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「revise and resubmit(修正して再投稿)」判定に対処するには:論文修正の10ステップ

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「revise and resubmit(修正して再投稿)」判定に対処するには:論文修正の10ステップ

一流誌に論文を投稿した場合、「revise and resubmit(修正して再投稿)」の判定が出れば御の字かもしれません。しかし、最終目標はやはりアクセプトです。論文の修正を上手に進めるための10のステップをご紹介します。

[本記事はタニヤ・ゴラッシュ・ボーザ(Tanya Golash-Boza)氏によるブログ記事を、許可を得てここに再掲載したものです。]


一流誌に論文を投稿した場合、編集者から「査読コメントに回答し、修正版を再投稿してください」という返答が来れば御の字でしょう。私は、大幅修正と再投稿を経てアクセプトされた論文が20本ありますが、経験を重ねる中で、大幅修正の要求に対するシンプルなアプローチを見つけました。その10のステップをご紹介します:


1. 編集者からのレターを熟読する

編集者からのレターをよく読み、修正と再投稿を求められていることを再確認しましょう。レターに記載される判定には、修正・再投稿の要求以外に、以下のものがあります:

i) 再投稿を要求しない即時のリジェクト
ii) 小幅修正を伴う条件付きのアクセプト
iii) 修正の必要がない即時のアクセプト(多少の修正を提案される場合もある)


レターの内容が不明確な場合は、編集者に問い合わせるか、先輩研究者にレターを読んでもらって意見を求めましょう。


2. エクセルで修正箇所を整理する


査読コメントの整理用に、エクセルで4列の表を作り、列タイトルをそれぞれ「査読者名」、「指摘内容」、「回答」、「ステータス」としましょう。列の幅を広げて、各セル内のテキストがすべて表示されるように設定すれば、見やすい一覧表を作ることができます。とくに、「指摘内容」と「回答」については、この作業が欠かせません。


3. 査読者からの指摘と編集者からのコメントを抜き出す

受け取ったレビューを入念にチェックしながら、修正が必要な箇所を抽出し、エクセルの表に記入しましょう。査読コメントから有用な指摘をすべて抜き出すのは、骨の折れる作業です。有用な指摘であったとしても、難解な文章でそれを伝えようとする査読者がいた場合はなおのことでしょう。


この作業のメリットは、指摘を自分の言葉で言い換えられるので、元のコメントを見直す必要がなくなることです。たとえば、次のような査読コメントがあったとします:「この論文が抱える主な問題の1つは、研究方法のエビデンスが不十分だということです」。この場合、より簡潔に分かりやすく書き換えることができます:「データ収集について、方法セクションでより詳細に説明する」。また、それぞれの指摘が誰のものか(査読者1、査読者2、査読者3、編集者など)も記入しておきましょう。


4. 指摘を論理的に整理して、修正作業に備える

結果の報告の仕方や、文献レビューの不足に関する問題を、複数の査読者から異なる表現で指摘されることも珍しくありません。「結果」セクションに関するすべての指摘をカテゴリー別に分けることで、より体系的な修正作業が可能になります。イントロダクション、文献レビュー、データ分析などのセクションについても同様の作業を行えば、査読者への回答がしやすくなります。


5. すべての指摘への回答方針を決める

たとえば、「先行研究の文脈における貴論文の意義をより明確に説明してください」という指摘があれば、次のように言い換えます:「この研究が、先行研究に足りない知見を埋めるためのものであることを具体的に説明したパラグラフを、イントロダクションセクションに1つ加える」。指摘を自分の言葉で言い換えるときは、このように、次に何をすべきかが明確になるような表現にしましょう。


回答は、すべての査読コメントに対して行わなければなりません。各コメントに対して、修正版でどのような修正を行なったかを具体的に示しましょう。中には同意できない指摘もあるでしょう。そのこと自体に問題はありませんが、査読者の修正案を取り入れない場合は、その理由を説明する必要があります。たとえば、論文の改善のために、追加または新規の実験を行うよう提案されていたとします。この提案に同意できない場合は、その実験が論文に不要だと考える理由を説明しなければなりません。エクセル表の3列目(回答列)に、指摘への回答方針を具体的に記入しておきましょう。


6. 回答方針に沿って、11つ修正していく

以上のように、すべての指摘を整理し、修正のための具体的なプランを立て、回答方針が定まったら、いよいよ実際の修正に取り掛かるときです。それでも不安なときは、もっとも簡単なものから始めましょう。一般的に、修正がもっとも簡単なのは、文法や句読点に関するミスです。また、参考文献の引用漏れに関するミスも、比較的取り掛かりやすい修正です。


7. エクセル表を使って編集者への回答レターを練る

当然ながら、作成したエクセル表を編集者にそのまま送ることは控えましょう。表はあくまで、漏れなく丁寧に、フォーマットに沿ったレターを作成するための下書きとして利用しましょう。編集者への回答レター例は、以下の通りです:「査読者1に、先行研究の流れにおける論文の意義をより明確に述べるよう指摘されたため、本研究が先行研究に不足している知見を埋めるためのものであることを具体的に説明した文章を追加しました」。


8. ダブルチェック

査読コメントを見直し、誤解や抜けがないことを確認しましょう。それぞれの指摘やコメントと編集者への回答レターを照らし合わせ、すべての指摘に回答できているかどうか、各回答が妥当であるかどうかを確認しましょう。


9. 修正版を読み直す

修正した論文を読み直し、文章の流れや趣旨が本来の意図からずれていないかどうかをチェックしましょう。読み直すときは、審査のことは忘れ、その論文や査読コメントを知らない一読者になったつもりで読みましょう。


10. 論文を再投稿する

すべての修正箇所に問題がないと判断したら、修正版と回答レターを編集者に送りましょう。


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何ヶ月も労力を注いだ論文に要大幅修正の判定を受けたら、がっかりすることもあるでしょう。しかし、「revise and resubmit(修正して再投稿)」の判定に失望する必要はありません。修正と再投稿を求められているということは、必要な修正さえ行えば、その論文には出版する価値があると評価されているということです。重要なのは、焦らずに11つ取り組み、査読コメントにシステマティックに対応することです。


査読プロセスに関する再度の問い合わせについて

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Question Description: 

ある科学誌に投稿後、3ゕ月間ステータスがUnder Reviewのままだったため、editorial officeに問い合わせたところ、 「あなたの論文はまだレビュー中です。本誌のコントロールを超える理由から、レビュープロセスにはもう少し時間がかかるかもしれません。査読結果をお知らせするまでになにか質問があれば知らせてください。」 との回答がかえってきました。それから2ゕ月以上経ちましたが、その間もUnder Reviewのままで状況はなんら変わりません。 レビュープロセスを進めるため、再度editorial officeに、コントロールを超える理由とはどういう状況なのか、今後レビュープロセスが進む見込みがあるのかどうかを問い合わせてもよいものでしょうか。

回答

たいていのジャーナルは、論文の査読に23か月を要します。3か月以上かかるところもありますが、5か月という長さは異例です。ジャーナルにもう一度すぐに連絡し、論文の状況について問い合わせましょう。その際、論文のステータスが5か月間変わっていないということを強調しましょう。

 

ジャーナル編集者に問い合わせを行う際のメールテンプレートは、こちらの記事を参考にしてください:

How do I write an inquiry to the editor about my manuscript's current status?

 

また、以下の記事も参考にしてください:

What should I do if the review process is delayed and the editor is unresponsive?

 

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優れたアブストラクトを書くための11のヒント

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アブストラクトは、論文を読むジャーナル編集者や読者が最初に目にする箇所です。言ってみれば、それは論文の「下見」であり、論文全体を読み進めるかどうかを決めるための試金石です。ジャーナルの初回判定でのリジェクトを避け、読者の関心を引き付けるには、心をつかむ、印象的なアブストラクトを書かなければなりません。このビデオでは、魅力的なアブストラクトを書くための11のヒントをご紹介します。


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スコーパスに収載されていてスピード出版が可能な看護系ジャーナルを探すにはどうすればいいですか?

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Question Description: 

看護学の博士課程に在籍中の学生です。学位論文のために、5週間以内に投稿論文のアクセプトを受ける必要があるのですが、ISIのジャーナルで論文を出版しようとしているうち時間が過ぎ、切迫した状況に陥ってしまいました。そのため、スピード出版が可能な、ISIまたはスコーパスの看護系または教育系ジャーナルを探しています。費用は500ドルまでなら支払い可能です。

回答

時間があまりない状況でジャーナルを探すときは、Journal Guide BETAやエルゼビアのJournal Finderなどのジャーナル選択ツールを利用するのがベストでしょう。スコーパスはエルゼビアのデータベースなので、Journal Finderを使えば、スコーパスにインデックスされているジャーナルを検索することができます。

こうしたツールを使えば、論文に適したジャーナルを見つけられるでしょう。検索結果には、各ジャーナルの初回判定までの平均所要期間も表示されますので、論文に適したジャーナルの中から、5週間以内に判定を出してくれるものを知ることができます。

ただし、魅力的な条件で著者を引きつけ、研究アイデアを奪うことだけが目的のハゲタカ出版社や偽の出版社には注意してください。論文を投稿する前に、信頼できるジャーナルかどうかをチェックリストで確認しましょう


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「スピード出版」が可能な学術誌・出版社一覧

論文出版のプロセスを教えてください。

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Question Description: 

論文出版の手順に関する資料があれば、紹介してもらえますか?

回答

研究が完了したら、論文という形にまとめ、関連分野の査読付きジャーナルで出版します。その際、以下のような手順を踏みます:
 

1. IMRaD形式と呼ばれる、学術出版に適した形式で論文を書く。
 

2. 論文が完成したら、投稿先としてもっともふさわしいジャーナルを探す


3. 選んだジャーナルのオンライン投稿システムやEメールを通じて論文を投稿する。


4. 論文は、ジャーナルと査読者による審査を経て、アクセプト、リジェクト、または要修正の判定を受ける。投稿から最終判定までのこの評価プロセスは入念に行われるため、時間を要する。


5. リジェクトされた論文は、別のジャーナルに投稿することができる。アクセプトされた論文(数回の修正を経るのが一般的)は、校閲プロセスに進む。


6. 校閲が完了すると、著者はゲラ刷り(page proof)を受け取る。ゲラ刷りを校正し、最終版としてジャーナルに提出する。


7. ここまでのプロセスが完了すると、ジャーナルの次号で論文が出版される。


エディテージ・インサイトには、出版プロセスのさまざまな側面に特化したセクションがあります。各種記事はこちらからご覧頂けます。


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オープンアクセス出版のメリットとは?

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オープンアクセス出版のメリットとは?

オープンアクセス(OA)ジャーナルで論文を発表することに消極的な研究者が多くいます。その理由として、OAという選択肢があることを知らないこと、OAのメリットに関する知識がないこと、そしてハゲタカ出版社の餌食になることへの恐怖心が挙げられます。OAに関するよくある疑問を、図にまとめました。

[本記事のは、ヒンダウィ社によって発表されたものを、許可を得てここに再掲載したものです。]


多くの研究者は、オープンアクセスジャーナルで論文を発表することに消極的です。その理由として、オープンアクセスという選択肢や、そのメリットに関する知識がないこと、そしてハゲタカ出版社の餌食になることへの恐怖心が挙げられます。以下の図は、オープンアクセスに関するよくある疑問に答えるものです。オープンアクセス出版のメリットや、学術出版界でオープンアクセスが重視される理由などがまとめられています。


【オープンアクセス出版のメリットとは?】


露出が増加

オープンアクセスで出版された論文は、購読型ジャーナルで出版された論文よりも露出が増える:

フルテキストのダウンロード数>>> 89%多い

PDF版のダウンロード数>>> 42%多い

読者数(正味) >>> 23%多い

(ソース:http://dx.doi.org/10.1136/bmj.a568


インパクトが増加

オープンアクセス論文は、非オープンアクセス論文よりも1年当たりの被引用数が50%も多いというデータがある。

(ソース://sparceurope.org/oaca_table/


新たなスタンダートになりつつあるオープンアクセス

オープンアクセスは、利用者が増えているだけでなく、政府や助成団体が条件として提示するケースも増えている。

20082013年の間に、PubMed Centralの非オープンアクセスのコンテンツ数が20%増加したのに対し、オープンアクセスのコンテンツ数は350%増加した。

(ソース:http://www.stm-assoc.org/2015_02_20_STM_Report_2015.pdf


研究の民主化

オープンアクセス論文は、すべての人が無料で読むことができる。

グローバルな発展を目指す上では、情報へのアクセスが鍵となる。

貧しい国が豊かな国と同じ情報を得ることができれば、もっとも必要な場所に知識が行き届き、格差の是正につながる。

発展途上国と先進国の科学研究費の格差

米国>>> 708113939ドル

パキスタン + ルワンダ + ウガンダ + ジンバブエ>>> 677833ドル

(ソース:http://www.oclc.org/global-library-statistics.en.html
 

Why should researchers publish open access?

インドで活気づくハゲタカジャーナル市場の存在が明らかに

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インドで活気づくハゲタカジャーナル市場の存在が明らかに

インドで一大市場を築いている疑わしい出版社やジャーナルの存在が、国内のニュースメディア企業によって明らかになりました。同社の調査によると、インドでは300社以上のハゲタカ出版社によって、数百誌のジャーナルが運営されています。

 

インドで一大市場を築いている疑わしい出版社/ジャーナルの存在が、国内のニュースメディア企業「インディアン・エクスプレス(IE)」によって明らかになりました。同社の調査によると、インドでは300社以上のハゲタカ出版社によって、数百誌のジャーナルが運営されています。この調査は、科学誌の信頼性をチェックするために国際調査報道ジャーナリスト連合が実施したグローバルプロジェクトの一環で、175000誌を対象に行われたものです。


世界中の研究者が、ジャーナルで論文を出版しなければならないというプレッシャーに晒されています。このプレッシャーは時に、信頼性が疑わしいジャーナルを選ばざるを得ない状況に研究者を追い込んでしまいます。調査の結果、ハゲタカジャーナルの多くに共通する点として、オンライン出版を採用している、出版前の編集チェックがない、編集委員会に経験豊富な編集者がいることをアピールしている、などが明らかになりました。このようなジャーナルはたいてい、国際誌であることを引き合いに出し、所定の費用を払えば論文が出版されると著者に約束しています。出版費用に関する情報をウェブサイト上に公開していないジャーナルもありますが、301800ドルの出版費用を請求するところが多いようです。


国内高等教育の水準を維持することを目的とする「University Grants CommissionUGG)」は、インド政府による法定組織で、ハゲタカジャーナルの監視を行なっています。UGCによる疑わしいジャーナルのブラックリスト化の試みもむなしく、ハゲタカジャーナルは現在も生き延びることに成功しています。バナーラス・ヒンドゥー大学のSC・ラコティア(S.C. Lakhotia)名誉教授は、「UGCは、インドの大学が参考にできるような、信頼性の高いジャーナルをリスト化することに失敗しました。リストには、多くの疑わしい偽ジャーナルが含まれていたのです」と述べています。


IEの報告では、ハゲタカジャーナルがもっとも多く活動している分野は、医学、工学、経営学です。驚くべきことに、これらのジャーナルの多くは、個室型オフィスで運営されています。このようなジャーナルを運営する出版社は、調査員の問い合わせに対して、非倫理的行為への疑いをすべて否定しています。


疑わしいジャーナル/出版社のリストを作成していたコロラド大学の司書、ジェフリー・ビオール(Jeffrey Beall)氏は、「南アジアにはハゲタカジャーナルが数多く存在しています」と述べ、インドを拠点とするもっとも悪名高い出版社、OMICSパブリッシング・グループを例に挙げ、このような出版社は「インドの恥」であると批判しています。OMICS2013年に、同社をハゲタカ出版社としてブラックリストに加えたビオール氏に対して訴訟を起こす構えを見せていました


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参考資料:

Proof後の論文修正について

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Question Description: 

Proof後の論文修正について質問です。 Original articleで論文投稿し、Major revisionであったため期日内にreviewerコメントに沿って修正して提出しました。その後、アクセプトの通知を頂きeditorからのMinor revisionを1回行った後にproofも行いpublish待ちでした。出版社からも掲載証明書が発行され、publishの準備にとりかかっている旨のメールを頂いております。 しかし、突然reviewerコメントが複数送られてMajor revision相当の修正を要求されました。一部のコメントは対応できない内容も含まれており、これらのコメントに対応できない場合にアクセプトが取り消されたりする可能性はあるのでしょうか? またこれが必要な修正なのかを確認する場合に、どのような文章を出版社に送ればよろしいでしょうか? あまり聞いたことがない事例のため戸惑っています。

回答

このアンラッキーかつ例外的な状況は、気の毒に思います。おそらく遅れて届いた査読コメントがあって、アクセプトが決まった後ではあるけれども、編集者は著者にその内容を伝えることに決めたのでしょう。すでに膨大な時間と手間を論文の修正に費やしているので、編集者にあなたの状況を丁寧に説明した上で、新しいコメントについての意見を伝えましょう。コメントが原稿にとって本質的なものではないと考えるなら、妥当な科学的根拠を添えて、そのことを逐一説明しましょう。さらなる大幅修正の判定を見直すよう求めてみても良いかもしれません。そうすれば編集者は、新しいコメントとあなたの返答の両方を再度確認した上で、出版に進むか、原稿の修正を推奨するかの判断を下すでしょう。


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4誌にリジェクトされた論文を改善するにはどうすればいいですか?

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Question Description: 

1つの論文を5年間で4誌に投稿しました。各誌の査読者から指摘された点はほぼ修正しており、その修正版を新たなジャーナルに投稿するのですが、毎回、英語と実験方法の問題を理由にリジェクトされてしまいます。論文の著者は全員がメキシコ人です。著者の国籍が理由でこのような結果になっているのではないかと、心配しています。

論文には多くの費用を費やしており、すでに3社の英文校正サービスによる校正を受けています。それにも関わらず、査読者から「貴論文には英語表現(文法、スペリング、文章構造、句読点など)のエラーが散見されるため、本誌での出版は認められない」と言われてしまいました。

アドバイスを頂ければ幸いです。

回答

査読プロセスは、バイアスフリーでなければなりません。非英語圏の研究者が国際誌で英語論文を発表することは、まったく珍しいことではありません。バイアスを持つ査読者が1人や2人いたとしても、4誌のジャーナルにリジェクトされる理由にはならないでしょう。

編集者に、プロの校正をすでに受けていることを伝えましょう。そして、エラーの箇所を具体的に示してもらってください。それに沿って必要な修正を行い、別のジャーナルに論文を投稿しましょう。

落胆する必要はありません。学術出版プロセスに、論文のリジェクトは付き物です。リジェクトが続いて不安になる気持ちはわかりますが、あきらめないでください。論文のどこに問題があるのかを特定できれば、出版に値するレベルまで改善することができるはずです。


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ジャーナル編集者が警戒する5つの非倫理的出版行為

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ドナルド・サミュラック博士(カクタス・コミュニケーションズ、エディテージ米国オフィス代表)が聞く対談シリーズ:パート3


【参加者】
アン・ウッズ博士(Dr. Anne WoodsWKH看護師長)
ショーン・ケネディ氏(Shawn KennedyAmerican Journal of Nursing誌編集長)


この対談には、著者にとって非常に役立つ、ジャーナル編集者側の視点が含まれています。

サミュラック博士、ショーン、ウッズ博士の3者は今回、ジャーナル編集者が警戒しなければならない5つの非倫理的出版行為(重複投稿、剽窃、オーサーシップ上の問題、利益相反、重複出版/サラミ出版)について議論を交わしています。議論の概要は以下の通りです:
 

  • 複数のジャーナルに問い合わせを行なっても問題ないが、論文は一度に1誌にしか投稿してはいけないことを知らない著者が多い
  • 剽窃は、他人の著作物を適切に引用しなかった場合だけでなく、自分の過去の著作物を引用してそれを適切に引用しなかった場合にも起こる
  • ジャーナル編集者は主に2つのオーサーシップ上の問題に対処している:名誉著者と幽霊著者(ゴースト・オーサーシップ)
  • 利益相反に関する宣言も、著者が完全な透明性を確保しなければならない、啓蒙が必要な領域。利益相反は、金銭面に限らず、また、査読者側に生じることもある
  • 重複出版/サラミ出版は、出版済み科学文献のメタアナリシスを害する行為


本対談シリーズのその他のパート

先進諸国と肩を並べ始めた東アジアの科学力

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先進諸国と肩を並べ始めた東アジアの科学力

科学の中心地として重要な役割を担うようになっている東アジアは、科学に優先的に投資を行なってきた国々と肩を並べるまでに成長しています。科学的成果物の発信や科学への投資で世界をリードする中韓に加え、その他のアジア諸国も急速な進歩をとげています。

科学の中心地として重要な役割を担うようになっている東アジアは、科学に優先的に投資を行なってきた国々と肩を並べるまでに成長しています。Nature誌の記事によると、韓国は国内総生産(GDP)の4.24%を科学技術に投資しており、この割合は欧州の先進諸国や、イスラエル、米国に匹敵するものです。


科学的成果物の発信や科学への投資で世界をリードする中国と韓国に加え、その他のアジア諸国も急速な進歩をとげています。Nature誌で特集されていた記事の詳細を以下にまとめます:
 

  1. 科学への投資:科学への投資で東アジアをリードするのは、韓国、台湾、マレーシア。中でも韓国は研究開発への投資を倍増させている。韓国を追う台湾も、科学技術に多額の投資を行なっている。
     
  2. 政府投資と民間投資:民間企業による投資がもっとも多いのは台湾と韓国。シンガポール、香港、マレーシアの研究開発投資の半分は企業によるもの。
     
  3. 研究コミュニティ:東アジアの科学労働人口(研究者)の大半は韓国、台湾、シンガポール出身者(中国、日本は除く)。その後を、マレーシア、香港が追っている。
     
  4. 女性の割合:研究界における女性の割合については世界中で議論がなされており、多くの国と同様、アジアでも男性が過半数を占めている。ただし、マレーシアでは国の科学労働人口の50%を女性が担っている。
     
  5. 論文出版件数:台湾の論文出版件数が下降する中、韓国は著しい増加を見せており、その数は65000件にのぼる。僅差で後を追うマレーシアも、その数を急増させている。
     
  6. 被引用指数(Citation impact):国際共同研究の事例が多い香港とシンガポールは、今や被引用指数で米英を上回り、世界をリードしている。被引用指数の世界平均が1であるのに対し、香港とシンガポールは1.8という高い数値を示している。
     
  7. 研究機関ランキング:Nature誌は、過去10年間で4500本以上の論文を出版して被引用指数を上昇させた研究機関を分析した。分析の結果、上位を占めたのは、香港、マレーシア、台湾の機関で、韓国の成均館大学校、ソウル大学、浦項工科大学校も上位に名を連ねた。香港の大学で上位を占めたのは、香港科学技術大学、香港中文大学、香港城市大学。


これまで長きにわたって研究界をリードしてきたのは西洋諸国でしたが、東アジアはこの数十年で、科学技術のあらゆる面で前例のない進歩をとげました。西洋と肩を並べるまでに成長した現在も、目覚ましい発展を続けています。


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Under ReviewからSubmittedに戻る

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Question Description: 

査読の追跡状況について質問を致します。 Wiley の論文に投稿をして、無事にSTATUSがUnder Reviewとなりました。1週間後に査読状況を追跡したところ、STATUSが何故かSubmittedに切り替わっていました。Editorial Officeから、論文の投稿規定に不備があるといった連絡などは頂いておりません。 また、 通常は1つしかないEditorial Officeが2つ表示されています。これは、いったいどういった状況なのでしょうか。今までこういった状況になった経験がないため、ご助言の程よろしくお願い申し上げます。

回答

"Under review"というステータスは通常、論文が事務方のチェックを通過して、外部の査読または内部の担当編集者に送られたということを意味します。今回のケースでは、査読者か担当編集者が、受領後にリクエストを拒否したか、レビューをせずに原稿を戻したかして、直前のステータスに戻ったのではないかと考えられます。このような場合、編集委員は、原稿をほかの査読者か担当編集者に送るはずです。ステータスがすぐに変わらない場合は、編集部に問い合わせてみましょう。


ご質問の「Editorial Officeが2つ表示」があいにく不明瞭ですが、投稿システムに2つの編集部が表示されているということだと推察します。これはおそらく、ジャーナル内部の管理構造に関係することだと思います。編集部に連絡を取る場合、連絡先はジャーナルのウェブサイトで確認できます。投稿システムからも編集部にメールを送れるはずです。


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中国、2030年までに世界一のAI大国へ

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中国、2030年までに世界一のAI大国へ

中国は、人工知能(AI)が国際競争力に果たす重要性を踏まえ、2030年までにAI技術で世界をリードすることを目標に掲げています。政府がAIプロジェクトを支援し、国内の機関や組織が急速にこの分野に関わり始めているという事実は、世界一のAI大国になるという中国の確固たる意志を示しています。

ビッグデータの登場は科学界にセンセーションを巻き起こしましたが、人工知能(AI)もまた、同様の現象を起こしています。AIとは簡単に言うと、人間の知能を模倣する機械や装置のことです。この技術の出現とその急速な発展によって、研究の進められ方にも革命が起きています。科学界でAIの活用に最初に成功したのは、素粒子物理学の分野です。フェルミ国立加速器研究所(イリノイ州バタビア)のボアス・クリマ(Boaz Klima)氏は、AIを導入した経験について、「この技術が単なる魔法やまやかし、あるいはブラックボックス的なものではないことを人々に理解してもらうのに、数年かかりました」と語っています。現在では、天文学や社会科学の分野にもAIが導入されています。


AIは、科学や研究にどのような影響をもたらすのでしょうか。その最大のメリットの1つは、人間の労力を最小化できるということです。AIは、膨大なデータの分析やその中にあるパターンの特定に長けており、このタスクにおいては人間を凌駕しています。そのため、研究をより楽に進められるようになり、研究者は論文執筆や助成金申請などの業務に多くの時間を割けるようになります。マクロレベルでは、AIは国の経済に多大な影響を与える可能性を秘めています。デジタル化や自動化によって生産性が向上し、イノベーションが生まれれば、国の経済は大きな飛躍を遂げることができるでしょう。その分野が、ヘルスケア、製造、科学研究、あるいは軍事であろうと、AIはさまざまな応用の可能性を秘めているのです。言い換えると、AI技術で主導権を握った国は、他国を圧倒する力を手にするということです。


AIの進化や応用に関する研究は、世界中で盛んに行われており、米中をはじめとする国家間の競争の中心に位置しています。これまでは米国がAI技術とイノベーションをリードしてきましたが、中国はそれを上回る勢いを見せています。


中国の習近平国家主席は、AIが国際競争力に果たす重要性を踏まえ、2030年までにAI技術で世界をリードすることを目標に掲げています。この野心的な目標を、中国が実現する可能性が高いことを示す事実が、いくつかあります。日経とエルゼビアは2017112日、20122016年の間に引用されたAI関連の論文の中で、もっとも影響力のある論文についての調査レポートを発表しました。その結果を見ると、グーグルやマイクロソフトなどの企業が名を連ねるトップ10の中に、中国科学院(CAS)と清華大学という中国の大学2校がランクインしていたのです。さらに、AI研究をリードする組織トップ100のうち、15は中国を拠点とする組織であることが分かりました。


このように、実際に成果を挙げている中国ですが、果たしてAI技術で世界をリードすることはできるのでしょうか?中国には、AI研究を進化させ得る優秀なエンジニアや研究者たちがいます。さらに、有能な海外在住研究者を自国に呼び戻す取り組みも行なっていますAI研究で中国が良好なスタートを切った背景には、このような理由があると言えます。また、中国には、研究機関や大学が利用できるデータが豊富にあります。AIの権威で「Sinovation Ventures Artificial Intelligence Institute」の創設者兼CEO李開復(Kai-Fu Lee氏は、中国のデータプライバシーについて、「倫理的問題に関するコンセンサスを得るためのハードルが低い」と述べています。このデータ利用に関する規制の緩さが、発展の速度と規模の拡大をさらに加速させそうです。


20177月、中国政府は「新世代の人工知能」の開発計画を発表しました。計画では、AI技術の面で3年以内に西洋に追いつくことを目標に掲げています。中国最大のオンライン検索エンジン「バイドゥ」でAI技術の戦略化に携わった著名なAI専門家のアンドリュー・ウAndrew Ng氏は、「中国政府がこのような発表を行うときは、国や経済への著しい変化が期待できます」と述べています。政府とは別に、中国の投資家たちも将来的な成功を見込んで、AIに関するプロジェクトへの投資を始めています。


政府がAIプロジェクトを支援し、国内の機関や組織が急速にこの分野に関わり始めているという事実は、世界一のAI大国になるという中国の確固たる意志を示しています。この目標が実現するかどうかは見守っていく必要がありますが、実現した暁には、科学技術において中国が圧倒的な立場に躍り出ることになるでしょう。


関連記事:

科学の研究と出版において中国は世界のリーダーになりつつあるのか?

頭脳逆流:中国人研究者が中国に戻る理由とは

国際的なPhDブームにおける中国の立場は?


参考資料:

動物実験を擁護する書簡に、ノーベル賞受賞者を含む研究者数百人が署名

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動物実験を擁護する書簡に、ノーベル賞受賞者を含む研究者数百人が署名

ノーベル賞受賞者を含む、米国の科学コミュニティに属する数百名の研究者が、国内の研究機関に動物実験の透明性・開示性を改善するよう求める公開書簡に署名しました。この書簡は、米国を拠点とする科学の権利擁護団体によって公開されました。

ノーベル賞受賞者4名を含む、米国の科学コミュニティに属する約600名の研究者が、国内の研究機関に動物実験の透明性・開示性を改善するよう求める公開書簡に署名しました。この書簡は、米国を拠点とする科学の権利擁護団体「Speaking of Research」によって公開されました。


この動きは、現在動物実験が直面している逆風に異議を唱えることを目的としています。Speaking of Researchの広報担当で行動神経科学者のアマンダ・デトマー(Amanda Dettmer)氏は、「医学研究に動物実験は欠かせませんが、その実験が安全かつ高度に統制されたものであっても、米国では絶えず非難に晒されてきました」と述べ、「動物実験については世論が二分しており、動物愛護団体は重要な研究を妨害しています」と続けています。デトマー氏をはじめ、この動きを支援する研究者たちは、動物実験が研究においていかに重要な役割を果たしているかを、人々に認識してもらいたいと考えています。


テロメラーゼ酵素の発見により2009年にノーベル生理学賞を受賞したキャロル・グライダー(Carol Greider氏はScience誌で、「基本的な生体メカニズムを理解する上で、動物実験はきわめて重要です」と述べており、今回の公開書簡に署名した理由を、「私自身の研究においても動物実験が果たした役割は大きく、疾病や治療法の研究を進めるためには動物実験が不可欠です」と説明しています。書簡にはグライダー氏のほか、ウィリアム・キャンベル(William Campbell氏、マリオ・カペッキ(Mario Capecchi氏、トルステン・ウィーゼル(Torsten Wiesel氏の3氏のノーベル賞受賞者が署名しています。


動物実験の禁止を目指して世界各地で活動する団体「動物の倫理的扱いを求める人々の会PETA)」は、今回の公開書簡に好意的な反応を見せているものの、PETAのケイシー・ギレルモ(Kathy Guillermo)副会長は、「我々は(中略)薬物実験にいまだに動物が使用されている理由の説明を求めています」と述べ、動物研究が継続的に行われていることへの異議として、「動物実験で効果が示された新薬の大半(約95%)は、臨床試験の段階では失敗に終わっています」と指摘しています。したがって、研究機関は、動物実験の必要性を明白にする必要があると言えるでしょう。


科学研究における動物実験は、動物愛護団体と研究コミュニティの間で長年に渡って議論されている問題です。動物実験の擁護を目的とした今回の動きが、動物実験への注目を集めて認識の変化をもたらすかどうか、今後の動向が注目されます。


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参考資料:

ジャーナル編集者と出版社が語る:効果的な出版プロセスとは

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ドナルド・サミュラック博士(カクタス・コミュニケーションズ、エディテージ米国オフィス代表)が聞く対談シリーズ:パート1


【参加者】
アン・ウッズ博士(Dr. Anne WoodsWKH看護師長)
ショーン・ケネディ氏(Shawn KennedyAmerican Journal of Nursing誌編集長)


本記事は、サミュラック博士、ウッズ博士、ショーン氏の3者が、ジャーナルのワークフローや出版倫理をはじめとするジャーナル出版のさまざまな側面について語り合う対談シリーズの第1回です。ウッズ博士は今回、ウォルターズ・クルワーおよび同社と関係を持つ「リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス」ブランドで運営される出版物について述べるとともに、ウォルターズ・クルワー誌のワークフローについても簡単に説明しています。ショーン・ケネディ氏は話題をさらに掘り下げ、自身が編集長を務めるAmerican Journal of Nursing (AJN)誌で、看護に関するあらゆることをどのように網羅しているかを語っています。同誌では、最新の看護関連情報、原著論文、橋渡し研究の論文、臨床転帰に影響を及ぼす研究の論文、臨床レビュー、品質向上プロジェクトとその報告書、看護師の成長と育成に重要な側面、看護師が生み出した技術(視覚的なものまたは書かれたもの)を扱っています。ウッズ博士もショーン氏も、ウォルターズ・クルワーが、看護とヘルスケアの専門家が分野の画期的な研究と開発にアクセスできるようサポートしていると話しています。


本対談シリーズのその他のパート


興味を引く研究背景の書き方を教えてください。

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Question Description: 

長々とした研究背景にはうんざりする読者が多いと思いますが、読者の関心を引き付ける研究背景とはどのようなものですか?

回答

研究背景の説明は、読者の関心を引き付け、研究の意義を理解してもらうために欠かせない要素です。研究背景は、論文のイントロダクションに含めるものです。研究背景に含めるべき情報はいくつかありますが、書式や書き方が規定されているわけではありません。ご指摘のとおり、長々としたまとまりのない背景に読者は興味を持ちませんので、説得力があって読者を引き付けられる書き方を心掛ける必要があるでしょう。

研究背景の説明は、著者が関連分野について理解していることを示す意味もあります。そのためには、自分の研究につながる関連先行研究について、徹底的なレビューを行わなければなりません。先行研究について述べたら、その知識の隙間(先行研究がカバーできていない部分)を特定します。特定したら、そのリサーチクエスチョンに対して、自分の研究がどのようにアプローチするのかを述べましょう。このように説明することで、読者は研究の文脈をつかむことができます。続いて研究の意義を説明し、現状の知見にどのようなインパクトや前進をもたらすことができるかを説明しましょう。くれぐれも、研究テーマから脱線しないよう注意してください。


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参考文献について

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Question Description: 

国際ジャーナルに論文を投稿する際、参考文献に投稿先に掲載済みの論文を数本入れなければいけないでしょうか。

回答

ターゲットジャーナルの掲載済み論文を参考文献とすることは義務ではありませんが、掲載されて間もない関連論文を23本引用することは妥当なことだと思います。ジャーナルはときどき、特集記事を掲載した特別号や付録号を発行することがありますが、その中にあなたの論文と関連するものがあるかもしれません。ターゲットジャーナルに良い印象を与えるには、そのような特別号から12本の論文を選んで参考文献として含めると良いでしょう。しかしながら、査読プロセスは、ターゲットジャーナルの掲載論文が含まれているかどうかで左右されるものではありません。(査読者がターゲットジャーナルの掲載論文を参考文献として提案することは考えられますが。)査読は、論文の質と内容に基づいて行われるものです。ターゲットジャーナルでよく引用されている論文には、常にアンテナを張っているようにしましょう。そのような論文は、そのジャーナルに掲載された研究の傾向を反映して、影響度が高くなっている可能性があるからです。あなたの論文のテーマがそれらの論文と近ければ、研究結果の妥当性を強調するためにも、そうした文献を引用することは賢明でしょう。


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ジャーナル編集者からのアドバイス:努力し、学び続け、ビジョンを持つこと

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ジャーナル編集者からのアドバイス:努力し、学び続け、ビジョンを持つこと
研究者・著者・ジャーナル編集者・科学コミュニケーションの専門家としての活動で、学術出版界で広く知られた存在。現在はスプリット大学医学部(クロアチア)で生物医学・保健学研究科の教授を務めながら、多くの役職に就いている(英エジンバラ大学名誉教授;Journal of Global Health誌共同編集長;欧州科学編集者協会会長;世界医学雑誌編集者協会研究委員会委員長;コクラン科学委員会共同委員長等)。ザグレブ大学で修士号と博士号を取得し、研究の方法論や科学コミュニケーションを大学生に指導している。200本以上の査読付き論文を出版し、優れた業績を挙げた編集者に贈られる科学編集者委員会賞(2016年)を含むさまざまな賞を受賞している。

アナ・マルシッチ(Ana Marušić)教授は、研究者・著者・ジャーナル編集者・科学コミュニケーションの専門家としての活動で、学術出版界で広く知られた存在です。8回査読および生物医学出版に関する国際会議(シカゴ、2017年)に際して教授が行なったプレゼンテーションは、学術界の喫緊の課題をテーマとしたもので、エネルギーと情熱に満ち溢れていました。エディテージの読者の皆さんにも、教授の視点をぜひ紹介したいと思います。今回のインタビューでは、マルシッチ教授がジャーナル編集者になった経緯などを伺いました。また、ジャーナル編集者が直面している困難や、科学の公正性や出版倫理に関する問題について伺ったほか、世界中の研究者に向けたアドバイスを頂きました。


マルシッチ教授は、多彩な業績・経歴を持っています。ザグレブ大学(クロアチア)で修士号と博士号を取得し、研究の方法論や科学コミュニケーションを大学生に教えています。現在はスプリット大学医学部(クロアチア)で生物医学・保健学研究科の教授を務めながら、多くの役職に就いています【エジンバラ大学(英)名誉教授;Journal of Global Health誌共同編集長;欧州科学編集者協会会長(20152018年);世界医学雑誌編集者協会研究委員会委員長;コクラン科学委員会共同委員長;コクラン・クロアチア創設者兼研究コーディネーター;スプリット大学医学部クロアチア・グローバルヘルスセンター創設者;EQUATOREnhancing the QUality And Transparency Of Health Research)ネットワーク運営委員】。これまでに200本以上の査読付き論文を出版し、優れた業績を挙げた編集者に贈られる科学編集者委員会賞(2016年)を含むさまざまな賞を受賞しています。専門は、人体における免疫系と骨の相互作用に関する研究で、そのほか、科学コミュニケーションや査読、研究倫理にも関心を持っています。マルシッチ教授の、公的登録としての臨床試験登録の義務化に関する取り組みは、世界中の臨床試験規制にプラスの影響を与えました。


ひょんなことから編集者になった」経緯を教えてください。

ジャーナル編集者になった経緯は、多くの研究仲間たちがたどった道と同じです。研究者として一流誌で論文を出版した経験が評価され、小規模な学術誌に編集者にならないかと誘われたのです。私のケースで特殊だったのは、国内情勢が良好とは言えない時期に新たなジャーナルの創刊に携わったことです。Croatian Medical Journalを創刊した1991年は、ちょうどクロアチアで戦争が始まった年でした。そのような切迫した状況の中でジャーナルを創刊するのは楽ではありませんでした。しかし、医学の社会的側面、とくに戦争や人為的災害および自然災害の医療面に関する研究論文に特化することで、困難を強みに変えることができました。

Journal of Global Health 誌の創刊者および共同編集長として、ジャーナルを創刊するために必要なことは何だとお考えですか?創刊の経験からどのようなことを学びましたか?

私は、2誌のジャーナルをそれぞれまったく異なる状況と目的のもとで創刊しました。Croatian Medical Journalは、小規模な科学コミュニティの研究の質を高めることを目指しており、クロアチアの質の高い研究を世界に発信する窓口として、またクロアチアの研究者がグローバルな研究コミュニティに参加するための玄関口として役立っています。国際レベルの医学誌として認められることを目標にしており、実際、その分野では相応の評価を確立できたと自負しています。一方、Journal of Global Healthは、グローバルヘルスへの客観的かつ学術的なアプローチを提供し、グローバルヘルスに大きなインパクトを与えるような論文を出版することを目的としています。こちらも、被引用数の多い重要な論文を出版できています。


先ほど述べたように、この2誌での経験は、基本的な目的、直面した困難、利用可能なインフラという面でまったく異なるものでしたが、国際的な編集者コミュニティの一員でいることはきわめて大切だということを学びました。ジャーナル編集者は、もともと研究者や学術関係者であった場合がほとんどで、すでに論文を出版した経験も持っているため、ジャーナル編集についてこれ以上学ぶことはないと考えがちです。しかし、研究職とジャーナル編集業はまったく異なる仕事で、覚えるべきことがたくさんあり、学び続ける必要があります。個人的には、このような専門的組織の一員になったことが何よりの学びの機会となりました。

世界中の編集者と交流をしてきた中で感じた、現代のジャーナル編集者が直面している課題を3つ挙げて頂けますか?

1つ目は、査読です。ジャーナルとしての方針を決め、ジャーナルやコミュニティにとって最適な形で実行していかなければなりません。


2つ目は、出版プロセスにおける透明性の確保です。論文投稿の前提条件として、人体が関わる臨床研究に関する臨床試験登録の義務化を含めた透明性を確保することは、とくに重要です。


3つ目は、デジタル時代におけるジャーナル出版の枠組みを確保することです。簡単なように思えますが、小規模な学術コミュニティにデジタル出版を導入することは、実際は非常に難しいことです。

ジャーナル編集者として、研究者に査読教育を受けさせることについてどのようにお考えですか?教育によって、査読のクオリティを向上させることや、ジャーナル編集者が査読者を選ぶ際の選択肢を増やすことができると思いますか?

私たちは、悲惨な戦争が始まった時代にジャーナルを起ち上げました。当時は医師として、戦争の医療面を示そうと奮闘していた同僚のサポートを行なっていました。その経験を通して、彼らが、特筆すべき結果を持っているにも関わらず、それを論文としてアウトプットするスキルを欠いていることに気が付きました。私たちは、ライティングのワークショップを開いて著者11人をサポートしました。その取り組みは最終的に、医学を学ぶ学部生・大学院生に、研究の方法論やエビデンスベースの医学を教える必修コースに発展しました。これらのコースには、研究プロセスに不可欠である査読教育を必ず含めるようにしていました。


この取り組みは私たちのジャーナルでは非常にうまく機能していましたが、査読教育の効果を証明することはできないので、何が正解なのか確かなことは分かりません。

現代の研究界を悩ませている倫理的問題の中で、もっとも深刻なものは何だとお考えですか?

問題は多いですが、すべては、「出版するか消え去るか(Publish or perish)」という学術界の文化に起因していると思います。学術コミュニティでは、キャリアを発展させるためには論文出版が欠かせません。一方、ジャーナル編集者にとっては、剽窃、オーサーシップ、利益相反などのオーサーシップに関するものが喫緊の課題と言えるでしょう。これらの重要な問題についての透明性や開示性を確保するために、編集者は方針やプロセスを明確に定める必要があるでしょう。

責任感を持って研究を遂行する意識を、教育によって育むことは可能ですか?ジャーナル編集者、学術機関、学会などの学術関係者のうち、研究倫理の教師として最適なのは誰だと思いますか?

可能だと思います。すでに、適切な教育を行うための枠組みや材料を揃える取り組みは進んでいますし、実験的に導入されているケースもあります。欧州の枠組みでは、研究倫理は、社会のために責任を持って科学に取り組む「responsible research and innovation(責任ある研究・イノベーション、RRI」という、より広範なテーマの一部に組み込まれています。私の研究チームも、このテーマに関するプロジェクトの1つ(Higher Education Institutions and Responsible Research Innovation [高等教育機関と責任ある研究イノベーション、HEIRRI])に参加しており、高等教育のあらゆる段階にRRI教育を組み込む活動を行なっています。RRI教育は、研究の現場で行われなければなりません。

若手研究者時代にはどのような困難があり、その困難とどのように向き合いましたか?現代の若手研究者も同様の困難に直面していると思いますか?

当時はまだ知らないことも多く、自分の誤りに気付いていなかった分、楽だったのかもしれません。現代の若手研究者は、研究プロセスに求められる透明性や、責任ある研究を遂行するために必要な仕組みとプロセスを、研究の中に取り入れなければなりません。当然、これには多大な労力を要しますが、社会に対して責任を持ちながらより良い研究行うための助けになると言えるでしょう。

論文を出版して学術出版界に足跡を残し、学術界で確かなキャリアを築こうと奮闘している研究者たちに向けて、アドバイスをお願いします。

学び続け、研究を楽しみましょう。努力やひたむきさは、質の高い論文、新たな共同研究、正当な評価という形として、必ず実を結びます。一流誌で論文を発表することを考えるよりも、アイデアを練ること、ビジョンを持つことが重要です。そして、研究の方法論に関する訓練を受けてください。方法論を身に付ければ、質の高い研究を行えるようになり、一流誌での論文出版につながるでしょう。ジャーナル編集者は、論文の言語レベルは重要視していません。なぜなら、言語は簡単に修正できるからです。一流誌が求めているのは、確かな方法論に基づいた、新規性のある研究なのです。


マルシッチ教授、お時間と貴重なアドバイスをありがとうございました!

若手研究者のためのデジタルツールガイド:プロジェクト管理とデータ共有ツール

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若手研究者のためのデジタルツールガイド:プロジェクト管理とデータ共有ツール

学術環境の変化に伴い、ワークフローやコミュニケーションのさまざまな場面で利用できる多彩なツールが誕生しています。研究と論文出版において重要な、プロジェクト管理とデータ共有を支援するツールを紹介します。

学術環境の変化に伴い、ワークフローやコミュニケーションのさまざまな場面で利用できる多彩なツールが誕生しています。本記事前半では、文献検索や文献管理の支援ツールを紹介しました。後半の今回は、研究と論文出版において同じくらい重要なタスクである、プロジェクト管理とデータ共有を支援するツールを紹介します。


プロジェクト管理ツール 

研究プロジェクトを実行する上で、管理(マネジメント)、チームワーク、プランニングはきわめて重要です。研究者は、実験、データの収集と分析、同僚との打ち合わせなど、さまざまなタスクを日常的にこなしています。プロジェクト管理ツールは、日々のタスクを効率的に計画・管理するのに役立ちます。以下は、研究者のタスク管理に特化したプロジェクト管理ツールの一例です:


Labguruプロジェクトプランニングや文書の保管を共同で行える電子実験ノート(Electronic Laboratory NotebookELN)です。実験やワークフローの計画、構造化/非構造化データの保存、プロジェクト管理を行うことができ、直感的に使えるユーザーインターフェースからそれらの情報を共有できるので、研究の進捗管理がしやすくなります。このツールにはさらに、カスタマイズ可能な実験テンプレート、冷凍庫内の試薬の在庫管理、細胞株や実験に使用する動物・バクテリア・試料などのトラッキング、実験プロトコルや集中発注プロセス、SOPStatements of Purpose)の統一などの便利な機能が搭載されています。


Asanaウェブベースのモバイル型プロジェクト管理ツールです。Eメールでのやり取りが不要になり、チームレベルでのコミュニケーションやコラボレーションを円滑にします。チーム内でのプロジェクトやタスクの作成に使え、タスクの進捗をさまざまなブラウザやデバイスから閲覧することができます。その他の機能としては、ノートの共有、各種フォーマットファイルのアップロード、タスク管理、リアルタイムのアップデート、アクティビティフィード、通知、リマインダーなどがあります。また、プロジェクトの進捗管理だけでなく、詳細な進捗レポートの作成も行なってくれます。


ガントチャート(Gantt Chartsガントチャートはアプリケーションではありませんが、広く使われている実用的なプロジェクト管理方法で、連続的なタスクや並列的なタスクに沿ってプロジェクトのスケジュールを表示することができます。縦軸にタスク、横軸に時間をとり、横棒の長さがそのタスクの期間、グラフ上の位置がそのタイミングを示します。ガントチャートはワードやエクセルで簡単に作ることもできますが、Microsoft ProjectWrikeなどのガントチャート用のソフトウェアを使うと、より充実したものができます。同時進行中のプロジェクトの進捗管理を行う研究者にとって、複数のプロジェクトを円滑に進めるためのプランニングやスケジューリングができるこのグラフは、大変実用的なツールです。


sciNoteワークフローやモジュラー機能を備えたオープンソースのELCです。sciNoteに特徴的なのは、ワークフロー内のさまざまなフェーズの紐づけが可能である点です。これによって、プロジェクトや実験の各フェーズで得られたデータを結び付けることができ、データをより幅広い文脈で見ることができます。この機能によって、実験ノートを論理的に構築していくことができます。もう1つの特徴は、各研究者の個人データの機密性と安全性を保持するために、各ユーザーがチーム内で個別のアクセス権を持っているという点です。


データ共有ツール

研究者にとってデータは不可欠ですが、その分析や保管、膨大なデータセットの共有といったタスクは、決して楽な作業ではありません。これらのタスクを簡単にするために開発されたツールがあります。データ管理ツールは、データ分析に役立つだけでなく、効率的なデータの保管や共有をサポートしてくれます。ほとんどの助成団体がデータシェアリングを義務化している現代において、これらのツールの重要性は急速に高まっています。


Zenodo欧州原子核研究機構(CERN)が運営する、研究成果のリポジトリです。さまざまな学問領域の出版物・プレゼンテーション・学会議事録・プロジェクト・画像・ソフトウェア(GitHubとの統合を含む)・データなど、幅広いコンテンツをあらゆる言語で支援します。フォーマットの制限はなく、データは50GBまで保管でき、登録したデータの保存期間は半永久的です。ファイルへのアクセスは、制限付き(無認可のユーザーからのアクセスを拒否)、無制限、エンバーゴ(公開解禁日まではアクセスを制限)の中から選択することができます。


DataCiteDataCiteは、研究データの永続的識別子(DOIs)を提供します。各DOIのメタデータを集めることで、データその他の研究情報の検索、適切な引用、統計データの取得、関連性の調査を行うための巨大な研究データインデックスを形成しています。すべてのメタデータは無料でアクセス/レビューが可能です。DataCiteには統合型の検索インターフェースが搭載されており、膨大な記録の中から詳細情報を検索・フィルター・抽出することができます。このソフトを使えば、助成金に関するデータの追跡も可能です。これが重要なのは、助成団体がデータシェアリングを義務付け始めているからです。また、助成団体が助成金データを追跡することで、助成した研究のインパクトを知ることができます。


Dryad科学・医学論文の基礎となるデータを検索し、自由に再利用・引用することができるリポジトリです。Dryadは、表、スプレッドシート、テキスト、動画、画像、ソフトウェアコードなど、専用リポジトリが存在しないあらゆる種類の公開データのリポジトリとして機能します。また、多くのジャーナルとの投稿統合機能があるので、著者は、論文の出版と併せてDryadにデータを投稿することで、データへのリンクを出版論文に含めることができます。Dryradは、研究者、ジャーナル、科学団体、出版社、研究機関、図書館、助成団体を対象としているため、可視性の高い網羅的なデータバンクとして機能します。


Figshare図、データセット、画像、動画、ポスター、コードなどの研究成果を保存し共有することができる、クラウド・コンピューティング・ネットワークを介して運営されているオンライン・デジタル・リポジトリです。成果物に対するクレジットを確保できるだけでなく、予備的な成果物の公開も可能です。Figshareはオープンデータの原則に基づいて運営されているため、ユーザーはデータへのアクセスやコンテンツのアップロードを自由に行えます。したがって、このプラットフォームを利用すれば、自分の研究データを不特定多数に向けて公開することができます。Figshareにアップロードされたすべてのコンテンツには、他者が引用できるようにDOIが割り当てられます。また、ダウンロードの統計情報の追跡機能は、オルメトリクスの情報源としても機能しています。

 


これらのツールを使用していますか?ここで紹介した以外の便利なツールをご存知ですか?以下のコメント欄から、デジタルツールに関するあなたの体験談をぜひシェアしてください。あなたのコメントは、きっとほかの研究者の役に立つはずです。


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ORCiDとResearcherIDの両方を持つメリットは何ですか?

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Question Description: 

ジャーナルのウェブサイトから論文をアップロードするときに、ORCiDの入力欄を見つけました。このウェブサイトでは、ResearcherIDの入力欄もありました。これらのID2つとも持っているのですが、それぞれの使い方を教えてください。

回答

ORCiDResearcherIDも、曖昧さを回避するためにすべての研究者に固有のIDを提供しているという意味で、基本的な機能は同じです。同姓同名の研究者が複数いても、このIDによってそれぞれの研究者を判別することができ、IDはそれぞれの論文にリンクされます。

ただし、重要な違いもあるため、両方のIDを持っておくことにはメリットがあります。ORCiDは単に固有のIDを提供してくれるものですが、ResearcherIDには、ほかにもいくつかの機能が付いています。ResearcherIDでは、論文の出版経歴やWeb of Scienceを通した引用メトリクスの生成が可能です。また、ResearcherIDWeb of Scienceが提供するサービスであるのに対し、ORCiDはコミュニティによる運営のため、より中立的であると言えます。したがって、ResearcherIDは、Web of Scienceに登録されているジャーナルの論文に限定されますが、ORCiDは、出版社に関係なくすべての論文を紐付けることができます。また、ORCiDは、データセットや設備、報道記事、実験、特許、ノートなどにも使用できます。


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