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査読状況の問い合わせについて

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Question Description: 

科学誌に投稿し、3ヵ月で査読結果(Major Revision)がかえってきました。 その後、reviewerのコメントに全面的に従い修正した論文を再投稿しました。 ステータスが"Awaiting Reviewer Scores"のまま、少なくとも1ヵ月経過しており、修正論文投稿後3ヵ月経過しましたので、editorに査読結果はいつごろになりそうか、問い合わせのメールを出そうと思います。 問い合わせのメールで注意すべき点を教えてもらえますでしょうか。あるいは、まだ問い合わせのメールは出さないほうがよいのでしょうか。

回答

修正原稿は一般的に、前回担当した査読者に送られます。したがって、査読者はすでにその論文を一度見ているので、理屈から言えば、修正原稿のレビューに長い時間はかからないはずです。修正原稿のステータスが1か月以上も“Awaiting reviewer scores”のままだということなので、査読者からの返事が来そうかどうかを、編集者に問い合わせてみても良いと思います。

以下のひな形を参考にしてみてください。

Dear [編集者の名前],

Thank you for considering my submission titled [論文タイトル] for publication in your journal. I received the first decision (Major Revision) on [日付]. I had resubmitted the revised manuscript on [日付]. However, the status has been showing “Awaiting reviewer scores” since [日付]. I was wondering by when I would be able to see the next status change. Are you expecting the completed reviews this month?

Sincerely,

[あなたの名前]


ABC連邦大学:ブラジル最先端の研究教育機関

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ABC連邦大学:ブラジル最先端の研究教育機関
クラウス・カペレ(Klaus Capelle)博士は、ブラジルABC連邦大学の学長です。独ヴュルツブルク大学で物理学の最優秀博士論文賞を受賞した後、米ニューメキシコ大学で修士号を取得しました。サンパウロ大学サンカルロス物理学研究所でポスドク研究を行なった後に教授になり、またサンカルロス化学研究所(IQSC)、米ミズーリ大学コロンビア校、英ブリストル大学、ルンド大学(スウェーデン)、独ベルリン自由大学で客員研究員を務めました。書き上げた論文は90本以上にのぼり、複数のジャーナルで編集委員を務めています。査読者として優れた仕事をしてきたことを評価され、2011年にはアメリカ化学会から感謝状を、2012年にはアメリカ物理学会から優秀論文審査員賞を授与されています。

ドイツ人物理学者でABC連邦大学(Federal University of ABC、UFABC)学長のクラウス・カペレ(Klaus Capelle)博士は、変わった道を選択しながらも、順調にキャリアを積み上げてきました。1997年にバイエルン州(ドイツ)のユリウス・マクシミリアン大学ヴュルツブルク(通称ヴュルツブルク大学)で物理学の最優秀博士論文賞を受賞した後、ニューメキシコ大学(米アルバカーキ)で修士号を取得、またサンカルロス化学研究所(Institute of Chemistry of São Carlos、IQSC)、ミズーリ大学コロンビア校(米国)、ブリストル大学(英国)、ルンド大学(スウェーデン)、ベルリン自由大学(ドイツ)で客員研究員を務めました。母国で順当にキャリアを築けるだけの学術的成功を収めていたにもかかわらず、1997年~1999年はブラジルのサンパウロ大学サンカルロス物理学研究所(São Carlos Institute of Physics、IFSC-USP)でポスドク研究を継続し、1999年~2003年はサンカルロス化学研究所(São Carlos Chemistry Institute at USP)でサンパウロ研究財団(FAPESP)から若手研究者のための助成金を受けました。2003年~2009年はIFSCで教授を務め、さらにABC連邦大学の教授と研究担当副学長(research provost)を経て学長となり、現在に至ります。書き上げた論文は90本以上にのぼり、複数のジャーナルで編集委員を務めています。また、査読者として優れた仕事をしてきたことを評価され、2011年にはアメリカ化学会から感謝状を、2012年にはアメリカ物理学会から優秀論文審査員賞を授与されています。

ABC連邦大学は、中南米における先駆的な研究大学としてその地位を確立しつつあります。ブラジルで唯一、全教授が博士号を保持し、発表された科学論文のインパクトファクターが世界平均以上である学術機関でもあります。学長であるカペレ博士は、この記録を維持し、研究教育の世界的リーダーとなるために様々な方針を実行しています。ワクワクするインタビューになりそうです!カペレ博士には、ABC連邦大学についてのお話の他、先駆的な仕事を行うにあたって尽力した経験、そして自身の珍しいキャリア選択について伺いました。


インタビュー第1回目の今回は、ABC連邦大学が成功するに至った背景について伺いました。同校は学際的な学問を重視しており、学生が様々なスキルを伸ばしてキャリアや学術面でより良い選択がしやすいようになっています。また、その教授採用方針により、グローバルな研究基準を満たす質の高さが保たれています。


ABC連邦大学は、ブラジルで唯一、教授全員が博士号を保持している大学です。また、発表された科学論文のインパクトファクターが世界平均以上である唯一の大学でもあります。貴校の成功の原因は何だとお考えですか?

ABC連邦大学は世界一流の大学を目指しており、様々な手段を講じてその目的を達成しようとしています。その1つとして、博士号を持つ科学者だけを雇用すること、また研究経験があって研究プロジェクトを提案できることを応募条件とするという、2006年の開設以来実施されている厳しい方針があります。とりわけ、従来の学問領域の壁を越えた学際的研究が望ましいと考えています。雇用された教授は、1年の中である時期には講義を持ち、また別の時期には自由な研究活動を行う計画を立てることができます。国内の他の学術機関と比べて、教授の平均年齢(43歳)は若めです。また、外国人教員の割合(ほぼ12%)はブラジルの伝統校よりも高く、それゆえにダイナミックで多様な環境になっています。

当校では、多額の財源を現代的な研究室や最先端設備の建設に充てていますが、その多くはマルチユーザー施設として、研究者個人ではなく大学によって運営されています。こうすることで、財源の分配や計画がしやすくなっています。また、助成機関からの資金に大学の予算も足して、学部・大学院生向けの研究用奨学金を増やしています。研究者が助成機関に出すプロポーザルや報告書を管理し、産業界との交流を支援する専門部署も設置しました。

公正さを期すために付け加えておくと、ブラジルの他の優秀な大学も、博士号を持つ科学者の割合は当校に追いついてきています。これはブラジルの教育システムが全体的に改良されてきているためで、非常に健全な発展を遂げていると言えるでしょう。


ABC連邦大学では、大学院生が1年目から複数分野に重点を置くなど、学際的アプローチで知られています。これについて少し詳しく教えて頂けますか?

現代の科学研究は非常に複雑です。従来の専門分野で区切られた知識では、もっとも刺激的な科学的質問に答えを出すことも、現代社会で最も切迫した問題に対応することもできません。例えば「エネルギー」というテーマを考えてみましょう。エネルギーの研究は物理学、化学、工学、経済学、政治学、環境科学、その他さまざまな視点からのアプローチが可能です。これらの専門分野を選んだ学生は、その限られた文脈の中ではエネルギーについて多くのことを学べるかもしれませんが、他の分野についてはほとんど学べません。ABC連邦大学では、学生に広い視野を持ってもらえるよう、特別科目を準備し、学際的テーマを扱う授業やプログラムを考案しました。

学生たちに基礎をしっかり固めてもらうために、2つの特別な「学際学士」を設置しました。1つは科学・工学分野、もう1つは科学・人文学分野です。学生たちは、ここで確固とした幅広い科学的背景を身につけます。当校の新入生向けコースはこの2つだけなので、将来の専門が何になるにせよ、全学生がこのどちらかの学位を選択することになります。このため、通常の学部生は(少なくとも)2つの学位を取得します。学際的学士号の他に、工学や教職など、より専門的な学士号の取得が可能となっています。本校の学生には、就職するにしても、大学院で学問を続けるにしても、十分な準備が整えられているのです。


今日、科学と学術の進歩には国際協力が不可欠です。ABC連邦大学の国際的活動について詳しく教えてください。

国際化は我々の最優先課題の1つです。それだけを目的としているわけではありませんが(ただ国際的だからという理由で「より良い」とは言えないので)、生徒には刺激的で豊かな学びの経験を提供し、教員には幅広い研究にアクセスできる機会を提供する手段にしたいと考えています。2014年初頭にABC連邦大学の学長に就任してから、国際オフィスのスタッフを3倍にし、国際化支援のための特別方針を作成しました。当校では現在、リクエストがあれば学部・大学院のどちらでも英語での講義が可能です。また教員採用課程も英語で行うことが可能です。ABC連邦大学は、これらが可能なブラジルの公立大学として数少ない(ひょっとすると唯一の)存在です。

現在、教員の12%を海外から迎えています(ブラジルの標準よりも非常に高い数字です)。また、学部生の10%以上はブラジル政府主催の「国境なき科学」(Science without Borders)プログラムに参加した経験があるか、現在参加中です。語学講座には2000名分の座席を確保し、外国人学生・教員向けの「外国語としてのポルトガル語」の授業も用意しています。当校はまだ歴史が浅いため(9年目)、中南米以外ではあまり知名度が高くありませんが、海外の大学との正式な共同研究の契約数は33件あり、個人の研究者たちは数多くの共同研究を海外の研究仲間と行なっています。その結果、当校の大学院生のおよそ9%が海外からの学生で、その数は年々増加しています。


貴校には「入学初日からの研究」(“Research since the first day”)というユニークなプログラムがあります。これについて教えてください。

これは、予期せぬ災いが転じて福となる好例ともいえる話です。大学では、教授が学部生・大学院生のグループと一緒に自分の研究を行い、学生たちは教授の監督下で自分たちの研究プロジェクトを行うのが従来の方法でした。ABC連邦大学の開校当時、全員が博士号を持ち、研究意欲の高い科学者である教授陣はすでにそろっていました。でも学生は1年生しかいません。さて、この教授たちは開校したばかりの大学で研究計画をどう進めていけばよいのでしょう?この問題を解決するため、研究プロジェクトに学生を呼び込む目的で特別プログラムが開設されました。もちろん、実際の研究に1年生が関わることが適切かどうかについて、最初は疑念も出されましたが、そのような心配は杞憂だということが分かりました。このプログラムは学生にも大変有益で喜ばれていますし、多くの研究者がこれを通してメンバーを募集しています。

それからほぼ10年後の現在は、もちろん全学年の学生がいます。でも、「入学初日からの研究」は大成功を収めたので、誇りをもって継続しています。このプログラムのおかげで、多くの学生の科学的才能を発見することができました。中には、評価の高い国際ジャーナルから共著者としてすでに論文を発表した学生もいます。当校がこの新規プログラムを発足させた数年後、ブラジル政府の研究助成機関であるCAPESが「若き才能を科学へ」(“Young Talents for Science”)というプログラムを全国展開しましたが、これには、我々の「入学初日からの研究」プログラムと多くの共通点があります。


博士は2013年、「学術研究と産業部門のニーズを統合することが現在のブラジルの大きな課題である」と述べられました(CISBニュースレター、20131月号)。この課題は今も続いていますか?ABC連邦大学はこの溝を埋めるためにどのような貢献をしているのでしょうか。

この課題はまだ残っています。ブラジルでは優れた研究が数多く行われていますが、ブラジル企業は、ペトロブラス(Petrobras)、Valeヴァーレ(Vale)、ナトゥーラ(Natura)などごく少数の例外や、より小規模なスタートアップ(ベンチャー企業)を除き、自社製品の改良や新製品の開発に、研究による知見・革新の宝庫を系統的に活用していません。ブラジル企業の多くは大学を「人材供給源」とみており、「知識とアイデアの提供者」とは考えていません。もちろん、大学の研究は、産業界のニーズに応えるために存在すると考えられるべきではありませんが、だからといって、この2つのシステムが相互の利益を探求せずに別個に共存すべきとは言えないでしょう。

この溝を埋めようと、ABC連邦大学は独自のイノベーション局を設置し、大学と産業界の交流に関する様々な活動に携わっています。活動内容には、共同研究の促進、知的財産権の管理、若手起業家と技術移転の支援、テクノロジーパークとインキュベーター(起業支援者)の交流、発明家への助言などがあります。この取り組みでは、産業界における未来のパートナーを積極的に探しています。

また、当校はブラジル政府系機関の科学技術開発審議会(CNPq)と共同で「産学博士コース」(“Academical-industrial doctorate”)というユニークなプログラムを開設しました。博士課程に在籍する学生が、論文のテーマやリサーチクエスチョンを探すために3~6ヶ月間企業の研究室で過ごし、適切なテーマを見つけて提携先企業から大学に戻り、その後研究を開始するというものです。この手法なら、大学の研究成果が、産業界の提携先における実際のニーズやプロジェクトと確実にマッチします(ABC連邦大学には、大学内でのみ研究を行う従来通りの博士課程ももちろんあります)。


次回は、ブラジルの研究者たちが直面している課題や、カペレ博士ご本人の風変わりながら成功を収めたキャリア選択について、お話を伺います。

正誤表・懸念表明・撤回について知っておくべきこと

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正誤表・懸念表明・撤回について知っておくべきこと

正誤表(errata)・懸念表明(expression of concern)・撤回(retraction)の深刻さは、それぞれどの程度でしょうか。 研究結果に訂正が必要とされ、論文の整合性に疑問を呈する声が上がれば、研究にプラスの影響が出ることはないでしょう。したがって、これらはできる限り避けるべきものと言えます。

 [本記事はウォルターズ・クルワー(Walters-Kluwer)社の著者向けニュースレター、Author Resource Reviewに掲載されたものを、許可を得てここに再掲載したものです。

本記事はフィル・ダリー(Phil Daly)氏とジニー・ピットマン(Ginny Pittman)氏の共同執筆によるものです。

フィル・ダリー氏は、ウォルターズ・クルワー・ヘルス(Wolters Kluwer Health)社のシニア・パブリッシャーで、STM編集者、編集長、その他出版関係の業務に25年以上携わってきました。生物物理学で学士号を、薬剤微生物学(Pharmaceutical Microbiology)で博士号を取得しています。

ジニー・ピットマン氏は、ウォルターズ・クルワー・ヘルス社バルチモア支部の出版責任者で、整形外科・耳鼻咽喉学分野の出版、製品開発戦略、著者向けツールおよびサービスの開発などを率いる立場にあります。教育・学術出版界で25年以上の経験を持っています。]


正誤表(errata)・懸念表明(expression of concern)・撤回(retraction)の深刻さは、それぞれどの程度でしょうか。 研究結果に訂正が必要とされ、論文の整合性に疑問を呈する声が上がれば、研究にプラスの影響が出ることはないでしょう。したがって、これらはできる限り避けるべきものと言えます。

出版社は、必要に応じて出版物を訂正する義務を負っています。しかし、誤りや不正行為の跡が含まれる論文を出版してしまい、正誤表や懸念表明、撤回を発表するという事態は、出版社や編集者もなるべく避けたいと思っています。これは、とくに驚くには値しないでしょう。本記事では、これらの各種通知について解説し、より詳しく知りたい人のために、出版倫理委員会(Committee on Publication Ethics, COPE)の見解も紹介します。1,2

これらの通知が発行される事態そのものは、軽んじられるべきではありません。出版社からは、検証・確認が求められることになります。確認・検証作業は、責任著者(corresponding author)を通して行われます。(責任著者と連絡がつかない場合は除く。)確認・検証は、論文に間違いがあったことを著者が認めるだけの簡単なものから、著者の所属機関や雇用者による徹底調査により、研究に不正行為があったかどうかを検証することまで含まれます。論文に対する懸念表明は、可能な限りの機密性を保って取り扱われます。検証は、懸念の解消を支援することができ、なおかつ懸念表明の妥当性を判断できる関係者のみが行います。

正誤表・懸念表明・撤回は、それぞれどのような経緯で発行されるのでしょうか。たいていは、著者からの依頼、査読者・編集委員・他誌・出版社・雇用者・資金提供者・読者・「密告者」などの観察、または剽窃探知ソフトを利用した内容比較の結果によるものです。

通知の発行は、論文が出版済みで、一般公開されている場合に検討されます。出版済み論文とは、最終版として掲載されたオンライン版だけでなく、最終版よりも前の版で公開されたものも含まれます。最終版になっていない論文なら、重要な訂正は最終版で行えばよいわけですから、正誤表は不要のはずです。懸念表明や撤回は、オンライン版が最終版かどうかに関係なく発行される可能性があります。形がどうあれ、論文が出版(公開)済みであれば、出版社は出版物を訂正しなければならないからです。

各通知は、ジャーナルの印刷版(もしあれば)とオンライン版で、同じ形式で発行されます。元の論文は引用文献として含められるので、電子版ではクリック1つで元の論文をたどることができます。PubMed(www.nlm.nih.gov/pubs/factsheets/errata.html)などのデータベースにも、論文への便利な電子リンクがあります。オンラインで論文を読んでいる人は、印刷版を読んでいる人よりも明らかな利点があります。印刷版を読んでいる人は、発行された通知のことを知らないまま最初の論文を読んでいる可能性があるからです。

原則として、最初の出版済み論文は、正誤表を反映して変更を加えられたり、懸念表明や撤回の後に削除されたりすることはありません。これは国際STM出版社協会の規定3に準じるものであり、出版社が読者に対して出版物の訂正に注意喚起を行うものです。印刷版でもオンライン版でも、出版履歴を変更することはないのです。この原則の例外としては、プライバシーの侵害、一般市民の健康に甚大な危険を及ぼす可能性のある誤り、中傷的なコメントなどがあります。そのような場合には説明が加えられます。3 一般的に、元の論文に変更が加えられるのは、撤回が行われたときだけで、その場合も電子版にのみ変更が加えられます。論文の最初の版がPDF版で残され、撤回された論文であることを示すために、透かし文字が入れられます。

では、これらの通知について順番に見ていきましょう。


正誤表

正誤表は “erratum” あるいは “corrigendum” として掲載されるものです。こういった単語が使われるということは、著者側に誤りがあったということを意味します。正誤表は、論文の結果に影響を及ぼさない、些細ではあるものの重要なミスや見落としを、単純に訂正する場合に用いられます。正誤表は、誤りを正直に申告するものですが、すべての誤りが対象となるわけではありません。重要性が高いとはみなされないものもあるからです。例えば、重要度の低い単語の綴りのミスや、参考文献リストの誤りなどには、正誤表は適用されません。

重要な訂正が必要な場合は、論文の出版後ただちに正誤表を掲載できるよう、なるべく早くジャーナルに連絡しましょう。著者のミスや誤植でよく見られるものには、表の数字、図の説明文のラベル、試薬・薬剤の濃度、治験結果や被験者をグループ分けした際の基準値、著者名の欠落などです。著者名は訂正されることもありますが、PubMedなどのデータベースですでに著者名が引用されているものとの統一を図ることはできません。著者名の欠落は、各著者が責任をもち、投稿された論文のタイトルの入ったページに自分の名前がどのように掲載されるかを確認するようにすれば、避けられるミスです。ジャーナル作成に関わる人が著者の氏名を確認しやすいように、論文を投稿する前に、ジャーナルが著者名をどのように掲載するのか確認しておくとよいでしょう。ウェブサイト版やPubMedなどのデータベースで、自分の苗字と名前が逆になっているとして、出版社に訂正を求める著者もいます。この場合は、電子的な処理で情報が識別された結果なので、正誤表は不要でしょう。正しく識別し直したメタデータを索引作成者(インデクサー)に提供すれば済むので、著者から連絡するだけで、ただちに処理されます。

より重要かつ広範にわたる変更の場合は、「編集者への手紙」を送り、論文に関するメッセージへの影響を詳細に説明する必要があるかもしれません。あるいは、そのような説明を正誤表に含める場合もあります。


懸念表明

これは、その論文の信頼性が疑われることを読者に対して注意喚起するために用いられます。全面的な撤回の前ぶれということもありますが、必ずしもそうではありません。懸念表明が出されるのは、問題が調査中で未解決の場合、あるいは証拠が不十分である場合に限られます。編集者は、論文の信頼性に対する疑いをむやみに喚起したくはないので、懸念の影響(例えば、臨床に影響があるかどうか)、機密性、読者が知る必要性などを考慮します。この通知には、懸念される箇所に関する簡単な説明も含まれます。


撤回

不正行為あるいは悪意のない誤りの結果として、研究の信頼性が疑われることになった場合、論文は撤回され、論文の結果は無効とされます。過去や同時期の出版物について許諾を得ていない論文、あるいはそれらを認識していなかったために重複出版となった論文、その結果として非倫理的な研究とみなされた場合も、撤回で処理されることになります。

撤回通知では、論文の撤回理由も述べられます。撤回には必ず理由があるはずであり、これは、著者の働きかけによって実施されるものではありません。(もちろん、著者が申し出ることもできますが。)

著者が特段の理由なく論文の撤回を申請すると、ジャーナルは疑念を抱きます。例えば、2誌から論文を出版する運びとなって窮地に立たされたという理由で論文を撤回することはできません。論文を2誌に同時に投稿することは、悪質な非倫理的行為です。このような二重投稿は、二重撤回という結果を招く可能性もあります。

懸念表明や撤回を行う場合は、著者の雇用者、あるいは編集者に代わって調査を行う権限を持つ人にアドバイスを求め、助言を仰ぐことが必要になることもあるでしょう。研究機関、組織、企業の中には、倫理委員会を設置してこれらの訴えに対処するところも増えてきました。編集者は、不正の疑いをかけられた論文について、COPEのフローチャートに従って対処することが多くなっています。倫理委員会が関わることなく撤回となった場合には、著者の雇用者や資金提供者に、編集者から直接その旨を伝えることもできます。


結論

科学的不正行為が疑われる場合や、出版済み論文の内容や結果が誤りだと信じるに足る証拠があれば、編集者が著者と相談の上で対処するのが一般的です。正式な撤回や訂正が必要になることもあります。懸念表明は、編集者が不正行為の嫌疑を調査している途中や、誤ったデータが公開中の間に発表されることもあります。

自分の論文の訂正について相談したい、論文の撤回が必要かもしれない、と思っている方は、ジャーナル編集部にすぐに連絡を取りましょう。

出版社・編集者・著者は、正誤表、懸念表明、撤回でジャーナルや自分の論文に泥を塗ることを避けるべきです。この3種類の通知のうち、正誤表はそれほど深刻ではないものですが、電子リンクがあるとはいえ、元の論文と離れた場所に訂正内容が示されているのは、読者にとって不便なことです。正誤表、あるいはよりダメージの大きな通知を避けることは、著者自身のためです。著者や共著者にとって、同僚・雇用者・資金提供者からの信頼を失うことにつながるからです。


参考文献

1. Committee on Publication Ethics. Guidelines. http://publicationethics.org/resources/guidelines. Accessed 15 December 2015

2. Committee on Publication Ethics. Retraction guidelines. http://publicationethics.org/files/retraction%20guidelines_0.pdf

3. International Association of Scientific, Technical & Medical Publishers. Preserving the record of science. http://www.stm-assoc.org/documents/#type=Guidelines

4. Committee on Publication Ethics. COPE Flowcharts. http://publicationethics.org/resources/flowcharts

 

査読者や編集委員になると昇進に有利?

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Question Description: 

あるジャーナルから、編集委員・査読者として招待されました。どのように回答したらよいでしょう?引き受けるべきでしょうか?キャリアを形成する上で役に立ちますか? 招待はカナダのオープンアクセスジャーナルからで、データベース(SCI, EI)には採録されていません。

回答

ご質問とは逆の順序で回答します。これは間違いなく、あなたにとって素晴らしい機会です。査読者・編集委員になってほしいという依頼は名誉なことで、多くのメリットがあります。

1. CVに記載すれば、その分野の専門家として認められていることを示すことができます。

2. 科学論文の評価を行うことで、知識が増えます。他人の研究論文を批判的に読むことで、自分の研究に活かせる良いアイデアを思いつくかもしれません。

3. その多くが経験豊富な教授や科学者である編集委員たちから、名前を憶えてもらえる機会が得られます。科学の同胞たちから認められ、あなたの貢献が評価されるでしょう。

4. 科学の前進に貢献することができるため、大きな個人的満足感を得ることができます。

依頼を受けられない明確な理由がない限り、引き受けることをお勧めします。ただし、その前に、ジャーナルについて少し調べましょう。ジャーナルがデータベースに採録されていないことは構いませんが、評判が良くないとしたら困りものです。評判の悪いジャーナルと関係を築きたくはないと思いますので、詐欺まがいの悪質なジャーナルでないことを確認しましょう。ビオール氏のハゲタカジャーナル・リスト(Beall’s list of predatory journals)が参考になります。ジャーナルの評判に問題がなければ、ぜひとも引き受けましょう。

抄録の新時代到来:グラフィカルアブストラクト・ビデオアブストラクト

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抄録の新時代到来:グラフィカルアブストラクト・ビデオアブストラクト

過去20年で、情報を消費・処理・普及する方法は大きな変貌を遂げました。科学コミュニケーションもまた、受け手のニーズの変化に応じて変わってきました。画期的な方法の1つに、グラフィカルアブストラクトやビデオアブストラクトを利用して論文を宣伝するという方法があります。

過去20年で、情報を消費・処理・普及する方法は大きな変貌を遂げました。デジタルメディアが、コミュニケーション形態に多大な変化をもたらしたのです。科学コミュニケーションもまた、受け手のニーズの変化に応じて変わってきました。ソーシャルメディアは、今や科学者がアイデアをシェアし、研究を広めるためのプラットフォームになりました。FacebookやYouTube、ツイッターは情報源として現代の読者の人気を得ており、情報処理の仕方も変わりました。現代の読者たちは、長い論文よりも、素早く簡単に処理できて、1つ1つがコンパクトにまとまった情報を好みます。文章で書かれたコンテンツより、ビジュアルな情報が好まれる傾向も強まっています。このような読者のニーズの変化に対応するために、新しい方法で情報を届け、論文に関心を持ってもらおうとするジャーナルも数多くあります。そのような画期的な方法の1つに、グラフィカルアブストラクトやビデオアブストラクトを利用して論文を宣伝するという方法があります。


グラフィカルアブストラクトとその利点

グラフィカルアブストラクトは、論文の主要な研究結果を1つの簡潔な視覚的形式にまとめたものです。論文の主要コンテンツを、工夫を凝らした図にまとめるのです。リリー・ブイ(Lily Bui)氏は、「グラフィカルアブストラクトについての一考察」という論文で、その利点を述べています。グラフィカルアブストラクトは一目で理解しやすいため、大量の文献に目を通すときに特に役立ちます。また、高度に専門的で複雑な科学的概念を異分野の読者にも理解してもらいやすいので、学際的研究を促進します。さらに、方法と結果についてより多くの情報を提供することができます。これは、単語数が厳しく制限されている従来のアブストラクトではなかなかできないことです。その上、ソーシャルメディアで共有しやすいため、研究の一端を伝えやすくなります。このため、幅広い読者を惹きつける力があり、実際に論文を見てみようという気にさせます。エルゼビアの著者向けガイドラインによると、グラフィカルアブストラクトは「論文の閲覧数を増加させ、学際的研究を促進し、読者が興味を持っている研究との関連性が最も高い論文をより早く見つけられるようにすることを目的」としています。このため、グラフィカルアブストラクトの概念を受け入れるジャーナルは増加傾向にあります。


ビデオアブストラクトとその利点

グラフィカルアブストラクトの流れから出てきたものが、ビデオアブストラクトです。これは、論文を短いビデオにまとめて読者の興味を掻き立てようというものです。通常3~5分のビデオ映像で、研究の背景や基本的な方法の概要、主要結果を端的に説明します。ブログThe Scientist Videographerの著者であるカレン・L・マッキー(Karen L. McKee)氏は、ブログ記事でビデオアブストラクトの利点を説明しています。彼女によると、ビデオアブストラクトでは、研究をより広い文脈の中に位置づけたり、研究結果についてより個人的な説明を加えたりすることができます。また、検索エンジンは、文章よりもビデオのランキングを優先します。特定のテーマについて検索している人が、検索結果でビデオアブストラクトを見つけることもあり、ビデオから論文に読者を導くことができるので、論文の認知度を高めることができます。また、YouTubeにビデオが投稿されていれば、自分のウェブサイトにそのビデオを埋め込むことも自由です。このようなことは、出版済み論文では著作権の制限があるため、なかなかできません。医療関係者や人事担当者など、科学コミュニティの外にいて、普段はジャーナル論文を読まない人にとって、ビデオアブストラクトは研究結果を理解する良い方法だといえるかもしれません。ジャーナルFamily Processのテクノロジー・ニューメディア部門編集者であるビクトリア・ディッカーソン(Victoria Dickerson)氏は、ブログ記事で、ビデオアブストラクトがジャーナル論文の宣伝に非常に有効であると述べています。また、ワイリーのマーケティング部門が2012~2013年度に行なった調査によると、ビデオアブストラクトが添えられた論文は、ビデオアブストラクトがない論文よりも、フルテキストのダウンロード数が82%も多かったことも紹介しています。


グラフィカルアブストラクトの作成

視覚的なアブストラクトというアイデアにしり込みしてしまう研究者もいるかもしれません。でも、ほんの少し手間がかかるだけで、作成はそれほど難しくないはずです。グラフィカルアブストラクトを作るには、マイクロソフトのPowerPointやPaint、あるいはCorelDRAW(コーレルドロー)、Photoshopなどのソフトウェアを使って図を作成し、画像ファイルとして保存します。仕上げに、ジャーナルの規定に従ってサイズを変更する必要があります。アンドリュー・サン(Andrew Sun)氏は、「グラフィカルアブストラクトを描くためのソフト」というブログ記事で、グラフィカルアブストラクトを描くのに適したソフトについて、役立つアドバイスを書いています。さらに、エルゼビアやセルプレス、ACS、IEEEなどの出版社は、各ウェブサイトでグラフィカルアブストラクトについての詳細なガイドラインを掲載しています。


ビデオアブストラクトの作成

ビデオアブストラクトのジャーナル規定は、今のところごくシンプルなものです。前出のディッカーソン氏によると、コンピューターに搭載されているウェブカムとマイクを使えば、ビデオアブストラクトを録画することができます。著者は、周到に準備したプレゼンテーションを行うときのように、ただ話すだけでよいのです。YouTubeにビデオアブストラクトをアップロードすると、ジャーナルのレビューを経て、専用のYouTubeチャンネルに追加されます。ビデオアブストラクトは、今はまだ珍しいものですが、将来的にはごく一般的なものになるかもしれません。ですから、ビデオアブストラクトの作成に必要なスキルを磨いておくことが重要でしょう。カレン・マクフィー(Karen McPhee)氏のブログ記事には、効果的なビデオアブストラクトを作成する方法について、詳細なアドバイスが掲載されています。ジャーナルがビデオアブストラクトを掲載していなくても、独自に作成することで、自分の研究を宣伝することができるというメリットがあります。


画像にしろ、動画にしろ、視覚的アブストラクトは論文の閲覧回数を増加させる絶好のチャンスになるので、著者にとっては歓迎すべき動きといえます。手軽な方法で研究を広め、研究による恩恵を人々にもたらすことができるのです。研究の真の成功とは、人類の問題を解決するために応用され、有効利用されることにあります。デジタルメディアやコミュニケーション環境が変化する中で、研究者も、グラフィカルアブストラクトやビデオアブストラクトといった新しい方法に適応し、科学の進展に貢献することが求められるでしょう。

 

学術誌 “Blood”の概要と投稿時のアドバイス

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学術誌 “Blood”の概要と投稿時のアドバイス

学術誌" Blood "の概要と投稿時のアドバイスをご紹介します。Bloodは、血液学のあらゆる側面に関する原著論文を掲載しています。対象分野は、白血球疾患(良性・悪性)、赤血球疾患、血小板疾患、止血のメカニズム、血管生物学、免疫学、血液腫瘍学などです。

目的と研究領域

血液学のあらゆる側面に関する原著論文を掲載。対象分野は、白血球疾患(良性・悪性)、赤血球疾患、血小板疾患、止血のメカニズム、血管生物学、免疫学、血液腫瘍学など。

出版社

アメリカ血液学会 (American Society of Hematology)

発行頻度

週刊 (年51号発行。第1巻:1~6月/第2巻:7~12月)。1946年から定期刊行されている。

編集情報

編集主幹(Editor-in-chief)は、ロッテルダム(オランダ)のエラスムス大学医療センター血液学部長であるボブ・ローウェンバーグ(Bob Löwenberg)氏。同氏の研究は、発生における診断法と治療法に研究の重点を置いている。とくに、単一および複数施設での治験における急性骨髄性白血病を重視し、分子多様性を考慮しながら新たな病原体や治療方法を評価している。編集主幹を支えるのは、副編集者1名、特別部門編集者2名、編集者16名、総勢100名の編集委員。

詳細はこちら: www.bloodjournal.org/page/about-blood/editorial-board-and-staff


出版基準

ヒトの免疫生物学に重点が置かれていて、正常または悪性の血液学的プロセスについて現在の理解を前進させる論文が好ましい。ジャーナルの対象領域は、厳密に規定されている。下記サイトを参照。
www.bloodjournal.org/page/authors/author-guide/journal-scope


Bloodでは、以下の14種類の論文を掲載している。

• 通常の論文(Regular article)

• 短報(Brief report)

• e-Blood:仮説を検証するのではなく、価値の高いデータセットや新方法のレポートを提供することで他の人が仮説を立てることを促す、優れたデザインのシステム生物学研究。この論文は、「全体の引用が可能であり、Bloodの正式な出版物とみなされる。通常の厳しい査読を経て、Bloodに掲載されるその他の論文とまったく同じように編集・構成され、最終版がオンラインに掲載されると印刷版の目次にも掲載される」。

• レビュー論文 (Review article)

• 視点 (Perspective)

• スポットライト(注目)(Spotlight): 「発展段階にある科学理論およびや臨床の進展、あるいは特定のテーマにおける最新の飛躍的進展に注目した論文」。通常は編集主幹の招待により執筆される。

• 私の治療法 (How I Treat)

• エビデンスに基づいた集中的レビュー(Evidence-based Focused Review)

Bloodワーク(Blood Work)

Bloodフォーラム (Blood Forum)

Bloodへのレター (Letters to Blood)

• 電子版レター(e-letters)

Bloodの内側に関する解説(Inside Blood Commentary)

Bloodの省察 (Blood Reflections)


編集方針と投稿規定

原稿はすべてhttp://submit.bloodjournal.org/から投稿する。初めて投稿する著者は、投稿プロセスを開始する前にアカウントを作成する必要がある。


査読プロセス

編集部の判定は、「論文の技術面における価値だけでなく、公表の優先度、内容の提示方法、ジャーナルの一般読者にとっての重要性といった要素に基づいて行われる」。年間5000本以上の投稿を受け付けている。一次判定は通常、20日以内に出される。ただし、魅力がない、あるいはジャーナルの対象領域に合わないとみなされた論文は、査読なしで即座にリジェクトされることもある。


スムーズな出版のために

よくある質問(FAQ)を含め、将来の著者向けの案内を数多く用意している。2008年から2012年にBloodの編集主幹を務めたシンシア・E・ダンバー(Cynthia E. Dunbar)氏のアドバイス、「あなたの論文をBloodに掲載する方法」というウェブページも設けられている(動画あり):www.bloodjournal.org/page/authors/how-get-your-paper-published-blood

書式はおおむねAMA Manual of Style (第10版) に従っているが、独自の書式規定(スタイルガイド)で補足されている。詳細はこちら:www.bloodjournal.org/page/authors/style-guide


インパクトファクター

2014年:10.452


便利なリンク集

ジャーナルのウェブサイト: www.bloodjournal.org

論文投稿: http://submit.bloodjournal.org

著者へのアドバイス: www.bloodjournal.org/page/authors/how-get-your-paper-published-blood

著者向けガイドライン: www.bloodjournal.org/page/authors/author-guide

ジャーナルの対象領域: www.bloodjournal.org/page/authors/author-guide/journal-scope

編集委員会: www.bloodjournal.org/page/about-blood/editorial-board-and-staff

出典を明記しても、同じ単語を使って文章を書いたら剽窃とみなされますか?

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Question Description: 

引用文献を明記した上で、元の論文の文章に少しだけ変更を加えて自分の論文の本文で利用したいと思っています。
これが元の論文の文章です。

In our study, the volume (as a percent of the initial volume) of the remaining cysts that were followed up in the first 4 months after sclerotherapy using acetic acid was one-half that of the ethanol group (Fig. 1). The number of cysts that regressed to under 10% of the initial volume in the acetic acid group was greater than in the ethanol group.

 私が論文で書こうと思っているのは以下の文章ですが、参照番号(2)を付けて引用だということを示しても、剽窃とみなされてしまいますか?

In their study, the volume of the remaining cysts that were followed up 4 months after sclerotherapy using acetic acid was one-half that of the ethanol group and the number of cysts that regressed to under 10% of the initial volume in the acetic acid group was greater than in the ethanol group (2).

パラフレーズせずに直接引用することが許されないことは承知していますが、上のように引用を示している場合でも許されないのでしょうか。前に聴講した講義では、5単語が同一であれば確実に剽窃であると言っていました。でも、同僚たちはそのようなことはなかったと言っています。問題になるようなことはしたくないので、この件について実際の規定を知りたいと思います。

もう1つ質問があります。論文原稿は、剽窃チェックウェブサイト、eTBLASTで探知されなければ大丈夫ですか?CrossCheckとeTBLASTではどちらがより信頼できるのか、明確な違いを教えて頂けると嬉しいです。

回答

元の論文の文章とあなたの文章は非常に似通っています。引用していることが明記されてはいますが、剽窃とみなされる可能性もあります。文章をそのまま利用したいのであれば、引用符を用いるか、あるいは原文とは異なるようにパラフレーズし直すようにしましょう。以下は、私がパラフレーズした文章です。

In the study, the cysts that remained were examined 4 months after sclerotherapy using acetic acid. The volume of these cysts was found to be one-half that of the ethanol group. Additionally, the acetic acid group had a larger number of cysts that had regressed to less than 10% of the initial volume than the ethanol group.

使われている専門用語が同じでも、原文とやや違って見えることが分かると思います。剽窃のそしりを免れるためには、引用する文章をパラフレーズするよう心がけましょう。こちらのビデオでは、英文をパラフレーズする際のアドバイスをご覧頂けます。

単語が5つ重複していると剽窃とみなされるかどうかについては、明確なことは申し上げられませんが、そのようにプログラムされた剽窃チェックソフトもあるかもしれません。米国研究公正局(ORI)には、剽窃を避けるためのガイドライン26ヶ条が掲載されています。そのうちのいくつかをここに紹介します。

第1条: 倫理的な著者は、他人の貢献や自分の考えの出所を常に明確にする。

第2条: 他の著作の原文と同じ文章を利用する場合は、引用符で括らなければならない。

第3条: パラフレーズや要約をするにせよ、引用符で括るにせよ、自分の文章に利用する場合、出典はすべて明確にしなければらない。

第4条: 自分の言葉でまとめたり要約したりする場合は、1段落であれ1文であれ、そこには相当量の内容が含まれていることを自覚する。

第5条: パラフレーズや要約をする場合には、情報の出典を必ず明記すること。

第6条: 他人の研究論文をパラフレーズしたり要約したりする場合は、自分の言葉と文体を使い、他人の考えや事実の意味を変えずに、正確に表すこと。

第7条: 適切にパラフレーズする目的で、元の論文の文章に多大な変更を加える場合、著者は使用されているアイデアや専門用語を完全に理解していなければならない。

第8条: 責任感ある著者は、読者および引用元の著者に対する倫理的責任を持ち、他人の考えと言葉に敬意を表し、引用・借用元の著者に対してその功績を認め、パラフレーズするときにはできる限り自分の言葉を用いること。

CrossCheck、iThenticate、eTBLASTは評判のよい剽窃チェックツールです。どれも高い評価を得ていますが、個人的には、長い間にわたって評価を保っているCross Checkが良いと思います。eTBLASTの剽窃チェックで問題なかったのであれば、あなたの論文はおおむね安全圏にあると言えると思います。しかし、ソフトによるチェックだけで100%確実とはいえません。ソフトで探知されなかった点に、査読者が気づくこともあります。とはいえ、eBLASTを問題なく通った論文なら、ジャーナルでの剽窃チェックでも問題が見つからない可能性は高いと思われます。

ジャーナル出版の舞台裏:査読者の選び方

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ジャーナル出版の舞台裏:査読者の選び方

編集者が論文原稿を査読に回す決定をした後の流れについてご紹介します。この段階での編集者の仕事は、査読候補者を選ぶこと、査読依頼のメールを送ること、依頼が断られた場合に備えて予備の査読候補者を選んでおくこと、そして必要な数の査読者に依頼を受け入れてもらえるまで、この過程を繰り返すことです。

本シリーズ第1回では、編集者(Associate Editor, AE)の仕事の概要についてお話ししました。また、編集者に論文を割り当てる方法や、査読に回すかどうかを決めるために論文をどう評価するのかについても述べました。今回は、編集者が論文原稿を査読に回す決定をした後の流れについてご紹介します。この段階での私(編集者)の仕事は、査読候補者を選ぶこと、査読依頼のメールを送ること、依頼が断られた場合に備えて予備の査読候補者を選んでおくこと、そして必要な数の査読者に依頼を受け入れてもらえるまで、この過程を繰り返すことです。


査読者を選ぶ

論文原稿の概要がわかり、査読に回すことが決まったら、次は何人かの査読者候補を選んで依頼することになります。論文を読んで理解したことを元に、その分野や関連分野で活躍している研究者について考えを巡らせます。過去に読んだ論文、目にした発表・プレゼンテーション、人との会話などを思い返し、そのテーマに合った適任者を選び出します。完全にぴったりという人がいなくても大丈夫です。例えば、技術の応用方法は珍しかったとしても、似たような技術を使用したことのありそうな査読者候補はいるはずだからです。

また、論文の中から査読者候補が浮かび上がってくることもあります。過去の研究で、特に多く引用されているものはないか? 過去の論文で発表された方法との比較を行なっているか? そういったことがあれば、それらの論文の著者に査読を依頼することができます。(ただし今回の論文の著者らと重複しないという条件を満たした上で)。検討を進めながら、さらに調査することもあります。論文中に、インターネットで検索できるようなキーワードや課題は含まれていたか?といった点に注意しながら、同じジャーナルに掲載された論文で似たテーマを扱ったものがないかを見ます。そのような著者なら、このジャーナルにお返しとして査読をする義理があると考えるからです。

しばらくあれこれ考えると、たいていは6人程度の査読者候補のリストができます。これらの人々についてさらに調査を行い、査読を依頼するのにふさわしい立場であるかどうかを確認します。依頼を送る前に、その人たちのウェブサイトがあれば確認し、論文のタイトルと領域、その分野で研究・論文発表を行なった年、現在の役職名と研究・仕事の領域等に目を通します。


査読者を選ぶときに、専門的な知識と見識以外に考慮するのは次のような点です。


他に深く関与している仕事があるか?

私は、大きな研究グループのリーダーや学部長など、研究の起ち上げに関わっている人は避けるようにしています。そのような人々は、査読にあたるには多忙すぎるからです。博士課程に在籍している大学院生は、査読者としてうってつけです。自分の研究分野に詳しく、他に期限の迫っている仕事はほとんどないはずだからです。しかし、個人的な推薦などがないと、その分野で適任といえる、査読者にふさわしい学生かどうかを判断するのは難しいこともあります。ですから査読の多くは、多忙すぎない、あるいは多忙だという自覚のない教員や研究者に割り当てられることになります。

ジャーナルを問わず、編集長や編集者への依頼は避けることにしています。自分たちのジャーナルへの投稿論文を処理するだけで大変なのが普通だからです。特に、同じジャーナルの編集者には依頼しません。


まだその分野で研究を続けているか?

編集者が大きく落胆するのは、非常に関連性の高いテーマで研究していた人を見つけたものの、その人の最新論文が20年近く前に発表されたものだとわかったときです。これは普通、その人が研究職を辞して転職したか、引退した、あるいはその分野の研究をやめてしまったということを意味します。私は、ある論文の査読者にぴったりの人を見つけたと思ったら、もう存命でなかったという経験が何度かあります。さて、査読者の調査分析に従って候補を3、4人に絞り、依頼のメールを送り始めます。ジャーナルによっては、必要な作業が書かれた依頼状のテンプレートが用意されていることもあります。私はこの依頼状に手を加えて、なぜ査読者になってほしいのかが伝わりやすいようにします。例えば、「あなたはこの論文のテーマに関する専門知識を持っていると思う」ということを説明します。このように個人に合わせたメッセージにすることで、査読依頼を受け入れてもらえる確率を上げようというわけです。依頼状では、再投稿の論文なのか依頼論文なのかを書いたり、学会発表で使った論文がベースとなっている、といったことについて書いたりすることもあります。

依頼状に投稿論文を添付することもあります。自分が査読を依頼されたときに論文にざっと目を通すことができれば、どれぐらい自分の分野と関連性が高そうか、どれぐらい時間を取られそうかなどを見定めることができて助かると思うからです。状況に応じ、他の査読者にもこのような機会を提供したいと思っています。ただ、技術的な内容が理解しにくいような長い論文は、敬遠されないように、あえて送らないこともあります。


査読依頼を断られたら

査読依頼をしても、断られることは避けられません。経験上、回答のおよそ半分は辞退です。理由は様々ですが、それがもっともであるかどうかは場合によりけりです。例えば、多忙である、そのテーマの専門家だという自覚がない、論文に興味を持てない、たまたまやる気がしない、などの理由が挙げられます。断られても気にしません(その査読者が適任だという確信があった場合は別です)が、不快感を持つことがあるとしたら、次のような場合です。

返信が遅い:査読依頼への返信に時間はかからないはずです。普通に働いていれば、2、3日で返信が可能なはずです。出張中や他のことで手一杯の状態でも、1週間程度で返信してほしいと思います。何週間も返信がなかった挙句に断わられると(それも、返信の催促を入れてようやく)、参ってしまいます。長い間返信がなく、その後依頼が受け入れられても、要注意です。なぜなら、査読そのものも同様に遅れる可能性があるからです。

他に査読候補者がいない:一番嬉しい返信は、素早く断りを入れながらも、他の査読者候補を提案してくれているものです。これは、その候補者が、依頼について検討し、自分は引き受けられそうにないと判断し、協力できそうな人を挙げられるほど考えてくれた、ということだからです。このような対応は、編集者が投稿論文の分野に明るくないときは、特にありがたいものです。自分が査読を引き受けられない場合は、本当にそのテーマについて無知でなければ、私も他の候補者を提案します。そのテーマの専門家に断られた場合には、他の査読者候補を提案してもらえないか、こちらから尋ねることもよくあります。ですから、査読依頼を断る場合は、他の候補者を挙げてもらえればと思います。


査読者を補充する

査読依頼が断られたら、さらに他の査読者に依頼をしなければなりません。バックアップの査読者をあらかじめ選んでいることもありますし、査読を断った人に提案してもらった査読者候補を利用することもあります。全員が依頼を受け入れてくれた場合を想定して、一度に依頼を進めるのは4人までと決めています。1つの論文に多くの査読者がいても無駄になってしまいます。それでも、さらに追加で査読者候補を探さなければないこともよくあります。この作業がおそらくもっとも手ごわいといえます。より知恵を絞って査読者候補を探さなければならないからです。たくさんの査読者候補に依頼を断られると、落胆せざるを得ません。最悪なのは、論文が非常に専門的なもので、査読候補者に選ばれて当然という人にはすでに声をかけている場合です。特に、断られた候補者に他の査読者候補を挙げてもらっても、すでに断られた査読者の名前しかあがってこない場合です。この段階で、編集者は、その論文を評価するのにふさわしい専門家を必要数見つけることは不可能ではないか?と感じることもあります。しかし、あきらめずに粘り強く作業を進めれば、必要な人数の査読者は揃うものです。


査読者に査読を引き受けてもらう

十分な数の査読者(通常3、4人)に依頼が受け入れられ、報告書の提出期限にも合意が得られたら、このプロセスの第一段階は終了です。ゆったりと一息ついて、査読報告書の到着を待ちます。

次回は、査読報告書が送られた後、論文に対する最終決定がどのように下されるのかについてお話ししたいと思います。


本記事は、Association for Computing Machinery, Special Interest Group On Management of Dataのウェブサイトに発表された記事、What does an Associate Editor actually do?の修正版です。本記事は著者の許可を得て、修正を加えて再掲載されたシリーズ記事の第2回です。続きもどうぞお楽しみに。

 

 

 


アムジェン社、ネガティブな研究結果を公表して科学の自己修正力を向上

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アムジェン社、ネガティブな研究結果を公表して科学の自己修正力を向上

製薬企業のアムジェン社は今年2月、期待通りの結果が得られなかった3つの研究を公表すると発表しました。その背景には、「未公開の実験が繰り返し行われて心許ない研究結果を出すという無為な状況を減らし、真のブレイクスルーに注力することで、基礎的発見を新薬に応用する過程を効率化・迅速化したい」との目的がありました。

米カリフォルニア州に本社を置く多国籍製薬企業アムジェン(Amgen)は、今年2月4日のプレスリリースで、期待通りの結果が得られなかった3つの研究を公表すると発表しました。このネガティブな結果は、(論文評価サイト)F1000(Faculty of 1000)が新たに立ち上げたプラットフォーム、Preclinical Reproducibility and Robustness(前臨床における再現性・頑健性)で公開されます。同社研究開発部門シニアバイスプレジデント(SVP)のサーシャ・キャム(Sasha Kamb)氏はこの決定の背景にある主な目的ついて、プレスリリースの中で「未公開の実験が繰り返し行われて心許ない研究結果を残すという無為な状況を減らし、真のブレイクスルーに注力することで、基礎的発見を新薬に応用する過程を効率化・迅速化したい」と述べています。


従来の公開方法では時間がかかるため、キャム氏が選んだのは、編集者が論文の内容を確認した後、査読の前にオンライン公開されるタイプのOAジャーナル、F1000Researchでした。これらの研究は、公開査読を経た後に査読者の推薦が得られれば、データベースに採録される可能性があります。F1000Researchの諮問委員会メンバーであるブルース・アルバーツ(Bruce Alberts)氏によると、Preclinical Reproducibility and Robustnessを開設したのは、公開されないことの多いネガティブな結果を研究者が共有することを促す意図があったと話しています


アムジェンは以前、再現性に関する議論の渦中にありました。同社の研究者は2012年、癌に関する画期的な論文53本のうち、47本が再現できなかったと断定しました。キャム氏は、今回の公開対象である3研究は、これらの論文とは関係ないものであることを明らかにしています。ネイチャーの記事にあるように、「1つ目の研究は、以前サイエンス誌に掲載された、癌治療薬がアルツハイマー病の治療に利用できる可能性を示唆した論文に対する批判論文を補強するもの、2つ目の研究は、ある遺伝子とマウスのインスリン感受性を関連づける過去の研究結果(アムジェンの研究者が行なった研究も含まれる)に異議を唱えるもの、3つ目の研究は、ある特定のタンパク質を抑制すると、神経変性疾患に関連する他のタンパク質の分解を増幅させるとするネイチャー論文への反論」ということです。キャム氏は、他社もアムジェンに追随してネガティブな研究結果を公表し、科学の進歩が促進されるようになることを望んでいます。

この取り組みには、支持を表明する研究者もいれば、懸念を示す研究者もいます。スタンフォード大学で再現性に関する研究に取り組むジョン・イオアニディス(John Ioannidisu)氏は、科学コミュニティはネガティブな結果や追試研究に対して依然としてオープンであるとは言えないと指摘しています。アムジェンの取り組みが成功するかどうか、今後が注目されます。


参考文献

If you fail to reproduce another scientist’s results, this journal wants to know (accessed February 5)

Biotech giant publishes failures to confirm high-profile science (accessed February 5)

著作権譲渡契約書への署名は、ジャーナル掲載日が確定してからでもいい?

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Question Description: 

論文が査読を通って受理され、掲載日の知らせを待っているところです。その間に、著作権の譲渡に関する通知を受け取りました。「ジャーナルのウェブサイトから著作権譲渡契約書をダウンロードし、署名して編集委員会宛に送付してください」というものです。この契約書送付の締切日はいつでしょう?論文掲載日が分かってから送付してもいいのでしょうか。

回答

著作権譲渡契約書の提出は、早いほうがよいでしょう。ジャーナルがこの契約書の提出を求めるのは、ごく一般的なことです。論文の受理後ではなく、論文投稿時に提出を求められることもあります。これは、論文の掲載が決まった場合に著者が著作権を譲渡する意思があるかどうかを確認するために、普通に行われることです。投稿時に提出が求められた場合は、論文がリジェクトされれば意味を持たなくなり、無効となります。

ジャーナルは、あなたがサインした著作権譲渡契約書を受け取ってから掲載日を決定しようと考えている可能性も高いと思われますので、なるべく早く署名して提出した方がよいでしょう。論文が受理されたのですから、まもなく掲載されるのは確実です。

効果的な抄録を書くべき理由:ケーススタディ

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効果的な抄録を書くべき理由:ケーススタディ

カバーレターと抄録は、ジャーナルの最初の選別段階を通過するための要です。編集者が最初に読むのはカバーレターと抄録なので、論文に対する印象はこれらによって決まります。

事例: あるジャーナルに論文を投稿した著者は、数日後にリジェクトの知らせを受けて大変がっかりしました。論文ステータスを見ると、論文は編集者の判断だけでリジェクトされ、査読には回されなかったことが分かりました。リジェクト通知には、「既存文献に加えるべき有意義な貢献に欠ける」と書かれていました。しかし著者は、その研究結果に価値があることを確信していました。その論文は、何ヶ月もかけて行なった大掛かりな研究の成果を報告するもので、指導教官もその研究の意義を認めていました。著者は、論文が査読に回されなかった理由に納得できず、編集者が抄録を読んだだけで判断しており、論文全体を読んでいないと感じました。著者は、論文全体を読んで判断してもらえるように依頼すべきかどうか、エディテージ・インサイトに相談しました。


対応: エディテージは、ジャーナル編集者は最初の選別段階では論文全体を読む時間がないこともあり、タイトルと抄録のみで判断するのはよくあることだと著者に伝えました。そして、タイトルと抄録が十分に説得力のあるものだったかどうかを尋ねました。著者は、タイトルが少し分かりにくかったかもしれないと認め、エディテージの意見を聞くためにタイトルと抄録を送ってきました。抄録を読むと、方法と結果はうまくまとまっていましたが、背景や目的が分かりにくいために、結果が明瞭でないことが分かりました。

そこで著者には、抄録が弱いために論文がリジェクトされた可能性があることを伝え、別のジャーナルに論文を投稿するようアドバイスしました。ただしその前に、タイトルと抄録を書き改めるよう強く勧めました。それらに目を通すだけで、研究の新規性が分かるようにするのです。また、カバーレターについても、研究の意義と、ジャーナルの対象読者にもたらされる利益が明確に伝わる内容にした方がよいと伝えました。カバーレターと抄録は、編集者に興味を持ってもらえるよう、強い印象を残すように書かかなければなりません。著者は我々のアドバイスを聞き入れ、タイトル、抄録、カバーレターを書き直してから別のジャーナルに送りました。今度は最初の選別過程を通り、査読に回されました。


まとめ:カバーレターと抄録は、投稿の際に提出する書類の中でも非常に重要なもので、ジャーナルの最初の選別段階を通過するための要です。編集者が最初に読むのはカバーレターと抄録なので、論文に対する印象はこれらによって決まります。興味深い論文だとみなされなければ、全文を読むことなく、カバーレターと抄録だけで決定を下す編集者もいます。抄録とカバーレターは最後に書かれることも多く、投稿を急ぐ著者はこれらに十分な時間をかけないこともよくありますが、抄録は十分に時間をかけて書き、論文タイトルは魅力あるものを検討すべきです。またカバーレターは、単なる論文の要約ではありません。新規性に重点を置きながら研究の意義を強調し、ジャーナルの読者がその論文に興味を持つと思われる理由を説明し、論文を売り込みましょう。


こちらの記事やビデオもご覧ください:

著者名の変更は出版物にどう反映される?

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Question Description: 

私は最近、中国名から英語名に氏名を変更し、苗字も名前も変わりました。今、研究論文を書いています。著者リストでは、英語名を使っても構わないでしょうか? 中国名で書いた出版済みの論文がありますが、過去の出版物の氏名も変更できるでしょうか? 英語名を使い始めると、過去の出版物が自分の業績に反映されないのではと心配しています。

回答

研究の途中で氏名が変わる研究者は珍しくありません。今書いている論文では、「以前の氏名はXXX」と脚注をつけた上で英語名を利用すればまったく問題ありません。こうすれば、過去に中国名で書いた出版物があなたの著作であることをはっきりさせることができますし、過去の論文が業績として認められないという問題にも対処できます。


過去の出版物の氏名を変更できるかどうかは、あいにく分かりません。氏名の変更を依頼するのは非倫理的行為ではありませんが、編集者は必ずしもその必要性を認めないかもしれません。ジャーナル編集者は通常、このような問題が浮上すると、その必要性について検討します。例えば結婚や離婚など、著者が氏名の変更を依頼する確固とした理由があれば、編集者はたいてい合意し、正誤表(erratum/corrigendum)で訂正します。ジャーナル編集者にメールを書き、過去の出版物の氏名を変更できるか聞いてみてもよいでしょう。身分証明書を添えて、依頼の理由を説明しましょう。必要性が十分にあると認められれば、合意してくれるかもしれません。


また、新たな論文を投稿する際は、将来面倒なことにならないよう、ORCIDを使うとよいでしょう。ORCIDのレジストリは、研究者に無料で固有の識別子を提供しています。たとえ氏名が変わっても、ORCID識別子が変わることはありません。

ハゲタカ出版社から研究を守るためのシンプルな方法

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ハゲタカ出版社から研究を守るためのシンプルな方法

ハゲタカ出版社の唯一の目的、それは利益です。論文が受理され、著者が出版社への著作権譲渡に同意する文書にサインした後に、初めて論文処理費用が明らかになることもよくあります。ハゲタカ出版社に論文を投稿しないためにはどうしたらよいでしょうか。

[本記事はウォルターズ・クルワー(Walters-Kluwer)社の著者向けニュースレター、Author Resource Reviewに掲載されたものを、許可を得てここに再掲載したものです。]


一見まともにみえるジャーナルから、論文を投稿しないかという招待メールが送られてくることがよくあります。聞いたことのあるジャーナル名で、編集委員会にはまっとうな経歴を持つ専門家がいて、インパクトファクターも上位というジャーナルさえあります。このような招待は、都合の良い査読・出版条件を約束しているので、魅力的です。もし私が新米研究者で、論文発表への意欲が高く、出版業界の基準をよく知らなかったなら、招待に応じてしまうかもしれません。いざ投稿する段になって、高額な論文処理費用を支払わなければならないことを知り、その上論文はほとんどまったく宣伝されないと分かって、愕然とすることでしょう。かくしてまた一人、ハゲタカ(悪徳)出版社の餌食が増えるのです。


2009年、コロラド大学デンバー校のジェフリー・ビオール(Jeffrey Beall)氏は、このような悪徳出版社への抗議活動を始めました。同氏はScholarly Open Access (www.scholarlyoa.com)を開設し、出版社やジャーナルがまともな組織であるか悪徳組織であるかを判別する基準を定め、ハゲタカ出版社やハゲタカジャーナルのリストを整備しています。昨年8月、ビオール氏は看護学ジャーナルの編集者が構成する国際団体、INANE(International Academy of Nursing Editors)の年次総会でその成果を発表しました。これに感銘を受けた編集者グループは、看護コミュニティの意識を高めようとINANE Predatory Publishing Practices Collaborative (INANEハゲタカ出版事例同盟)を設立しました。同年9月、この同盟はハゲタカ出版に関する記事をNurse Author and Editorに掲載し、編集者に「この話題を広く知らしめて」読者を啓発するよう呼びかけました。(この記事はhttp://nursingeditors.com/で登録すれば無料で読むことができます。)


ハゲタカ出版社は、比較的新しいOA出版のモデルを巧妙に利用します。このモデルでは、著者または研究助成機関が出版社に料金を支払うことで、論文への無料アクセスや「公開」を可能にします。OAはまっとうな出版モデルであり、今では権威ある出版社やジャーナル(American Journal of Nursingを含む)もOAのオプションを著者に提供しています。ただし、まともな出版社は、規定の査読から受理に至るまでの厳しい審査過程を経て論文を公開します。一方のハゲタカ出版社では、形だけの査読でしかない場合や、まったく査読がないということさえあります。


ハゲタカ出版社の唯一の目的、それは利益です。論文が受理され、著者が出版社への著作権譲渡に同意する文書にサインした後に、初めて論文処理費用が明らかになることもよくあります。この結果、確実に次の事態が生じることになります。1. 研究論文は事実上の担保として取られ、処理費用(1000ドル以上のことが多い)が支払われない限り出版されない。2. 偽査読のため、論文が出版されても学術的信頼性に欠ける。


ハゲタカ出版社に論文を投稿しないためにはどうしたらよいでしょうか。INANEの同盟は、以下のことを推奨しています。

  • ビオール氏のハゲタカ出版社リスト(www.scholarlyoa.com)を参照する。(定期的にアップデートされている。)
  • 「質の高いOA査読ジャーナルを採録し、それらへのアクセスを提供している」OAジャーナルディレクトリ(Directory of Open Access Journals、http://doaj.org)を参照する。
  • 定評ある看護学ジャーナルに関するINANEのディレクトリ(http://nursingeditors.com/journals-directory)を参照する。
  • 掲載されているインパクトファクターやランキングを検証する


INANEの同盟はまた、ジャーナルの整合性を疑うべき「注意信号」をいくつか挙げています。それは、次のような場合です:論文投稿の勧誘やゲスト編集者としての招待に際して過剰な美辞麗句が並べ立てられている、ジャーナルの連絡先が不明、編集者の専門性や専門家としての立場を証明できるものが見当たらない、投稿から出版までを異例の短期間で約束している(1ヶ月以内など)、ジャーナル名が漠然としている(例えば“The Journal of Care”など)、有名ジャーナルに酷似している、等。


American Journal of Nursingは、INANEの取り組みを支持しています。米国医学研究所(Institute of Medicine)の2010年版レポート「看護の未来:変化を主導し、健康を推進する」(The Future of Nursing: Leading Change, Advancing Health)で勧告されているように、学士以上の学位を目指し、学術論文を出版しようとする看護師が増えているため、これは非常にタイムリーな取り組みだと言えます。これらの看護師たちには、出版プロセスを歩んでいく上で、教員やメンターたちの助けが必要です。


INANEの同盟はこう述べています。「偽学術活動の蔓延により、この分野の信用性を損なうようなジャーナルや論文が出版市場に溢れてしまう可能性があります。医療分野において、この脅威は一層深刻です。ハゲタカジャーナルで公開される偽科学と脆弱な学問は、ともすると患者や医療情報を求める一般の人々に被害を与える結果となる可能性があるからです」。ハゲタカ出版社の脅威は、著者だけでなく、すべての医療提供者、患者、医療消費者にまで及びます。各専門分野における文献の完全性が保てるかどうかは、我々一人一人の手中にあるのです。

IETは世界の工学コミュニティにどのように情報を提供し、刺激と影響を与えているか

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IETは世界の工学コミュニティにどのように情報を提供し、刺激と影響を与えているか
イアン・ストーンハム (Ian Stoneham)氏は、工学技術コミュニティのニーズに対応する最先端の国際的専門学会、英国工学技術学会(The Institution of Engineering and Technology, IET)出版部の発行人で、IETの研究や速報を扱うジャーナルおよび学術書籍全般を統括しています。その中には、ハイブリッドの研究ジャーナルが27誌、完全なOAジャーナルが1誌、専門的参考書籍シリーズ、会議録が含まれます。また、工学分野のアブストラクトと索引のデータベースであるInspecのコンテンツ採録戦略の管理も行なっています。ストーンハム氏は20年以上に渡って様々な出版業務に携わり、最近では、Faculty of 1000 や CMG/Springer Healthcareの出版にも関わっています。また、マーティン・ダニッツ(Martin Dunitz)社とテイラー&フランシス社では販売にも携わりました。

イアン・ストーンハム (Ian Stoneham)氏は、工学技術コミュニティのニーズに対応する最先端の国際的専門学会、英国工学技術学会(The Institution of Engineering and Technology, IET)出版部の発行人で、IETの研究や速報を扱うジャーナルおよび学術書籍全般を統括しています。その中には、ハイブリッドの研究ジャーナルが27誌、完全なOAジャーナルが1誌、専門的参考書籍シリーズ、会議録が含まれます。また、工学分野のアブストラクトと索引のデータベースであるInspecのコンテンツ採録戦略の管理も行なっています。ストーンハム氏は20年以上に渡って様々な出版業務に携わり、学術出版業界の事業運営および事業管理に対する理解を深めました。最近では、Faculty of 1000CMG/Springer Healthcareの出版にも関わっています。また、マーティン・ダニッツ(Martin Dunitz)社とテイラー&フランシス社では販売にも携わりました。


全2回のインタビューシリーズ第1回目の今回は、IETの展望、使命、学術出版関係者向けサービスについて詳しくお聞きしました。IETの目的は、現代の工学研究者や技術者に、コンテンツやデジタル形式の機能・ツールなどの各種サービスや製品を提供することです。ストーンハム氏は、これらの主要な目標をIETが達成する方法について語ってくれました。


IET出版部の概要について教えて頂けますか?IET出版部の特徴を3つ挙げるとしたら、何でしょうか。

IET出版部は、工学研究者や技術者の研究と情報のために、高品質で内容豊富な工学・科学・技術分野の情報源を提供しています。IETのリソースは、IET.tv、Inspecデータベース、電気規格・基準認証に関する出版物、E&T magazine、研究ジャーナル、会議録、専門的な参考書籍など、印刷からデジタル、映像に至る全メディア形式を網羅しています。IETのジャーナル29誌では、レター・研究・OAジャーナルの形式を扱っており、電気・電子工学、コンピューター、制御、医療技術、コミュニケーション技術の各分野を包括的に網羅しています。IET出版部の目的は、現代の工学研究者のニーズに合ったコンテンツやデジタル形式のプログラム機能・ツールを、様々なサービスや製品として提供することです。IETの使命は、「グローバルな工学コミュニティに情報を提供し、刺激と影響を与えて、社会のニーズに合った技術革新を支援する」というもので、すべての出版活動はこの使命を遂行するために行われています。弊社のジャーナル・書籍・参考書・雑誌にはインテリジェント工学のコンテンツもありますが、これは情報を提供し、刺激と影響を与えるというIETの使命を達成するためです。


著者がIETのジャーナルで論文を発表するメリットは何でしょうか。

IETデジタルライブラリー(IET Digital Library)を通して、論文を世界の幅広い読者の目に触れさせて、発見され引用される機会を得られることがメリットではないでしょうか。IETデジタルライブラリーは、研究者に多くの利益をもたらします。弊社から出版した著者は全員、出版後6ヶ月間、自分の論文に無料でアクセスできるリンクをもらえます。さらに、論文が出版される号の刊行を待たなくても、準備が整い次第すぐに論文をオンライン掲載する「e-first」出版という形式があります。この形式でも、論文の閲覧や引用が可能です。ですから、IETで出版することで、論文の露出度が世界規模で高まり、よりアクセスしやすくなるはずです。


IETデジタルライブラリーについてもう少し詳しく教えていただけますか?

もちろんです!IETデジタルライブラリーは、主にジャーナル、電子書籍、会議録などの多くの出版コンテンツが収録されているオンラインプラットフォームで、頻繁にアップデートや拡張が行われています。取り扱っているテーマはIETらしいもので、アーカイブには、古くは1872年のものから、全部で15万本以上の論文が収録されています。コンテンツは、購読ベース、無料、OA、あるいは閲覧毎の支払いでアクセスが可能です。デジタルライブラリーのインターフェースはユーザーフレンドリーで、情報の迷路をさまようことなく、必要な文献をぴたりと見つけることができます。私たちは、発表された研究論文を、見つけやすくアクセスしやすいものにしようと考えているのです。


IET Inspecとは何ですか?どのような仕組みでしょうか。

IET Inspecはアブストラクトと研究のデータベース索引で、物理学、電気・電子工学、コンピューターと制御、情報技術、生産、製造、機械工学、その他多くの学際分野の110年以上の情報を網羅しています。出版形式はジャーナル、会議録、書籍、ビデオがあり、最近では学位論文も含まれています。IET Inspecは、これらの分野の研究を発見されやすくする、最も信頼性の高い情報源です。工学コミュニティにおけるグローバルなリソースとして、各領域内の専門性、品質と評価、コンテンツのインパクト、知的選別機能においては、他の追随を許しません。また、一貫性を保ちつつ進化を続けるサービスを確実に提供できるよう、専門家による分類・索引化が行われています。1600万件以上のデータを収録する豊富なコンテンツだけでなく、必要な重要情報の手がかりを手軽に素早く検索し、その所在を容易に探し当てて利用することができる点が魅力でしょう。タイムズ紙によると、Inspecは、世界ランキングで上位100位に入っている工科系大学のうち、76大学で利用されており、企業や政府機関のユーザーからも高い評価を得ているということです。


専門的学術団体としてのIETの使命は「グローバルな工学コミュニティに情報を提供し、刺激と影響を与えて、社会のニーズに合った技術革新を支援する」というものですが、この使命の下、IETはどのように進化したのでしょうか。

IETは、2006年にInstitute of Electrical Engineers (IEE) とInstitute of Incorporated Engineers (IIE)の合併によって生まれました。以来、私たちは電気エンジニアの基盤から始まり、工学の応用分野全体をカバーするようになりました。最新の取り組みであるThe Journal of Engineeringは、土木工学や機械工学を含む全領域を扱うジャーナルです。また、医療分野での工学・技術の進展を扱うHealthcare Technology Lettersもあります。The Journal of Engineeringは、研究者のOA出版を資金援助するようにという英国政府の方針を受け、OAジャーナルとして開始しました。このジャーナルによって、従来の方法で論文を発表するだけでなく、初期段階にある研究やケーススタディ、レビュー論文を新たな方法で発表できる道が研究者に開かれました。また、そのような論文にオンラインでアクセスすることも可能となりました。

さらに、弊社のビデオ・プラットフォーム(プログラム)であるIET.tvは、プレゼンテーション、セミナー、学会発表などを一部無料で提供しています。研究者は、必要に応じて料金を支払えるプリペイド方式(トークン)のKnowledge Packsを利用することもできます。この方法では、購読せずに必要に応じてコンテンツにアクセスすることができます。共同出版協定を結ぶことによって、研究者に提供できる新しいコンテンツや書籍のプログラムも増えており、IETは様々な方法でその使命を達成しようとしています。


今後数年間のIETの出版計画には、どのような展開や変化が期待できそうでしょうか?

私たちは専門家団体として、価値ある各種コンテンツを統合できる新しい方法を常に探しています。

例えば、最近開始したIET.tvという最先端のプラットフォームでは、約8000本にのぼる工学関連のプレゼンテーション、ビデオ、セミナーの視聴が可能で、アクセスも簡単です。ウェブサイトのデザインは、反応性と順応性に優れています。コンテンツの多様さ、利用可能なメタデータの水準など、すべての面において、あらゆる種類の研究や情報にエンドユーザーがアクセスしやすいよう気を配っていることがお分かり頂けると思います。

現在、IET Inspecの見直しも行なっています。すでに40年以上の歴史がありますが、定期的にレビューを行なって、現代の市場に適応していることを確認しています。シソーラス(類語辞典)の統合性を維持するために、アブストラクトの流れができるだけ効率的になるようにし、研究者が目当てのものをより一層簡単に見つけられる検索機能にできるよう努力しています。

重要な研究を広めて見つけられやすくするツールを著者や研究者に提供したい、というのが我々の願いです。(世界中の研究者と協力しながら、出版された研究の可視性とインパクトの最大化に努めている)Kudosエディテージとの提携により、IETから出版するメリットはさらに増えています。

先に述べたように、最近、論文が出版された著者全員に「著者URL」(“author url”) を送付することになりました。著者は、6ヶ月間はそのリンクを誰にでも送ることができ、そのリンクがあれば、該当するコンテンツに無料でアクセスすることができます。私たちは、研究者と積極的に関わってフィードバックをもらい、研究での利用や引用に関する支援を行なっています。

また、工学コミュニティのニーズにさらに迅速かつ包括的に応えるため、IET出版部は他の組織や専門機関との戦略的な提携を進めています。国際的な側面を強化する手段として、中国電子学会(Chinese Institute of Electronics)と提携してthe Chinese Journal of Electronicsを発行しました。また、IET と中国電力科学研究院(China Electric Power Research Institute、CEPRI)との提携から生まれた新規OAジャーナル、High Voltageはまもなく発行されるので、とても楽しみにしています。このように、IETでは様々な新しい取り組みが始まっており、私も胸が高鳴るような新しい展開に注目しています。

 


これでインタビュー第1回は終了です。次回は、現在の学術出版の傾向についてストーンハム氏の見解を伺います。


情報開示:エディテージはIETと提携し、IETのジャーナルに投稿する著者に英文校正・編集サービスを割引料金で提供していますが、本インタビューはエディテージ・インサイトによって独自に行われたものであり、金銭的な利益相反はありません。

国際論文よりも国内論文の引用文献が多くても大丈夫?

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Question Description: 

PLOS ONEに研究論文を投稿しようと思っているのですが、国内ジャーナルに掲載された論文から多くの引用を行いました。結果的に、国際ジャーナルに掲載された論文よりも、国内ジャーナルに掲載された論文の方が多くなってしまいました。それが理由で論文がリジェクトされてしまう可能性はありますか?

回答

あなたの研究テーマが極めて壮大なもので、それに関する研究が世界的に活発に行われてきた場合(例えば卵巣がんなど)、引用文献に国内・国際論文の両方がバランスよく含まれていることが重要です。


しかし、あなたの研究テーマがある地域に特有のもので、国際的に広く研究されているものでないのであれば、参考文献に国内論文が多く含まれていても問題ありません。ただし、利用した文献が比較的最近のもので、被引用数も相応にあることを確認する必要はあるでしょう。


著者の貢献度に関する文書はどうやって準備すればいい?

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Question Description: 

論文投稿時に「著者の貢献度(Authorship Contribution)」を示す文書の提出を求めているジャーナルがあります。でも、ジャーナルのウェブサイトには特定の書式や規定が見当たりません。どうすべきでしょうか? 用意した「著者の貢献度」の文書がジャーナルの要求を満たしているかどうかを確かめるには、どうすればよいか教えてください。

回答

複数の著者が執筆した論文の場合、各著者の貢献度について述べた文書の提出を求めるジャーナルは多くあります。規定の書類や書式(テンプレート)を用意しているジャーナルもありますが、著者に任されている場合もあります。著者の貢献度に関する書式を提供しているジャーナルを、オンラインで探してみるとよいでしょう。それを参照すれば、何を含めればよいか分かるはずです。例えばこちらの書式(テンプレート)などを参考にするとよいでしょう。


ICMJE統一投稿規定の著者資格(オーサーシップ)の規定によると、必要なのは、各著者がどのように論文に貢献したのかを明確にすることです。下記の役割や作業を各著者の名前と対応させてリストにするとよいでしょう。

  • 研究の着想またはデザイン
  • データ収集
  • データの分析と解釈
  • 論文の執筆
  • 論文の重要な修正
  • 最終稿の承認


最後に、全共著者の名前が書かれていることを確認しましょう。著者の貢献度に関する文書が用意できたら、投稿する前に全員にサインをもらうことをお忘れなく。

一流医学論文で女性の第一著者が増加

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一流医学論文で女性の第一著者が増加

ある論文で、一流医学誌の原著論文で女性の第一著者が増えていることが報告されています。1994年には27%だった女性第一著者の割合は、2014年には37%に増加していました。しかし、気がかりな傾向も見られます。

論文「影響度の高い医学誌における女性第一著者の傾向と比較:観察研究 (1994-2014)Trends and comparison of female first authorship in high impact medical journals: observational study (1994-2014))」で、一流医学誌の原著論文で女性の第一著者が増えていることが報告されています。


筆頭著者のジョバンニ・フィラルド(Giovanni Filardo)氏をはじめとする研究グループは、2012年版Journal Citation Reportsの「医学、一般・内科」カテゴリーから、インパクトファクターの高かった医学誌の上位6誌を選びました。この中にはAnnals of Internal MedicineArchives of Internal MedicineThe BMJJAMAThe LancetNew England Journal of Medicine (NEJM)が含まれます。そして、第一著者に占める女性の割合を見るために、1994~2014年に出版された論文3860本のデータを集めました。その結果、女性研究者による論文が急激に増加していることが分かりました。1994年には27%だった女性第一著者の割合は、2014年には37%に増加していました。


しかし、残念なことに、The BMJNEMJなど、近年女性著者が減少しているジャーナルもあることが報告されています。また、米国や英国では男女ほぼ同数が医学校に入学するものの、医学部教員に女性が占める割合は30%以下と、男性に比べて少なくなっています。さらに、EUの医学校で指導的立場にある上級職に女性が占める割合は20%以下です。一流ジャーナルや医学校の上級職で女性の割合が少ないという傾向は気がかりです。著者らは、「将来の保健医療政策や臨床業務の基準を決定するエビデンスに、女性が影響を与えたり貢献したりすることを促すような方法や戦略を見極めるため」、男女格差の背景にある理由を調査することが必要だろうと述べています。


ジェンダー格差が存在するゆがんだ状態は学術界でも盛んに議論されているトピックですが、本調査は、この問題に新たな視点を提供していると言えるでしょう。


参考記事:

More women publishing top medical papers (accessed March 8, 2016)

The gender gap in first authorship of research papers (accessed March 8, 2016)

英国バイオバンクが世界最大の生物医学画像研究を開始

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英国バイオバンクが世界最大の生物医学画像研究を開始

非営利の生体データレポジトリである英国バイオバンクが、世界最大の内臓スキャン画像のデータベース構築計画を発表しました。このプロジェクトでは、磁気共鳴画像法(MRI)などの標準的な技術を用いて心臓・脳・脂肪・骨・動脈の画像を集め、癌、認知症などの発症のメカニズムや原因について理解を深めることを目的としています。

非営利の生体データレポジトリである英国バイオバンク(UK Biobank)が、世界最大の内臓スキャン画像のデータベース構築計画を発表しました。このプロジェクトでは、磁気共鳴映像法(MRI)などの標準的な技術を用いて心臓・脳・脂肪・骨・動脈の画像を集め、癌、認知症などの発症のメカニズムや原因について理解を深めることを目的としています。


英国バイオバンクは、「生命に関わる重度の疾病の予防・診断・治療を改善すること」を目的として、ウェルカム・トラストの医療慈善事業部と医療研究評議会(Medical Research Council)によって2006年に設立されました。血液やDNAサンプル、生活習慣や身体活動レベルに関する情報など、現在までに15万人からデータを収集しています。4300万ポンドを投じる今回の新規試験プロジェクトでは、健康な人と健康に問題のある人の両方を含めた35万人のボランティアにスキャンを実施する計画です。得られた情報からは、発病のきっかけとなる危険因子と、病気の進行を阻止するためのこれらの因子の管理方法について、新たな洞察と視点を獲得できることでしょう。


プロジェクトに対する見解を述べたインペリアル・カレッジ・ロンドンのポール・マシューズ(Paul Matthews)教授は、「得られたデータは新しい治療法の発見に役立つでしょう。例えば、アスピリンが癌の予防に有効だと分かったように、すでに我々の周りにあってもその有効性が認識されていない事柄の発見につながると思います。とてもエキサイティングな取り組みです」と語っています。本プロジェクトのデータレポジトリは、全世界の研究者が利用することができます。


参考記事:

U.K. begins world's largest biomedical imaging study

UK Biobank launches world's biggest body scanning project

World's largest medical imaging study will scan 100,000 Britons

ブラジル政府が臨床試験前の抗がん化合物を合法化―研究者らは憤慨

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ブラジル政府が臨床試験前の抗がん化合物を合法化―研究者らは憤慨

ブラジルで、臨床試験が行われていない抗がん化合物である合成ホスホエタノールアミンの製造と販売が合法化され、がん患者は、処方箋なしでこの化合物を入手できることになりました。この状況に、ブラジル人研究者らは激しい怒りを表しています。

ブラジルのジルマ・ルセフ大統領は、臨床試験が行われていない抗がん化合物である合成ホスホエタノールアミンの製造と販売を許可する法律に署名するという、驚くべき行動に出ました。同法は4月14日から施行されており、がんと認定された患者は、処方箋なしでこの化合物を入手できるようになっています。同法は、「この薬のがん治療の有効性は研究で証明されていない」とするレポートが科学技術省から出された後に施行されました。ルセフ大統領の決定は、安全性と有効性について国際的に認められたプロトコルに基づいて新薬の承認を規制するブラジル国家衛生監督庁の権威を否定するものであり、ブラジル人研究者らは激しい怒りを表しています。


この化合物は、がん患者からは「特効薬」として多くの需要があります。その開発は、1990年代初期にサンパウロ大学の分析化学者であったジルベルト・シャリース(Gilberto Chierice)氏によって行われました。同大学の研究室は、合法化されていないこの薬を何年にも渡って患者に支給してきました。大学がこれを中止しようとしたところ、患者側が訴えを起こし、さらにはこの薬の入手が可能になるよう、政府にも強い圧力をかけました。ルセフ大統領は、政治的圧力に負けて今回の法案を通したという見方が有力です。ブラジリアのブラジル臨床腫瘍学会 (Brazilian Society of Clinical Oncology)会長であるグスタボ・フェルナンデス(Gustavo Fernandes)氏は、今回の動きに不快感を表明し、「救世主を求める偽科学の勢いに押された形の政治的決定」であり、「この問題を解決する上で最悪の方法」と述べています。


この化合物について、動物実験では有効性を示唆する結果もありますが、ヒトでの有効性を証明する前臨床試験や臨床試験は行われていません。これを服用する患者の中には、良好な結果を報告する人もいれば、効果がなかったという人もいます。標準的な治療方法よりもこの化合物を望む患者もいる状況に、研究者たちは懸念を表明しています。


合法化されたとはいえ、この化合物の製造が許可されている設備が不足しているので、患者による入手は困難です。この薬に本当に効果があるのか、また未知の副作用はないのかを確かめるため、臨床試験の実施を望む研究者もいます。


参考記事:

Brazil president signs law legalizing renegade cancer pill

Brazilian law grants patients right to use untested cancer ‘drug’

論文にはいくつぐらいの参考文献を含めるのが一般的?

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Question Description: 

国際ジャーナルに論文を投稿する際、参考文献はいくつぐらい含めるのが適当だと考えられているのでしょうか。引用文献の標準的な数に関する統計などはありますか?また、学会発表を引用文献として利用するのは一般的ですか?それから、会議録(conference proceedings)とは正確にはどういう意味でしょうか。回答をお待ちしています。

回答

参考文献の数について、標準とされる具体的な数字や範囲は特にありません。論文に必要かつ十分なだけの数を参考文献として利用すべきです。利用する参考文献の数は、研究テーマに関する文献がどれくらい存在するかで決まってきます。ごく新しい、独自のアイデアについての研究であれば、引用できる文献は少ないかもしれませんし、繰り返し研究されてきたテーマについての研究であれば、参考文献は多くなるでしょう。また、論文の種類によっても変わってきます。例えば、レビュー論文の参考文献は多くなる傾向があります。


参考文献の数に上限を設けているジャーナルもありますが、それはそのジャーナルに限ったものでしかなく、論文の種類やワード数などの様々な要素によって定められたものです。標準的な数を示す統計はありませんが、2500~3000ワードの原著論文で、参考文献数の上限が50または60というジャーナルをいくつか見たことがあります。


会議録(conference proceedings)を論文に引用することはごく一般的です。会議録とは、学会に提出され、発表された学術論文集のことで、各学会に参加した研究者たちの論文が収録されています。
 

ご参考までに、その他のQ&Aもご紹介します:

How should I cite a reference that I found in a paper?(論文でみつけた参考文献をどのように引用すればいい?)
引用をする場合の著者の責任は?
ソーシャルメディアからの情報を学術論文に引用する方法
参考文献をきちんと書く:情報源としての書籍の引用

 

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