Quantcast
Channel: エディテージ・インサイト
Viewing all 1873 articles
Browse latest View live

北朝鮮は、核廃絶で科学界での存在感を高められるか?

$
0
0
北朝鮮は、核廃絶で科学界での存在感を高められるか?

北朝鮮最高指導者の金正恩氏は最近、同国を「科学技術力および人材力を有する国家」にシフトさせていく考えを持っていることを明らかにしました。これまでは軍事力を強化するための研究に力を注いできた北朝鮮ですが、その研究分野は、材料科学、物理学、数学などにも徐々に広がりつつあります。

20184月末、北朝鮮は核実験場を閉鎖することを約束し、この決定に伴って行われた韓国との南北首脳会談は、両国の関係改善を予期させるものでした。この前進を楽観的に受け止めれば、北朝鮮がより積極的に科学技術の発展に力を入れ、科学分野で国際的な存在感を発揮してくれることが期待できます。


北朝鮮はすでに科学研究への投資を行なっているものの、国際誌に掲載された論文はごくわずかで、韓国と比較するとその研究成果は十分とは言えません(2017年の論文出版数は、韓国の63000本に対し、北朝鮮は80本のみ)。このように、世界の科学に対する北朝鮮の貢献は、現状ではないに等しいと言えます。


しかし、世界の科学への北朝鮮の関わりが改められていることを示す事実もあります。最高指導者の金正恩氏は訪中の際、北朝鮮を「科学技術力および人材力を有する国家」にシフトさせていく考えを持っていることを明らかにしました。これまでは軍事力を強化するための研究に力を注いできた北朝鮮ですが、その研究分野は、材料科学、物理学、数学などにも徐々に広がりつつあります。


北朝鮮の核廃棄によって、同国の国際科学研究への関わりに拍車がかかると見られています。これまでは、中国、ドイツ、韓国との共同研究が大半を占めてきましたが、今後はさらに広範な地域との協力関係の構築が求められます。北朝鮮の研究者との共同プロジェクトに関わっているロンドン大学バークベック校の地震学者、ジェームズ・ハモンド(James Hammond)氏は、「科学は関係を構築することができるツール」であると述べています。


しかし、北朝鮮に課せられている国際制裁が、何らかの障壁になる可能性もあります。たとえば、米国人が北朝鮮に入国するには、特別な許可を受けなければなりません。ジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院(SAIS、ワシントンDC)米韓研究所のジェニー・タウン(Jenny Town)氏は、「共同研究に関心を示す人は多いでしょうが、制裁が厳しさを増す中では、その機会を十分に得ることは難しいでしょう」と指摘しています。


今回の政治的前進が、北朝鮮と諸外国との外交関係にポジティブな影響を及ぼすのか、そしてその関係性が世界の科学への北朝鮮の貢献にどのような役割を果たすのか、今後の動向が注目されます。


関連記事:

平壌科学技術大学、米政府による渡航禁止措置を懸念

Korea: An emerging Asian superpower in science, technology, and innovation

韓国科学出版界が直面する課題


参考資料:

Science in North Korea: how easing the nuclear stand-off might bolster research

Bibliometric analysis of publications from North Korea indexed in the Web of Science Core Collection from 1988 to 2016


質の高い論文とは、どのようなものですか?

$
0
0
Question Description: 

論文の質の高さは、どのように見分けたらよいですか?

回答

論文の質を評価することは、簡単ではありません。質の高い論文にたくさん触れ、経験を積むことで、質の良し悪しが分かるようになります。とは言え、質が高いかどうかを判断するための基本的な目安として、以下のポイントが挙げられます:


出版元はどこか? 信頼できる大手ジャーナルから出版されているかどうかを確認しましょう。


著者は誰か? 著者名、所属先、過去の出版物を確かめましょう。高名な大学に所属しているか、信頼のできるジャーナルで論文を複数出版しているかを確認しましょう。


幅広く推薦されているか? 引用された回数を確かめましょう。自己引用が多い場合や引用元が一か所である場合は注意が必要です。また、ブログやソーシャルメディアで推薦されているかどうかも確かめてみましょう。


リサーチクエスチョンは明確か? リサーチクエスチョンと目的が明確に設定されているかどうかを確認しましょう。


研究における課題に言及しているか? 質の高い論文では、読者に多角的な視点を与えるために、研究内容における課題や議論の余地が設けられています。


このテーマについては、コーネル大学図書館による論文にためになるヒントが示されていますので、参考にしてみてください。

 

 

学会発表で効果的に研究をツイートするための5箇条

$
0
0
学会発表で効果的に研究をツイートするための5箇条

研究に関するコミュニケーションでは、ソーシャルメディアが重要な時代です。学会発表に関する実況ツイートを行うことで、効果的な研究コミュニケーションが可能になり、ネットワークの構築や共同研究の機会をつかむきっかけが得られます。

研究に関するコミュニケーションでのソーシャルメディアの重要性については、博士課程に進学する前から認識していました。しかし、博士課程の学生や若手研究者のほとんどがそうであるように、私もまた、研究と論文の執筆にほとんどの時間が取られてしまっています。


時間がない中で、ソーシャルメディアを使って効果的に研究を宣伝するにはどうすればよいのでしょうか。答えはシンプルです。学会発表に関するツイートをすればいいのです。Twitterは、あらゆるソーシャルメディア・プラットフォームの中で、研究をオンラインで宣伝するためのもっとも効果的なプラットフォームです。Twitterを使えば、学術コミュニティだけでなく、その他関係者や専門家、一般の人にも情報を届けることができます。


学会発表に関する実況ツイートを行うことで、効果的な研究コミュニケーションが可能になり、ネットワークの構築や共同研究の機会をつかむきっかけが得られます。学術コミュニティもTwitterを利用しており、あなたが届けたいと思うユーザーに向けてメッセージを届けることができるのです。


では、学会中に自分の発表に関するツイートを行うには、具体的にどうすればよいのでしょうか?また、実況ツイートをするにはどうすればよいのでしょうか。


以下の5項目に従えば、効果的なツイートができるはずです:
 

1. 学会前にツイートを用意しておく

ツイートとは、関連するハッシュタグやウェブサイトへのリンクや画像などの情報を含められる、140字以内のショートメッセージです。これを、学会会場に行く前に用意しておきましょう。いくつも用意する必要はありません。ただし、Twitterで研究のすべてを説明することはできないので、各ツイートには、ツイート単体でも研究が理解できるようなキーメッセージや、発表の背景情報を含めましょう。


以下のような内容のツイートを用意しておきましょう:
 

  • 発表を宣伝するためのツイートを1つ:これは、ほかの参加者にあなたの発表や研究について知ってもらうためのもので、そうした人々とつながるきっかけ作りになります。このツイートには、発表テーマと学会名を含めましょう。学会運営者などの関連人物をタグ付けするのもよいでしょう。
  • 発表内容に関するツイートを1つ:このツイートにも、発表テーマと参加する学会の情報を含めるようにしましょう。発表スライドの1枚目やアブストラクトの画像を添付するのもよいでしょう。
  • 研究のキーメッセージを含めたものを38ツイート:発表スライドの中からとくに重要なものを添付し、キーメッセージを強調しましょう。


以上のようなツイートを用意するにあたっては、次の手順を参考にしてみてください:
 

  • 研究の目的、結果、重要性、新規性の説明を含め、研究の概要を箇条書きにする。
  • 簡潔な文章で、46点の箇条書きにまとめる。専門用語や詳細情報、主要メッセージを伝えるために、不要な情報はすべて省く。
  • 関連するハッシュタグ(ハッシュタグの詳細ついては後述)や、触れておきたい関係者(大学、共著者、助成者、研究に興味を持ってくれそうな人など)を追記する。
  • 各文章を140字以内の簡潔明瞭な文に書き換える。140字を超えると、141文字目以降は表示されず不完全なツイートになってしまうので注意が必要。
  • 完成したツイートを見直し、分かりやすい文章になっているかどうかを同僚や友人にチェックしてもらう。


以上の手順に従えば、研究を効果的に説明するための一連のツイートが完成します。発表を終えたら、関連するリンク(大学のウェブサイトに掲載されている研究プロジェクトやプロフィールページ、ResearchGateのプロフィールページなど)や自著論文情報をシェアするのもよいでしょう。また、質問を受け付けたり、自分のTwitterやその他のソーシャルメディア(LinkedInResearchGateなど)アカウントへのフォローを募ったりするのも効果的です。


2. メディアを使用する

ツイートには、関連するスライドや図の画像を含めるのも効果的です。とくに、学会のアブストラクトのスクリーンショットをはじめとする画像は、ツイートの可視性を高めてくれるものです。関連する画像がなければ、無理に画像を付ける必要はありません。画像は、「装飾的」な要素ではなく、ツイートの文章を強化する視覚的メッセージと捉えましょう。


画像を添付する際の問題の1つが著作権です。自分が著作権を持つ画像以外のものを使用する場合は、必ずそのソースを記載してください。また、出版論文に組み込む予定のあるデータは、公開しない方が無難でしょう。


3. 適切なハッシュタグを選択する

ハッシュタグとは、1語以上のフレーズの前にハッシュサイン(#)を付けたキーワードです(例:#PhDadvice#HigherEd)。ツイートにハッシュタグを付けると、そのツイートがラベリングされます。ユーザーは、特定のハッシュタグを付けたツイートをしたり、検索をしたりすることで、そのラベリングされた会話に参加することができます。


ほとんどの学会がハッシュタグを用意しています。たとえば、20177月に開かれたScience in Public(英シェフィールド)では、「#SIPsheff17」というハッシュタグが使用され、学会参加者などはTwitterでこのハッシュタグを使用してツイートをしていました。このように、学会のハッシュタグがある場合は、ツイートにそのハッシュタグを付けるようにしましょう。加えて、研究テーマや、情報を届けたい閲覧者に関連するハッシュタグも付けましょう。ハッシュタグを通じて、学会に参加しているいないを問わず、あなたの研究に関心がある人々とつながることができるのです。


学会のハッシュタグとは別に、発表に関するハッシュタグを13個付けてみましょう。どのようなハッシュタグを使うべきか分からない場合は、SciHashtagSymplur.comなどのハッシュタグデータベースや、Hashtagify.meRiteTagなどのプラットフォームで探してみてください。ハッシュタグを使う前に必ず、そのハッシュタグがどのように使われているかを確認しましょう。なぜなら、もう使われていないものや、研究関連の用語が入っていたとしても、まったく関係のない用途で使用されているものもあるからです。たいていのハッシュタグ検索プラットフォームでは、ハッシュタグの使用状況(流行り廃り)に関する情報が得られます。誤ったハッシュタグを使用していては、思ったような注目を集めることはできません。


4. 同僚にツイートしてもらう

同僚が同じ学会に出席しているなら、自分の発表に関する情報をリアルタイムでツイートしてもらいましょう。その場合は、事前にツイート内容やあなたのハンドルネームを知らせておきましょう。また、用意したツイートを同僚と共有し、代理でツイートしてもらうのもよいでしょう。学会に同僚が出席していない場合は、TweetDeckHootsuiteBufferなどのプラットフォームを使って、発表が始まってから1015分後にツイートが行われるように設定することで、実況ツイートが可能になります。発表開始時間が遅延した場合に備えて、自動ツイートを発表時間よりも遅くしておくことが重要です。


5. Twitterに寄せられた質問に回答する

実況ツイートが終わったら、リツイートやお気に入り登録など、あなたのメッセージへのリアクションがあるでしょう。研究に関心を持った研究者から、ダイレクトメッセージ、質問、コメント、懸念などが寄せられるかもしれません。これらのメッセージは、研究に関するコミュニケーションが成功した証であり、研究者や関係者とつながるチャンスを得たということです。絶対に無視せず、誠実に返答するようにしましょう。賛辞には謝意を示し、懸念にはプライベートメッセージで対応しましょう。あなたの研究についてもっと知りたがっている人には、Eメールを送ったり、共同研究を持ちかけたりしてみましょう。また、心ない言葉や侮辱的な言葉を投げてくる人もいるかもしれませんが、この場合は無視するに限ります。


実況ツイートは、研究の認知度が高めるだけでなく、他者とつながる機会を増やし、注目を集める助けになります。適切なツールを使い、事前にツイートを準備し、念入りに計画を練ることによって、研究の効果的な実況ツイートが可能になるでしょう。


関連記事:

Is your research viral yet? Researchers and social media

イラン核合意からの米国の離脱が科学に及ぼす影響

$
0
0
イラン核合意からの米国の離脱が科学に及ぼす影響

今年5月、米国がイラン核合意からの米国の離脱を発表しました。各国がこの動きに対する懸念や見解を表明する中、科学コミュニティもまた、今回の決定が科学の未来に及ぼす影響を懸念しています。

201858日、ドナルド・トランプ米大統領は、イラン核合意からの米国の離脱を発表しました。ホワイトハウスは、「イランと関連する事業を縮小すること」を目的として、厳格な経済制裁を再開する意向を示しています。多くの国々がこの動きに対する懸念や見解を表明する中、科学コミュニティもまた、今回の決定が科学の未来に及ぼす影響を懸念しています。その懸念の内容を見ていく前に、まずは今回の動きを確認しておきましょう。


イランに制裁が課された経緯

イランは1970年代から核開発を進めており、2000年代初頭にはアラクとナタンズの2ヶ所に核濃縮施設を建設していたことが明らかになりました。イランのこのような核開発計画によって国際的な緊張が年々高まりを見せていたことを受け、国連、米国、EUは、イランにいくつかの制裁を課しました。これらの制裁によって輸出産業に大きな打撃を受けたイラン経済は、急下降を余儀なくされました。

(関連記事:イランにおける科学制裁前と制裁後


制裁がイランの科学に及ぼした影響

イランの研究者は、制裁によって国際共同研究に参加することができなくなりました。この措置は、イランの科学研究にも打撃を与えたのです。それどころか、実験器具の確保やジャーナルの購読が困難になったイラン人研究者たちは、国内で研究を行うことすら難しくなりました。他国との共同研究もままならず、イランの科学は衰退の一途をたどります。


イラン核合意が締結された経緯

イランは制裁後も核開発を続けました。イランに核開発の停止を呼びかける説得が繰り返し行われた後、「包括的共同作業計画(JCPOA」と呼ばれる合意が2015年に締結されました。この合意は、国連安全保障理事会常任理事国5ヶ国(中・仏・英・露・米)にドイツを加えた「P5プラス1」が先導し、イランが核計画を制限することと引き換えに、制裁を解除することを定めたものです。


合意締結後のイランと米国の関係

当初、イランの研究者たちは、この核合意によって国際共同研究の機会が開かれると楽観的な見方をしていました。しかし、米国とイランの外交関係が改善に向かうことはなく、Nature誌は、「両国間の科学的交流は停止した」と報告しています。米国科学アカデミーの工学および医学部門は、米イラン間の科学交流活動の一環として運営していたプログラムを打ち切る措置を取っています。


欧州がイランの研究者との共同研究を比較的円滑に進めていた一方、米国とイランの関係は同じようにはいきませんでした。核合意の締結後も引き続き課されていた制裁によって、米国の研究者は、イランの研究者と共同研究を行うには事前許可を得る必要がありました。このような規制は、両国の不和を引き起こす要因となっていました。


トランプ氏の決定に対する研究者たちの反応

今回の発表を受けて、研究たちはネガティブな影響が起きることを懸念しており、重要な科学研究が進まなくなる可能性だけでなく、世界平和についても憂慮しています。カリフォルニア大学アーバイン校の水文学者でイラン系米国人のソルーシュ・ソルーシアン(Soroosh Sorooshian)氏も、「誰もが心配しています。なぜなら、イランの核開発活動を監視し続けることも、共同科学研究の計画を実行することも難しくなってしまうからです」と述べています。以下は、地質学者で議会議員候補(カリフォルニア州)のジェス・フェニックス(Jess Phoenix)氏のツイートです:


『トランプ氏による#IranDeal(イラン核合意)からの離脱は、私たちの安全保障を危険にさらすだけではありません…世界中で行われている重要な科学研究を脅かすものでもあります。この件で、エビデンスベースの政策決定の重要性を改めて認識させられました!#Jess2018#science#CA25


一部の研究者は、2016年の大統領選当時から警戒を強めていました。トランプ氏は選挙期間中から、「恥ずべきイラン核合意の撤廃を再優先課題とする」ことを公約に掲げていました。トランプ氏が実際に大統領に就任する直前には、ノーベル賞受賞者や核兵器開発経験者、ホワイトハウスの前科学補佐官をはじめとする37名の研究者が、合意からの離脱に反対する公開書簡を大統領に送っています。


今後の動向

イラン核合意からの米国の離脱を受け、イランは核開発を再開する準備を進めていることを明らかにしています。現時点では合意を順守する必要がありますが、イランのハッサン・ロウハニ大統領は、「今後は国益に基づいた判断を下す」意向であることを表明しています。現在イランが関わっている国際共同研究や将来的な科学活動に、これらの動きがどの程度影響を与えるかは、今後のイランや諸外国の動向に左右されることになるでしょう


関連記事:

イランにおける科学制裁前と制裁

75 Nobel Laureates protest Iranian researcher’s death sentence

Springer Nature retracts 58 articles authored by Iranian researchers


参考資料:

How science will suffer as US pulls out of Iran nuclear deal

Explainer: How will Trump’s withdrawal from Iran nuclear deal affect research?

Top Scientists Urge Trump to Abide by Iran Nuclear Deal

What does the Iran nuclear deal entail, which world powers signed it and when was it agreed?

German Academic Institutions Look to Tap Iran's Scientific Pool

認可済みの治療法を、別の疾患に適用するケースレポートを発表しても問題ないですか?

$
0
0
Question Description: 

出版倫理について質問があります。ある疾患に効果的と見込まれる画期的な治療法があるとします。その治療法が、すでに別の疾患で米食品医薬品局(FDA)の認可を受けている場合、この治療法を医学コミュニティに認知してもらうための第一歩として、患者への提案およびその結果をケースレポートとして発表しても、倫理的に問題はありませんか?

回答

ケースレポートの発表は、臨床事例から得られた知見を広めるための良い方法です。医療従事者は患者と関わる中で、未知の症状、既知の疾患の合併症、治療様式や新たなアプローチによって引き起こされる異常な副作用/有害反応といった、例外的な状況に遭遇することがよくあります。通常、このような事例はケースレポートとして発表され、医学コミュニティに新たな知見を提供します。研究者たちはこの知見をもとに、さらに研究を発展させることができます。


FDAに認可された治療法が、別の疾患にも適用できることを示したケースレポートであれば、ぜひ発表すべきです。倫理的な問題は一切ありません。もちろん、「この治療法は、異なる疾患でFDAの認可を受けている」ということを説明する必要はあります。あなたのおっしゃる通り、このステップは、治療法の新たな適用方法を医学コミュニティに示すための第一歩になるでしょう。


関連記事:
若手研究者のためのケースレポートの書き方指南

頭脳逆流:中国人研究者が中国に戻る理由とは

$
0
0
頭脳逆流:中国人研究者が中国に戻る理由とは

20世紀後半から21世紀初頭、科学研究者としてのキャリアを開拓する機会が十分に与えられていなかった当時の中国人研究者は、米国をはじめとする西洋諸国にその拠り所を求めました。しかし、そのような時代は過ぎ去り、現在の中国では逆転現象が起きています。

近年、中国の経済や科学技術は空前の発展を遂げており、世界中から注目を集めています。この新興超大国は、研究成果や研究投資の面で将来的に米国を凌駕すると考えられています。しかし、20世紀後半から21世紀初頭にかけての状況は、今とは大きく異なっていました。科学研究者としてのキャリアを開拓する機会が十分に与えられていなかった当時の中国の学生や研究者は、米国をはじめとする西洋諸国にその拠り所を求めました。結果として、より良いキャリアや豊富な研究費、先端的なリソースを求めた若く優秀な人材が大量に流出したのです


しかし、そのような時代は過ぎ去り、現在の中国では逆転現象が起きています。中国は20年ほど前からイノベーションで世界をリードすることを目指しており、その成果は確実にあがっています。2017年にはGlobal Innovation Indexのイノベーション先進国ランキングで22位となり、上位25ヶ国の仲間入りを果たしました。2016年には発明による特許取得数で、1位の米国と2位の日本に次ぐ世界3位にランクされました。科学技術で世界をリードする国になるため、中国は科学研究への投資を着実に増やしてきました。国立科学技術評価センターとクラリベイト・アナリティクス社による共同レポートによると、中国は2006年時点でGDP1.42%を研究開発費に当てていましたが、2016年にはその割合を2.1%まで増加させています。このような取り組みによって、中国は科学研究大国として成長を遂げたのです。


現在の中国には、中国育ちの研究者だけでなく、より良い機会を求めてかつて西洋諸国に旅立った研究者にも、多くのチャンスが転がっています。中国政府は数年前から、流出した頭脳を取り戻すことを目標に掲げています。2008年には、国の科学技術のさらなる発展のために、優秀な人材や若手研究者を母国に呼び戻すことを目指す、「Thousand Talents Program」という人材雇用プログラムを開始しました。先進諸国が科学研究費を削減する中、中国は研究予算プログラムや職業機会を豊富に提供することで、多くの研究者を惹き付けています。マサチューセッツ工科大学のポスドク、リンセン・リー(Linsen Li)氏は、このプログラムのもとで母国に帰ることを決断した1人です。米国では教職に就けずにいたリー氏にとって、このプログラムからのオファーは魅力的でした。現在は、65千ドルの給与と新居購入費や研究費の支給を受けながら、上海交通大学の教員を務めています。中国はこのプログラムによって、流出した人材の多くを取り戻すことに成功しています。


海外から中国に帰国した研究者の生活とはどのようなものでしょうか。豊富な職業機会と魅力的な賃金を提供することで、人材は確かに戻ってきています。しかし、マイナス面が存在するのも事実です。ペンシルベニア州立大学の神経生物学者、ゴン・チェン(Gong Chen)氏は、「帰国した研究者には、すぐに成果をあげ、高名なジャーナルで論文を出版しなければならないという大きなプレッシャーがかけられている」と指摘しています。Nature誌の記事では、中国には西洋の大学と同レベルの大学が一握りしかないと指摘されており、この事実を認識せずに帰国した中国人研究者は、科学的レベルが劣る環境に苦しむかもしれません。一部の大学では、国際誌での論文発表へのプレッシャーに起因する科学的不正行為が蔓延しており、このことも、帰国した研究者の生産性に影響を与える可能性があります。また、年功序列システムといった中国の政治的・社会的文化への順応も、西洋で長年暮らした研究者にとっては障壁となるかもしれません。


海外の中国人研究者を高給で雇用する方針にシフトした結果、中国学術界のシステムに、変化が見られ始めています。小規模ながらも、エリート研究者のコミュニティが形成されつつあり、その勢力は徐々に拡大しています。材料科学やコンピューター分野の研究者にもっとも高い賃金が支払われており、純粋科学を専門とする研究者は比較的少なめです。こうした高給取りの研究者たちの誕生によって、若手研究者および海外の学位や経験を持たない研究者と、海外帰国組の研究者との間に、大きな格差が生じています。中国人研究者の中には、両者の収入格差が若手研究者の人材流出につながり、コミュニティ内の争いに発展するかもしれないと考える人もいます。


中国の科学研究は世界に多大な影響を与えており、中国での研究生活に関心を示しているのは、中国人研究者に留まりません。これまで、研究者にもっとも人気が高い国は米国でした。しかし、トランプ政権の科学研究費の削減政策や特定諸国からの入国規制によって、有能な外国人研究者は他国からのオファーを受け入れ始めています。具体的には、フランス、カナダ、中国が、在米研究者の招聘に強い関心を示しており、その中でも高給と潤沢な研究費を提供できる中国が、もっとも魅力的な選択肢となっています。研究生活を送る国として中国が魅力的であるもう1つの理由は、入手困難なリソースや情報へのアクセス権を提供しているからです。パスツール研究所(パリ)を率いる結核研究者のブリジット・ジケル(Brigitte Gicquel)氏は、取引先の上海の研究所から、結核研究に用いる150万種の薬品へのアクセス権を提供されているため、毎年3ヶ月間は中国で研究活動を行なっています


中国の科学技術は、この数十年で大きな飛躍を遂げました。自国の存在を示すために、また国際協力プロジェクトの一員になるために長い道のりを歩んできた中国は、今や世界最高の研究者たちを雇用できる立場にいます。ハーバード大学医学大学院でのポストを捨てて中国医学科学院血液学研究所(SKLEH、天津)所長に就任したタオ・チェン(Tao Cheng)氏は、「中国政府は、より高いレベルで国際的目標を達成するためのプロジェクトを開始し、世界を先導すべき」と述べています。「科学技術で世界をリードする」という中国の目標は、習近平国家主席が掲げる「中国の夢」思想にも色濃く反映されています。しかし、この大志を現実のものにするには、有能な人材を雇用するだけでは不十分でしょう。ニューヨークを拠点に活動するジャーナリスト、ニナ・ファン(Nina Huang)氏は、中国はまず「自国の学術機関が抱える体系的問題にメスを入れる必要がある」と指摘しています。中国は、科学技術研究で世界の中心に躍り出るために多大な労力を投入しています。改革が首尾よく進めば、その目標が達成される日も遠くはないかもしれません。


参考資料:

The U.S. is risking an academic brain drain

The rise of China’s millionaire research scientists

China concentrates on sci-tech innovation

Why China’s overseas academics are loath to return home

Foreign-born scientists find a home in China

China's 'Best And Brightest' leaving U.S. universities and returning home


関連記事:

学術出版における中国の立ち位置とは?

科学の研究と出版において中国は世界のリーダーになりつつあるのか?

Does China need to look beyond SCI?

国際的なPhDブームにおける中国の立場は?

再投稿時のカバーレターの書き方について

$
0
0
Question Description: 

とあるジャーナルに論文を投稿し、peer-reviewでのminor reviseを経て、無事passとなりましたが、書類の不備でその後のプロセスが進まずに期限切れとなってしまいました。必要書類がようやく揃い、論文内容をそのままに、再度同じジャーナルに(投稿規定に沿って)新規論文として投稿しようと考えています。一度はpeer-reviewをpassした手前、その旨をカバーレターに盛り込もうと考えていますが、失礼にあたるでしょうか。また記載する場合には、どのような文面で記載すれば失礼なく受け取ってもらえるのでしょうか。

回答

前回の投稿論文が出版間近だったにもかかわらず、目前でふいになってしまったということですね。新規の投稿として提出するつもりの論文のカバーレターに前回の投稿の経緯を記載しても、何ら問題はありません。

 

カバーレターは通常、得られた結果の概要や、論文がそのジャーナルに適している理由を述べるものですが、論文の経緯を説明することに使っても構いません。カバーレターには、その論文が過去に学会でポスター発表されたことがあるかどうかを書くこともあります。したがって、前回の投稿の経緯について述べても、まったく問題はありません。念のため、論文のIDと前回の投稿日も記載するようにしましょう。

 

このように、経緯を伝えることが失礼にあたるということはまったくなく、ジャーナル編集者にとってはむしろ、参考情報が得られることになります。経緯を把握していることで、査読プロセスの進捗を管理しやすくなりますし、より迅速なアクセプトにつながる可能性もあるでしょう。

 

関連記事:

伝統医学研究の基準となる6つの倫理原則

$
0
0

伝統医学(Traditional Medicine, TM)の研究の基準となる倫理事項については、活発な議論が行われています。議論のテーマとなっているのは、薬用植物の無秩序な採取、現地の伝統的知識保持者に対する研究者の倫理的責任、治療の補助または代替手段としての伝統医学の信頼性等々。このプレゼンテーション資料では、伝統医学研究における倫理の重要性と、伝統医学研究で守るべき6つの倫理原則について説明しています。


若手研究者のためのデジタルツールガイド:文献検索と文献管理ツール

$
0
0
若手研究者のためのデジタルツールガイド:文献検索と文献管理ツール

多くのタスクやプレッシャーを抱える現代の研究者をサポートするために、学術出版界ではさまざまなイノベーションが生まれており、文献検索や研究の発信をサポートするデジタルツールが数多く登場しています。

研究や学術出版界の状況は、世界中で変化を見せています。競争が激化する学術界において、科学者はより短期間で論文を出版しなければならないというプレッシャーに晒されています。その一方で、ジャーナルの出版プロセスは遅いため、研究者たちはライバルに先を越されまいと必死です。研究者が果たすべき役割は今や、研究の実施と論文の執筆・発表だけに留まりません。現代の研究者には、グローバル規模での共同研究、査読者やジャーナル編集者としての研究コミュニティへの貢献、学会参加による同業者とのネットワーク構築、科学コミュニティおよび一般コミュニティへの研究の発信、最新技術やイノベーションに関する情報のアップデートなどが求められています。加えて、ハゲタカ出版社をはじめとする、学術出版界にはびこる数々の罠にかからないよう細心の注意を払う必要もあります。現代の研究者には、実に多くのタスクが課されているといえるでしょう。


多くのタスクを抱える現代の研究者をサポートするために、学術出版界ではさまざまなイノベーションが生まれています。2013年以降、文献検索、論文執筆、参考文献管理、ジャーナルの選定、共同研究、ネットワーク構築、データシェアリング、研究の発信をサポートするデジタルツールが、学術界に数多く登場しています。また、オープンサイエンスやオープンデータを促進するツールの開発や、科学の効率化を目指す標準化に向けた取り組みも進んでいます。ユトレヒト大学図書館の司書、ヨルン・ボスマン(Jeroen Bosman)氏とビアンカ・クラマー(Bianca Kramer)氏は、「Innovations in Scholarly Communication(学術コミュニケーションにおけるイノベーション)というプロジェクトを発足し、学術出版界に登場している数々のツールやイノベーションをまとめる作業を行なっています。現時点で400以上のツールがリスト化されており、それらが研究ワークフローのどの局面で利用されているかについて調査を進めています。


2部構成でお送りする本記事では、「Innovations in Scholarly Communication」プロジェクトにリストアップされた、研究者が研究ワークフローのさまざまな局面で使用できるツールの一部を紹介していきます。前半の今回は、文献検索と文献管理の支援ツールをご紹介します。


文献検索

これまでに出版された何百万本もの論文から必要なものを掘り出すための支援ツールには、検索エンジン、キュレーションサイト、データベースなど、さまざまなものがあります。これらのツールは、関連性や信頼性が高い文献を探し出すことができるので、文献レビューを行う際に役立ち、分野の最新情報をキャッチするのにも便利です。一部のデータベースには、これらの作業をより簡単に行える固有の機能が付いています。以下はその一例です:


Google Scholarほとんどの研究者が一度は利用したことのあるツールでしょう。関連するキーワードを入力すると分野をまたいだ文献検索が行われる、人気の検索エンジンです。


F1000Prime生物学・医学分野の重要研究論文を特定して薦めてくれる検索エンジンです。このツールの強みは、一流科学者や臨床医のグループがサイトに登録する論文を選定しているという点です。そのグループが、論文のレーティングや重要度の説明を行なっています。


PubPeerDOIPMIDarXiv ID、キーワード、著者名などの情報を入力して論文検索ができるプラットフォームです。文献検索だけでなく、論文へのフィードバックの提供や、匿名でのやり取りもできます。


PubChase PubMedデータベースに基づくツールで、生物医学分野の論文のアブストラクトを検索・閲覧するほか、それらを個人のPubChaseライブラリにブックマークすることができます。また、ライブラリにブックマークされた論文をもとに、ユーザーにお薦めの論文をリストアップしてくれる機能が付いています。


文献管理

文献管理ツールは、論文を執筆する際に参考/引用文献の管理を行うためのソフトです。文献管理ツールでは、論文の全文および参考文献リストの保存が可能で、PDF上にメモを書いたり、注釈をつけたりする機能があります。このツールでもっとも重要なのは、論文執筆時の引用文のフォーマットや参考文献リストの調整機能です。すなわち、たとえば論文がジャーナルにリジェクトされ、別のジャーナルに再投稿しなければならないようなケースでも、参考文献リストや引用文のフォーマットをその都度ジャーナルに合わせて調整し直さなければならない面倒な作業を、クリック1回で完了してくれるのです。以下に、人気の文献管理ツールを紹介します。分野によってふさわしいツールが異なる場合があるので、ツールを選ぶときは、分野の専門家に相談するとよいでしょう。


Zotero文献を収集、管理、引用、シェアするための支援ツールであるZoteroは、ユーザーが読んでいる文献を自動でダウンロードしてPDF形式で保存し、すべての書誌情報を抽出してくれます。Microsoft Wordや、Open OfficeGoogle Docsで論文を執筆している場合、参考文献の一覧が自動的に表示されるので、検索や引用文の追加が簡単に行えます。PDF上での注釈の付与機能はありませんが、検索機能付きの個別ノートファイルを追加することができます。


MendeleyMendeleyは、ソーシャルネットワーク機能、文献管理機能、文献閲覧機能が統合されたプラットフォームです。文献の保存・保管が容易になるだけでなく、Microsoft Word文書内での引用が可能で、シームレスに参考文献の追加が行えます。MendeleyZoteroと異なるのは、プログラム内でのPDFの閲覧および注釈の付与が可能であるという点です。また、このプラットフォームの最大の特徴は、ユーザー同士でプライベートグループを作成して、文献の共有などが簡単に行える点です。


ReadCube論文の検索、管理、注釈の付与が可能なReadCubeは、PDF上での高性能閲覧が可能で、双方向の引用機能、著者情報の統合、補助的データへのアクセス、関連論文の閲覧、図をフルスクリーンで閲覧できる機能が特徴です。


EndNoteクラリベイト・アナリティクス社によるこのツールは、論文出版から参考文献・引用文献の管理までが可能で、研究者から高い支持を集めているソフトウェアです。EndNoteでは、参考文献の手動追加およびインポートによる独自の参考文献ライブラリの作成、参考文献の整理・保管、引用文の追加・編集が行えます。また、2000種類以上から選べる引用フォーマットに自動調整することができます。さらに、ユーザー同士で、自分たちの研究や参考文献をフルテキストファイルやノート形式でシェアすることもできます。


記事後半では、プロジェクト管理やデータシェアリングの支援ツールを紹介します。


関連記事:

Commentary論文の信頼性は、原著論文よりも低いですか?

$
0
0
Question Description: 

原著論文として投稿した論文を、Commentaryとして再投稿するよう編集者から薦められました。この形式で投稿するには、今の論文を圧縮する必要があるようです。編集者に従うべきか、インパクトファクターがもっと低いジャーナルで原著論文としての出版を模索すべきか、悩んでいます。アドバイスを頂ければ幸いです。

回答

Commentary(論評)とは通常、出版済みの論文・書籍・レポートへの注目を促すことや、批評を行うことを目的とした短い論文のことを言います。特定の分野でより広範な関連性があることを指摘するために、既存の研究結果を用いて議論を展開する手法が一般的です。Commentaryも信頼性は高いですが、原著論文ほどではありません。なぜなら、このタイプの論文にはオリジナルのデータが含まれておらず、著者の視点や個人的経験を基にした、裏付けに乏しいエビデンスに大きく依存しているからです。


編集者がCommentaryとして出版することを薦めてきたのは、論文のデータが不十分だったためかもしれません。とは言え、「論文のデータは十分で原著論文としてふさわしい」との信念があるなら、別のジャーナルに投稿してセカンドオピニオンを求めるのもよいでしょう。そのジャーナルからも同じことを提案されたら、そのときは原著論文として出版する道はあきらめ、論文を圧縮して最初のジャーナルにCommentaryとして再投稿しましょう。


関連記事:

6 Article types that journals publish: A guide for early career researchers

Minor revisionからのdecision in processはどのくらいまてばいいのでしょうか?

$
0
0
Question Description: 

お世話になります。先日editage様に校正依頼お願いしたcase reportが某ジャーナルにminor revisionとなりました。比較的簡単な修正内容でありすぐ修正し再投稿したところdecision in processになりました。しかしながら数日で返信が来るだろうと考えていましたが3週間音沙汰がありません。内容に不備があったのかとかまさかのここからのrejectかとヒヤヒヤしております。 一度現在の状況につき御助言お願い申し上げます。

回答

通常、大幅または小幅修正の判定を受けた論文は、2回目の査読に送られます。ただし、小幅修正の場合は、再査読に送ることなく、編集者が自分で判断を下すこともあります。また、"Decision in process"のステータスが数週間続くことは、とくに珍しいことではありません。


この段階での遅れはたいてい、編集者が判定待ちの論文を多数抱えているために起こります。あなたの論文も、順番待ちをしなければならないのです。このことは結果とは関係ありませんので、心配には及びません。すべての修正漏れなく行なったのであれば、望みを持っていいと思います。もう1週間待ってみて、それでも音沙汰がなければ、編集者に問い合わせてみましょう。


関連記事:

スウェーデンのコンソーシアムがエルゼビアとの契約更新を拒否―欧州で高まるオープンアクセス化への気運

$
0
0
スウェーデンのコンソーシアムがエルゼビアとの契約更新を拒否―欧州で高まるオープンアクセス化への気運

世界中で起きている出版社とコンソーシアムの対立に、収束の兆しが見えません。ドイツ、フランス、オランダのコンソーシアムが学術出版社との契約を打ち切る中、スウェーデンのコンソーシアムも、出版大手エルゼビアとの契約を更新しないことを発表しました。

世界中で起きている出版社とコンソーシアム(共同事業体)の対立に、収束の兆しが見えません。ドイツ、フランス、オランダの大学や図書館を含むコンソーシアムが学術出版社との契約を打ち切る中、スウェーデンのBibsamコンソーシアムも、この対立構造の仲間入りを果たしました。スウェーデン国内の85の高等教育機関および研究機関が参加しているBibsamコンソーシアムも、出版大手エルゼビアとの2018630日以降の契約を更新しないことを発表しました。


Bibsamコンソーシアムのメンバーによると、同コンソーシアムはこれまで、エルゼビアのコンテンツへのアクセス権を得るために計1200万ユーロ(約1420万米ドル)を費やしてきました。また、コンソーシアムに所属する機関の研究者たちは、エルゼビア誌で論文を出版するために、論文掲載料を払ってきました。ストックホルム大学の学長とBibsamコンソーシアムの委員長を兼任するアストリッド・ソダーバーグ・ウィディング(Astrid Söderbergh Widding)氏は、「科学情報の価格高騰によって出版社が多額の利益を得る一方で、大学の予算は圧迫され続けています」と指摘し、「エルゼビアの方針は、オープンアクセスへのシフトを希望するコンソーシアムの方針と異なるため、契約を更新しないという決断に至りました」と述べています。


欧州委員会(European Commission)は、2020年までにすべての科学研究を無料公開するための歩みを進めています。 この目標が達成される可能性は低いものの、欧州の図書館や大学は、この方針に沿った取り組みで一定の成果を挙げており、今回のBibsamコンソーシアムの決断も、その一環といえます。


大学や図書館は、出版社が設定する高額なアクセス料に対して不満を溜め込んでおり、今年5月初旬には、欧州各国の代表者が集まって、前進に向けた話し合いが行われました。複数のコンソーシアムと大手出版社との契約交渉が破談に終わったとネイチャーが報道する中、代表者たちはエルゼビアやシュプリンガー・ネイチャーなどの出版社との契約条件を改善するために協働することで合意しました。


オープンアクセス化への大きな歩みとして、スウェーデンのコンソーシアム「VSNU」は、シュプリンガー・ネイチャーおよびオックスフォード大学出版局とRead and Publish」契約を世界で初めて締結しました。この契約では、図書館は出版社のコンテンツにアクセスするための費用を払いますが、有料論文の閲覧とオープンアクセス論文の出版費用が、1つにまとめられています。オーストリア、フィンランド、英国などのコンソーシアムも、大手出版社と同様の契約を結ぶことを目指しています。


SPARCScholarly Publishing and Academic Resources Coalition、国際学術情報流通基盤整備事業)のヘザー・ジョセフ事務局長は、「図書館が大手出版社と契約を打ち切るという大胆な措置を取っている主な理由として、Sci-Hubの普及、プレプリントやアクセプト論文へのアクセシビリティの向上が挙げられます」と述べています。


欧州の図書館や大学は、オープンアクセス化に向けて強硬な姿勢を見せており、出版社に自分たちと同じ方向を向くことを求めています。この変化の波が、論文の出版やアクセス形態にどのような影響を及ぼすのか、今後の動向に要注目です。


関連記事:

German institutions push Elsevier for a fair deal in order to access paywalled research

South Korean universities renew deal with Elsevier, say they are unhappy with prices

Serials crisis hits National Taiwan University, Elsevier journal subscriptions to be discontinued

オンライン出版の民主化が「雑誌の危機」を救う


参考文献:

Europe’s open-access drive escalates as university stand-offs spread

「科学者=ホコリっぽい研究室にいるヒゲを生やした男性」とは限りません

$
0
0
「科学者=ホコリっぽい研究室にいるヒゲを生やした男性」とは限りません
フリーの科学ジャーナリスト。インドの女性科学者へのインタビューや彼女たちによるブログを掲載するユニークなプラットフォーム“The Life of Science”を創設。研究室にいる女性科学者たちの生活を記録するために、2人でインド中を巡っている。インドの女性科学者たちのストーリーを世界に紹介し、その業績を可視化することを目指している。

あるとき、「thelifeofscience.com」という控えめながらも可能性に満ちたウェブサイトに偶然出会い、このサイトについてもっと知りたくなりました。すべてのコンテンツをすぐに夢中で読み終えた私は、このプロジェクトの運営に尽力する2人の科学ジャーナリストを称えたい気持ちになりました。「The Life of Science」は、「科学者=ホコリっぽい研究室にいるヒゲを生やした男性」というステレオタイプを変えようとしているプラットフォームです。


フリーの科学ジャーナリストであるアーシマ・ドグラ(Aashima Dogra)氏とナンディタ・ジャヤライ(Nandita Jayaraj)氏は、インド研究界における男女不平等の現状を掘り下げることを目的に、「The Life of Science」プロジェクトを2016年に起ち上げました。このプラットフォームは、インタビュー、ポッドキャスト、ブログ投稿などを通じて、主にインドの女性科学者たちが歩んできた道のりを紹介しています。プロジェクトでは、女性科学者たちの経験や奮闘や知識を発信することで、彼女たちの科学者としての露出を増やし、インドの科学研究に不足している情報を伝えることを目指しています。

本インタビューでは、ドグラ氏とジャヤライ氏の歩んできた道のりや、thelifeofscience.comを運営するモチベーション、インドの女性科学者が直面している困難について伺いました。また、インドの女性科学者たちの人生を記録した書籍の出版計画についてもお聞きしました。

The Life of Science」創設の背景を教えてください。

The Life of Science(thelifeofscience.com)は、私たちが子供向けの科学雑誌「Brainwave Magazine」で働いていた頃に育んだ考えや会話の中で生まれました。私たちは、お手本となる女性科学者がごくわずかしかいないこと、いたとしてもそれが現代の人ではないことに気付きました。その人がインド人であることはさらに稀です。そこで、インドの研究室の内側を読者に紹介するブログを始めることにしたのです。インド国内ではどのような研究プロジェクトが行われ、インドで科学者になることはどういうことなのか、といった情報を発信したいと考えました。まずは、取り上げられることが少ない性の問題をテーマに記事を書き始めました。このテーマには、私たちの関心領域である旅行、ストーリーテリング、科学、フェミニズムが含まれています。このプロジェクトが開始してからちょうど2年が経ち、その間は驚きの連続でしたが、おかげさまで女性科学者に関する豊かで複合的な情報が詰まったプラットフォームに成長したと思っています。

どのような活動をされているのですか?

私たちの主な活動は、インド中の研究施設をまわり、そこで働く女性科学者のインタビュー記事を公開することです。20162月以来、週1回の頻度で発表しています。記事では、それぞれの科学者の研究内容や学歴、それに伴う困難、男女平等に関する考え方などを取り上げています。


これらのインタビューを、なるべく多くのプラットフォームや言語、フォーマットで発信できるよう努めています。また、記事をもとにしたポッドキャストやマンガ、フォトエッセイなども公開しています。


最近は、科学コミュニケーション分野でキャリアを歩み始めた若手を中心とする、科学コミュニケーターたちとのコラボレーションも行なっています。経験を積む機会を提供することで、彼らにはこのムーブメントに貢献してもらいたいと考えています。


国中の研究機関を回る中で、インド科学界における男女平等、thelifeofscience.comについて、あるいは科学コミュニケーターとしての私たちの経験についての講演依頼をよく受けます。また、私たちのプラットフォームではブログも運営しており、科学研究に携わる人々に、研究室での経験やこれまで歩んできた道のりについて寄稿してもらっています。

学校に通う子供たちに、女性科学者やさまざまな科学分野の魅力について話をするアウトリーチ活動も行なっています。


インドのハイデラバードで開催された細胞生物学の国際会議で「Q&Aブース」を出展するなど、新たな取り組みも始めました。そこでは、さまざまな国籍やキャリアを持つ30人以上の研究者にインタビューし、聞き手が高校生であることを想定して研究の説明をしてもらいました。これは、科学者の手で科学の難解さの壁を壊してもらい、薄暗い研究室から出て一般の人々と関わりを持ってもらうことが目的です。この様子を撮影した動画は、現在編集中です。

このプロジェクトは今後、より大きなものに発展して行くのでしょうか?

thelifeofscience.comが、さらに大きなプロジェクトへと進化を遂げている最中であることは間違いありません。今は、この状態を長期的に持続できるよう、予算確保に努めています。私たちのプラットフォームは、科学者の露出度を高めている事実などを含めて、多大なサポートやインパクトを提供できる可能性を秘めています。

女性科学者に焦点を当てているのはなぜですか?

それは、科学界において女性の存在がいまだに希薄だからです。インド人女性科学者の名前を3人挙げられる一般の人々はごくわずかでしょう。私たちにとってこの状況は決して驚くべきことではなく、表舞台に上がれる女性科学者は本当に少ないのが現状です。インドの研究機関の多くが男性をトップに据えており、設立以来女性がトップになったことがない機関がほとんどでしょう。表彰委員会に評価されている女性は極端に少ないですし、委員のほとんどが男性で構成されています。数字だけを見れば、このようなことは世界中で見られる状況ですが、インドが抱えている問題はさまざまな意味で独特で、色々なことが複雑に絡み合った結果なのです。

インドの女性科学者が直面している最大の困難は何だとお考えですか?その改善方法はありますか?

インドの女性科学者が抱えている最大の困難は、家族や研究機関からのサポートを受けられていないことです。学術機関や政府は、過小評価されているジェンダーの問題にもっともっと向き合う必要があります。このような取り組みを妨げている時代遅れの方策を捨て去り、より女性に優しい方策作りに舵を切らなければなりません。

女性科学者に関する問題の原因が可露出(可視性)にあるとすれば、これを改善する責任は誰にあるのでしょうか?また、どのように改善すべきですか?


責任があるのは、以下のような関係者たちです:
 

  • マスメディアはより積極的に女性科学者の話題を取り上げるべきで、表に出にくいコミュニティの中から良質な研究を拾い上げる努力をしなければならない。
  • 研究機関のトップや研究室の主任研究者は、良き指導者として、能力のある女性科学者に、学会への参加機会や実力を発揮する機会を、男性と同様に提供しなければならない。
  • 科学者自身も、ソーシャルメディアやアウトリーチ活動を通した研究情報の発信をもっと積極的に行う必要がある。
  • 表彰委員会は、委員会の構成メンバーや受賞者の多様性を認めることを最優先すべきで、知名度が低いところから良質な研究を拾い上げる努力が必要。これは絶対に実現しなければならず、それだけの労力を費やす価値がある。

これまで多くの女性科学者に会い、彼女たちの情報を発信してきた中で、とくに興味深かった/感銘を受けた出会いはどのようなものでしたか?

最近でいえば、数学者のカニーニカ・シンハ(Kaneenika Sinha)氏のお話はとても印象に残っています。彼女は、学術界での生活に関するブログを、当時匿名で書いており、人気を博していました。素性を明かしていなかったにも関わらず、その率直な所見や、教員や短期間学長を務めた経験談は、国中の同輩たちの共感を呼び、インドの研究室での労働文化について多くの対話を生み出しました。


もう1つ感銘を受けたのは、惑星科学者のクルジート・カウル・マルハス(Kuljeet Kaur Marhas氏のお話です。彼女は、シングルマザーという役割を果たしながら自ら研究室を起ち上げ、実験機器を自分で修理するなど、さまざまな困難を乗り越えてきた人物です。

多くの科学者と出会う中で、自分自身の変化を感じることはありますか?

私たちは科学ジャーナリストとして、科学が行われている現場である研究室で、研究者たちの話を聞けるということにいつも興奮しています。thelifeofscience.comがスタートしたときから、自分たちがフェミニストであることは認識していましたが、システムの問題がここまで根深く凝り固まっていること、セクシズムやセクシャルハラスメントなどに関する話題の多くがタブー視されていることに驚きました。女性科学者たちの話を聞く中で、学術界における男女平等の必要性を再確認できました。これを実現できなければ、インドにとって大きな損失となるでしょう。

科学コミュニケーターとして活動する中で、ジェンダーバイアスが根底にあるような障害にぶつかったことはありますか?

基本的にメディアは「男社会」ですから、私たちが過小評価されていると感じることはあります。ジェンダーに関する問題は、管理者たちから「上から目線」で扱われがちです。私たちの能力を証明するためには、より強い主張が必要だと感じることがあります。

thelifeofscience.comの今後の計画はどのようなものですか?数年後のプロジェクトはどのような方向を向いているでしょうか。

現在、インドの女性科学者に関する2冊の本を執筆中です。1冊は子供向けで、もう1冊は一般読者向けです。これらの本のベースとなる研究の支援を得るためのクラウドファンディングも行なっています。より多くの人々に読んでもらえるよう、複数言語の翻訳版の出版も想定しています。これらの本のオリジナリティは、現代のインド人女性科学者に焦点を当てているという点にあり、彼女たちの存在を知ってもらうためにもクラウドファンディングを何としても成功させなければなりません。

学術界の競争的な世界で自らの存在を示そうともがいている女性科学者に向けて、女性科学者との交流の経験をもとにしたアドバイスをお願いできますか?

難しい質問ですね。科学者としての経験がない私たちが、彼女たちにアドバイスを送るようなことはできません。とは言え、厳しい世界であることは理解しています。thelifeofscience.comには、さまざまな地位にある何十名もの女性科学者の経験が蓄積されています。彼女たちの話は本当に良い刺激になると思います。私たちからは、「彼女たちの話を読んでください」と言うことしかできません。もし自分の研究や研究者人生について話がしたいと思ったら、ぜひ私たちに連絡してください!

 -------------------------------------

ドグラ氏、ジャヤライ氏、貴重なお話をありがとうございました。thelifeofscience.comが目的を達成し、インドの女性科学者にとってのグローバルなプラットフォームになることを願っています!

論文再提出後の受理の確認について

$
0
0
Question Description: 

論文が一度査読を受け、Major Revisionで返ってきたために修正をして再度提出しました。しかし再提出後の論文受理の返信がなく、出版社に受理されたかを確認をしたい旨をメールしましたが数日しても返信がありません。 このまま再提出の期限を過ぎてしまう可能性があり、どのように対応すれば良いか悩んでいます。 もう一度メールを送った方がよろしいでしょうか?連絡先が間違っていたりなどはありませんでした。

回答

投稿の状態は、ジャーナルもしくは出版社が電子投稿システムを採用していれば、ステータスに関する“Under review(査読中)”Awaiting decision(判定待ち)などの表示によって簡単に知ることができます。また、受理通知が自動的に著者に送られる仕組みになっているケースもよく見られます。今回は、ジャーナルが電子投稿システムを採用しておらず、すべてのやり取りがメールで行われているものと推察します。その場合は、担当編集者と編集長をccに入れて、編集部に再度メールを送るとよいでしょう。ジャーナル編集部の電話番号が分かれば、電話をかけてみてもいいと思います。 


関連記事:  

公私にわたるパートナー:ノーベル賞を受賞した5組の夫婦

$
0
0
公私にわたるパートナー:ノーベル賞を受賞した5組の夫婦

研究者にとって、ノーベル賞の受賞はこの上ない栄誉です。血縁関係や婚姻関係にある研究者同士がノーベル賞を受賞するのは非常に珍しく、夫と妻がともにノーベル賞受賞者となった夫婦は、これまで5組しかいません。その5組の夫婦の受賞理由や豆知識を紹介します。

研究者にとって、ノーベル賞の受賞はこの上ない栄誉です。ノーベル賞は、物理学、化学、医学・生理学、文学、経済学、平和の分野で、傑出した発見や活動を行なった研究者だけに贈られる賞です。そのため、血縁関係や婚姻関係にある研究者同士がノーベル賞を受賞するのは、非常に珍しいことであると言えます。実際、夫と妻がともにノーベル賞受賞者となった夫婦は、これまで5組しかいません。以下の図では、その5組の夫婦を受賞順に示し、それぞれの夫婦の受賞理由や豆知識を紹介しています。


※こちらの図はPDF版のダウンロードが可能です。プリントするなどして、参考資料としてお気軽にご利用ください。


公私にわたるパートナー:ノーベル賞を受賞した5組の夫婦


夫と妻がともにノーベル賞受賞者となった夫婦は、現時点で5組しか存在しておらず、彼らは「公私にわたるパートナー(Partners in life and science)」として称えられています。


1. ピエール・キュリー/マリ・キュリー夫妻


1903年にノーベル物理学賞を受賞

・受賞理由:ウランよりも放射性が高いポロニウムとラジウムという2つの元素を発見


豆知識:ベクレルの放射線に関する研究(1896年)に影響を受けた妻のマリは、ウランとトリウムを含む天然鉱石の研究に興味を抱くようになります。夫のピエールは自分の研究をあきらめ、妻のプロジェクトに加わりました。


2. フレデリック・ジョリオ=キュリー/イレーヌ・ジョリオ=キュリー夫妻


1935年にノーベル化学賞を受賞

・受賞理由:人工放射性元素の発見


豆知識:上記のピエールおよびマリ・キュリー夫妻の長女である妻のイレーヌは、両親と同じ道を歩み、両親のラジウム研究所に入所しました。1924年、夫となるフレデリックが母マリの助手として入所し、イレーヌは放射能の研究に関する技術を彼に教えました。


3. カール・コリ/ゲルティー・コリ夫妻


1947年にノーベル医学・生理学賞を受賞

・受賞理由:グリコーゲンおよびグルコースの代謝に関する研究(より具体的には、触媒作用によるグリコーゲン消費の発見)


豆知識:夫のカールは次のように述べています。「今回の受賞に妻が含まれていることを大変嬉しく思います。私たちは互いに補い合いながら研究に取り組んでいます。どちらか一方が欠けていたら、ここまで来ることはできなかったでしょう」。


4. グンナー・ミュルダール/アルバ・ミュルダール夫妻


・夫のグンナーは、経済、社会、政治プロセスの相互依存関係に関する研究が評価され、1974年にノーベル経済学賞を受賞

・妻のアルバは、核拡散防止に関する活動が評価され、1982年にノーベル平和賞を受賞


豆知識:ミュルダール夫妻は1930年代を代表する社会科学者で、家族政策と福祉の問題に深い関心を持っていました。現在のところ、異なる分野でノーベル賞を受賞した夫婦はミュルダール夫妻だけです。


5. エドバルド・モーセル:/マイブリット・モーセル夫妻


2014年にノーベル医学・生理学賞を受賞

・受賞理由:脳における空間認知システムを構成する細胞の発見(モーセル夫妻は、これを簡単に「脳内GPS」と呼んでいる)


豆知識:夫のエドバルドは次のように述べています。「我々夫婦の特徴は、たった1つの研究室を運営しているということです。これは大きな利点で、次にやるべきことについていつでも話し合えるので、会議のための会議をする必要がありません。私たち2人は、1+1=2ではないということを常に感じながら研究を行なっています」。
 

Partners in life and science: 5 Married couples who have won the Nobel Prize

 

参考資料: 

  • "Nobel Prize-Awarded Couples". Nobelprize.org. Nobel Media AB 2014. Web. 2 Oct 2017.
  • Marie and Pierre Curie and the Discovery of Polonium and Radium". Nobelprize.org. Nobel Media AB 2014. Web. 3 Oct 2017.
  • All images used within the infographic have been retrieved from https://www.nobelprize.org/

査読プロセスで1年が経過しようとしています

$
0
0
Question Description: 

某雑誌に投稿して1年が経過しています.その間,under reviewのままであり,進捗状況に変化がありません.1st decisionもありません.月に1回程度はeditorial officeにeditor-in-chief宛てに確認の連絡を行っていますが,何も返答がありません.別の雑誌に投稿をしようとも考えていますが,under reviewの状況では厳しいのではないかと思っています.今後の対応はどのように行えば良いのでしょうか?例文含めてご教授ください.宜しくお願い致します.

回答

ジャーナルの反応が良くないようなので、これ以上時間を費やさず、すぐに論文を取り下げた方がいいかもしれません。最善の出版慣行を守るためには、問い合わせに対する返答がもらえていないことをジャーナルに伝えた上で(送ったメールの詳細を述べる)、一定の期日までに回答がなければ(数週間の期限を設ける)、投稿論文を取り下げるつもりであることを伝えましょう。明記した期日までに回答がなければ、最後通牒として、ジャーナルから論文を取り下げることを伝えるメールを送りましょう。これ以降、別のジャーナルに論文を投稿することが可能になります。前のジャーナルに送ったメールは、必ずすべて保存しておいてください。万が一問題が生じた場合、ジャーナルと連絡を取ろうと努めたことを証明するものとして、これらのメールを提示することができます。


関連記事:

major revisionからのreviseについて。

$
0
0
Question Description: 

お世話になっております。今回初めて論文を投稿しました。メジャーな雑誌に投稿し2か月ほどでmajor revisionの判定が帰ってきました。ほとんど答えられる内容だったため、しっかり返答を行ったうえでreviseを行いました。reviseして3週間ほどでwith editorからDecision in Processにステータスが変更となりました。これは再投稿した論文をeditorがレビュアーに送らずに判定をおこなっているということでしょうか?またそうだとしたら再投稿した内容がまずかったのでしょうか?初めての経験で色々不安になり質問しました、どうか教えていただけませんでしょうか?

回答

修正論文がジャーナルに送られると、まずは編集者が見て、査読者からのコメントに概ね対応しているかどうかを確認します。再度のレビューが必要だと編集者が判断すれば、修正論文は、最初に論文をレビューした査読者に送られます。ただしそれは、修正論文を見た編集者の判断次第です。


一般的に、大幅修正の場合は、ほとんどの編集者が修正論文を再査読に送ります。ただし、編集者が自分ですべての修正箇所を確認し、査読者の見解を求めることなく判断を下せるケースもあります。最終判定は編集者の裁量なので、編集者が下した判定に意見をさしはさむことはできません。


関連記事:

著者校正のミス発覚後の対応

$
0
0
Question Description: 

インパクトファクター2点台後半のWolters Kluwer Healthの、ある医学雑誌にアクセプトされました。著者校正の連絡が来て、校正を作成しassignment filesにタスクを送信し、校正作業を完了させました。しかし、1日後に校正ミスを見つけてしまいましたが、assignment filesに再度、修正版を保存することができなかったため、校正の連絡が来たProof Managerのメールアドレスに再度修正した、PDFファイルを謝罪と差し替えのメッセージを添えてメールを送りました。また、ミスした箇所とこれまでの校正箇所は、分かりやすくするため、すべてハイライト表示し、テキストの置換をしました。 この場合、校正ミスの対応をしてくださるのでしょうか。また、どの程度の期間、連絡を待てばよろしいでしょうか。

回答

一連の投稿作業の中で、修正論文の正しいバージョンに分かりやすくハイライト表示をして送ったとのことなので、ジャーナルの編集スタッフのもとには正しいバージョンが届いていて、それが最終版として処理されていると思われます。ただし、これは憶測にすぎませんので、確実なところを確認するためには、ジャーナル編集部にメールを送って、修正論文の正しいバージョンについて念押ししておきましょう。


ジャーナル毎にワークフローは異なりますが、校正原稿の受領確認もしくは論文の出版予定の通知は、たいてい数日以内に送られます。23日たってもジャーナルから連絡がない場合は、編集部に問い合わせてみた方がいいかもしれません。


関連記事:  

中国政府が研究不正を厳重に取り締まる新ガイドラインを発表

$
0
0
中国政府が研究不正を厳重に取り締まる新ガイドラインを発表

科学研究先進国の1つである中国は、国内の研究者に研究公正を高水準で順守させるための取り組みを精力的に行なっています。2018530日、中国政府は、科学者や学術機関の研究公正の順守を監視・評価するための新たなガイドラインを発表しました。

科学研究先進国の1つである中国は、国内の研究者に研究公正を高水準で順守させるための取り組みを精力的に行なっています。2018530日、中国共産党および国務院は、科学者や学術機関の研究公正の順守を監視・評価するための新たなガイドラインを発表しました。


2018年初頭、中国は米国を抜いて科学論文出版数で世界一の座に踊り出ました。その一方で中国では、査読の不正操作によってシュプリンガーに論文を大量撤回されるなど、学術不正の摘発が相次いでいます。中国政府はこれらの事態について「世界における中国の科学研究の評判を著しく損なっている」と考えていると、ロイター通信は伝えています。このように中国政府は、同国が研究の最前線で前進し続けるためには、研究者たちに研究公正を順守させることが不可欠な要素であると認識しています。


以下は、中国政府が発表した新たなガイドラインの概要です:
 

  • 剽窃、データおよび研究結果の捏造、ゴーストライティング、査読の不正操作などの不正行為には厳罰が課される。
  • 科学論文の転売、データの捏造、ゴーストライティングなどの不正行為を行なった仲介業者にも厳罰が課される。
  • 論文の質が伴っていない高額な論文掲載料を請求するジャーナルは、ブラックリストに登録される。
  • 学術不正が認められた研究者は、教育および研究活動を行うことができなくなり、受賞した賞の剥奪、または研究予算の返還を命じられる。


このガイドラインが順守されているかどうかの監視は、主に中華人民共和国科学技術部(MOST)と中国社会科学院(CASS)が引き受けます。また中国政府は、20184月に、科学データの管理を体系化し標準化するために国家リポジトリにデータを共有することを研究者に義務付ける方策を新たに打ち出しています


中国はこのように、研究不正を阻止するための厳格な方策を打ち出すことで、研究成果の量だけでなく、質や公正性を維持するための大きな一歩を踏み出したといえるでしょう。


関連記事:

頭脳逆流:中国人研究者が中国に戻る理由とは

China beats the U.S. to become world's largest producer of science publications

China aspires to lead the world in artificial intelligence by 2030

 
参考資料:

China issues rules to get tough on academic integrity

結果の確認用に実行ファイルの提出を求められることはありますか?

$
0
0
Question Description: 

エルゼビアのコンピューター科学分野のジャーナルに論文を投稿したところ、修正して再投稿という判定を受けました。査読者の1人からは、結果の確認用の実行ファイル(executable file)の提出を求められています。ただ、その査読者のコメント内容は、自分としては腑に落ちません。どのように対応すべきでしょうか?

回答

今回の要求は比較的珍しいものだと思いますが、コンピューター科学分野では、新規アプリケーション/ソフトウェアの開発に関する論文の場合、査読者がそのソフトウェアをテストするために実行ファイルの提出を求めることも考えられます。ライセンスや知的所有権の壁がないなら、ソフトウェアの共有は問題ないでしょう。ただし、不安な気持ちや、査読者の信頼性に懸念がある場合は、製品の最終バージョンではなく、コピー/デモバージョンを提供しましょう。

論文に加えて研究データを共有する場合、データを前もってデータリポジトリに保管して引用可能な状態にしておけば、その業績が奪われたり、データが誤用されたりする心配もなくなります。エルゼビアは、研究データ(ソフトウェアも含む)の共有に関する推奨事項を設けています。これを参考にして、コードやソフトウェアの共有にはリポジトリを利用しましょう。また、開発したソフトウェアにはどのリポジトリがもっとも適していそうかを、先輩に相談してみましょう。


関連記事:

Viewing all 1873 articles
Browse latest View live


<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>