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学術出版における剽窃行為

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学術出版における剽窃行為

研究プロジェクトに着手した後で、似たようなアイデアがすでに実践されていることに気付く場合があります。論文を書く際は、すべてのソースを明確かつ完全に把握することがきわめて重要であり、発表済みのアイデアをクレジットなしで利用すると、剽窃行為とみなされます。

研究プロジェクトに着手してから、別の研究者が似たようなアイデアをすでに実践していることに気付くことは珍しくありません。調査の方法、疾病の経過、化合物の構造、何らかのプロセス等が、改良の余地がない状態ですでに明解に説明されていた場合、研究者はその説明をそのまま利用したい気持ちに駆られるかもしれません。

論文を書く際は、すべてのソースを明確かつ完全に把握することがきわめて重要です。別の人がすでに発表しているアイデア、発言、成果物をクレジットなしで利用することは、きわめて非倫理的な行いで、剽窃行為とみなされます。

 


剽窃の種類

1. 故意の剽窃行為とみなされるケース

  • 先行研究のクレジットを表示せずに、アイデアを自分のものとして発表する。
  • 研究で利用した技術について、技術の開発者のクレジットを表示しない。
  • ほかの研究者の意見やアイデアを自分のものとして発表する。


時間管理を怠ったり時間的余裕をなくしたりした研究者が、先行研究について調査する時間や自分で文章を書く労力を惜しんで、別の著者の成果物を大幅に剽窃してしまうケースが頻繁に起きています。


2. 予期・意図しない剽窃になるケース

参考文献を書くときに、ケアレスミスが発生することがあります。

  • 周知の事実(例:温暖化が気候変動の要因であることなど)を「共通の科学知識」と位置付け、その知見のクレジットを表示しない。
  • 文化的要因(例:特定の文化圏の若手研究者が、分野の権威である研究者の文章を言い換えることが失礼に当たると考え、元の文章をそのまま使用する。)
  • 言語的要因(例:非英語圏の研究者が、本来の意味を保持したまま英文を書き換えることを困難に感じ、元の文章をそのまま使用する。)
  • 専門性がきわめて高い論文を自分の言葉に言い換える自信がない。(このケースは学生や若手研究者の間で多く見られる。)


3. 自己剽窃 になるケース

  • 過去に自分が発表した論文の内容を、それらの論文のクレジット表示をすることなく、新たな論文または書籍に組み込む。
  • 本来は1本の論文として発表するべき内容であるにも関わらず、複数の論文に分割して出版する(サラミ出版)。


剽窃の検知

査読者やジャーナル編集者がもっとも発見しやすい剽窃は、先行論文の一節が一字一句そのまま使用されているものや、ごくわずかな変更しか加えられていないものです。以下の場合、査読者は剽窃を疑います:

  1. 文章によって文体が大きく異なる
  2. 文章によって英文レベルに大きな開きがある
  3. 文章に見覚えがある


現在では、多くのジャーナルが剽窃検知ソフトを利用しており、ネイチャー・パブリッシング・グループ、エルゼビア、ワイリー・ブラックウェルなどの大手出版社をはじめとする250社以上の出版社は、iThenticateによる「Crosscheck」を導入しています。Crosscheckによるチェックの結果が陽性の場合、論文は自動的にリジェクトされます。


意図しない剽窃を防ぐには

アカデミック・ライティングでは、論文内で参照したすべての先行研究を正しく引用しなければなりません。このことを肝に銘じておきましょう。研究で参照したすべての技術や背景について、そのソースを包括的かつ適切に示す必要があります。 

  • 先行論文の文章の言い換えが困難なら、文章をそのまま引用しても問題はありません。ただし、その場合は引用符で括らなければなりません。
  • 別の著者の言葉を言い換えたり要約したりする場合は、引用符を使う必要はありませんが、本来の意味を損なうことなく自分の言葉で言い換えられているかを入念にチェックしましょう。元の文章の言葉を数箇所変えただけでは、剽窃とみなされます。
  • 先行研究の内容をメモとして書き留めておく場合は、自分の言葉で書き直すようにしましょう。そのまま書き写すときは、その文章を引用符で括りましょう。そうすれば、後でメモを見返したときに、自分の言葉で書き換えたものかそのまま書き写したものかどうかを判別できます。
  • 別の著者の言葉を適切に言い換える自信がなくても、最大限の努力をしましょう。共著者や同僚、あるいは専門の編集サービスの力を借りて、文章を磨き上げましょう。
  • 参照する事実や技術が「共通の科学知識」であると思っても、元の著者のクレジットを表示しておくに越したことはありません。多分野を扱うジャーナルの読者は、必ずしもあなたの専門分野に詳しいわけではないので、その情報を歓迎してくれるでしょう。


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『不正行為への対応方針(Journal Speak)

剽窃が見つかった際は、著者の所属先や助成元に連絡を取ります。不正が認められた場合、当ジャーナルは声明を発表し、剽窃論文に双方向のリンクを張り、剽窃について記載した上で、剽窃元の論文に言及します。剽窃論文については、PDF版の各頁に剽窃について明記します。剽窃の程度によっては、論文を正式に撤回します。

-ネイチャー2

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剽窃を行なった研究者は、職や補助金を失う可能性があるだけでなく、学術コミュニティでの信頼を失います。博士論文に剽窃が見つかったドイツの国防相がその地位と博士号を失うという出来事3からも明らかなように、剽窃が見つかった者は、その罪から逃れることはできません。


米国研究公正局のミゲル・ローチ(Miguel Roig)氏の論文1では、学術界における剽窃の事例が紹介されています。その一部を紹介します:

  1. 一流病院に務めていた生化学者が、米国科学アカデミーの報告書の一節を著書で使用していた責任を問われ、辞職した。
  2. ある大学の学長が、大学の集会で行なったスピーチの一部で引用元を示さなかったことを非難され、辞職に追い込まれた。
  3. ある心理学者の博士論文の一部が剽窃であることを発見した大学は、その学者の博士号を撤回した。


まとめ

他人の成果物、文章、アイデアを自分のものとして発表することは、きわめて非倫理的な行為です。剽窃を行なった研究者には、少なくとも、ずさんで不注意な人物であるというレッテルが貼られます。最悪の場合、科学的不正行為に手を染めた研究者としての汚名を一生背負うことになります。引用を行う際は、ディテールに細心の注意を払い、文章を適切に言い換え、ソースを確実に示すことで、剽窃を追及されるリスクから身を守りましょう。


参考資料

  1. Roig M (2006). Avoiding plagiarism, self-plagiarism, and other questionable writing practices: A guide to ethical writing. Available at: http://facpub.stjohns.edu/~roigm/plagiarism/. Last accessed: December 28, 2011.
  2. Nature. Plagiarism and fabrication.  Editorial policies: Publication ethics. Last accessed on October 19, 2011. Available from: http://www.nature.com/authors/policies/plagiarism.html
  3. Boston W. Germany: Plagiarism Claims Take Down Guttenberg. Time World. March 3, 2011.

Editor審査でリジェクト後、同じ出版社内のオープンアクセスの雑誌へのトランスファーを勧められました。

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Question Description: 

有名誌(IF5~6)の雑誌に投稿後3日でEditor-in-chiefからリジェクトの連絡を頂き、同時に同じ出版社内のオープンアクセスの雑誌へのトランスファーを勧められました。Editorによる一次審査でリジェクトされる率は50~60%と連絡を頂きました。 オープンアクセスの雑誌は、2017年に創刊され、1年半で200本がPUBMEDに掲載されています。(有名誌の方は600~800本/年の出版論文数です。) トランスファーするべきでしょうか、他の雑誌を選ぶべきでしょうか。 掲載されている論文の質は私には悪くないように感じます。 リジェクトまでの3日間で with editorで5回くらいEditorがチェックしてくれたようで、閲覧時刻が変更になっていましたので、理由があってトランスファーを勧めてくれたように感じたのですが、3日でリジェクトされているので、全ての投稿論文に対して勧められているのでしょうか?

回答

編集者による初回審査では、原稿が対象範囲と合っていない、あるいは要求される質や基準を満たしていないという理由で、ジャーナルとしての優先度が高くないとみなされた結果、リジェクトと判定されることがあります。


今回の場合、編集長がオープンアクセスジャーナルを薦めたのは、あなたの論文がそのジャーナルの方により合っており、査読で良い評価を得られそうな可能性があると考えたためでしょう。ただし、論文をトランスファーしたからといって、出版が保証されるわけではないことに注意しましょう。原稿はやはり査読を経て、査読コメントと編集部の最終的な判断によって、修正や再投稿、リジェクト、アクセプトの判定が決まります。


また、提案されたオープンアクセスジャーナルの指標も必ずチェックし、所属先の大学や機関の要求を満たしていることを確認してください。ジャーナルのaims/scope(目的と対象範囲)を読んで、あなたの原稿がそのジャーナルの対象範囲に合うかどうかも確認しましょう。また、論文の構成を、そのジャーナルの規定に合わせる必要があります。論文掲載料もチェックし、規定の費用の支払いを許容できるかどうかも検討しましょう。


論文をトランスファーする前に、これらの要素について検討してみてください。


関連記事:

投稿論文ステータスのTransfer window open”とはどういう意味ですか?

剽窃チェックの類似度が高いのですが、どう対応すべきでしょう?

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Question Description: 

博士課程在籍中の学生です。Turnitinの剽窃チェックサービスについて質問があります。オンラインの有料剽窃チェックサービスをいくつか利用したのですが、Turnitinのものだけが23%と、ほかのサービスよりも高い類似度を示しました。この結果をどう解釈すべきですか?

回答

ジャーナル編集者は、剽窃検知ソフトに100%頼っているわけではありません。編集者たちはこのようなツールの限界を理解しており、類似度が30%を超えるような、剽窃の疑いがきわめて高いものでない限り、ソフトの結果だけを頼りに論文をリジェクトするようなことは行いません。


剽窃に関連するリジェクト判定は、編集者と査読者が協議した上で下されるのが一般的です。編集者たちは、内容的に文章の書き換えが難しい論文があることを理解しており、こうしたケースに該当するものは、類似度が高くても許容される場合があります。この傾向は論文の方法セクションでとくに顕著で、このセクションについては、編集者は許容範囲を拡げて対応しています。


したがって、編集者が気にかけているのは、論文全体の類似度ではなく、セクションごとの類似度です。Turnitinの詳細レポートを見れば、どの部分が類似箇所としてカウントされているかが分かるはずです。類似箇所の多くが方法セクションに集中しているなら、心配することはないでしょう。イントロダクションや考察のセクションに類似が多い場合は、できる限り文章を言い換えるようにしましょう。ただし、結果のセクションに類似が多いとなると、問題です。このセクションでは、類似に細心の注意を払わなければなりません。23%という類似度は決して高いものではないと思いますが、念のため、できる範囲で類似箇所の言い換えをしておくとよいでしょう。


関連記事:

剽窃検知ソフトを使用している編集者はどれくらいいるでしょうか?

クラリベイト・アナリティクスがJournal Citation Reports 2018を発表

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クラリベイト・アナリティクスがJournal Citation Reports 2018を発表

626日、クラリベイト・アナリティクスからJournal Citation Reports (JCR) 2018が発表されました。今回の最新版では、科学コミュニティのジャーナルパフォーマンスをより深く理解するための新たな分析が取り入れられています。

626日、クラリベイト・アナリティクスから待望のJournal Citation Reports (JCR) 2018が発表されました。このレポートは、Web of Scienceのデータを基に、インパクトと影響力の指標を組み合わせたものです。査読付き出版物の評価指標として広く利用されているJCRは、ジャーナル・インパクトファクター(JIF)をはじめとするジャーナルのメトリクスおよび指標を毎年公表しています。


プレスリリースによると、今回の最新版では、科学コミュニティのジャーナルパフォーマンスをより深く理解するための新たな分析が取り入れられています。2018年版 JCRの主な特徴は以下の通りです:
 

  • 世界80か国から234分野の11,655誌を収録
  • 276誌が初めてJIFを取得
  • 相互引用や自己引用を理由に20誌を除外(再収録のために毎年再評価される)
  • 平均でJIF値が10%上昇
  • JIFのパーセンタイル値がもっとも高かったジャーナルは、昨年と同じくQuarterly Journal of Economics (99.858、昨年は99.856) 
  • オープンアクセスジャーナルでJIFのパーセンタイル値がもっとも高かったのはLancet Global Heath (99.701、昨年は99.699)
  • JIFの上昇幅がもっとも大きかったジャーナルは、CA-A Cancer Journal for Clinicians (187.040から 244.585) 
  • NatureSciencePNASPLOS OneJournal of the American Chemical Societyでは、合計で50万件以上の引用があった


JCRの情報をさらに充実させるため、2018年版には著者の地理データや貢献度の高い機関のリストが含まれているほか、ジャーナル・プロファイルが刷新されています。また、JIFの計算方法をより分かりやすくするために、文書ごとの情報も提供されています。


クラリベイト・アナリティクスのInCitesマネージングディレクター、Emmanuel Thiveaud次のように述べています:


「本年、刷新されたJCRは、ジャーナルレベルでの文脈情報の追加と、JIFに寄与する個別項目の可視化により、ユーザーエクスペリエンスを改善し、ジャーナルが成功する要因について、さらなる理解をもたらします」


JCRの編集・管理チームは、引用メトリクスの操作を示唆する「例外的な引用動向」を数誌のジャーナルで確認したため、今年のJCR「編集に関する懸念表明」を公開しています。JCRに収録中のこれらのジャーナルついては、現在調査を進めています。


関連記事:

推薦したい査読者を編集者に伝える必要はありますか?

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Question Description: 

論文投稿先のジャーナルから、査読者を4人まで推薦できると言われました。査読者を推薦すると、何かメリットがあるのでしょうか?また、推薦した人たちに、個別に連絡を取る必要はありますか?

回答

査読者候補の推薦は通常、著者にとって良いことです。ジャーナル編集者は、査読者探しに苦労することがよくあります。また、多忙な研究者は、査読の依頼を断ることがよくあります。このため、ジャーナルの査読プロセスに遅れが生じることがあります。ですので、査読者を提案すれば、プロセスを速めることができるでしょう。ただし、編集者は、提案された査読者候補に必ずコンタクトするわけではありません。その中の何人かには連絡をするかもしれませんが、一人も選ばず、自分で探した人に依頼するかもしれません。したがって、査読者を推薦する場合、その人たちに個別に連絡をする必要はありません。適任だと判断されれば、ジャーナルからその人たちに連絡が行きます。

p値の用法をめぐり、学術界に議論の火花

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p値の用法をめぐり、学術界に議論の火花

研究で幅広く使用されているp値をめぐり、学術界に議論が巻き起こっています。偽陽性を防止するために有意水準を0.005に引き下げるべきだと主張する研究者グループがいる一方、別の研究者たちは、p値の誤用をなくすためのより良い方法を提案しています。   

p値とは、グループや関係性における違いが偶然によるものなのか、あるいは研究対象の変数によるものなのかを示す尺度で、幅広く使用されています。一般的に、p値が0.05未満の場合、結果は統計的に「有意」であるとみなされます。しかし一部の研究者たちは、偽陽性を防止するために有意水準を0.005に引き下げる必要があると主張しています。この提案は、科学コミュニティに議論を呼び起こしました。別の研究者たちはこの提案に対し、p値の誤用をなくすためのより良い方法は、それぞれのp値の使用方法が正当であることの説明を研究者に義務付けることであると主張しています。


問題となっているのは、現状のp値の有意水準には、誤用や誤解の余地が多く残されているという点です。20177月、72名の著名な研究者が、ある論文PsyArXivのプレプリントサーバーに投稿しました。その論文では、社会科学や生物医科学におけるp値の有意水準は、0.005に引き下げるべきであるとの主張がなされていました。論文の筆頭著者の1人で南カリフォルニア大学(ロサンゼルス)の経済学者、ダニエル・ベンジャミン(Daniel Benjamin)氏は、「p値の基準を0.05にするか0.005にするかというそれぞれの主張は、確立された知識ではなく、単なる“示唆的証拠”として扱うべきです」と述べています。


2017918日、ある研究者グループが、この主張に反論する論文を発表しました。論文の筆頭著者で、アイントホーフェン工科大学実験心理学者のダニエル・ラーケンス(Daniel Lakens)氏は、「p値の有意水準を厳格化することで、偽陰性が増加するなどの新たな問題が発生します。ある問題の解決策は、新たな問題の発生源になり得るのです」と主張しています。ラーケンス氏は、ネガティブな結果はジャーナルに受け入れられにくく、多くの論文が出版されないままお蔵入りになってしまうという問題についても指摘しており、「ある方針を実施する際は、意図しないネガティブな結果を招く可能性がないことを確認しなければなりません」と述べています。同氏は研究者に対し、データ収集の開始前に、選択したp値の有意水準とその選択の正当性を書き留めておくことを提案しており、「この作業によって、p値の責任ある使用につながるだけでなく、用法の分析も容易になります」と主張しています。


結果の再現不可能性の問題は、研究者が直面している最大の課題であり、責任を持ってp値を使用することには重要な意味があります。一部のジャーナルが、再現性がないことを理由にp値の使用を禁止しているように、研究者たちの間には、p値の扱い方に関する明確な分断が生じているようです。研究者たちはこの問題について、全会一致で納得できる解決策を見つけることができるのでしょうか。


あなたは研究でp値を使用していますか?有意水準の引き下げについてどう考えますか? あなたの研究には影響がありそうですか? 影響がありそうな場合、それはどのような影響ですか?下のコメント欄から、ご意見をお寄せください。


関連記事:

正確にp値を報告していますか?

Is my research significant? Why you shouldn't rely on p values


参考資料:

Big names in statistics want to shake up much-maligned P value

'One-size-fits-all’ threshold for values under fire

Editorial Assessmentのままステータスが変わらないです。丁寧な催促のメールを教えてください。

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Question Description: 

4月20日に論文を投稿してからEditorial Assessmentのままです。ステータスの日付も全く変わらないまま2か月が経過していたので、1週間前に状況確認のメールを送ったところ「At present, the manuscript is still under Editorial assessment. Once a decision has been reached you will receive notification. Should you have further concerns or queries, please let me know.」というメールが届きましたが、その後もステータスの日付も動いていません。学位論文であり結果を早く知りたいのですが(だめならほかに投稿しなければいけないので)どのように問い合わせをすればいいのでしょうか?

回答

プレッシャーの真っただ中におられる状況を、お察しします。たいていのジャーナルでは、編集部での初回審査に数週間を擁しますが、今回のケースは長すぎると思われます。急ぐ事情があることをジャーナルに説明して、プロセスの進み具合を確認してもらえるよう頼んでみましょう。あなたが博士課程の学生で、学位取得のためにアクセプト論文が必要であることを伝えましょう。結果がいつまでに必要なのかも伝えてください。博士課程の学生が卒業のために論文の結果を早めに必要とするケースは珍しくないので、編集者も状況を理解してくれるはずです。


私たちの「ジャーナルとコミュニケーションを取る際のテンプレート集」に、卒業のために早期の判定を求める場合のテンプレートが載っていますので、参考にしてみてください。


別の方法として、指導教官から編集者に連絡してもらうことも考えられます。指導教官や上席研究員の口添えがあれば、編集者も、これ以上遅れてはならないと感じるかもしれません。


関連記事:

ずさんな科学と闘うには―学術出版関係者の役割

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ずさんな科学と闘うには―学術出版関係者の役割
研究公正に関する権威で、「もっとも影響力のある生物医学研究者400人」の1人。疫学で博士号を取得した後は、教授、博士課程学生の指導者、学長などを歴任。複数の学術機関や研究機関で要職に就き、これまで700点近い出版物に著者/共著者として関わった。現在は、責任ある研究活動、問題のある慣行、学術出版不正などに関心を寄せ、科学的公正性を取り巻くジレンマについて世界的な取り組みを行うことの必要性を主張している。2017年には、第5回研究公正に関する世界会議(アムステルダム)のオーガナイザー兼共同議長を務め、研究公正に関する世界会議財団会長に就任した。

レックス・ブーテ教授は、アムステルダム自由大学で方法論と公正性の教育と研究に取り組んでいます。本インタビューの前半では、オランダ研究公正ネットワーク(Netherlands Research Integrity NetworkNRIN)について、そして倫理ガイドラインに関する教育を強化する必要性について伺いました。


後半では、研究公正というテーマをより深く掘り下げ、ブーテ教授の個人的見解も含めて、再現不可能性の危機の根本にある問題についてお話を伺いました。「ずさんな科学(sloppy science)」という怪物と闘うために、学術出版の関係各者(科学者、ジャーナル、出版社、図書館、学術機関)が何をすべきか、というトピックは、本インタビューのハイライトとなりました。


ブーテ教授の詳しいプロフィールは、インタビュー前半の記事こちらのページでご覧頂けます。  

好ましくない研究行為(questionable research practicesQRP)に関するアンケートに基づいた研究は、とくにQRPに対する見識を調査している点が興味深いですね。回答者に、研究公正に関する国際会議の参加者を選んだ点も見逃せません。この研究について詳しくお話し頂けますか?

このアンケート調査では、大小含めた60の不正行為がどの程度の頻度で発生していると思うかを尋ね、それぞれの不正行為が研究の信頼性に与える影響についても尋ねました。そして、これらの得点を掛け合わせて不正行為をランク付けしました。以下がそのトップ5です:
 

  1. 若手研究者への監督・指導の不足
  2. 研究の欠陥や制約の報告が不十分
  3. 研究プロセスに関する記録が不十分
  4. 他者の研究不正の可能性への見て見ぬふり
  5. 品質保証の基本原則の無視


驚きだったのは、研究公正における3大「重罪」がいずれも、60項目中の下位半分に位置していたことです。「ねつ造」および「改ざん」が信頼性に与える影響は多大ですが、発生頻度は低いまたはきわめて低いと考えられています。「剽窃」は、発生頻度は高いものの、信頼性に与える影響はきわめて低いと考えられています。


現在、私たちは、アムステルダム中の現役科学者に同様のアンケート調査を行なっています。この結果からは、研究公正の専門家ではない科学者の見識に関する知見が得られるでしょう。より大きなサンプルによる結果が得られるので、専門領域や学術的地位の違いによる差異についても検討できるようになります。

再現不可能性と信頼性に乏しい結果が、我々が今日直面している2大問題であるとするなら、これらの問題の根本にある要因とは何だとお考えですか?

確かに、出版された科学論文の再現率が1040%にとどまることが最近明らかになっています。この「再現性の危機」は、学術界の内外で多くの人々に衝撃を与えました。原因は1つではないと思いますが、十分な調査が行われていないのが現状です。とは言え、現在の科学研究の再現率が低い主な要因は、選択的報告であると言えるでしょう。ポジティブで画期的な発見は、高インパクトファクターのジャーナルにアクセプトされやすい上、被引用率も高くなる傾向があり、メディアからの注目も集まります。こういった反応は、科学者の将来を明るく照らしてくれます。一方、ネガティブな発見は注目されず、まったく表に出ないケースがほとんどです。私たちは、これを出版/報告バイアスと呼んでいます。結果として、出版される論文に激しい偏りが生じ、その効果や関連性が著しく過大評価されることにつながります。とくに、ポジティブな結果をもたらす小規模研究の大半が、偶然に頼ったものになってしまいます。また、QRPやさらに悪質な行為によって結果を良く見せようとする誘惑は、相当なものでしょう。こうして、出版物の記録がさらに歪められていくのです。


結果として再現性の水準が下がり、誤った科学文献からの生産に費やされたリソースが無駄になってしまいます。また、ネガティブな結果が出版されなかったことや、誤ったポジティブな結果が出版されたことが原因で、人間や動物に何らかの被害が及べば、それらは非倫理的なものとなります。理論的には、この問題は簡単に解決できます。すなわち、すべての科学的発見を発表すること、すべてのプロセスを透明にすること(すべてのステップでチェックと再構成が可能であること)を徹底すれば良いのです。研究を事前登録制にし、データ収集を開始する前に、プロトコルをリポジトリにアップロードすることを義務化します。同様に、データ分析計画、シンタックス、データセット、全研究結果のアップロードも義務化します。修正や変更は可能ですが、その際は必ず記録を残さなければなりません。これにより、ユーザーはデータ駆動の可能性があるアクションを特定できるようになります。これらの透明性の要素は、公開されている状態が理想的ですが、公開が遅れたり、条件付きであったり、不完全であったりするケースも多いでしょう。しかし、このような場合でも完全なる透明性の原則から逃れることはできません。たとえば、軍需産業に関する機密性の高い研究であっても、そのプロセスや結果は、確実に秘密を保持できる調査委員会による徹底的なチェックが、必要に応じて行なわれなければなりません。

とても建設的なアドバイスですね。NRINのブログ投稿で、「私たちの最優先事項は、“ずさんな科学”という怪物や、研究界に文化として蔓延するよこしまな動機や欠陥と闘うこと」と述べておられます。学術出版の関係各者は、どのように闘うべきだとお考えですか?

関係者の中でもっとも重要なのは、科学者たち自身です。研究公正の侵害やずさんな科学が生じるかどうかは、彼らのプロフェッショナルとしての振る舞いにかかっています。彼らは、自分自身、同僚、何より指導相手(博士課程の学生など)の研究において、研究公正を守る責任があります。もちろん、科学者の行動は、それぞれが置かれている環境に大きく依存しています。その地域の研究風土と科学システム全体の双方に、重要な決定因子が存在しています。残念ながら、これらの因子の一部は、よこしまな動機として機能することがあります。このような動機に流されないよう、科学者を勇気付け、正当な動機を与えるのは、周辺の関係者の役割です。彼らが力を合わせて、基準に従いやすく不正行為に走りにくいシステムを作り上げていかなければなりません。


この文脈において、研究機関が果たすべき一連の義務があります。研究機関は、適切なトレーニング環境、良好な設備、研究の質を守るための頑強なシステム(コード、ガイドライン、監査など)、優秀な指導教官を提供し、研究公正の侵害への申し立てに対処するための公正な手段を持っていなければなりません。さらに、日々困難に直面している科学者たちが、過ちを報告しやすい環境を作り、建設的な議論を行なえるような研究風土を育む義務があります。また、職員の雇用と昇進について、公正かつ公平な基準を設ける必要もあるでしょう。すなわち、インパクトファクターの高いジャーナルでの論文出版数や引用パラメータ(h指数など)だけを基準とするような評価形態であってはならないのです。


助成団体は、研究機関が上記の義務を果たすこと、そして、研究が完全な透明性を保持しながら、資金提供の動機となった研究計画書に沿って遂行されることを要求すべきです。助成団体は、研究者とその所属機関が頭を抱えるような措置を容易に取ることができます。申請者は資金を獲得したいので、資金提供者が要求する条件を受け入れやすいのです。助成団体はこの有利な立場を、研究の質と公正性の向上に活かし始めています。


科学誌や出版社にも、重要な役割が用意されています。彼らは可能な限り、Transparency and Openness Promotion (透明性とオープン性の促進、TOP)ガイドラインを導入しなければなりません。ジャーナルは、研究公正の問題に公平かつ適切に対応する必要があります(出版倫理委員会[COPE]のガイダンスに従うことが望ましい)。選択的報告を防止する観点から、科学誌は、研究結果に惑わされず、研究課題の重要性と、その方法の健全性のみに基づいて出版の可否を決めることが重要です。これはたとえば、「Registered Reports(登録済報告書)」という形式を導入することで実現可能です。また、ジャーナルは出版プロセスをより透明化し、より完全な研究の文書化を目指さなければなりません。デジタル化が進んだこの時代、ページ数に限界はないはずです。進化し続けるには、プレプリントや公開査読、出版後査読の採用が不可欠でしょう。私たちがどこに向かうのかを予測するのは時期尚早ですが、PubPeerによる大きな変革や、PeerJF1000researchなどのジャーナルによる新たなアプローチは、とても興味深い流れだと思います。

科学研究の発展、持続的な出版、研究・出版の最良の慣行を促進するために、オランダ以外の国にNRINを設置できるとするなら、どの国を選びますか?その理由も教えてください。

NRINをほかの国に設置したいという希望はありませんが、それぞれの国や地域に研究公正ネットワーク(RIN)を設置することは推奨したいですね。その場合は、我々の経験を喜んで提供しますし、できる限りの協力をしたいと思います。また、我々のウェブサイトはすべての人に公開されています。私たちを真似る必要はありませんし、それぞれの地域らしさを加味することが重要になるかもしれません。欧州、アフリカ、南米、アジアの各地域で、RINの開始を検討している同志がいます。もちろん、部分的に類似したネットワークやウェブサイトはすでに存在しています。たとえば、アジア環太平洋研究公正(APRI)ネットワーク欧州研究公正ネットワーク(ENRIOEthics Collaborative Online Resource EnvironmentEthicsCOREなどが挙げられます。


研究公正において、地理的不平等に関するエビデンスはほとんどないので、RINをもっとも必要とする国や地域を具体的に挙げるのは困難です。しかし、最近発表された研究によると、低中所得国(LMIC)ほど大きな問題を抱えているようです。科学研究の件数が急増している中国やインドのような国は、RINを開始する候補として最適かもしれません。その意味でも、6回研究公正に関する国際会議2019625日)が香港で開催されることは有意義なことだと言えるでしょう。


インタビューは以上です。ブーテ教授、貴重なアドバイスやご意見を共有して頂き、ありがとうございました!


インタビュー前半はこちらをご覧ください。 


業績リストの記載について

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Question Description: 

科研費応募の際の業績リストですが、どのような点を評価されているのか教えてください。たとえばインパクトファクターや引用数などの指標が評価の観点になることはありますか。その場合、数値の低い論文は記載しないほうがよいのでしょうか。

回答

助成金申請の審査では、出版論文の数、論文が掲載されたジャーナルの知名度やインパクトファクター、結果の本質や重要度(画期的な結果は当然ながら重要視される)などに重きが置かれます。

 


高いインパクトファクターは優れた研究であることを示すものであり、インパクトファクターは分野におけるジャーナルの相対的重要度の指標にもなるので、論文掲載元のジャーナルのインパクトファクターが重視されるケースは多いでしょう。ただしそれは、インパクトファクターの低いジャーナルで出版された論文を除外すべきだということではありません。たとえインパクトファクターの低いジャーナルで出版された論文が含まれていたとしても、助成金獲得のチャンスは、業績リストが長いほど高まるからです。

 


関連記事:

Avoiding rejection of grant proposals

査読中の原稿にミスが見つかりました。どうすべきですか?

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Question Description: 

論文を投稿し、査読中です。そんな中大変なことに気がつきました。もとになる調査データの人数の間違いです。調査データ人数と有効調査データ人数を間違えてしまいました。結果をまってから訂正したほうがいいでしょうか。

回答

原稿が査読中の場合、投稿システムから修正原稿をアップロードすることはできないでしょう。査読プロセスが進行中なら、この段階で編集者が原稿の修正を認めることはないと思われます。


でも、状況について編集者に説明することは可能です。査読の終了前に修正原稿を受け付けるかどうかは、編集者の判断次第です。


原稿のミスは査読の段階で見つかっているかもしれないので、ジャーナルから指示があれば、修正は可能です。いずれにせよ、まずは編集者に連絡してみましょう。


編集者によっては、いったん原稿を取り下げて新規の投稿をするよう求めるかもしれません。


関連記事:

説明が足りないところがある場合、withdraw して加筆修正すべき?

修正した論文が再査読に回されないのはなぜですか?

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Question Description: 

インパクトファクターが高め(2程度)のジャーナルに論文を投稿し、大幅修正を提案されたのでその通りにしました。再投稿後、ステータスがすぐに''Awaiting final decision: 最終判定待ち"に代わり(''Waiting for reviewer scores: 査読者の評価待ち’’というステータスには変わらないまま)10日間同じ状態が続いています。なぜ2回目の査読に送られないのでしょうか?これはリジェクトされる兆しでしょうか? 査読者は修正箇所を見ると思うので、本来なら再査読に回されるはずだと思うのですが。

回答

おっしゃる通り、大幅修正を行なった原稿は再査読に回されるのが普通です。しかしながら、原稿を査読に回すかどうかの判断は、編集者に委ねられています。編集者が再査読の必要性を感じず、レビューなしでの判定が可能だと考えれば、再査読が行われない場合もあります。ただ、今回はステータスがすぐに"Awaiting final decision"に変わったということなので、リジェクトの兆候とは言えないと思います。編集者が修正論文を確認してアクセプトかリジェクトかの判断を下すには、少々時間がかかるでしょう。もしかすると、編集者や編集委員の中に分野の専門家がいて、外部に査読に出さずに内部でレビューを行うことにした可能性も考えられます。


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査読に関する疑問トップ10

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査読に関する疑問トップ10

査読を通過した論文は信頼できると考えられているため、ほとんどの著者が査読付きジャーナルでの論文出版を望んでいます。しかし、査読プロセス中に著者が不安になることもよくあり、エディテージ・インサイトには多くの質問が寄せられます。その中から、もっとも多い10の質問を紹介します。

学術界では、査読を通過した論文は信頼できると考えられているため、ほとんどの著者が査読付きジャーナルでの論文出版を望んでいます。しかし、査読中に著者が不安になったりやきもきしたりすることもよくあります。査読は長期戦になる可能性のあるプロセスで、長い待ち時間、各段階の理解、査読コメントへの対応、コメントに基づく論文の修正などが必要になります。ジャーナルの査読プロセスに疑問を抱いた著者が、エディテージ・インサイトにアドバイスを求めてくることもしばしばです。私たちは長年にわたり、査読に関する質問の数々に対応してきました。この記事では、その中でもっとも多かった10の質問をまとめました。この記事を読めば、著者は査読に関する疑問を解消でき、編集者は著者が向き合っている困難を把握できるでしょう。


また、それぞれの質問への簡単な回答も用意しました。質問文をクリックすると、詳細な回答を読むことができます。


1. 推薦したい査読者を編集者に伝える必要はありますか?

ジャーナル編集者が査読者探しに苦労するケースは珍しくありません。出版プロセスを滞らせたくない編集者から、査読の候補者の提案を求められることがあります。候補者を提案した場合は、その候補者と個別に連絡を取ることは控えましょう。編集者がその候補者を適格と判断すれば、ジャーナルから依頼が出されます。


2. ジャーナルから追加研究を求められた場合の対応について

論文の出版をこれ以上遅らせたくないという気持ちはよく理解できます。しかし、その追加研究にどのような付加価値があるのかをしっかり検討する必要があるでしょう。対応の選択肢はいくつかあります。たとえば、追加研究の必要がなくなるように研究の焦点をややずらすという方法があります。あるいは、その追加研究が論文に密接に関係しないものなら、追加研究を別の論文としてまとめることが可能かどうかを編集者/査読者に相談してみましょう。この2つの方法がうまくいかず、やはり追加研究が不要と考えるなら、別のジャーナルに投稿することを考えてみましょう。


3. 編集者が1人の査読者のコメントしか送ってくれないのはなぜですか?

論文には少なくとも2人の査読者が付くのが一般的ですが、編集者が候補者を見つけられなかった場合は1人だけで行われるケースもあります。この場合その査読者は、ほかに査読者がいない分、論文をより厳密に審査します。


4. 大幅修正の判定を受けた論文の採択率はどれくらいですか?

修正論文の採択率はジャーナルや分野によって異なり、ジャーナルの採択率から個別の論文の判定を予測することは不可能です。査読者の懸念を解消することができれば、論文が採択される可能性は高まるでしょう。


5. 編集者査読者のコメントが相反している場合、どちらに従うべきですか?

査読者らのコメントが相反するのは決して珍しいことではありません。この場合、あなた自身がどちらの意見に賛同するかという点が重要です。その選択に基づいて、査読者と編集者の各コメントに対する返答を用意しましょう。また、編集者へのカバーレターで、相反するコメントの中から1つを選択する必要があったことと、その選択の根拠を説明しましょう。


6. 4誌にリジェクトされてしまった論文の改善方法を教えてください

投稿した4誌すべてが査読以前にリジェクトしたということは、ジャーナルの選択を誤っているか、各ジャーナルの基準に達するように論文を大幅に改善する必要がある可能性が高いでしょう。指導教官と相談の上、論文に不足しているものを把握し、弱点の改善に努めましょう。必要であれば、プロの校正サービスに頼るのもよいでしょう。


7. 査読者や編集委員になると昇進に有利?

査読や編集の依頼を受けるのは名誉なことで、多くのメリットを享受できます。履歴書に記載すれば、その分野の専門家として認められていることを示せますし、知識を増やす機会にもなります。また、経験豊富な教授や科学者で構成される編集委員から、名前を覚えてもらえます。ほかにも多くのメリットがあるので、特別な理由がない限りはぜひとも引き受けるべきでしょう。


8. 編集者が査読者を見つけられない場合、論文原稿を撤回すべき?

編集者が査読者を見つけられないとはっきり伝えてきた以上、論文を取り下げ、別のジャーナルに再投稿することをお勧めします。論文を取り下げるには、取り下げの意思を表明し、取り下げの承認を求めるメールを編集者に送る必要があります。


9. 査読が異常にスピーディーなのはリジェクトのサインでしょうか?

査読期間とその結果に相関はないと思います。査読は平均13ヶ月を要します。ジャーナルのウェブサイトで、平均査読期間を確認してみましょう。スピード出版のオプションを提供しているジャーナルもあるので、その場合は査読が早く終わったとしてもおかしくありません。


10. 修正した論文が再査読に回されないのはなぜですか?

編集者や編集委員に分野の専門家がいて、外部査読に回すのではなく、内部で査読を行うことにしたのかもしれません。編集者が2度目の査読の必要性を感じず、査読なしでも判定を下せる材料がそろっていると判断した場合、再査読は行われません。


シェアしたい査読プロセスでの経験談があれば、以下のコメント欄からコメントをお寄せください。また、査読に関する疑問があれば私たちにお気軽にご質問ください 


画像クレジット:shutterstock.com

再投稿での長期の査読期間

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Question Description: 

論文投稿後、一名の査読者からはすぐOKが得られたのですが、もう一名より問題点の指摘がありました。査読結果に従い、新たな解析等を含め修正を行うも、その度に以前にはなかった新たな修正の指示がみられます。すでに4回目の再投稿となっています。なにより困っているのはそのreviewerの査読期間が再投稿のたび1ヶ月以上を要していることです。現在シンプルな修正に対し、1ヶ月以上under reviewのままとなっています。 これは学位論文であり、その旨も編集部に当初より連絡していたのですが、すでに留年が決定しました。私としては指摘のたびにreviewerの意見を尊重し、迅速に、ほぼ完璧かつ丁寧に対応を行ってきたつもり(共著者も同様の意見)なのですが、正直我慢も限界に近いところです。 このような場合、編集部になんらか対応を依頼することは可能でしょうか。

回答

あいにく、査読者の中にはなかなか満足してくれない人がいます。編集部に助けを求めても、どうにもならないでしょう。修正原稿は編集者を通して査読に送られているので、編集者は査読の回数を承知しているはずです。残念ながら、この段階でできることはほとんどありません。不満を伝えることで査読者や編集者の心証を悪くし、リジェクトにつながらないとも限りませんので、じっと堪えるのが得策でしょう。今できるのは、進捗状況の確認を丁重に求めることぐらいです。原稿を取り下げて別のジャーナルに投稿することも可能ですが、それは、プロセスを最初からやり直すことを意味します。あなたの原稿は、査読プロセスの中では進んだ段階にあるので、もうしばらく耐えてみてください。じれったい気持ちはよく分かりますが、冷静さを保ちましょう。判定が遠からず出ることを祈っています!


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査読者に進捗状況を直接確認するのはルール違反ですか?

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Question Description: 

論文を投稿したジャーナルが、査読者候補4名をカバーレターに記載するよう定めていたので、それに従って4名の教授に査読者候補として名前を記載する許可をもらい、それらの情報を記載したカバーレターをジャーナルに送りました。その後8ヶ月経っても返答がなかったので、論文の状況について問い合わせると、「1人からは査読結果が返ってきたが、2人目の結果がまだ届いていない」との返答でした。現在、投稿から1年近くが経過していますが、2人目からの結果をいまだに待っている状態です。査読者に直接、査読の進捗状況を確認しても問題ありませんか?

回答

査読者に直接コンタクトをとることは、絶対に控えましょう。著者と査読者の直接的なやり取りは、ジャーナルの機密保持方針に抵触するため、ジャーナル側が良く思いません。


また、実際の査読者が誰なのかは、あなたも知らないはずです。ジャーナルが査読者候補をリストアップするよう求めていたとしても、そのリスト通りに査読者が選ばれるとは限りません。最終的に査読者を選ぶのは編集者です。あなたがリストアップした候補者は、誰も選ばれていない可能性もあります。したがって、査読者に直接メールを送ることはナンセンスです。


その代わり、23週間に一度の頻度でジャーナルにメール送って、論文の状況を尋ねるとともに、プロセスの進行を速めてもらうようお願いしてみましょう。


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2050年までに再生可能エネルギーに移行するためのロードマップ

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2050年までに再生可能エネルギーに移行するためのロードマップ

従来のエネルギー資源に代わる再生可能エネルギー資源を見つけることは喫緊の課題であり、気候変動によってその緊急性はさらに高まっています。そんな中、2050年までに139ヶ国の電力需要を風力、水力、太陽光のみで賄うための具体的なロードマップをまとめた論文が新たに発表されました。

従来のエネルギー資源に代わる再生可能エネルギー資源を見つけることは喫緊の課題であり、気候変動によってその緊急性はさらに高まっています。太陽光、水力、風力などの再生可能エネルギーを使用することで、再生不可能な資源である化石燃料や原油への依存を軽減することができます。そんな中、2050年までに139ヶ国の電力需要を風力、水力、太陽光のみで賄うための具体的なロードマップをまとめた論文が新たに発表されました。


発足から間もない査読付きジャーナルJoule誌で発表されたこの最新の共同研究には、スタンフォード大学土木環境工学科のマーク・Z・ジェイコブソン(Mark Z. Jacobson)教授を筆頭に、26名の共著者が名を連ねています。研究では、自国のデータを公開している139ヶ国を対象に、各国の輸送、冷暖房、工業、農業/林業/漁業における電力需要の分析が行われました。その結果、米国や中国などの人口密度が低い国ほど再生可能エネルギーに移行しやすく、人口密度の高い国や国土の狭い国、海に囲まれた島国などは移行が難しいということが分かりました。


この研究は、将来的に再生可能エネルギー100%に移行することを目指したもので、この目的を達成するためには大規模なインフラの変化が必要であると主張しています。また、この研究は、米国がコスト効率を犠牲にすることなく移行を達成できるということを示した、ジェイコブソン教授の過去の研究を拡張したものです。再生可能エネルギー政策の中には、ジェイコブソン教授の研究を根拠とするものが複数あります。今回の研究は、米国だけでなく世界中を対象にしており、屋上太陽光発電や再生可能エネルギー源の有効性、移行によって生み出される雇用と失われる雇用について、より正確な予測が行われています。


論文では、目的が達成できた場合は、地球温暖化が回避され、大気汚染で死亡する4700万人の命が救われ、医療や気候によるコストを年間20兆ドル削減できると予測しています。また、再生可能エネルギーへの移行によって、世界的にエネルギーが確保しやすくなり、2400万件以上の正規雇用が創出され、エネルギー価格の安定が実現すると予想しています。ジェイコブソン教授は、この研究が人々の意識を変え、議論を生み、変化に繋がる政策に影響を与えることを願っています。


DOI: 10.1016/j.joule.2017.07.005


査読者のコメントに同意できない場合は、どうすればいいですか

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3度目の査読が終わったのですが、結果はまたしても要大幅修正でした。査読者の1人は今回の修正に満足してくれましたが、もう1人は真逆の評価で、「仮説を実証するには別の実験が必要」と指摘されました。しかし、実験の被験者にアクセスする方法がもうなくなってしまったので、これは不可能でした。そこで、先行研究に倣う形で異なる実験を行なったのですが、前回の研究でも同様のメソッドを使ったにも関わらず、このアプローチには納得してもらえませんでした。編集者に、査読者の変更を求めることはできますか?あるいは、ほかに対処法がありましたらご教示ください。

回答

同じ論文に対して、査読者同士が真逆もしくは相反する意見を持つことは決して珍しくありません。したがって、著者が査読者の意見に同意できないという理由だけで、編集者が査読者を変更してくれることはないでしょう。それどころか、あなたの印象が悪くなってしまう可能性もあるので、このような要求は控えた方が賢明です。一方、査読者のコメントに反論することには何の問題もありません。編集者に、査読コメントに同意できない理由を11つ丁寧に説明しましょう。反論の裏付けとなるエビデンスも添える必要があります。反論に説得力があれば、編集者は間違いなくあなたの要求を検討してくれるでしょう。


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海外の学会やジャーナルへの論文投稿について

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日本では、学会に入会している会員の論文投稿が主流ですが、海外の学会やジャーナルでは学会入会などの規定が多いのでしょうか?また、専門領域やインパクトファクター以外に、適切な投稿先を選択できるツールがあれば教えていただきたいです。海外の出版社の見分け方だけでなく、掲載料が目的の学会やジャーナルなどの見分け方や目安も教えていただけると嬉しいです。

回答

国際誌の中で、学会の会員であることを論文投稿の前提条件とはしているところはほとんどありません。学会員であれば出版費用を割り引く、といった特典があるケースもあるかもしれませんが、すべてのジャーナルがそうだというわけではありません。興味がある学会の会員になるかどうかは、ジャーナルのウェブサイトをよく読んだ上で決めるようにしましょう。

信頼できるジャーナルとハゲタカジャーナルの見分け方ですが、信頼できるジャーナルであれば、たいてい、ScopusMEDLINEClarivate Analyticsなどのデータベースに登録されています。しかしながら、登録されていないからといってハゲタカジャーナルだとは限りません。Cabell’sによるジャーナルのホワイトリストとブラックリストが参考になりますが、これは有料サイトのため、所属機関がアクセス権を持っていないと閲覧できません。ほかには、ジャーナルが偽物でないことを確認するためのチェックリスト、Think.Check. Submitが参考になるでしょう。


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Editor審査でリジェクト後、他雑誌へのトランスファーを勧められたが他雑誌はどのように選定されたのでしょうか、また断りの連絡が必要でしょうか

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Question Description: 

エルゼビアの雑誌に投稿し、Editor審査でリジェクト後、エルゼビアの他雑誌へのトランスファーを勧められましたが、領域の違う雑誌や雑誌の求める論文と私の論文は明らかに違う雑誌が候補としてあがっていました。本当に勧めているのか疑問に思います。またトランスファーサービスを利用しない場合、雑誌には利用しない返事をする必要がありますでしょうか。

回答

ジャーナルは、編集部による判定通知の中で、他誌への投稿を勧めることがよくあります。こうした提案は通常、論文の専門分野に基づいて行われます。しかしながら、論文の対象領域は必ずしも考慮されるわけではありません。そのため、提案されたジャーナルが論文の対象領域と合わないというケースが生じるのです。

 

トランスファーサービスはオプションなので、関心がなければ、編集者に連絡をする必要はありません。連絡が必要なのは、このサービスを利用したいときだけです。

 


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7つの一般的な査読方式

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7つの一般的な査読方式

査読(ピアレビュー)とは、それぞれの分野の専門家が、科学的・学術的成果物を評価することです。査読は時代とともに進化しており、今日の学術出版界にはさまざまな査読方式があります。現在使われているもっとも一般的な査読方式を、図にまとめました。

査読(ピアレビュー) とは、それぞれの分野の専門家が、科学的・学術的成果物を評価することです。査読は学術出版に不可欠なプロセスであり、各ジャーナルが設けている対象範囲やクオリティの基準に合った論文のみを出版するためのプロセスです。各ジャーナルには、それぞれのアプローチ法や理念に基づいた独自の査読プロセスがあります。査読は時代とともに進化しており、今日の学術出版界にはさまざまな査読方式があります。以下の図は、現在使われているもっとも一般的な査読方式をまとめたものです。


7つの一般的な査読方式


1. Single Blind Peer Review(シングルブラインド・ピアレビュー、一重盲査読)

著者には、査読者が誰なのか分かりません。査読者には、論文のアクセプト/リジェクトを決める時点も含め、査読プロセス全体を通して著者が誰なのか分かった状態で進められます。


2. Double Blind Peer Review(ダブルブラインド・ピアレビュー、二重盲査読)

編集者は、著者にも査読者にも互いの素姓を明かしません。この方式では、氏名や所属などの個人情報はすべて伏せられた状態でプロセスが進められます。


3. Open Peer Review(公開査読)

著者も査読者も、互いに誰なのかが分かっています。この方式では、最終原稿と共に、査読者のコメントとそれに対する著者の回答も出版されます。


4. Collaborative Peer Review(共同査読)

この方式では、ジャーナルが提供するプラットフォーム上で、著者と査読者が論文の改善について議論することができます。基本的に、査読者の素姓は著者に伏せられていますが、出版時に明かされることもあります。


5. Third-Party Peer Review(第三者査読)

ジャーナルに論文を投稿する前に、査読サービスを提供する独立機関に依頼する査読です。著者は、その査読結果に基づいて修正した原稿をジャーナルに投稿します。


6. Post-Publication Peer Review(掲載後査読)

ジャーナルは、出版済み論文について議論ができるディスカッションフォーラムなどのプラットフォームを提供しています。プラットフォーム上に公開された出版済み論文は、不特定多数の読者が読んでコメントすることができます。


7. Cascading Peer Review(カスケード査読)

ジャーナルが、掲載の優先順位が低い、自誌の読者の関心を集めないなどの理由で論文をリジェクトした場合、著者に、別のジャーナルに投稿して査読を受けることを勧める場合があります。紹介されるジャーナルは、自誌の出版社が運営する別のジャーナルであることが一般的です。
 

7 common types of academic peer review

※こちらの図はPDF版のダウンロードが可能です。印刷するなどして参考資料としてお気軽にご利用ください。

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著者はシングルブラインド・ピアレビューを好む―ネイチャー・パブリッシング・グループの調査より

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著者はシングルブラインド・ピアレビューを好む―ネイチャー・パブリッシング・グループの調査より

著者が好むのは、シングルブラインド・ピアレビューとダブルブラインド・ピアレビューのどちらだと思いますか?ネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)が、大規模調査を実施しました。

著者が好むのは、シングルブラインド・ピアレビューとダブルブラインド・ピアレビューのどちらだと思いますか?ネイチャーパブリッシンググループNPG(ロンドン)が実施した大規模調査では、ダブルブラインド・ピアレビューを選んだ著者は少数派でした。学術界で一般的なシングルブラインド・ピアレビューの優勢は、今後も続きそうです。


従来型の査読形式である非公開査読は、学術界で広く採用されています。シングルブラインド・ピアレビューでは、著者に査読者の名前が明かされません。ダブルブラインド・ピアレビューでは、著者にも査読者にも互いの名前が明かされません。それぞれの方式に長所と短所があり、好まれる方式は研究者によって異なります。これまではシングルブラインド方式がより一般的でしたが、ダブルブラインド方式への関心も高まっています。2013年には、Nature Geoscience誌とNature Climate Changeでダブルブラインド・ピアレビューの選択が可能になっています。シングルブラインド・ピアレビューが依然として人気を保つ中で、ダブルブラインド・ピアレビューを選択する著者が多かったため、Natureシリーズでは最終的に、すべてのジャーナルでダブルブラインド・ピアレビューを選べるようにしました。


ダブルブラインド・ピアレビューへの需要を把握するため、NPGは、20153月~20172月の間にNatureシリーズのジャーナルに投稿された106373本の論文を対象に調査を行いました。その結果、以下のような興味深い傾向が明らかになりました:
 

  • ダブルブラインド・ピアレビューを求めたのは12%のみだった。
  • ダブルブラインド・ピアレビューを選んだ論文(14%)の大半は、NPGでもっとも評判が高いNature誌への投稿論文だった。
  • ダブルブラインド・ピアレビューを選んだ著者の割合がもっとも高かったのは、インド(32%)と中国(22%)だった。フランスと米国はそれぞれ8%7%だった。
  • 名声が低めの機関に所属する研究者ほど、ダブルブラインド・ピアレビューを選ぶ傾向があった。
  • 選択における性別間の有意差は見られなかった。
  • ダブルブラインド・ピアレビューでアクセプトされた論文は25%にとどまったのに対し、シングルブラインド・ピアレビューを選んだ論文のアクセプト率は44%だった。


著者がシングルブラインド・ピアレビューを好む理由はいくつかあるようです。最大の理由は、論文から自分のアイデンティティを完全に消し去ることが難しいからでしょう。オスロ大学の音楽研究者であるアレクサンダー・ジェンセニウス(Alexander Jensenius)氏は、「論文から私や共著者の痕跡をすべて取り除こうとすれば、内容の乏しい論文に仕上がってしまうでしょう」と述べています。また、たとえ名前が伏せられていたとしても、ほとんどの査読者は、担当論文の著者を推測することができます。Conservation Biology誌で編集者を務めるインペリアル・カレッジ・ロンドンのマーク・バーグマン(Mark Burgman)氏は、「ダブルブラインドを選ぶと、何かやましいことがあるのではと疑われることを恐れている著者がいます」と述べています。これもまた、著者がダブルブラインド・ピアレビューを選ばない方向に導いている理由かもしれません。以上の知見は、8回査読に関する国際会議で発表されました。


参考記事:

Few authors choose anonymous peer review massive study nature journals shows


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Reports from 2017 Peer Review Congress

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