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二重投稿についての質問

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Question Description: 

1つの症例で、まったく違う分野の新知見が2つありました。症例報告を書く際に、同一の報告でまとめるには話がまとまりにくいため、別々に記載しようと思っています。それぞれの新知見別に2つの論文として記載しjournalへ投稿することは二重投稿にならないのでしょうか?また、別々に記載して投稿することをしてもよいのでしょうか?

回答

二重投稿についてのご心配、よく分かります。しかし、2つの異なる結果を別々の論文にまとめてジャーナルに投稿するのであれば、それは二重投稿とはみなされません。二重投稿とは、すでに発表済みの論文を、再び投稿して出版しようとすることです。

 


ただし、同じ研究から得られた異なる結果を別々に報告する場合は、「サラミ出版」につながる懸念があります。サラミ出版は非倫理的な出版行為で、1つの論文として何ら問題なくまとめられる研究を、複数の論文に分割することを指します。とはいえ、目的、結果、仮説がまったく異なるものであれば、同じ研究からの異なる結果を、異なる2誌で受け入れてもらうことは可能です。

 


2つの結果を異なる2誌に投稿する場合は、目的、得られた結果、仮説が、確実に異なっていることを確認しましょう。

 


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アメリカ化学会への論文投稿ついて

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Question Description: 

4月上旬にアメリカ化学会のジャーナルAにACS Paragon Plusから論文を投稿しました。しかし直ぐにエディターから「うちには合わない」と姉妹誌(ジャーナルB)への転送を推薦されました。4月中旬にメールで転送を受入れる旨を伝え、フォーマートを整えた後にACS Paragon PlusからジャーナルBに投稿しました。2日後にシステム上でComplete Journal Publishing Agreementを提出しました。しかし投稿後6週間が経ちますが、システム上のステータスには変化がありません。査読は進んでいるのでしょうか。もうすぐ博士課程の学位申請の締切があるため、早く結果を知れたらと思っています。問い合わせる場合、どのように聞けばよいのでしょうか。よろしくお願いします。

回答

査読期間はジャーナルによって異なり、原稿の専門分野、査読者の空き具合、1年間に出版される号数にもよります。平均的な査読期間は48週間ですが、ジャーナルの都合や上記のような要素により、この期間は長くなることも短くなることもあります。通常は、原稿が査読に回されると、投稿システムのステータスは「Under review(査読中)」などの表示に代わります。投稿してからまったくステータスが変わっていないのであれば、ジャーナル編集者にメールで問い合わせてみましょう。6週間を超える査読期間はとくに珍しくはありませんが、今回は急ぐ事情があるとのことなので、問い合わせてみるのが得策でしょう。こちらの記事に、論文の最新状況をジャーナル編集者に問い合わせる際の参考になるテンプレートが載っています。


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発表した論文がPubmedの検索で見つからないのですが、なぜでしょうか?

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Question Description: 

Edoriumという出版社に論文を発表しましたが、Pubmedで検索できません。まだ新しい出版社のようですが、何か関連があるのでしょうか?ご教示いただければ幸いです。

回答

PubMedに論文が登録されるには、その論文を出版したジャーナルがMedlineに収載されている必要があります。そのジャーナルがMedlineに収載されていないのであれば、出版論文はPubMedでは検索できません。

 


Edorium社のジャーナルの収載状況によると、Medlineに収載されているジャーナルはないようです。したがって、これらのジャーナルで出版された論文は、PubMedでは検索できません。 Medlineに収載されているジャーナルのリストは、こちらのデータベースから確認できます。

 


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時代の先端を走るために一流大学がしていること

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時代の先端を走るために一流大学がしていること

世界中の大学が、研究の可視性を高める取り組みに力を入れています。大学が、研究結果を論文にまとめてジャーナルで発表することにとどまらない取り組みを行うよう研究者に働きかけ、研究コミュニケーションを積極的に促している状況を紹介します。

知識を絶え間なく発展させ、普及させている研究のハブと聞いて、ほとんどの人が思い浮かべるのが、大学でしょう。大学という学術機関は、高等教育をほどこし、研究を支えるインフラを持ち、学術界で特別な位置を占めています。各分野のブレイクスルーを先導する立場にあることから、大学は、学術界で強い影響力を持つとされています。研究に力を入れる大学は、産業界で大きな存在感を示しており、研究者・学部・一般市民の包括的な学びと、その関わり合いを深めるよう促しています。したがって、高等教育機関である大学が、昔から研究志向の取り組みを進んで受け入れてきたのは、当然のことと言えるでしょう。しかしながら、毎年250万本以上の研究論文が新たに出版される中では、研究結果を際立たせる方法を見つけることの重要性がますます高まっています。大学はこの重要性を認識しており、研究者たちに、自分の業績をさまざまなオーディエンスに積極的に発信して研究を可視化することを奨励しています。露出度を高めれば、研究のインパクトが強まるだけでなく、研究機関の知名度も上がります。この記事では、研究に力を入れている大学などの学術機関が、研究結果を有名ジャーナルで発表する以上の取り組みを行うよう研究者に働きかけることによって、研究コミュニケーションを積極的に促している状況を紹介します。


研究の可視性を高める取り組みに力を入れている、世界の大学の例を見て行きましょう。


オックスフォード大学は、研究者が多様なオーディエンスとつながるための、さまざまな方法を用意しています。学部ごとにファシリテーターとコーディネーターのチームがあり、パブリックエンゲージメント活動に参加することや、さまざまなフォーマット(ケーススタディ、アニメーション動画、ポッドキャスト)で自分の最新の研究をシェアすることを望んでいる研究者に、サポートや案内を提供しています。また、マスコミ向けに示唆に富む記事を書く専門家を招くほか、大学の研究者に話を聞くインタビューシリーズ、Research in conversationの運営も行なっています。


ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンは、Research & Innovation Services Portal(研究とイノベーションのサービスポータル)に投資し、プロポーザルの準備、出版論文のプロモーション、コミュニケーショントレーニングの提供などにより、各分野の最前線にいる熱心な研究者たちをサポートしています。


スタンフォード大学ボストン大学テキサスA&M大学など、米国の多くの大学は自前のオンラインニュースサイトを持っており、大学で行われた最新の研究をそこで紹介しています。


南カリフォルニア大学ケック医学校は、有力な研究の認知度を高め、それをより多くのさまざまなオーディエンスに届けるために、報道機関のパワーに頼っています。研究者は、自分の業績のリーチと成功を最大化する方法を、少しずつ学んでいくことができます。


アジアの研究機関の中にも、研究の普及を促すために同様の活動に取り組んでいるところがあります。例えば、韓国の延世大学校は、大学のウェブサイトで、定期的に最新の研究について紹介しています。大学で実施された研究を短くまとめた記事のほか、学部の紹介記事を載せることもあります。興味深いのは、これらの記事が平易な言葉で書かれ、出版論文へのリンクが張られていることです。こうすることで、研究コミュニティだけでなく、一般のオーディエンスにもアピールすることができます。記事を読んで興味を持ったら、研究者と連絡を取ってコラボレーションすることも可能でしょう。


数年前に東京工業大学が行なった同様の取り組みは、今では本格的なオンラインニュースとなり、大学の研究者が書いた選りすぐりの論文のプレスリリースを載せています。慶応大学も、大学で行われた画期的な研究についてのストーリーを紹介しています。


メルボルン大学も、研究者の声を届けるためのプラットフォームに力を入れています。その中でも面白い取り組みなのが、専門家の解説を載せる、Pursuitと呼ばれるデジタル・ストーリーテリングのプラットフォームです。根底にあるのは、研究のインパクトを高め、研究コミュニティに参加するという考え方です。


ここで紹介したのは、支援対象の研究について発信することを真剣に考えている、ほんの一部の機関の例です。ほかにも、時流に乗ってオンラインでの存在感を高めつつある機関がいくつもあります。さらに、フルタイムの科学コミュニケーション講座を設けたり、カリキュラムの中にコミュニケーション戦略を組み込んだりしている大学もあります。これらの取り組みはどれも、その方法は違っても、「さまざまな人にとって科学を身近なものにするという、前向きな共通のゴールを目指すものです。


皆さんの大学は、科学コミュニケーションのダイナミックなムーブメントに、どのように参加していますか? ジャーナル論文で研究を発表する以外に、どのようなことをしましたか? 下のコメント欄から、ぜひ教えてください。


関連記事Beyond the journal article: New ways of communicating science

エラーメッセージ「Error DOI not found」が表示されるのはなぜですか

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Question Description: 

論文がアクセプトされ、オンラインで出版されたのですが、DOIリンクをクリックすると「Error DOI not found(エラー:DOIが見つかりません)」と表示されます。これはなぜですか?論文に問題があるのでしょうか?問題があるとすれば、どのように対処すべきですか?

回答

DOIのウェブサイトに、エラーメッセージに関する詳細が記載されています。これによると、今回の問題は、論文に記載されているDOIが間違っているために起きたと考えられます。論文を確認して、誤りがあった場合は、ジャーナル編集者に修正を依頼しましょう。考えられる別の原因は、ソースのDOIを誤ってコピーしているケースです。スラッシュ前後の文字列がすべて含まれていること、余計な句読点などが足されていないことを確認してください。もしくは、DOIがまだ有効化されていないということも考えられます。少し時間をあけてからリンクをクリックし直し、このケースに該当していないかを確認してみてください。それでもエラーメッセージが表示される場合は、何か問題があるということです。


どうしても原因が特定できず、問題が解決できない場合は、doi-help@doi.orgに問い合わせてみましょう。

外国語でのコミュニケーションでは、感情的判断が回避される

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外国語でのコミュニケーションでは、感情的判断が回避される

これまでの研究で、人は外国語でコミュニケーションを取っているときの方が他者の命を犠牲にしやすいという結論が出ていましたが、シカゴ大学が行なった新たな研究で、この理由についての調査が行われました。

5人の命を救うために、迫りくる電車の前に1人の人間を突き飛ばすことができますか?研究では、コミュニケーションが母国語ではなく外国語で行われているとき、人は感情的に抵抗感のある行動を取りやすいという結果が示されています。


これまでの研究で、人は外国語でコミュニケーションを取っているときの方が他者の命を犠牲にしやすいという結論が出ていましたが、シカゴ大学が行なった新たな研究で、この理由についての調査が行われました。Psychological Science誌で発表された論文では、外国語でのコミュニケーションによって、意思決定から感情がどのように取り除かれるかが検討されています。


研究では、冒頭のジレンマを使った数種類の実験を使って、言語が人の思考のプロセスに与える影響を調査しました。すると、外国語でコミュニケーションをとることによって被験者の感情的嫌悪感が軽減され、誰かを殺すという絶対的タブーが破られやすくなるとの結果が得られました。これについては、外国語でコミュニケーションをとることで感情から距離が置かれ、功利主義的行動に走りやすくなるためと説明されています。外国語でコミュニケーションをとることで、集中してゆっくりと問題を理解しようと努めるようになります。その結果、慎重な思考のもとで分析が行われるようになり、1人の人間を電車に突き飛ばすことの抵抗感より、複数の命を救うことの功利主義的メリットの方が大きいという判断を下すようになるといいます。また、5人の命を救うという大義名分がこのような選択につながっている可能性もあります。


研究者らは、たとえば和平交渉に関わっている団体が、同じ提案を外国語ではなく母国語で行なった場合に見方がどのように変化するかといった、現実世界への応用に向けて研究を進めています。

DOI: 10.1177/0956797617720944

査読における透明性の重要度:ケーススタディ

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査読における透明性の重要度:ケーススタディ

ある著者の論文がリジェクトされました。2人の査読者からはポジティブな評価を受けたものの、3人目の査読者からの評価は極めてネガティブなものでした。ただ、3人目の査読報告書には不審な点がありました。著者は、対応策についてエディテージにアドバイスを求めました。

事例:ある著者の論文がリジェクトされました。3人の査読者のうち、2人からは建設的なコメントとともにポジティブな評価を受けました。ところがもう1人の評価は極めてネガティブなもので、ほかの2人がまったく指摘していない部分について、クオリティや科学的根拠を著しく欠いているとのコメントが出されました。ただ、査読報告書には包括的な評価が書かれているだけで、改善のための具体的な助言などは一切ありませんでした。何より驚きだったのは、研究で一切使用していない実験方法を使用したことを批判するコメントがあったことです。


著者は、論文のクオリティに関するセカンドオピニオンを得ようと、エディテージの出版前査読サービスを利用することにしました。エディテージによる査読結果は、ほかの2人の査読者と同様の評価でした。この結果から、3人目の査読者の評価が不当であるという確信を得た著者は、対応策についてエディテージにアドバイスを求めました。


対応:私たちは著者に、2人の査読者の評価ともう1人の査読者の評価に乖離があることを根拠に、ジャーナルの判断に抗議するよう助言しました。著者は、当該査読者のコメントの不備、すなわち改善のための助言が皆無であった点と、使用してもいないメソッドに言及していた点を示すことで、編集者の関心を引くことができました。


編集者はこの査読者に疑念を抱きました。調査の結果、その査読者には利益相反があり、査読依頼を引き受けた時点でそれを申告していなかったことが分かりました。査読者の研究テーマは著者のものと非常に近く、リジェクトすることで著者の論文出版を遅らせて、自分の結果を先に発表しようと目論んでいたようです。編集者は査読者の身分を明らかにはしませんでしたが、査読者の所属先にこの事実を伝えることを約束しました。著者の論文は、ほかの査読者に送られて再審査されることになりました。


まとめ:出版規範委員会(COPE)は、査読者が遵守すべき倫理ガイドラインを提供しています。この文書によると、査読を依頼された人物は、(個人的、金銭的、知的、職業的、政治的、信仰的)利益相反の有無やそれが生じる可能性について申告しなければならず、別のジャーナルに内容がきわめて近い論文を出版する予定がある場合は、依頼を断らなければならないとしています。利益相反の有無について判断できない場合は、ジャーナルに相談するべきでしょう。


しかし、一部の査読者は、透明性の保持に後ろ向きになって、利己的な目的を満たそうとします。競合相手の論文の査読依頼が届いても、利益相反があることを申告せず、その論文がリジェクトされる方向に持っていこうとするのです。シングルブラインド・ピアレビュー(一重盲査読)やダブルブラインド・ピアレビュー(二重盲査読)の場合、著者には査読が不当に行われたかどうかを判断する材料がありません。これは、査読者に非倫理的な行為があった場合、著者にとってきわめて不公平なシステムと言えます。


不正査読に手を染めると、以下のような事態が待ち受けている可能性があります:

  • ジャーナルのブラックリストに載り、データベースから名前が抹消される
  • 学術界に悪評が轟く
  • 関連機関や所属機関に不正を行なった事実が伝えられ、機関から何らかの処罰を受ける


査読は科学出版の土台を支えるものです。完全な透明性を確保して査読プロセスの公正性を守ることは、関係者全員の義務であると言えるでしょう。


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「小さな研究不正は、あきれるほどの規模で蔓延しています」

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「小さな研究不正は、あきれるほどの規模で蔓延しています」
研究公正に関する権威で、「もっとも影響力のある生物医学研究者400人」の1人。疫学で博士号を取得した後は、教授、博士課程学生の指導者、学長などを歴任。複数の学術機関や研究機関で要職に就き、これまで700点近い出版物に著者/共著者として関わった。現在は、責任ある研究活動、問題のある慣行、学術出版不正などに関心を寄せ、科学的公正性を取り巻くジレンマについて世界的な取り組みを行うことの必要性を主張している。2017年には、第5回研究公正に関する世界会議(アムステルダム)のオーガナイザー兼共同議長を務め、研究公正基金の国際会議財団の会長に就任した。

今回のインタビューでは、研究公正に関する権威であるレックス・ブーテ(Lex Bouter)教授に、オランダ研究公正ネットワーク(Netherlands Research Integrity NetworkNRIN)による最善の研究および出版慣行の促進のための取り組みについて伺いました。また、研究や教育活動に従事する中で、科学研究や出版プロセスの公正性に関心を抱くに至った経緯についてもお聞きしました。教授は、報告されない小さな研究不正の件数が驚くほど多いことを危惧しており、あらゆるレベルの研究者に対して研究倫理に関するガイダンスを提供するための、より優れたインフラの整備が世界的に必要であると主張しています。


ブーテ教授は、1982にユトレヒト大学で修士号(生物医学)を取得後、ティルバーグおよびユトレヒトの教員養成大学で教職に従事しました。その後、マーストリヒト大学の博士課程(疫学)に入学し、1992年に疫学の教授に就任しました。


これまでいくつもの重役を歴任し【アムステルダム自由大学メディカルセンターEMGO+ヘルスケア研究所所長(19922006年);オランダ疫学学会会長(19961997年);オランダ健康協議会会員(20012013年);アムステルダム自由大学理事会理事(Rector Magnificus)(20062013年);オランダ中央倫理員会副委員長兼メソドロジスト(2001-2013)】、複数の委員会で委員長を務めました【アムステルダム自由大学メディカルセンター部門(2001-2006);オランダ保健研究開発機構のInnovative Medical Devices Initiative実行委員会(2009) オランダ科学研究機構追試研究実行委員会(2016~)】。


教授は、研究や教育活動に従事する中で、科学研究とその社会的影響に伴う倫理的側面に関心を抱くようになり、「科学的公正性をめぐるジレンマに取り組むためには、グローバルなアプローチが必要である」と主張しています。現在は、方法論と公正性に関する教育と研究に取り組んでいます。2017年にはオランダ王立芸術科学アカデミーの医学研究部門の会員に任命され、第5回研究公正に関する世界会議(アムステルダム)のオーガナイザー兼共同議長を務め、研究公正基金の国際会議財団の会長に就任しました。


これまでに約700点の出版物に著者/共著者として関わり、その被引用件数は48000件以上に上ります。「もっとも影響力のある生物医学研究者400人」の1人であり、通算74人の博士課程学生の指導にあたりました。また、Cochrane Collaboration Back Review Groupの編集者(19962002年)および編集長(20022006年)を務め、Textbook of Epidemiology(疫学の教科書)の著者の1人に名を連ねました。

オランダ研究公正ネットワーク(Netherlands Research Integrity NetworkNRIN)について詳しく教えて頂けますか?設立経緯と理念を教えてください。

NRINは、オランダ保健研究開発機構の手厚い支援を受けて2014年末に発足しました。立ち上げの理由はシンプルで、目標に掲げたのは、研究公正と責任ある研究の遂行が求められる現場において、研究や教育に携わる人々の考えや最善の慣行について情報交換し合うネットワークを構築することでした。また、機密を扱うカウンセラーや研究不正の告発に対応する常設委員会の役員向けのプラットフォームを提供することも目指しました。なぜこのような目的を掲げたかというと、これらの問題への関心が国内で急速に高まっているにも関わらず、研究機関同士が交流することは稀で、それぞれの機関が孤立した状態にあったからです。

目標を達成するために、NRINはどのような活動を行なっていますか?NRINはオランダ国内の研究公正に関する問題だけを扱うのですか?

NRINは、研究公正の分野における研究・教育従事者や、研究不正の告発に対応する人々向けに、有益な情報を提供するポータルサイトを運営しており、開催予定の学会や、助成金、行動規範、ガイドライン、教材、書籍や動画などに関する情報を紹介しています。また、国内外を問わず、会員登録をしたユーザーにニュースレターの配信も行なっています。NRINが運営している学会も重要な役割を果たしています。研究と教育に関するそれぞれの学会には、毎年多くの参加者が集いますが、これらの学会を、可能な限り活発で双方向的なものにしようと努めています。さらには、研究公正に関する機密を扱うカウンセラーや、研究不正の告発に対応する常設委員会の役員を対象とした非公開会議なども開催しています。


NRINのウェブサイトは、様々な国の人々が閲覧しており、会員の約半数はオランダ国外の人々です。学会に参加するのは主にオランダ人ですが、毎回諸外国からゲストを招いています。

とくに成功したと感じるNRINの活動にはどのようなものがありますか?

NRINが開催している会議は、好評で参加者も多いことから、もっとも成功している活動の1つと言えるでしょう。より具体的に言うと、さまざまな利害関係者が集まった集中協議セッションでは、オランダの研究公正行動規範の改訂について議論が交わされました。この会議は、策定委員会に有益な情報を与え、最終改訂版に影響を与えました。また、20175月にアムステルダムで開かれた5研究公正に関する世界会議の運営において重要な役割を果たしたことも、誇らしく思っています。

教授の専門分野に話題を移したいと思います。科学研究と出版プロセスの公正性に関心を抱いたきっかけは何でしたか?

私はプライマリーケアと公衆衛生を専門とする疫学者として、研究所の所長を15年間務めました。その後、アムステルダム自由大学7年間学長(rector)を務める栄誉にあずかりました。同時に、オランダ中央倫理員会の副委員長およびチーフ・メソドロジストの役割を12年間担いました。これらの重役を経験する中で、研究が必ずしも本来あるべき姿で行われていないことを知ったのです。


私は、オランダ国内外で大規模な研究不正が暴かれることに驚く一方で、あきれるほど広く蔓延した小さな研究不正は、全体としてより大きなインパクトを持つと感じました。この状況を改善するためには、研究の質に関する私たちの意識をより高める必要があると思います。具体的には、機関コード、実施手順に関するガイドラインや基準、教育/指導、内部監査の導入などの取り組みが必要でしょう。何より重要なのは、研究者が自分たちのミスや疑念、ジレンマについて自由に議論ができるような風土を作ることです。研究公正に関する問題は複雑です。その上、「研究についての研究」が行われはじめたのはごく最近なので、我々が研究公正について知っていることはごくわずかで、問題を解消する特効薬のようなものもありません。したがって、研究者やその所属機関/組織、助成団体、学術誌を含むすべての関係者が協調しなければならないのです。

研究者たちに責任を持って研究を遂行してもらうために、どのような教育/指導を行なっていますか?

アムステルダム自由大学メディカルセンターの博士課程の学生には、研究公正に関するコースの受講を義務付けています。オランダ国内の大学では、同様の取り組みが複数行われており、学部課程や修士課程においても、研究公正への注目度は着実に増しています。問題は、より上級レベルの研究者向けの教育制度がほとんどないということです。私はよく、「あらゆることに免許が必要だが、子育てと博士課程学生の指導にだけは免許はいらない」というジョークでこの問題を皮肉っています。我々は最近、新米指導教官向けの、研究公正に関する研修プログラムを提供するプロジェクトを立ち上げました。研究不正の主な発生要因として、指導や監督不足が頻繁に報告されています。ですので、あらゆるレベルの研究者に対して、より良いガイダンスを提供しなければならないと感じています。


我々が生物医学分野の博士課程の学生に提供している複合コースは、eラーニングモジュールから始まります。すべての学生に同じ情報を共有してもらうことで、対面ミーティングの時などにそのつど事実情報を確認し合う時間を省略しています。受講者は、eラーニングモジュールの内容に関するテストに合格する必要があります。そして、内容について指導教官と議論したり、自分の研究プロジェクトとの関連性を検討したりすることが求められます。ミーティングプログラムでは、責任を持って研究を遂行すること、疑わしい研究慣行を避けること、研究者が日々直面するジレンマに向き合えるように手を貸すことなどについて丸一日議論を行い、6週間後に同様の議論を半日間行います。また、このコ-スでは、MCDMoral Case Deliberation)による対話型講義と小グループでのディスカッションやセッションを組み合わせ、受講者の経験を基にした決議論を導入しています。これらのMCDセッションでは、関係者それぞれの立場における行動規範や価値観を理解することを目指して、ジレンマの系統的な分析を行なっています。受講者が、研究公正に関するジレンマに的確に対処できるようになることが、本コースの最終目標です。我々は、問題となっている事柄について説教や非難をせず、親密な雰囲気の中でオープンに議論できることが重要だと考えています。コースの最後には、受講中に何を学んだか、どのような影響を受けたかについて半ページ分のレポートを書いてもらいます。


最善の倫理的慣行に関する意識を植え付けるアプローチとして、とても興味深い取り組みですね。NRINが、研究における倫理的ジレンマに関する意見交換の場を大切にしているのは素晴らしいことだと思います。

インタビュー前半はここまでです。後半は、非倫理的行為の蔓延を防ぐために、学術出版界の利害関係者ができることについて伺います。


実験の協力者に、共著者の資格はありますか?

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タンパク質工学の分野で論文を出版したいと思っています。研究の計画やアイデア自体は私自身が考えたものですが、実験の一部は別の研究室に協力してもらいました。しかし、論文のもっとも重要な実験は、私が依頼してから1年が経過した現在も行われておらず、共著者として彼らの名前を載せるかどうかで悩んでいます。名前を載せるほどの貢献はしていないのではないかと感じています。論文には、彼らの研究室で得られたデータと、自分の研究室で得られたデータの両方が使われており、別の共著者のレビューも受けています。指導教官は彼らの名前を載せるべきだと主張しているのですが、どうすればよいでしょうか?

回答

オーサーシップについては多くの議論があり、経験豊富な研究者でも明確な認識を持っていないこともあります。国際医学雑誌編集者会議(ICMJE)は、研究への協力者について、共著者として扱うのか謝辞のセクションで触れるに留めるのかを判断するための一連のガイドラインを設けています。このガイドラインでは、以下の4項目すべてに該当する場合に限り、オーサーシップを与えてもよいと定めています:
 

  • 研究のコンセプトやデザインの設定、またはデータの取得・分析・解釈に大きく寄与した
  • 論文の重要な知見となる部分を執筆またはレビューした
  • 投稿する論文に最終的な承認を与えた
  • 研究の責任を負うことに同意した


ガイドラインには以下の記述もあります:

「以上の4項目すべてに該当しない場合、著者としての資格はないものの、謝辞には含まれるべきです…(中略)…オーサーシップの資格がない場合も、個人または団体として、どのような立場(臨床試験実施者、協力研究者など)で、論文にどのように寄与したか(科学アドバイザーとして、研究プロポーザルのレビュー、データ収集、被験者のコーディネート、論文の執筆・編集協力など)を明記して、謝意を示しましょう」。


今回のケースでは、外部の研究室はあくまでも実験で協力しただけで、知的貢献を果たしたわけではないので、オーサーシップの資格はありません。この点について指導教官とよく話し合い、謝辞のセクションで謝意を示すのみに留めることを提案しましょう。


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2018年5月25日施行のGDPRの扱いについて。

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学術誌を発行する学会で、EU圏内の著者よりも論文が投稿されます。投稿方法は、Emailや、投稿システム(ScholarOne)などです。また、場合によっては、著者負担金の支払い等で、クレジットカード番号も扱うことがあります。 注意すべきことや、今後、必要な対策があれば教えてください。

回答

質問の意図が正確に把握できていないかもしれませんが、EUの一般データ保護規則(GDPR)の施行によって、出版社と著者にどのような影響があるか、というご質問と理解します。2018528日に施行された新規則であるGDPRは、EU全域の住民の個人情報のより厳格な保護と、より厳しいデータ保護の規制を求めるものです。出版社にとっては、適切な同意を得てデータを適切に保護することを確実に行なった上で、収集するデータをより厳格に管理しなければならないということになります。これは、EU圏外の著者に対しても適用されます。コンテンツにEUの住民を特定できる情報が含まれている場合は、同意を得る必要があります。EUの住民には、同意をいつでも撤回する権利があります。また、得られた同意は、明確かつ正当な目的以外に使用してはなりません。どのような影響が出るかはまだ不透明ですが、EUおよびその他各国の著者に対する出版費用に影響が出ないとも言えません。何らかの変更があれば、ジャーナルのウェブサイトに反映されるはずです。


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ポスドク研究員がワークライフバランスを保つには

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ポスドク研究員がワークライフバランスを保つには

ポスドクになるということは、多くのトラブルシューティングをこなしつつ、仕事に追われる生活を送る可能性が高くなるということです。仕事とプライペートの黄金バランスを保つためのヒントを紹介します。

 

ポスドク研究員になるということは、多くの場合、家庭を築く、マイホームを購入する、奨学金を返済するなどの個人的責任の上に、また1つ新たな責任を負うことを意味します。一般的にポスドクは、終身制の教職に就くための足掛かりとなります。単に博士課程の延長と捉えられがちなポスドクという立場ですが、実際は、先述の個人的責任の上に、プロフェッショナルとしての責任を負わなければならない立場なのです。


新米のポスドク研究員は、自らの価値を証明しながら評価を積み上げていく必要があります。ポスドクとして経験を重ねていく過程では、研究費の獲得や昇進へのプレッシャーがのしかかってくるでしょう。また、多くの国で研究費が制限されている現状では、教員職に就くために必要な論文発表件数を達成して助成金の獲得実績を得るまでに、これまでより数年長くポスドクを務める必要があるかもしれません。


ポスドクを何年にもわたって前向きかつ健全に務めるためには、良好なワークライフバランスを保つことが重要です。もちろん、そのバランスは人によってさまざまです。だからこそ、自分が何を望み、何を許容する覚悟を持っているのかを把握しておくことが大切になります。


たとえば、草サッカーチームに所属していて、練習に参加しなければならない状況にあるとしましょう。あなたは、練習時間が夜遅くにずれ込むことを受け入れられますか?それともチームをやめることを検討しますか?配偶者があなたと同じく多忙なポスドクである場合、平日に夕食をともにする時間を確保できないことを受け入れられますか?それとも、週末は仕事をしないという約束事を作りますか?子供がいる場合、研究室にいる間はベビーシッターを雇いますか?それとも託児所に預けますか?仕事と、子供のサッカーの試合や音楽の発表会を両立する準備は整っていますか?自分の目標や目的、許容への覚悟、自分にとって良好なワークライフバランスとは何か、といったことを理解できれば、上記の問いの答えに向けて動き出すことができるでしょう。


ポスドクになるということは、多くのトラブルシューティングをこなしつつ仕事に追われる生活を送る可能性が高くなるということです。以下で、仕事とプライペートの黄金バランスを保つためのヒントを紹介します。


1. 研究室選びは慎重に

研究者の多くは、多額の研究費を獲得している大きな研究室に入ることを望んでいます。このような研究室は知的刺激に満ちており、(科学者にとって重要である)的確なネットワークの構築にもつながります。一方で、困難な仕事を要求される可能性もきわめて高く、その場合は多くの時間を割かなければなりません。このような研究室にいるポスドクは、熾烈な競争の中で深夜まで働かなければならないような労働環境に身を投じているのです。


研究室にはそれぞれの労働文化があり、その競争レベルやストレスレベル、労働負荷は大きく異なります。したがって、自分の優先順位をはっきりさせてから研究室を選ぶようにしましょう。研究室に在籍中のポスドクたちと話して、求められている仕事や就業時間を把握しておきましょう。家族との生活を優先させたい場合は、この点を考慮して研究室を選びましょう。


また、候補の研究室が現在の居住地から離れている場合は、生活にどのような影響があるか、その影響を許容する覚悟があるかどうかを検討しましょう。パートナーは、あなたと一緒に引っ越す意思を持っていますか?持っていない場合は、離れて暮らすことを受け入れられますか?新しい街を探索するのは好きですか?それとも、慣れ親しんだ場所に住み続けたいですか?これらの問いは、生活に長期的な影響を及ぼす要素であるため、研究室を選ぶ上でよく検討しておかなければなりません。このアドバイスは、私自身の経験に基づくものです。私は、博士課程修了後、住居から離れた街にある有名大学の研究室にポスドクとして採用される機会を得ました。しかし、夫と一緒に引っ越すことは現実的ではなく、私自身も離れて暮らす覚悟を持てなかったため、この機会はあきらめざるを得ませんでした。


2. 労働条件を上司と相談する

早朝から働くのが好きな人もいれば、深夜勤務を好む人もいます。また、週末に働きたい人もいれば、そうでない人もいます。研究室によっては、あなたの好みに合わないスケジュールで働かなければならないこともあるでしょう。候補の研究室で、望んだワークライフバランスが維持できそうな場合も、研究室のほかのメンバーと異なる働き方を望む場合は、あなたの優先順位や好みのスケジュールについて、上司と相談する必要があります。多くの場合は、あなたが生産性を維持できている限り、上司は臨機応変に対応してくれ、摩擦が生じることもないでしょう。


私はポスドク時代、娘の保育所に合わせた時間で働く必要がありました。その時間に沿った実験計画を立て、上司には、17時半までに研究室を出なければならないと伝えていました。その代わり、毎朝8時半には必ず出勤するよう心掛けました。そのため、同僚とは若干異なるスケジュールで動いていましたが、生産性に影響を及ぼすことなく、自分の優先順位に従って働くことができました。


3. ルーティンを守る

個人的なニーズを考慮した上で、自分に合ったルーティンを設定しましょう。自分のライフスタイルにもっとも合う勤務時間を選択してください。朝型人間なら、早い時間から働き、夜は家族との時間や趣味の時間にしましょう。遅い時間の方が生産性を保てるなら、午前中はほかの活動をする時間にあて、午後から働き始めるのもよいでしょう。どのような選択をしようと、できる限りそのルーティンを守るようにしてください。そうすることで、1日の行動パターンが固定されてより効率的に動け、プライベートの時間を確保できるようになります。また、労働に終わりがないと感じているポスドクは多いと思いますが、どのようなスケジュールで働こうと、仕事を家に持ち帰ることはできるだけ避けましょう。仕事とプライベートを明確に線引きすることで、頭を休ませて良好なワークライフバランスを保つことができます。


4. スケジュールを立てる

効率的に働くためには、スケジュールを立てることが大切です。その際は、就業時間や個人的なニーズ、さらに、自分の研究や研究室内で負うべき責任について考慮しましょう。そして、それらのタスクを就業時間中に可能な限りこなすよう心掛けましょう。たとえば論文の執筆中は、残業するのではなく、実験の待ち時間に研究方法などのセクションを書いてしまいましょう。また、通勤時間が長い場合は、その時間を使って助成金の申請書類を書いてしまいましょう。時間を効率的に使ってください。実験や〆切りの都合で、ルーティンを守るのが困難なときもあるでしょう。1週間かけて長い実験を行わなければならない場合は、翌週のスケジュールを軽めに設定しましょう。平日の夜に家族行事がある場合は、週末に仕事の埋め合わせをしましょう。このように、仕事とプライベートのバランスを適切に保つよう心掛けることが大切です。


生産的でいるためには、幸福でいること、生活に充足感があることがきわめて重要です。自分がやっていることを楽しめているときは、仕事とプライベートを切り離して考える必要性はないのかもしれませんし、仕事こそがエネルギーや創造性の源となっていることもあります。必要なのは、自分にとって何が大切なのかを把握することです。そうすることで、活力を保つための最適なバランスを見つけることができるでしょう。


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査読者にデータの誤りを指摘されました。どのように返答すべきですか?

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Question Description: 

ジャーナルから論文の小幅修正を求められています。査読者から、計算したパラメータの値に誤りがあると指摘されました(正確に言うと、計算自体は間違っていないのですが、使用した値に誤りがありました。たとえば、本当は400という数値を使わなければならないところで200としてしまいました)。このミスには、査読者の1人から「なぜ値がこれほど低いのか」と指摘されるまで気付きませんでした。この指摘にどのように回答すべきか悩んでいます。このミスにより、論文全体に疑念を持たれたり、信頼性をなくしたりしてしまうことはありますか?誤りのあった値は、論文に必ずしも必要なデータではなく、あくまで環境条件を示すための参考値です。したがって、修正版では消去しようと考えているのですが、消去した疑いを持たれるのではないかと心配しています。対応方法に関してアドバイスを頂ければ幸いです。

回答

パラメータ用の値を消去してしまうと、データを意図的に改ざんしていて、疑念を持たれたので消去したと勘繰られるかもしれません。査読者の指摘に対しては、真摯に回答すべきです。ミスを正直に認め、誤った値を使用してしまっていたことを伝えましょう。また、正しい値やそのデータ自体がさほど重要なものではなく、消去しても問題がないことも知らせましょう。いずれにせよ、修正を行う際は透明性を保ち、査読者のすべてのコメントに丁寧に対応しなければなりません。


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査読の歴史

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査読の歴史
査読は、出版プロセスに欠くことのできない品質管理手法ですが、私たちが知っている現在の査読は、約2世紀前に想定されていたものとは大きく異なっているようです。

 

(Frontiersに掲載されたインフォグラフィックを、許可を得てここに再掲載しています。)

査読は出版プロセスに欠かせない品質管理手法ですが、私たちが知っている現在の査読は、約2世紀前に想定されていたものとは大きく異なっているようです。
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査読の歴史年表

1665

ロンドン王立協会が、世界初の科学誌「Philosophical Transactions」を創刊。この時点では査読は存在せず、編集者が掲載論文を決定

1669

フランス科学アカデミー選出の専門家が、王に捧げる発明や発見の査定報告書を執筆

1731

エジンバラ王立学院が任命したメンバーが、一般向けに出版する書物を吟味

1831

ロンドン王立協会のウィリアム・ヒューウェル(William Whewell)が、新たに創刊されるジャーナル、Proceedings of the Royal Society掲載予定の論文の報告書を委託することを提案。新規性と科学的厳密性のどちらに着目して評価を行うべきか、という問いは当時も重要視されていた

1833

この時点で、査読者は報告書を匿名で書くようになっていた(シングルブラインド・ピアレビュー)。査読者は、学会の評判を守る「守護者」だった

1894

生理学者のマイケル・フォスターが言うところの、「純粋な科学が流れる川に、下水が垂れ流されている」状況を改善するため、学会は系統的な査読システムの導入を検討

1990年代半ば

英語圏の国々では、査読が一般的なものに。バイアスを排除するため、ダブルブラインド・ピアレビューが登場

1991

プレプリントリポジトリのarXivが誕生。査読なしの論文がオンライン上に公開され始める

2000

BioMed CentralBMC)が発足:査読において、インパクトを検討要素としない

2007

Frontiersが発足:「共同(collaborative)」ピアレビューの実施、出版後に査読者の氏名を公表

BMJ Openが発足:査読者の氏名と査読報告書を論文とともに公開

2012

Rubriqが発足著者がジャーナルへの投稿前に査読を依頼できる、外部査読サービス

Publonsが発足:査読者や編集者の活動を功績として認める

2013

F1000が発足:出版後査読システムを導入

現在

バイアスを排除する動きが継続。査読プロセスの透明性とスピードが向上

未来

査読がどのように進化していくかは誰にも分かりません。トリプルブラインド・ピアレビュー(著者、編集者、査読者の全員が匿名)によってバイアスは排除されるのか?査読者の立場はどのように変わるのか?FrontiersYoung Mindsでは、子供が査読を行なっている可能性も?さらなる技術の進化や新たなアイデアの登場により、当初の姿からは想像もつかない形に変化しているかもしれません。


技術年表(図表左端)

1440

グーテンベルクの活版印刷:印刷と民衆への配布が容易になる

1890年代

タイプライター:カーボン紙での5枚複写が可能になり、論文を委員会内で回覧できるようになる

1959

ゼロックスコピー機:論文の複写がより簡単に

1990年代

インターネット:出版と査読の革命が始まる


※PDF版はこちらからダウンロードできます:査読の歴史年表


参考文献

Csiszar, A. (2016) Peer review: Troubled from the start. Nature 532:306-8 doi:10.1038/532306a

Spier, R. (2002) The history of the peer-review process. Trends in Biotechnology 20(8):357-8 doi: 10.1016/S0167-7799(02)01985-6

睡眠不足で子どもの2型糖尿病のリスクが増大

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睡眠不足で子どもの2型糖尿病のリスクが増大

子どもを早い時間に寝かせるのに悪戦苦闘している両親は多いと思いますが、「子どもは早く寝た方が良い」という昔からの教えは、科学的に正しそうだということが証明されました。

子どもを早い時間に寝かせるのに悪戦苦闘している親は多いと思いますが、「子どもは早く寝た方が良い」という昔からの教えは、科学的に正しそうだということが証明されました。


ロンドン大学セントジョージ校がPediatrics誌で発表した新たな研究によると、適切な睡眠時間を確保することで、子どもの2型糖尿病のリスクを軽減できることが明らかになりました。成人糖尿病とも呼ばれる2型糖尿病は、これまで小児が発症することはほとんどありませんでした。しかし、運動不足や糖分過多な食事による子どもの肥満率の増加に伴い、子どもの2型糖尿病患者が増加する事態となっています。2型糖尿病になると、身体が血中のグルコースを制御できなくなり、血糖をエネルギーに変換するための十分なインスリンの生成ができなくなります。


睡眠と2型糖尿病の関係に着目した研究はこれまでほとんどなかったため、研究者らは、910歳のさまざまな民族の子ども4500人分の身体・血液データの収集に努めました。その結果、夜間の睡眠時間が平均1時間少ないだけで、血糖やインスリン抵抗性が高くなり、2型糖尿病のリスクが増大することが分かりました。また、睡眠時間が長い子どもほど、体重や体脂肪が少ないことも明らかになりました。


睡眠が十分取れていると、食欲が抑制され、インスリン抵抗性が抑えられます。したがって、肥満と2型糖尿病のリスクを減らすには、睡眠時間を増やすことが有効です。研究では、睡眠衛生の意識を高めて子どもの睡眠を毎日10時間確保できれば、健康が増進して2型糖尿病のリスクを排除できると結論付けています。

DOI: 10.1542/peds.2017-0338

インパクトファクターのないジャーナルは、信頼しない方がいいですか?

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Question Description: 

エルゼビアのRadiation Research and Applied Sciences誌に論文を投稿したのですが、いくら検索してもこのジャーナルのインパクトファクターが出てきません。インパクトファクターがないジャーナルは信頼しない方がいいですか?信頼できないようなら投稿を取り下げたいのですが、問題ありませんか?

回答

すべてのジャーナルにインパクトファクター(IF)が付いているわけではありません。基本的に、創刊から3年未満のジャーナルにはIFがありません。また、長期間IFが付いていたジャーナルでも、そのクオリティを維持できていなかったり、著者に自誌の論文の引用を強要したり、ジャーナル・インパクトファクター(JIF)の基準を満たせなくなったりした場合は、IFを失うケースがあります。この場合、要件を満たした状態に戻すことができれば、次年度にIFを取り戻すことができます。IFのないジャーナルが必ずしも信頼できないというわけではありません。今回の場合は、エルゼビアという高名な出版社が出版元なので、ジャーナル自体も信頼に値するでしょう。一度、編集委員会のメンバーや、バックナンバーの質を確認してみてください。指導教官や先輩に評判を聞いてみるのもよいでしょう。信頼できそうなら、論文を取り下げる理由はどこにもありません。もしも信頼できそうにない場合は、取り下げても構いません。投稿後に論文を取り下げることには何ら問題はありません。論文を取り下げるには、編集者にその旨を書いたメールを送る必要があります。その際、取り下げの承認メールを返信してもらうようお願いしておきましょう。承認メールを受け取った時点で、論文の取り下げは正式に完了します。承認を受ける前に別のジャーナルに投稿すると、二重投稿と見なされてしまうので、気を付けましょう。


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レビュー状況の問い合わせについて

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Question Description: 

ある科学雑誌に論文をOriginal paperとして投稿しました。ステータスが“under review”となってから3ゕ月経過しましたが、ステータスはいっさい変わらないままです。そこでエディターに、「レビューがいつおわるのかいつか知りたい」と問い合わせしても失礼に値しないものでしょうか?なお、投稿した雑誌について、過去3年間のレビュー期間を調べてみると,初回投稿してからアクセプトされるまで最短で5ゕ月、最長で18ヵ月かかっていました。

回答

すでに3か月が経過しているとのことなので、論文の状況について編集者に問い合わせても失礼にはあたりません。もちろん、単に「レビューがいつ終わるのか知りたい」と言うだけでは不適当ですし、メールは丁寧かつ礼儀正しい文章で書く必要があります。終了予定日もしくは論文の最新状況を尋ねる形で、丁重に問い合わせてみてください。


以下の記事に、問い合わせメールを書く際の参考になるテンプレートが載っています:


卒業要件としてどうしても必要である等、何らかの事情がある場合は、そのことを伝えても問題ありません。急いでいる理由を伝え、見通しを教えてくれるよう依頼しましょう。そうすれば、現状における代替案を検討することもできるでしょう。


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アメリカ化学会への論文投稿ついて

著者全員のサイン

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Question Description: 

投稿する際、著者全員のサインが求められるジャーナルがあります。共著者が各地(国外)に散らばっているため、郵送でやりとりしていると時間がかかります。この場合、一人一枚のサインで合計4枚でも大丈夫でしょうか

回答

たいていのジャーナルは、著者同士が遠方に住んでいる場合、著作権譲渡や利益相反に関するフォームを別々の用紙で提出することを認めています。カバーレターに、「著者同士が離れた都市/国に住んでいるので、個別の用紙で提出する」ということを説明する一文を添えるとよいでしょう。


もしくは、全員の氏名を記載した紙を一枚用意し、自分がサインしたら、その紙をスキャンして次の著者にメールで送るという方法も可能でしょう。この方法では、用紙を受け取った人が、それぞれ自分のサインを書き入れたら、書類をスキャンし、それを次の著者に送ります。


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透明性が査読不正を食い止める

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透明性が査読不正を食い止める

科学のすそ野が広がりを見せる一方で、研究者が、出版倫理の超えてはならない一線を越えてしまうことがあります。とくに、査読プロセスに関する不正行為はかなりの頻度で見られます。

(本記事はワイリー・エクスチェンジ(Wiley Exchangesに掲載されたものを、許可を得てここに再掲載したものです。)


論文出版点数新たな発見の数研究者の人数は増加傾向にあり、科学研究の世界は盛況を博しています。しかし、科学のすそ野が広がりを見せる一方で、研究者が、出版倫理の超えてはならない一線を越えてしまうことがあります。とくに、査読プロセスに関する不正行為はかなりの頻度で見られます。査読の不正操作が明らかになったTumor Biology誌の掲載論文107本の撤回劇は大きく報道され、この事件をきっかけに、査読の透明性に注目が集まるようになりました。


査読は、科学コミュニケーションにおける究極の判断基準ですが、研究者、ときには編集者までもが、このシステムの弱点を悪用するケースがあります。専門家の承認を受けた出版物は信頼性が高いものと見なされるため、研究者たちは、自分の業績のために査読済み論文の出版に励みます。論文を出版するためには、査読で良い評価を受ける必要があります。したがって、出版に必死になるあまり、研究者がそのプロセスを不正に操作してしまうケースが発生するのです。このような行為に走ってしまう主な要因は、学術界の熾烈な競争文化と、出版へのプレッシャーにあります。世界中の多くの研究機関が、インパクトファクターの高いジャーナルで論文を高頻度で出版することを研究者に求めています。このため、研究者たちは、職の確保、助成金の獲得、昇進・昇給のために、査読の不正操作という近道を選択してしまうのです。


査読プロセスで不正を働く研究者たちは、ジャーナル側のシステムの穴、すなわち透明性の欠如という欠陥を突いてきます。多くのジャーナルが、シングルブラインドやダブルブラインドといった閉鎖型査読システムを採用しています。査読者の氏名やコメント、それに対する著者の回答は一般の目に触れることがないため、著者はこれを利用します。たとえば、身分を偽って著者自らが査読を行うといった不正が可能になってしまうのです。査読の信頼性を確認できる唯一の立場にあるジャーナル編集者が気付かなければ、この不正が明らかになることはありません。これを防ぐため、F1000ResearchBioMed Centralなどのジャーナルは、掲載後査読(post-publication peer review)や公開査読(open peer review)といった新たな査読モデルを導入し始めています。


編集者もまた、毎日投稿される大量の論文に迅速に対応しなければならないプレッシャーに晒されています。11本の論文それぞれに適切な査読者を見つけるのは、骨の折れる作業です。このため、著者が査読者候補を挙げられるようにしているジャーナルもありますが、透明性が欠如している中でのこのシステムは、自分に有利な審査をしてくれる査読者を推薦する機会を著者に与えていることになります。論文出版に伴う査読結果の公表は通常行われていないので、著者は、偽の身分(アカウント)を作り上げて自分の論文を査読するという「査読の輪」を、密かに作り上げることができてしまうのです。


では、透明性はどのような役割を果たせるでしょうか。査読プロセスは1世紀前からありますが、査読者が見ている点、査読者と著者のやり取り、編集者が判定を下すまでの過程といった舞台裏は、ほとんどが謎に包まれています。プロセスをよりオープンにするためには、著者と編集者と読者の協力が必要です。出版社とジャーナルは、査読プロセスの詳細を含めた査読報告書を、論文と併せて出版すべきでしょう。このようなオープン化の取り組みは、著者に不正行為を思い留まらせる抑止力にもなります。編集者は、信頼できる査読者を常時複数人確保しておくようにすれば、その都度査読者を探す労力を、査読のクオリティ審査に回すことができ、より適切な判断を下せるようになるでしょう。もちろん、査読者の選定に著者の力を借りる必要もなくなります。


査読不正は科学の進歩にきわめて有害な行為であるにも関わらず、十分な対策が立てられているとは言えません。著者は、不正行為に走った場合の末路についての教育を受けるべきです。編集者は、選んだ査読者が信頼に値することを確認する努力を怠ってはなりません。出版社は、査読プロセスをよりオープンにすることを考慮すべきです。査読は信頼を前提に成り立っている部分が大きいため、著者、編集者、出版社が協力して透明性を高める努力をしていく必要があると言えるでしょう。


※このブログ記事は、執筆者本人の論文What causes peer review scams and how can they be prevented?(査読不正の発生要因とその防止策)」Learned Publishing誌に掲載)をもとに書かれたものです(DOI: 10.1002/leap.1031)。

所属学会が発刊するジャーナルの論文投稿料について

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Question Description: 

ある学会に所属しておりその学会で発刊しているジャーナルに投稿しアクセプトされました。以前は会員の投稿料は無料だったのですが今年の1月から会員も投稿料が必要となりました。ただし投稿料は非会員と会員で異なっております(会員は非会員の1/6ほど)。前述のことを気づかずに投稿時に会員であることを登録しなかったためアクセプトされた際に非会員の投稿料を求められました。まだ投稿料は支払っていないのですが会員としての投稿料に変更することは可能でしょうか?

回答

あなたはある学会の会員で、論文が学会誌にアクセプトされたけれども、うっかり非会員として論文投稿してしまい、非会員向けの投稿料を請求されてしまったということですね。会員なのであれば、投稿料を会員向けの金額に変更してもらうべきでしょう。

 


ジャーナル編集者に連絡をとり、自分は会員だが論文を投稿するときにうっかり非会員として登録してしまったと説明しましょう。その際、(もしお持ちであれば)会員番号を伝えましょう。編集者は、投稿料の変更に応じてくれるはずです。

 


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論文の取り下げ承認と引き換えに金銭を要求されています。どうしたらいいですか?

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Question Description: 

あるオープンアクセスジャーナルに論文を投稿しました。連絡を取り合うのに難があるジャーナルでしたが、何とかアクセプトにこぎつけることができました。しかし、校正原稿の送付とともに2000ドルの支払いを求められました。また、校正原稿のクオリティはひどいものでした。イントロダクションが削られ、表のレイアウトは最初よりはるかに劣った状態に変更されていました。表の半分は一段にまとめられてしまっていました。図は曲がり、フォントも統一されておらず、まともなジャーナルなら絶対に犯さないようなミスで溢れていました。そこで論文の取り下げを依頼すると、「retraction letter(撤回通知)を受け取るには1000ドルの支払いが必要」と言われました。この要求は不当だと思うのですが、どのように対応すべきですか?

回答

ご質問に「retraction letter(撤回通知)」とありますが、内容から考えて、「取り下げの承認通知(confirmation of withdrawal)」のことですね。ジャーナルとのやり取りで、「retraction letter」という言葉は使わないよう気を付けてください。論文の撤回は公になるので、ジャーナル側が論文を出版した後でそれを撤回するようなことになれば、あなたにとってより深刻な問題になってしまいます。

このジャーナルの信頼性は疑わしいと言っていいでしょう。論文が査読を受けたのかどうかについては触れられていませんので、査読はなかったものとして話を進めます。ジャーナルには、「取り下げ」を求めるメールを送りましょう。ジャーナル側は、取り下げの承認に費用は請求できないはずです。返答が得られなかったり費用を請求され続けたりする場合は、「取り下げ承認に費用を請求するのは非倫理的である」という一文を添えて、承認通知を再度要求しましょう。それでも適切に対応してもらえなければ、「所定の期限(12週間程度)を過ぎても承認通知がもらえない場合は、論文は“未投稿(unsubmitted)”とみなす」旨を述べたメールを送ってください。別のジャーナルに論文を投稿できるのは、この後です。また、新たな投稿先から疑問を持たれた場合に備えて、今回のジャーナルとのやり取りは証拠としてすべて保管しておくようにしましょう。

関連記事:論文の取り下げを依頼する英文メールの書き方

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