、Papersの最高技術責任者(CTO)でもあります(Papersの設立者であるアレクサンダー・グリークスプーア(Alexander Griekspoor)氏は、Manuscriptsのもう1人の設立者)。ピーパリ氏は、学術研究コミュニティにとって画期的なソリューションを生み出しました。ケンブリッジ大学で分子生物学の博士号を取得した後、学術界で革新的な解決方法を考える仕事に従事してきました。在学中に設立した会社では、モバイル・ソフトウェアの作成や技術コンサルティングプロジェクトに携わりました。大学院時代は、遺伝子調節シグナルを特定するための、大規模な機械学習のメソッドを研究していました。

        マティアス・ピーパリ(Matias Piipari) 氏は、「Manuscripts」の最高経営責任者(CEO)/共同設立者です。Manuscriptsとは、研究者が複雑な研究論文の構成を考え、執筆するのを支援するアプリです。ピーパリ氏は、研究者の間で人気の引用文献管理ツール、Papersの最高技術責任者(CTO)でもあります(Papersの設立者であるアレクサンダー・グリークスプーア(Alexander Griekspoor)氏は、Manuscriptsのもう1人の設立者)。ケンブリッジ大学で分子生物学の博士号を取得した後、学術界で革新的な解決方法を考える仕事に従事してきました。在学中に設立した会社では、モバイル・ソフトウェアの作成や技術コンサルティングプロジェクトに携わりました。大学院時代は、遺伝子調節シグナルを特定するための、大規模な機械学習のメソッドを研究していました。

        今回の対談では、Manuscriptsの詳細について伺いました。ピーパリ氏は、研究概要を準備する初期の段階から、投稿用にジャーナル論文を仕上げる後期の段階に至るまで、Manuscriptsが研究者をどのように支援するのかを説明して下さいました。Manuscriptsの特筆すべき機能は、データが多くても、論文の構成を崩さずに管理できるというものです。つまり、著者は書式設定などを気にせずに、論文執筆に集中できる仕組みになっているのです。ピーパリ氏は、現代の学術出版界における技術の発展と利用について、興味深い見解を明かしており、執筆や出版の効率化を図れるような新しいツールを試すことに対して、研究者と出版社がオープンな姿勢でいることが重要だと強調しています。


        まずはエディテージの読者に、Manuscriptsについて説明して頂けますか?それは一体何なのか、そしてどのように研究者を助けてくれるのでしょうか?

        Manuscriptsとは、論文の構想から執筆・編集・校正・投稿に至るまでのあらゆる出版段階において、複雑な学術文書を作成・管理するのを助けてくれる、ユーザーフレンドリーな執筆ツールです。

        研究論文の執筆は、本当に大変な作業です。著者はアイデアを体系化してまとめるだけでなく、参考文献リストや図表を作成し、自分の研究に十分な根拠があることをきちんと示さなければなりません。ジャーナルに投稿する際は、文体や書式などの細部も整える必要があります。Manuscriptsが解決する主な課題は、論文執筆に関わる様々な段階のすべてで、機械的な処理に煩わされることなく、自分のストーリー(研究)の内容に集中できるようにすることです。Manuscriptsは、著者が込み入った論文の中で道を見失うことなく、論文の構想・執筆・調整・編集を進められるよう手助けします。Manuscriptsを利用すれば、著者は執筆中の自然な流れから逸れて外部の種々のツールを利用しなくても済むのです。

        Manuscriptsというたった1つのアプリで、学術論文の執筆が、一体化された経験となります。複数パネル図の作成、表の編集、方程式の管理だけでなく、最高仕様の引用文献管理のワークフローを実現します。また、1000誌以上のジャーナル別の論文書式(テンプレート)に対応しているので、著者は論文執筆にとりかかりやすくなっています。(協力してくれる出版社をいつも探しており、このデータベースは定期的に拡張されています。)このアプリは、ワード数制限や利用可能な図の形式など、ジャーナルのテンプレートを利用する上で明確な点についても、不明確な点についても対応しています。Manuscripts上で執筆された論文は、MS Word、LaTeX、Markdownの各ファイル形式にエクスポートが可能です。また、Manuscriptsに(様々なフォーマットの)外部ファイルをインポートすることもできます。このアプリを利用すれば、著者は段落の書式を把握したり、LaTeXできちんと組版処理が行われるかどうかを気にしたりする必要はありません。要するに、Manuscriptsは、著者が実際の執筆作業に集中できるように、著者のために機械的なフォーマット作業を行なってくれる、新しいタイプの文書作成ソフトなのです。Manuscriptsを利用して作成された文書は、技術面での最低限度の水準を保てるため、著者と出版社の双方にメリットがあります。


        現在研究者が利用できる執筆ツールやアプリはいくつもありますが、Manuscriptsにはどのような特色があるのでしょうか。このアプリによって、出版環境にどのような変化がもたらされるでしょうか?

        Manuscriptsが特に優れているのは、他のツールにはない各種機能が、たった1つのアプリにまとめられている点です。もう少し詳しく言うと、ユーザーがMS Word、Markdown、LaTeXのフォーマットでインポートやエクスポートを行うことができ、オフラインでの単独利用が可能な、リッチテキストで執筆できるツールです。(つまり、ブラウザーを開いて書く必要はないということです。)また、文書の更新履歴もすべて残ります。Manuscriptsは、最低限の機能を備えたテキストエディターではありません。また、MS Wordのクローンでもありません。まったく新しいタイプの文書執筆ツールなのです。例えば、このアプリは、アルファベット以外の文字での執筆にも使うことができます。

        このような技術的特徴とは別に、私たちはもう少し大きなものを目指しています。著者が想像しうる限り、もっとも合理的なユーザー経験を提供したいと考えているのです。Manuscriptsは、著者の立場に立って、極めて洗練された形で、著者が目の前の課題に集中できるようにします。ユーザーからは、ツールのデザインや使い勝手について、肯定的なフィードバックをもらっています。重要なのは、LaTeXやMarkdownの編集にMS Wordやテキストエディターを使うことに慣れている著者たちに、我々の作成した新しいツールを試しに使ってみようという気にさせることです。私たちは、出版プロセスをより円滑にする新しいツールは、学術出版の未来に対して重大な意義があると思っています。


        学術界には様々な人が関わっています。それぞれの立場でManuscriptsを使用した場合の利点はどのようなものでしょうか?

        Manuscriptsは利便性を重視しているため、技術的知識を持たない執筆者に特に魅力を感じてもらえると思います。このアプリには、生物医科学分野のユーザーが多いのですが、心理学、地理学、工学、数学、物理学、コンピューター・サイエンスなど、幅広い分野に対応できるよう設計されています。

        また、Manuscriptsには学術界の外にも幅広いユーザーがおり、学校のレポートやブログ記事、法律文書、企業白書などの執筆にも利用されています。どんな形式のコンテンツであっても、構成を理解し、ワード数制限を設定することができ、さらに、これが一番重要ですが、書くことに集中するのを助けるツールなのです。実際、このアプリの初期からの利用者は、非学術分野の書籍を出版しています。今後も、ユーザー層の多様化が見込まれています。グローバルな展開を見てみると、これまでのところ、米国、カナダ、ヨーロッパ諸国の他、日本、韓国、中国での利用が多くなっています。


        このアプリのインターフェイスはどれぐらい使いやすいのでしょうか。ウェブサイトに、Manuscriptsには「MS Wordのような無意味なリボン(ツールバー)はありません」と書いてありますが、これについてもう少し詳しく教えて頂けますか?

        このアプリには、MS Wordに備わっているたくさんのツールや書式設定のオプションを導入しませんでした。それは、良い文章とは一貫性があることに尽きるという理由からです。コンピューターの画面上に、自分の文章が視覚的に一貫性を持った形で美しく映し出されることにより、自分の文章の一貫性に集中することができます。こうした書式設定のオプションの多くを省いたにもかかわらず、Manuscriptsは非常にパワフルなツールで、文書の異なる箇所の段落の書式を整えることも可能です。例えば、見出しが太字になることは決してありません。また、タブや改行で各エレメント(表題、見出し、本文等)の間にタブや改行で余分なスペースを入れることもできません。そのようなことは、著者にとっても出版社にとっても生産性を損なうことだと考えています。重要なのは、執筆・編集ツールは文書の見栄えを整えるものでなければなりませんが、構成も整えられなければならないということです。それが実現して初めて、著者は、得意なこと、つまり主張をまとめたり持論を述べたりすることに集中できるのです。


        MS Wordでの執筆に慣れている著者は多く、そのような人々はMS Wordの機能の多くを搭載していないツールを使いたがらないかもしれません。これは問題だと思いますか?

        まず、ManuscriptsはMS Wordと互換性がありますし、ユーザーがMS Wordを使用しなくなることは望んでいません。Manuscriptsは、引用文献リストや方程式を含め、MS Word文書のインポートにもエクスポートにも対応しています。また、書式設定のオプションも排除するわけではなく、著者が考えることを支援し、書いているものの意味内容に沿って書式を整えるという形で使うことができます。つまり、ユーザーが「執筆する」のと同程度に「内容を考える」ことができ、書式設定はおまけでついてくるというわけです。例えば、セクション見出し、本文の段落、引用段落、方程式などにはすべて既定の形式がありますが、希望すれば自分で編集することもできます。Manuscriptsの場合、書式の編集は、論文全体の見栄えの一貫性を維持しながら行います。書式設定オプションに文字・記号レベルのものはありませんが、それらの代わりに、論文全体の一貫性を見渡すことができます。そのおかげで、我々のユーザーは直感的にフォーマットを考えることができるのです。もちろん、改善の提案は寄せられますが、基本的概念は実に大当たりで、フィードバックの内容は、細部に関することや、どの程度まで文書の自動フォーマットを可能とするか、といったものになっています。

        第2に、学術論文の執筆を取り巻く状況は、出版業界が考えるほどMS Wordで統一されているわけではありません。コンテンツはすべて.docxで投稿しなければならない、ということはよくあります。また、出版社がMS Wordのファイルを受け取るからといって、著者が実際にMS Wordを使って作成したとは限りません。MS Wordを使って書く人もいれば、LaTeXを使って書く人も多くいます。また、Markdownのような簡単なフォーマットで書いてWordに出力する人もいます。Manuscriptsは、Word、LaTeX、Markdownという3種類のプラットフォームを利用する書き手を支援しています。これら3大フォーマットとの互換性があるので、ユーザーにManuscriptsだけを使ってほしいと思うことは決してありません。

        第3に、MS Wordは非常に一般的なツールであること、そしてMS Wordが好きな人々もいるという見解に異論はありません。ただ、MS Wordを利用して学術論文を執筆している著者の多くが、ツールバーにあるたくさんのアイコンや、複雑で巧妙に隠されている書式設定オプションなどの使い心地を、十分に快適だと感じているかどうかは疑わしいと思っています。MS Wordが一般的なツールなのは、システムにインストール済みのことが多く、もっともありきたりな選択肢だからですが、Manuscriptsの需要があるのは、人々が別の選択肢を求めているからでしょう。


        引用文献(表示方法と形式)や引用文献リンクは、論文執筆、追跡、引用、インパクト測定において重要な側面です。Manuscriptsは、引用文献管理の点でどれくらい研究者を助けてくれるでしょうか。

        引用文献管理ツールを利用できるよう、Manuscriptsには完全にオープンなインターフェイスが組み込まれています。現在、バージョン1.0が発表されましたが、ManuscriptsはPapersの引用文献管理ツール(reference manager、 リファレンスマネジャー)と高度に統合された形で連携しています。主要なフォーマット(例えばBibTeX、EndNote XML、RISなど)から文献データをインポートできますし、引用ツールも内蔵されているので、自分の選んだ引用文献ツールを何でも使うことができます。

        このアプリの文献管理能力は、今後も拡張していく計画です。外部の引用文献管理ツールは必要ですが、多くのプロジェクト(とくに学部生の執筆など)では、Manuscriptsの包括的な引用ツールを活用できるはずです。


        科学の研究と出版では、ユーザー(研究者、著者、出版社、読者)の需要に応えるテクノロジーが増加しており、研究の様々な段階で効率化が図られるよう、新しいツールが考案されています。研究者たちはそのようなツールの存在に気づいているでしょうか?そして、これらのツールを効果的に利用しているでしょうか?また、世界各地の研究者、あるいは異なるキャリア段階にいる研究者によって、これらのツールの利用方法に違いがあると思いますか?

        新たに登場したツールを使って論文を書いて出版することに関していえば、分野やキャリアの違いによって、明らかに大きな差があると思います。Manuscriptsは、あらゆる分野の、あらゆる水準の研究者にとって、魅力あるものだと思います。研究者や学生たちは、例えば適切な引用を行うことよりも、テーマ、構成、長さを整えることが重視される、研究の初期の段階で執筆を開始しなければなりません。ついでながら、このようなタスクは、従来型のワード・プロセッサーでは直接サポートされていないものです。

        研究者は時間を大事にしているため、使いやすいツールを好むと思いますが、新しいワークフローやツールを採用することにはかなり保守的なところもあると思います。私の意見では、この使いやすさの水準が、現在の出版界では過小評価されていると思います。その結果、これらのツールによって節約できる時間や努力も、過小評価されてしまっています。これらのツールは、出版プロセスを効率化することで、研究者・出版社の両方を助けるものです。いずれにしても、Manuscriptsを、時とともに廃れてしまうことのない、出版界の一時的流行に乗って作られたものではないツールにしたいと思っています。


        Manuscriptsの現在のバージョンは、Mac用にリリースされていると理解しています(Manuscriptsの利用には、Mac OSX Yosemite, 10.10以降のシステムが必要)。これによってユーザーが限られると思いますか?他のプラットフォーム、例えばWindows版、Web版、スマホ版のManuscriptsなどを作る予定はありますか?

        偉大な製品を作り出すためには、効果的な論文を書くのと同様、重点箇所を決める必要があります。我々の重点箇所は、コンセプトを提供し、美しく利用可能なものを作り、かつ開発初期の利用者のフィードバックに繰り返し素早く対応できるようにする、という点にありました。(例えば、ベータ版のアップデートはほぼ毎日のように行なっていました。)そのような理由から、Manuscripts 1.0のリリースは、Macユーザーのみに絞りました。返ってきた反応から、我々の選択が正しかったことが分かります。初期のManuscripts利用者はとても熱狂的で、口コミで広めてくれました。口コミによるマーケティングを利用してビジネスを成長させようというのが、我々の計画です。

        でも、Mac版のリリースは、ほんの出だしに過ぎません。我々は3年もの時を費やしてManuscriptsを作成しましたが、それは、ウェブサイトや、iPad等のデスクトップ型プラットフォームに移植できるテクノロジーを構築したかったからという理由もあります。


        近い将来、Manuscriptsのユーザーが期待できることはありますか?

        我々は、絶え間なく着実にアップデート計画を進め、新しい分野をサポートするための新機能をリリースしてきました。実験的に右から左への入力モードを導入しましたが、ユーザーのフィードバックに基づいて改善することを考えています。非英語圏の著者を助けるため、地域限定バージョンを出すことも検討するかもしれません。しかし、もっとも注目すべき展開は、共同執筆機能です。共同執筆の支援は、ユーザーからもっともリクエストの多い機能の1つです。これには我々も興奮していて、すでに取り組みを始めています。実際、現在のManuscriptsは、これから導入される共同作業機能を見越して、バージョン管理が完璧にできるようになっています。

        オンライン上での共同作業を可能にし、それと同時にオフラインの経験も提供することが不可欠だと考えています。私の意見では、現在の各種共同執筆ツールは、個人の生産性と共同執筆の必要性の間での妥協を強いていると思います。Manuscriptsを通じ、独自性のあるものを提供できると信じています。


        ピーパリさん、ありがとうございました!

        ピーパリ氏は、著者の皆さんがどのようにManuscriptsを活用できるかを紹介するビデオをシェアしてくれました。

        学会とジャーナルで同じ研究を発表する際の基本ルールとは?

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        Question Description: 

        今、抄録が書けるだけの研究内容が手元にあり、学会への投稿を考えています。学会の開催は10月で、投稿の締め切りは5月半ばです。今すぐ抄録を学会に投稿し、その後論文に発展させてSCIジャーナルに投稿すれば、10月よりも前に受理される可能性があります。しかし、10月以降にジャーナルに受理される可能性の方が高いと思います。以下が私の質問です。

        1. 同じ研究を、学会とSCIジャーナルの両方で発表してもよいのでしょうか?未出版であれば可能だと思うのですが、どうでしょうか。

        2. 学会での発表後に論文を執筆し、ジャーナルに投稿することは問題ないでしょうか?

        3. ジャーナルに論文を投稿した後に、学会に抄録を投稿することは許されますか?(学会発表の前にジャーナルに論文が掲載されると、学会の心証が悪いと思います。)

        学会とジャーナルで同じ研究を発表する際の一般的な規則があれば、ぜひ教えてください。

        回答

        まず、基本的なルールをはっきりさせておきましょう。

        学会で発表する研究は、まだ完了していないのが普通です。一般的には、学会で予備的な分析を発表し、詳細な分析はジャーナル論文のためにとっておきます。学会で研究発表をする目的は、あなたの研究について人々に知ってもらい、方法を改善するためにフィードバックをもらうことです。ですから、学会で発表した論文を、形式を整えてジャーナルに投稿することは問題ありません。学会論文についての情報を明示し、ジャーナル論文に少なくとも30%新しい内容が加えられていれば、このような行為に問題はありません。

        しかし、ジャーナルに論文が掲載された後で、それを学会で発表すべきではありません。なぜなら、聴衆はすでに研究の全貌を知ってしまっているからです。

        ご質問に回答していきましょう。

        1. 学会で発表した論文を発展させてジャーナルに投稿することは構いませんが、学会での発表前にジャーナルに論文を投稿してはなりません。これは、同じ時期に学会とジャーナルの両方に論文を投稿することになるため、同時投稿(二重投稿)とみなされる可能性があるからです。ジャーナルも学会それぞれに、同時投稿を禁止する明確なルールがあるはずです。学会日時は公表されている情報であり、ジャーナルに掲載される論文では通常、投稿日時と受理日時の両方が分かるようになっています。ですから、論文が10月以降に受理されたとしても、あなたが学会での発表前にジャーナルに論文を投稿していたことが、投稿日時から分かります。

        2. 学会発表後に会議録に論文が掲載された後に、(学会で受けたフィードバックを基に改善を加えて)より長い論文に発展させ、ジャーナルに投稿することは可能です。これは全く問題ありません。ただし、その論文が学会発表に基づいていることをカバーレターに明記し、学会論文へのリンクを入れる必要があります。

        3. ジャーナルへの投稿後に、学会に抄録を投稿することはできません。

        あなたの場合、一番良い方法は、今すぐ学会に抄録を投稿し、直ちにジャーナル向けの論文を執筆し始めることでしょう。学会に論文が受理されなかった場合、すぐにジャーナルに投稿することができます。学会で論文が受理された場合は、学会発表が終わるまで待ち、学会で受けたフィードバックに基づいて必要な改善を加え、その後ジャーナルに投稿するとよいでしょう。

        研究論文を匿名で出版:ケーススタディ

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        研究論文を匿名で出版:ケーススタディ

        ある事情から、匿名での出版を希望する著者がいました。デリケートなテーマを扱っているため、自分の身に被害が及ぶ可能性があるとの懸念があったからです。匿名の出版を許可する出版社や編集者はほとんど存在しませんが、例外的に匿名出版が許可される可能性も、ないわけではありません。

        事例: 著者がジャーナルに論文を投稿したところ、査読中の段階で同僚がアドバイスをくれました。その論文はデリケートなテーマを扱っているため、昇進に不利となる可能性があるので、撤回したほうがよいと言うのです。そして著者は、編集者に撤回を申請しました。しかし編集者からの回答は、査読がほとんど終了しているため、この段階で撤回することはジャーナルのみならず査読者の時間や労力を無駄にすることになる、というものでした。確かに、これは出版倫理ガイドラインにも反する行為です。そこで著者は、論文を匿名で出版することが可能かとエディテージ・インサイトに尋ねました。

        対応: エディテージ・インサイトは、「デリケートなテーマ」である理由と、それによってキャリアにどの程度不利な影響が出るのかを尋ねました。すると、その論文が、著者の勤務先である製薬会社が製造した薬の副作用に焦点を当てたものだということがわかりました。その副作用は致命的なものとはならない見込みでしたが、論文が発表されれば、確実に売り上げに影響があると思われました。会社がそれを好ましく思わなければ、著者に対して何らかの措置をとる可能性があり、極端な場合には失職するかもしれません。それでも著者は、この研究結果を現在および将来の薬の使用者に伝えるべきだという道徳的責任を感じていました。

        エディテージ・インサイトは、匿名の出版を許可する出版社や編集者はほとんど存在しないということを説明しました。しかし、例外的に匿名出版が許可される可能性も、少ないとはいえ、ないわけではありません。そこで、現在の状況をジャーナル編集者にはっきり説明し、論文の出版によって失職の可能性があることを伝え、論文の撤回か、匿名での出版のどちらかの対応が取れないか頼んでみるようアドバイスしました。

        編集者は状況を理解し、匿名での出版の可能性について社内で協議すると請け合いました。そして、もしも出版社として匿名出版に合意できない場合は、論文を撤回することを著者に確約しました。

        まとめ: 研究論文を匿名で出版することは、著者資格や学術出版における透明性の原則に反するため、通常は許可されません。著者には、自分が出版する研究に対する全責任を負うことが求められます。

        匿名の出版を許可する編集者や出版社はほとんどありません。しかし、極端で例外的な場合には、匿名出版もありえます。これには、著者が判明することでその人の命に関わる可能性がある、失職の可能性がある、論文著者の極めて個人的な情報(健康上の問題や社会的問題)が含まれる、などの場合が該当します。

        科学編集者評議会(Council of Science Editors, CSE)は次のように述べています。

        「非常に稀で極端なケースではあるが、著者が氏名を出版物に掲載することで甚大な弊害(例 身の安全に危険が及ぶ、失職するなど)が生じる可能性があるとの主張が信用に足るものであれば、ジャーナル編集者は、匿名での出版を決定することができる」

        匿名で出版しなければならないやむを得ない事情がある場合は、著者にとって問題や脅威となる恐れのある事柄について、編集者に説明した方が良いでしょう。編集者は、状況の重大性を考慮した上で、匿名が許可されるべきかどうかの判断を下してくれるはずです。

        Altmetricの進化

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        カクタス・コミュニケーションズのエディテージ米国法人代表であるドナルド・サミュラック博士と、Altmetric(オルトメトリック)の設立者/CEOであるユアン・アディー氏が対談を行いました。

        インタビュー最終回の今回、アディー氏はAltmetricの始まりと進化について語っています。当初は、出版社が自社のウェブサイトにトラフィック数を示す補助手段として利用されていたAltmetricですが、今では研究の発見しやすさを補佐するツールとなっています。アディー氏はまた、Digital Science社との連携が、共通プラットフォームを通じて研究者、出版社、資金提供社を支援するというAltmetricの目標達成にどう役立ったかを語っています。


        シリーズの他の記事を読む:

        Part 1: Altmetricは著者としての経験から生まれたものです」
        Part 2: Altmetricは学術研究への注目度をどのように測っているの
        Part 3: 出版済み論文のAltmetricデータを探して解釈する
        Part 4: 現在の研究情勢にはどのような変化が必要か?
        Part 5: 代替指標データを研究者のキャリア形成に活用する
        Part 6: Altmetricと代替指標の違い


        将来の論文執筆に備えるため、文献レビューのやり方を教えてください

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        Question Description: 

        こんにちは。卒業以来こちらの記事を参考にさせていただいています。現在は建築工学を研究しており、主にポストモダン建築の研究論文を読んでいます。将来的には自分で論文を書いて出版したいのですが、ほとんどが英語の論文なので、今は論文を読んで要約することさえ簡単ではないという状況です。この分野の参考文献をレビューするためのよい方法を教えてもらえませんか?その方法もわからず、自分の論文原稿を書き始めるのもいつになるか分からない状況です。リテラチャーレビューをするだけでも大変です。先行研究の文献を読んで自分の論文執筆の準備をする方法について、アドバイスをお願いいたします。

        回答

        文献を読むという作業は、科学への感謝と情熱の源となりますから、非常に重要です。英語の科学文献を読むことが難しいことはよく分かりますが、それを習慣にする必要があります。始めは理解できず、楽しんで読むことができないかもしれませんが、自分になじみのある分野・テーマ以外のものも読むようにしてみましょう。そして、読んだものについて友達や同僚と議論してみましょう。そうすれば、考えを述べ合うことでそのテーマに関する理解を深めることができます。

        多くの科学論文を読むことで、優れた論文の英語の使い方や基本構造・構成に慣れることができます。そうすれば、論文や本をより批判的・分析的に評価できるようになるでしょう。

        論文を読むときは、以下の質問に答えながら読み進めましょう。これは、論文を理解し、批判的に評価し、要約するのに役立ちます。

        1. 主なテーマ/リサーチクエスチョンは何か?

        2. 研究の目的は何か?

        3. 研究方法はどの程度優れているか?

        4. データ分析はリサーチクエスチョンと関連性があるか?

        5. データと分析によって結論が論理的に導かれているか?

        6. その論文は研究分野にどのような貢献をしているか?


        また、論文を読むときには必ずノートをとり、テーマごとにフォルダを作って、ノートをテーマ別に保管しましょう。そうすることで、自分の論文を書き始めるまでには、有益な情報データベースが出来上がっているでしょう。

        2論文の方法セクションで同じ文章を使ったら剽窃とみなされる?

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        Question Description: 

        同じ方法を用いて異なる物質を比較する論文を2本、それぞれ別の論文として投稿しようと思っています。材料と方法のセクションはほとんど同じです。どちらの論文もまだ発表されていないので、剽窃探知ソフトでは剽窃とみなされませんでした。材料と方法のセクションが同じこの2本の論文が、将来別々のジャーナルに掲載されたら問題になりますか?

        回答

        一般に、引用元を明らかにせずに自分の過去の出版物から文章をコピーすると自己剽窃とみなされ、出版倫理規定に反します。

        編集者が剽窃探知ソフトにどの程度頼っているのかを確認した調査では、ソフトだけに頼って剽窃と断定するのはかなり稀であるという結果が出ています。編集者はソフトの結果を考慮しますが、自分の判断に依拠する部分も大きいのです。こういった調査や、CrossCheckのメンバーも交えた一般のディスカッションフォーラムから分かっているのは、方法セクションで文章が似通っているケースでは、編集者は寛容なことが多いということです。これは、独自性のある研究であっても、過去に公開された方法を利用することが多いためです。

        しかし、その方法が最初に書かれた元の論文について引用することが必須であるというのが一致している見解です。これは、一般的によく使われる方法であっても同様です。

        同じ方法を用いた論文を2本投稿するなら、自己剽窃とみなされないために以下のことを行うとよいでしょう。

        1. サラミ・スライス方式とみなされないよう、2本の論文が別個の研究とみなされるに十分かどうかを確認する。

        2. 2つの論文で言及している方法を最初に記述した、オリジナルの研究について引用していることを確認する(ここでは、方法そのものはあなたが独自に考案したものではなく、過去に発表されたものであるという前提で書いています。)

        3. どちらかの論文が先に出版された場合は、後に出版される論文に最初の論文を引用し、方法が自分の過去の出版物ですでに記述されている旨を書き添える。

        4. 2本の論文を同時期に投稿する場合は、各論文のカバーレターに、同じ方法を用いた別の研究論文を他誌に投稿中である旨を明記する。

        5. 2本の論文の方法セクションがまったく同一に見えないよう、できるだけ言い回しを変える。

        この回答がお役に立てば幸いです!

        共同研究と研究開発投資の傾向:科学・工学指標の概要

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        共同研究と研究開発投資の傾向:科学・工学指標の概要

        科学・工学分野は世界中で大きく躍進しています。発展途上国は、研究開発投資、技術の進歩、研究成果、研究の普及といった側面で、先進国を急速に追い上げています。これらの変化を把握し、世界の最新動向を理解するために、米国国立科学財団(NSF)は2016年1月、科学工学指標2016を発表しました。

        科学・工学分野は世界中で大きく躍進しています。発展途上国は、研究開発(R&D)投資、技術の進歩、研究成果、研究の普及といった側面で、先進国を急速に追い上げています。これらの変化を把握し、世界の最新動向を理解するため、米国国立科学財団(NSF)は2016年1月、科学工学指標2016(Science & Engineering Indicators 2016)と題したレポートを発表しました。この詳細にわたるレポートは、政府機関が政策を立案し、研究についての各国の動向を理解するための情報源となります。本レポートの重要項目をいくつか見て行きましょう。


        研究開発投資は世界的に増加

        2013年、世界の研究開発費は概算で1兆6710億ドルでした。2003年は8360億ドルだったので、過去10年間で倍増したことになります。米国のシェアは27%で、他国をリードしています。2番手はシェア20%の中国で、金額にして3億3630万ドルです。これはEU全体の投資額とほぼ同額です。その後に続くのが、日本、ドイツ、韓国、ロシア、英国、インドです。


        共同研究の増加

        統計からは、共同研究の大幅な増加が見て取れます。レポートによると、「異国間の著者による共同執筆の出版物の割合は、2000年から2013年の間に13.2%から19.2%へと増加」しています。共同研究プロジェクトが増加している背景にある要因は、研究開発費の増加、コミュニケーション技術の改善、そして適切な教育を受けた研究者の増加です。天文学分野では、出版物の半数に外国人共著者が含まれており、共同研究の多さを反映しています。米国人著者が中国人著者と共同研究をする割合が最も高いことにも驚かされます。米国の国際共著出版物の18.7%は、中国の共著者との出版物です。一方、中国とカナダの国際共著出版物における米国の参加率も、非常に高くなっています(それぞれ45.6%と44.4%)。


        東アジア・東南アジアの躍進

        東アジア・東南アジアは、北米・ヨーロッパの水準に達し、科学的発展の中心地になりつつあります。この地域の研究開発費は、2003年から2013年の間に世界で増加した全研究開発費の3分の1程度を占めています。2013年、米国の研究開発集約度は2.7%でしたが、イスラエルと韓国の比率は4.2%でした。さらに、韓国と台湾は特許と知的財産の輸出で急成長しており、それらによる両地域への収入がこの10年間で増えています。


        先進国よりも発展が速い途上国

        発展途上国は急速な成長率を示す傾向が強く、これは経済・技術発展の初期に典型的な傾向です。一方、先進国の成長率は低い傾向にあります。つまり、成長率という点で、発展途上国は先進国に近づくことができるようになります。この傾向は、過去10年間における中国の進歩、すなわち研究開発費、科学論文数(米国よりも大きなシェアを占める)、世界の出版物におけるシェア(2003年の6%から2013年の18%へと3倍に増加)に顕著に見られます。今後の進展が期待できるその他の発展途上国には、インド、ブラジルなどがあります。


        新しい知識フローと引用パターンの出現

        知識フローは、様々な引用パターンを見ると分かります。引用パターンに影響を与える要素は、文化、地理、言語の関連性、インパクトの度合いです。予想に違わず、米国の出版物の被引用数が最大で、その多くはカナダと英国の著者による引用です。研究者は自分の母語で書かれた論文を引用することがもっとも多いですが、外国人研究者の出版物を参考文献として使用することも増えています。

        レポートを吟味した米国科学委員会(NSB)の委員長ダン・アルヴィズ(Dan Arvizu)氏は、「科学界の状況はますます多極化している」と述べています。共同研究の増加と、新しい引用パターンや知識フローの出現により、科学研究の世界が大転換期を迎えていることは間違いありません。政策立案者や研究機関および研究助成機関は、これらの要素を踏まえた上で、補助金、財源、共同研究についての決定を下す必要があるでしょう。

        査読者が誰かを突き止めることはできますか?

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        Question Description: 

        数か月前にジャーナルに論文を投稿しました。論文はリジェクトされましたが、1人の査読者のコメントが論文の改善に大いに役立ちそうで、非常に貴重なものでした。この査読者が誰かを突き止める方法はあります? 迷っている点が他にもあるので、この人に連絡して相談したいのですが。

        回答

        査読は、単盲検法(single blind)あるいは二重盲検法(double blind)のどちらかで行われます。いずれにしても、査読者の名前は開示されません。匿名で行われるのは、査読プロセスの客観性を完全に保つという目的があるからです。ですから、査読者の身元を開示するのは非倫理的な行為となります。査読の匿名性の目的にそぐわないからです。

        どうしても査読者の提案が必要だと思うのなら、ジャーナル編集者に状況を説明し、どうしたらよいと思うか相談してみることはできます。編集者が査読者の名前を明かすことは、おそらくないでしょう。しかし、あなたのメッセージを査読者に伝えてもらえるよう、編集者に頼むことはできます。査読者次第ではありますが、あなたに連絡をくれるかもしれません。

        マスコミかジャーナルか―科学を歪曲しているのは誰?

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        マスコミかジャーナルか―科学を歪曲しているのは誰?

        一般市民が描く科学のイメージを作っているのは誰でしょうか?それは、言うまでもなくマスコミです。マスコミは、科学のイメージを歪曲しているとしてたびたび非難されてきました。しかし、悪質なジャーナリズムだけが科学の歪曲や不信の原因なのでしょうか?

        一般市民が描く科学のイメージを作っているのは誰でしょうか?それは、言うまでもなくマスコミでしょう。マスコミは、科学のイメージを歪曲しているとしてたびたび非難されてきました。スコット・アダムス(Scott Adams)氏が昨年書いたブログ記事、「科学の最大の失敗(“Science’s Biggest Fail”)」は、科学コミュニティから大きな注目を集めました。その内容は、科学を信頼しがたい理由について詳しく説明したものです。とくに議論の的になった主張は、科学が「マスコミ界でサルを放し飼いにしている」ために、マスコミが科学への不信拡大に大きな影響を与えている、というものでした。科学が歪曲される原因は唯一マスコミにあるというのが一般に受け入れられている見方であり、これはある程度まで真実だと言えるでしょう。一般市民による科学の理解は大手メディアに依存しており、人目を引くようなヘッドライン(見出し)を探しているジャーナリストは、研究結果を単純化してセンセーショナルに書き立てることもあります。しかし、悪質なジャーナリズムだけが科学の歪曲や不信の原因なのでしょうか?

        最近発表された研究「高インパクトの医学誌における無作為の観察的研究に関するマスコミ報道、ジャーナル・プレスリリース、および論説:コホート研究(Media Coverage, Journal Press Releases and Editorials Associated with Randomized and Observational Studies in High-Impact Medical Journals: A Cohort Study)」は、ジャーナルもマスコミと同様に、あるいはそれ以上に、科学の情報伝達の偏りに責任を負っているという興味深い事実を明らかにしています。論文著者は、インパクトファクターの高い医学ジャーナル7誌のプレスリリースを分析し、ランダム化比較試験(RCT)よりも観察研究が好まれる傾向が見られたと報告しています。プレスリリースに取り上げられる割合は、観察研究が50%であるのに対し、RCTはたった17%でした。RCTは治験のゴールドスタンダードとされ、最も信頼性が高いとされている一方、観察研究の結果は再現性が低いため、これは気がかりな結果です。観察研究は興味をひきやすい前向きな研究結果であることが多いため、注目を集めやすく、ジャーナル編集者もマスコミに報道してもらいたがります。その上、これらのプレスリリースでは、読者に対して研究の限界に関する注意を促していないのです。

        このような傾向は、一般市民の科学の見方だけでなく、科学そのものにも悪影響を及ぼします。上記論文の著者らが指摘するように、ジャーナルのプレスリリースは「その後のニュースの内容にも影響を与える」からです。マスコミは、プレスリリースを正しい情報の源と考えるのが普通です。研究の限界に関する知識がなければ、一般社会に誤った情報が伝わってしまい、人々の信念や行動に影響を及ぼします。この傾向のより深刻な側面として、著者らは、「観察研究の報道が優先されることで、人々が健康習慣を形成する上で不適切な影響を与え、臨床で重大な影響が出る可能性がある」という事実についても指摘しています。ジャーナル編集者は、主に医療分野において、科学の進歩によって社会が正しい方向に向かうように、研究結果を正確に伝達することの重要性を認識する必要があります。一般市民の信頼を得るための第一歩は、透明性を維持することです。

        マスコミやジャーナルだけでなく、研究者自身も、一般市民や同僚に誤った情報を伝えるという過ちを犯すことがあります。研究資金や終身在職権(テニュア)のある仕事、激しい昇進競争などにあおられ、時期尚早にもかかわらず、マスコミに研究結果を公表することもあります。その結果、怪しげな知識が拡散することになります。科学に対する一般の見方は、医療政策や科学技術への投資にも影響を及ぼします。科学コミュニティは、知識が上から下に伝達される構造の中で、科学知識を適切に広めるための自分たちの役割について再考する必要があるでしょう。マスコミは、科学コミュニティと一般市民の媒介者でしかありません。責任ある科学コミュニケーションこそ、良識ある科学ジャーナリズム発展の第一歩と言えます。

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