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二重投稿の匿名通報先

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Question Description: 

二重投稿を見つけてしまいました。匿名で通報したいのですが、通報先は双方の論文誌のchief editorで良いのでしょうか?また匿名で通報はダミーのメールアドレスを取得するのでしょうか。そのような通報で相手にしてもらえるでしょうか。

回答

二重投稿をみつけて、それを関係当局に通報したい場合は、両方のジャーナルの編集長にメールを送るのが適切でしょう。ジャーナルが匿名の通報に真剣に対処しようとしない理由の一つは、疑われている不正行為が具体性に欠けているためです。ですので、編集者や関係当局があなたの通報の妥当性を評価しやすいように、メールには申し立て内容を裏付ける詳細な説明と具体的な証拠を含めるようにしましょう。

シュプリンガー・ネイチャーなど、匿名の通報に対応する出版社もありますが、通報者の先入観である可能性があることや、事実の信頼性がないことを理由として、対応しない出版社もあります。ジャーナルへの通報を行う一方で、その出版社が通報の受け入れについてどのような方針を取っているかを確認してみてください。


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ジャーナル編集者が著者に求めること

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ドナルド・サミュラック博士(カクタス・コミュニケーションズ、エディテージ米国オフィス代表)が聞く対談シリーズ:パート2


【参加者】
アン・ウッズ博士(Dr. Anne WoodsWKH看護師長)
ショーン・ケネディ氏(Shawn KennedyAmerican Journal of Nursing誌編集長)


ジャーナル編集者がもっとも困るのは、投稿規定を守っていない原稿やジャーナルの目的と対象領域に合っていない原稿が投稿されてくるケースで、スペルミスのある原稿やフォーマット整理が不完全な原稿も困りものジャーナル編集者と査読者は、見映えの悪いお粗末な状態の原稿について、その研究内容もまた粗雑で出版に値しないものだと考えがちだと語るショーン氏。ウッズ博士は、著者は論文の「書き方」も重要であるということを認識しておく必要があり、非英語ネイティブの著者であれば、専門の論文校正会社の力を借りて、論文がグローバルな出版基準を満たすようにすべきだと主張します。サミュラック博士は、著者に必要なこととして、読み手を意識しながら書くことと、論文を最初に見るのは学術出版の門番である編集者と査読者であることを忘れないようにすることを挙げています。


本対談シリーズのその他のパート:

インド政府による4段階の剽窃対策にに賛否両論の声

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インド政府による4段階の剽窃対策にに賛否両論の声

インド政府は、剽窃に関わった研究者を罰するための4段階の罰則規定に関する政策案を発表しました。研究者の間では賛否両論が巻き起こっており、研究不正に対するインド初の取り組みに賛同する意見がある一方で、懐疑的な見解や方向性への不満も見られます。

インド政府は、剽窃に関わった研究者を罰するための4段階の罰則規定に関する政策案を発表しました。研究者の間では賛否両論が巻き起こっており、研究不正に対するインド初の取り組みに賛同する意見がある一方で、懐疑的な見解や方向性への不満も見られます。この政策案は、インドの人材開発を担当する人材開発省の承認を待っている状況です。


インドの研究界では剽窃が蔓延しています。このことは大きな問題として認識されているものの、政府はこれまで、この問題に対処するための体系的アプローチを導入できていませんでした。今回初めて、高等教育を管理する法定組織であるインド大学助成委員会(UGCが、この問題への対処に正式に着手したのです。


4段階の罰則規定では、異なるレベルの剽窃が考慮されており、そのレベルに応じて以下のような罰則が設けられています:
 

  • 1段階:10%以下の剽窃は許容範囲内とみなされ、とくに処分は下されない。
  • 2段階:10%40%の類似性が認められた場合、学生には6ヶ月以内に論文を修正して再投稿することが求められる。教員には剽窃論文を取り下げることが求められる。
  • 3段階:40%60%の剽窃が認められた場合、学生は論文の再投稿を1年間禁じられる。教員は、1年間の昇給停止と2年間の指導禁止が課される。
  • 4段階:60%以上の剽窃が認められた場合、著者はその研究を放棄することを命じられ、教員は2年間の昇給停止と3年間の指導禁止を課される。常習者には、懲戒処分や解雇処分が下される場合がある。


国家認定評価審議会(バンガロール)理事長のヴィランダー・シン・チョーハン(Virander Singh Chauhan)氏をはじめとする研究者らは、今回の動きを、「期待していた正しい道への一歩」であるとして歓迎しています。しかし、インドのすべての研究者がポジティブな反応を見せているわけではありません。懐疑派からは、「剽窃は類似の程度で分類すべきではない」という意見が出ており、National Institute of Advanced Studies(バンガロール)の原子物理学者、ヴァランギマン・サブラマニアン・ラママーシー(Valangiman Subramanian Ramamurthy)氏は、「これは冗談か?」と疑問を投げかけています。


グル・ゴビンド・シン・インドラプラスタ大学の生命工学の教授であるナンドゥラ・ラグラム(Nandula Raghuram)氏は、「階層システムは、制度を悪用する可能性のある高等教育機関に権限を与えることになり得るため、“危険”」であり、「材料や方法のセクションなど、論文には類似性が高くなりがちな部分があるため、政策決定者はこのことにも留意する必要がある」として、今回の政策の穴を指摘しています。なお、政策案には、アブストラクト、サマリー、仮説、結果、結論、提言の部分だけが先行論文との類似性をチェックされると明記されています。


インドのすべての大学が、この方針に従うよう求められることになります。また、剽窃の疑いが浮上した場合に備え、すべての大学に対し、部門を超えた委員会の設置も要求されています。さらに、部門の決定を精査し、訴えに対処するための、機関横断的な委員会の設置も必要になるでしょう。


今回の動きが、インドの研究者の研究・出版倫理の意識向上や、剽窃関連の不正の減少につながるかどうか、今後の動向が注目されます。


関連記事:


剽窃に関するよくある質問:


参考資料:

「少数者への査読機会の提供は、ジャーナルのブランド価値を高めるチャンス」

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「少数者への査読機会の提供は、ジャーナルのブランド価値を高めるチャンス」

査読の多様性と参画機会を向上させるために、学術出版業界はどのように協調すべきでしょうか?ドナルド・サミュラック氏(Donald Samulack、カクタス・コミュニケーションズ、エディテージ米国法人代表)に聞きました。

査読の多様性と参画機会を向上させるために、学術出版業界はどのように協調すべきでしょうか?ドナルド・サミュラック氏(Donald Samulack、カクタス・コミュニケーションズ、エディテージ米国法人代表)に聞きました。


査読において、多様性(diversity)と包摂性(inclusion)は、どのような意味を持っていますか?

査読者に関する統計データによると、査読者は西洋諸国(米、カナダ、欧州)に大きく偏っており、男性が多くの割合を占めています。査読者の性別や国籍に多様性をもたらすには、関係者全員による意識的な努力が必要でしょう。このような取り組みを計画的に行うことによって、査読者の総数を増やせる(=査読者1人当たりの負担が減る)だけでなく、将来的に査読者の基盤をグローバルに確保できるでしょう(=女性や若手研究者の割合と、地理的多様性の向上を目指すことになる)。加えて、これらの人材の熱意を結集すれば、査読の質の向上も見込めます。


査読の多様性を実現するためにジャーナルがすべきことは何ですか?

査読に性別や地理的多様性をもたらすための最初のステップは、まずはジャーナルが、現状のシステムのバランスの悪さと、それが査読の質にどのような影響を与えているかを認識することです。次に、自誌の査読者データベースで性別や地理的多様性の現状を調べ、バランスに問題がないかを把握する必要があります。この情報を踏まえて、社会的少数者の数を戦略的に増やすためのプロセスやプログラムに着手します。プログラムの例として、オンライン・トレーニングやワークショップのような形式のほか、報奨制度・割引・機会の提供といった支援的取り組みが挙げられます。


社会的少数者(一般的に、女性・若手・アジアや中南米の研究者)に査読者としての機会を提供することは、自誌のブランド価値を構築する最大のチャンスと言えますが、皮肉なことに、ジャーナルはまだその事実に気付いていないようです。


査読に関するより詳しい情報は、ピアレビュー・ウィーク2018シリーズをご覧ください。

文字数制限について

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Question Description: 

文字数制限200字以内とある場合、参考文献の文字[2] なども カウントされるのでしょうか。

回答

はい、文字数制限には、各テキストのすべての文字が含まれます。ジャーナルは通常、アブストラクトの文字数制限を200字としていますが、この中にはアブストラクト内のすべての文字が含まれます。ただし、ほとんどのジャーナルは、アブストラクトの中に参考文献を含めることを認めていません。ジャーナルのガイドラインを忠実に守るようにしましょう。ほとんどのジャーナルで、各原稿のためのスペースは限られているので、ジャーナルの指示を守っていない原稿は、判定にネガティブな影響を与える可能性があります。


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Can I request the journal to consider publishing my article that exceeds the word limit?

中国政府が国のリポジトリでの研究データ共有を義務化

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中国政府が国のリポジトリでの研究データ共有を義務化

中国は、国内のすべての研究者に対し、国のリポジトリでのデータ共有を義務付ける方策を新たに導入すると発表しました。これに伴い、研究データ管理のシステム化と標準化を目指す中国国務院総務局は、「研究データの管理方法」と題した通知を公表しました。

中国は、国内のすべての研究者に対し、国のリポジトリでのデータ共有を義務付ける方策を新たに導入すると発表しました。これに伴い、研究データ管理のシステム化と標準化を目指す中国国務院総務局は、「研究データの管理方法」と題した通知を公表しました。


この通知には、対象範囲の概要とその実行に責任を持つべき当事者が規定されています。詳細は通知に記載されている通りですが、主として以下の点を目的としています:
 

  • 研究データの安全性の確保
  • オープンシェアリング水準の引き上げ
  • 国内科学技術のイノベーション支援
  • 経済的・社会的発展の促進
  • 国家安全保障の保護


データセンターの設置や、リポジトリに登録されたデータの管理は、中国科学技術部が先導することになります。通知によると、データセンターが「研究データのパブリックシェアリングにおける重要なツール」としての役割を果たし、「国内外における研究データの交換に関する協力関係の強化」を図れるとしています。


生データか派生データに関わらず、すべてのデータは、公認のデータセンターの監査を受ける必要があります。また、中国政府の助成を受けて生成されたデータに基づく論文を国際誌で出版する場合は、出版前に国のリポジトリにデータを登録する必要があります。これは、データセンターが処理できるデータ量にもよりますが、海外出版の遅延を招く恐れがあります。


この方策はほかにも、国のデータセンターへのデータの適時のアップロード、一般公開および関連部局との共有、民間が使用するルートでの無料公開を義務付けています。これは、中国人研究者の論文投稿先となり得る国際誌のデータ共有方針に抵触する可能性があります。


機密データの取り扱いについては、「国家機密、国家安全保障、公益、企業機密、または個人のプライバシー」を含むデータは公開されず、これらのデータに変更があった場合は、慎重な統制が行われると定められています。センシティブな研究データを「外部」と共有することが求められる場合、関係する研究者/機関は、データ交換の詳細を説明して承認を得なければならず、このプロセスを経て初めて、データを国際的に共有することが可能になります。研究機関も大学も企業も、この新たな方針に従うことが求められています。


現在、中国は科学論文出版数で世界一の座にあり、科学技術で世界をリードしています。今回の新方針が中国人研究者の学術的な自由と国の科学的成果の量にどのような影響を与えるか、今後の動向が注目されます。


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頭脳逆流:中国人研究者が中国に戻る理由とは

「著者の性別・人種・属性によらず、すべての論文を公平に扱わなければなりません」

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「著者の性別・人種・属性によらず、すべての論文を公平に扱わなければなりません」

今週はピアレビュー・ウィークです。カール・シーサー氏(メルボルン大学化学科元教授、現Seleno Therapeutics Pty Ltdディレクター)に、査読に多様性をもたらすためにすべきことについて伺いました。

カール・シーサー氏(Carl Schiesser、メルボルン大学化学科元教授、現Seleno Therapeutics Pty Ltdディレクター)に、査読に多様性をもたらすためにすべきことについて伺いました。


ジャーナルが査読プロセスに多様性(diversity)と包摂性(inclusion)をもたらすためには、公正な査読が保証されていなければなりません。著者の性別、人種、国籍によらず、論文を公平に扱う必要があります。とは言え、ジャーナルは外部の査読者に査読を委託しているため、これを保証することは簡単ではありません。したがって、ジャーナルは査読者に対して、自誌の多様性と包摂性に関する方針を知ってもらうことが重要ですが、これもまた難しいタスクと言えます。


私は一流誌でゲストエディターを短期間やっていましたが、一部の査読者は、筆頭著者が女性の場合に対応を厳しくしていました。また、(皮肉なことに)非英語ネイティブの査読者ほど、非英語ネイティブの著者の英語に批判的であるケースが多く、時にそれがエラーの連鎖につながることもありました。一方で、名のある著者には対応がきわめて優しくなる査読者もいました。


ジャーナルの査読プロセスに多様性と包摂性をもたらす最良の方法は、著者の名前や所属を伏せることでしょう。そうすれば、先述したような一部の査読者が持つ偏見を取り除くことができます。あるいは、より効果的なのは、各ジャーナルが、性別・人種・属性的多様性を持った査読者グループを確保しておくことでしょう。


査読に関するより詳しい情報は、ピアレビュー・ウィーク2018シリーズをご覧ください。

「ジャーナルは査読者を増やす努力を、査読者は関心対象を広げる努力を」

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「ジャーナルは査読者を増やす努力を、査読者は関心対象を広げる努力を」

今週はピアレビュー・ウィークです。ディーキン大学総合生態学センターの海洋生態学者、ゲイル・スコフィールド氏に、査読の多様性に関する見解をお聞きました。

ディーキン大学総合生態学センターの海洋生態学者、ゲイル・スコフィールド(Gail Schofield)氏に、査読の多様性に関する独自の見解をお聞きました。


査読が論文の改善に計り知れない効果を生み出すのは、対象の論文で扱われている種・地域特性・方法論的アプローチ/ツールに関心を持つ査読者が、3人程度集まった場合です。


しかし、査読の候補者たちは、自分自身の研究やほかの論文の査読に追われている場合がほとんどなので、編集者にとってこの条件を満たすことは、ますます難しくなっています。この査読者不足の問題は、かつてないほど増え続けている投稿論文数やジャーナル数によって、深刻化しています。言うまでもなく、査読は簡単な作業ではないため、この状況を改善する方法を見つけなければなりません。査読にかける労力は人によって大きく異なりますが、査読者はそれぞれが独自の視点で論文を精査しており、公開前に論文の改善や問題点の解消につながるような指摘をしています。


査読を受ける側の立場から見ると、新米査読者や同分野の査読者ほど、厳しい審査をする傾向があります。幸運なことに、私は指導教官から査読の作法に関するガイドラインを教えてもらいました。その教えは今も守っていますし、学生たちにも受け継いでいます。研究者への査読訓練はきわめて重要な投資であり、ジャーナルは、積極的に取り組まなければなりません。論文は、研究者が膨大な時間と労力をかけて計画・実行・執筆した結果として仕上がっているものであることを忘れてはいけません。私は、査読した論文の文章に問題があると思ったら、著者が対応しやすいように、その文章や段落を自分ならどのように修正するかアドバイスします。方法論的な問題があれば、そのアプローチを再検討できるような、またはアプローチを正当化できるような、関連する先行研究の情報を提供します。とくに説明もなく間違いや欠陥を指摘するだけでは、著者はどのように修正すべきかが分からず、コメントの意図を適切につかめなくなります。したがってジャーナルは、査読者たちが、その経験値に関わらず、簡潔で効果的な査読を行えるよう導く多肢選択問題や複数解答問題などを提供し、年に1回はこのような問題に取り組む時間を作るなどの「トレーニング」を積ませるべきでしょう。


私は楽しんで査読を行なっています。毎年、さまざまなジャーナルから生物学・生態学に関する論文の査読依頼を受けています。査読を幅広く行うことで、専門分野や関連分野の論文をより広範な視野で読むことができるようになります。これは、研究者が苦労して生み出した論文へのポジティブな貢献として奨励されるべきだと思います。


私にとって査読の多様性とは、ジャーナルが査読者不足の問題を解決すること、そして、若手かベテランかを問わず、査読者が質の高い査読を行えるように、必要なスキルや基準を身に付けさせるトレーニングを行うことです。また、査読者たちが自分の知識や技能を多様化する意味で、専門分野の関連論文を幅広く受け入れるということでもあります。


査読に関するさまざまな識者の見解を、ピアレビュー・ウィーク2018シリーズで紹介しています。どうぞご覧ください。


メタ解析のためのデータの問い合わせについて

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Question Description: 

ある介入法についてのメタ解析を実施する際に、抽出された各論文の平均値、標準偏差、サンプル数を知りたいのですが、それらの結果がグラフ(図)として報告されており、具体的な数値がわからない論文があります。そのため、論文著者にそれらについて教えてもらいたく、問い合わせを行いたいのですが、その際に、何か配慮すべきこと、どのようなことを説明しておくと良いかなど必要な事項について教えていただければと思います。

回答

通常メタ解析を行うときは、集合データを使います。ただ、そうすると重要な情報が見逃されてしまう場合があるため、メタ解析を行う著者は、参考文献の著者から生データを入手しようとすることがあります。参考文献の著者から入手するデータは、研究のテーマとメタ解析の目的によって異なります。

まずは、関連するリポジトリを覗いて、探しているデータが将来的な利用のためにすでに登録されていないかどうか確認してみましょう。参考文献の著者に個別のデータを求める必要がある場合は、オリジナルデータを公開することによるプライバシー規制の制約がないかどうかを問い合わせると同時に、コラボレーションを提案して、透明性のある業務上の協力関係を築くことも検討してみましょう。要求するデータの量によっては、あなたの論文の著者に、参考文献の著者を含める必要も出てくるかもしれません。


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論文投稿と学会発表の順番と二重投稿

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Question Description: 

査読付き雑誌への投稿が遅くなることを考えて、学会の演題登録をデータを追加して行い、こちらは受理されました。 今後は投稿→アクセプト前に学会発表(データを追加した内容)→論文アクセプトとなる見込みです。 投稿予定の雑誌では、投稿する段階でabstractを除き、公開されてないことが規定されています。 この流れは許容されますでしょうか。

回答

出版前のものであっても、研究結果を学会で発表することはまったく問題ありません。ただし、ほとんどのジャーナルは、論文のタイトルとアブストラクトを修正し、できれば追加データを含めた上で投稿することを求めています。まだジャーナルに論文を投稿していないのであれば、カバーレターで、学会発表について触れるようにしましょう。

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「ORCID iDは単なる番号ではありません」

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20173月、 ORCIDアジア・太平洋地区ディレクターの宮入暢子氏が、エディテージのムンバイ(インド)事務所を訪問しました。このビデオは、その際の同氏とエディテージ・インサイト・チームとの対談の様子です。ORCIDは、研究者の名前の曖昧さ回避の問題に対処しているだけでなく、同一の永久的な識別子によって研究者の時間を節約し、学術出版界をまとめている――宮入氏はそう語っています。


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「アカデミックハイジャック」:学術界の裏通りで街頭犯罪に遭わないために

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「アカデミックハイジャック」:学術界の裏通りで街頭犯罪に遭わないために

論文を出版したいと思うあまり、著者は盲目的にハゲタカジャーナルの餌食となってしまうことがあります。騙されたことに気付いた頃には、論文は人質となり、多額の金銭を要求されることになります。あるジャーナル編集者が、これを「ひったくり」に例えてアドバイスを綴りました。

先日、ジャーナルに論文を無断で出版されて混乱している著者から相談を受けました:
 

「投稿した論文の状況を問い合わせるメールを送ったのですが、返答がなかったため、最終的に論文を取り下げることにしました。しかし、取り下げの意思表示に対する返答もなく、著作権に関する私の同意を得ないまま、無断で出版されていました。どのように対応すべきでしょうか?出版された論文を撤回する方法はありますか?」


このようなケースは、決して珍しいものではありません。論文を出版したいと思うあまり、著者は盲目的にハゲタカジャーナルの罠に引っかかってしまうのです。騙されたことに気付いた頃には、論文は人質となり、多額の金銭を要求されることになります。いずれにせよ、著者の長年の苦労や、積み上げてきた信頼は、危機に晒されます。このような状況から脱するにはどうすればいいのでしょうか?ハゲタカジャーナルから身を守る術はあるのでしょうか?論文を強奪されないためには何をすべきでしょうか?これらの問いに的確に答えられるのは、ジャーナル編集者です。本記事ではこの問題について、経験豊富なジャーナル編集者のケイヴン・マクローリン(Caven Mcloughlin)教授に意見を伺いました。教授は、著者が自分の信頼や公正性を守るには、疑わしいジャーナルから距離を保つことが大切だと主張しています。


著者のあなたへ


今回の被害はひったくりのようなものです。あなたは「研究」をひったくられたのです。この先は、あなたの力の及ぶ範囲ではありません。しかし、それと同時に、偽ジャーナルにファイルを差し出したのは、あなた自身です。これは、犯人に自ら財布を差し出すようなものです。


今回のようなケースは何度も耳にしているので、詳細を聞かずともだいたいの状況は推察できます。状況をまとめてみましょう。


論文の最終版を仕上げたあなたは、投稿先のジャーナルを探し始めました。一流誌や評判の良いジャーナル、インデックスされたジャーナルに投稿した場合、判定が出るまでに時間を要する(60日程度)ことを知っていたあなたは、選択肢を天秤にかけ、簡単な方のルートを選びました。ハゲタカジャーナルのウェブサイトには、審査が短期間で終わること、出版できる可能性がきわめて高いことを暗に示す文言が並んでいます。あなたはその誘惑に負けてしまいました。あとは「出版料」の支払いに同意するだけです。このときに具体的な金額を提示されたかどうかは分かりません。あるいはその点についての認識がなかったかもしれません。


いずれにせよ、どのような代償を払うことになるかを理解しないまま、都合の良い条件に惑わされ、その「ジャーナル」に論文を投稿してしまいました。心のどこかでは、このジャーナルは研究を披露する場として相応しくないと分かっていたはずです。あなたは結局、自責の念に駆られて論文の取り下げを求めました。しかし、返答はありません。このジャーナルとの関係を断とうとあらゆる手を尽くしますが、ほどなくして論文が出版されたことを知ります。このジャーナルで論文を出版することの「代償」が、金銭面だけでなく、研究者としての信頼にも関わる問題であることをこの期に及んで認識したあなたは、対応に追われます。


ここから先は、あなたにとって耳の痛い話になりますが、単刀直入に言わせてください。まず、あなたが抱えている問題は、まだ何も解決していません。あなたは自分の論文を管理する権限を完全に失ってしまいました。信頼できる別のジャーナルに再投稿したとしても、即座に拒否され、自己剽窃者のレッテルを貼られるでしょう。そして、この恐ろしいレッテルは、編集者の間で知れ渡ることになります。


所属大学は、偽ジャーナルで論文を出版した職員の昇進を禁ずるなど、何らかの罰則規定を必ず設けています。したがって、あなたの努力は評価につながらなくなります。それどころか、最悪の場合、600ドル、1100ドル、あるいはさらに法外な料金が記載された請求書と、その支払いを要求するメールを受け取ることになります。メールの文面は次第に敵対的となり、脅迫めいたことが書かれるようになります。最初のうちは、苛立つ程度かもしれません。しかし、3通目、4通目が届くにつれ、メッセージを開くのも恐くなり、未読のまま削除してしまうようになるでしょう。


しかし、先述したように、この「学術界のひったくり」は、この程度では収束しません。


続いて、大学のウェブサイトでメールアドレスが公開されているすべての大学役員に、あなたの契約不履行と、大学が支払いを肩代わりすべきであるとほのめかす脅迫的なメールが届くようになります。そして、苛立った役員たちは、なぜこのような事態に陥っているのかとあなたを問い詰めます。今、あなたが置かれている事態の深刻さを、理解できたでしょうか。貴重な成果物を管理する権利を失うだけでなく、「約束」を守らない人物として、信頼が地に墜ちることになってしまうのです。


打開策はあるでしょうか?残念ながら、リセットボタンでもない限り、この教訓から学ぶこと以外にできることは多くありません。


学術界の犯罪者とは関わらないこと


怪しい人と付き合っていると、自分もその一員とみなされます。「うまい話には裏がある」という昔からの警句を心に留めておきましょう。信頼のおけるジャーナルは、厳格な査読プロセスを無視して、たった数日から12週間で論文の出版を約束するようなことは絶対にしません。学術の世界は、そんなに甘くはないのです。


論文が制御不能になってしまった今、あなたが考えるべきことは、どのように「ダメージコントロール」をするかです。偽ジャーナルが出版の段階まで事を進めなかったのは、その論文のあなたにとっての価値を利用しようとしたからでしょう。彼らは、論文を利用してあなたから金銭を引き出すことを目的としているのです。「出版されたくなければ金を払え」と要求してくるか、さもなくば、雇用主にあなたの契約不履行を告げ口し、顔に泥を塗ろうとしてきます。彼らは、論文を取り下げるチャンスを与えてくれるでしょう。ただし、元の出版費用に加え、取り下げ手数料を加算した額を支払うよう要求してくるでしょう。何もしなければ、事態は悪化するだけです。信頼できるジャーナルへの再投稿を望むなら、この費用を支払う以外に、論文を管理する権限を取り戻す術はありません。


論文に費やした努力を無に帰したことを認識しましょう。


偽ジャーナルですでに出版されている論文を、信頼できる成果物として、原著論文として再投稿したとしても、遅かれ早かれ罪を問われることになります。先述したように、疑わしい人間と付き合っていると、自分もその一員とみなされるのです。


逃げ道はあるか?


このゴタゴタから脱する唯一の確かな道は、支払いの肩代わりを求める「請求書」が大学の管理者や上司に送られる前に、自分が騙されたことを認識し、彼らに自分の未熟さを白状して身の潔白を訴えることです。大学の管理者は、このような話を耳にするのは初めてではないはずです。学術界の弱者をハゲタカのように食い物にする、ハゲタカジャーナルの存在を認識しているはずです。


これを人生の教訓としましょう。付き合う相手は慎重に見極めなければなりません。学術界にも、楽して「儲ける」方法はありません。学術の高みに到達するための近道は存在しないのです。悪い人間と関わるのはやめましょう。


 

私は、今回のケースをひったくりに例えました。弱さにつけ込まれ、犯罪者の餌食になってしまった場合、あなたはどうしますか?立ち上がり、被害届を出し、前に進むしかないのです。二度とそのようなリスクにあえて自分を晒すことのないよう、細心の注意を払いましょう


くれぐれも気を付けてください!

ケイヴン・マクローリン


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メタ解析のデータの問い合わせについて

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Question Description: 

以前メタ解析について質問させていただいた者です。 いただいた回答でわからない点があったため再度質問させていただきました。 メタ解析のデータの参考文献の著者へのについて、①データ(サンプル数、平均値、標準偏差)を問い合わせをする場合には先方にどのように何を伝えればよいのか?、②研究の概要をどの程度伝えるべきか?、③参考文献の著者に個別のデータを求めた際に、オリジナルデータを公開することによるプライバシー規制の制約がないかどうかを確認した方がよいと回答いただいたのですが、プライバシー規制の制約とはどのようなものなのでしょうか?

回答

参考文献の著者に問い合わせなければならないデータの種類は、具体的な目的と研究の状況によります。一般的に、メタ解析では複数のデータセットが関わってくるので、さまざまな研究の結果の「異質性」、信頼区間の長さ、加重値、調査の精度といった情報が必要になってくるのではないでしょうか。これに関する詳細な説明は本フォーラムの範囲外となるので、あなたのリサーチクエスチョンに答えるために必要なデータの詳細を知るには、統計の専門家に相談することをお勧めします。


研究は競争の場なので、研究に関する情報のシェアについては、研究者によって見解の相違や気楽さの程度の違いもあることでしょう。しかしながら、今回のメタ解析に本格的な共同作業が必要だと考えるなら、あるいは、ほかの研究者から一定量の重要データを入手する必要があると考えるなら、あなたの研究になぜそのデータが重要なのかを相手に分かってもらえるように、自分の研究に関する必要な情報を共有しましょう。こうすることで、ほかの研究者から、期待する支援を得やすくなるはずです。


研究や関係国の安全保障法に関わりを持つ助成機関や規制当局は、原著論文のデータの共有や再利用に対する方針を定めているはずです。法的な曖昧さや知的財産権の問題を避けるため、生データのリクエストを行う一方で、データ共有プロセスの透明性について、研究者たちと話し合うようにしてください。


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大事な研究データを守るための今すぐ使える4つのヒント

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大事な研究データを守るための今すぐ使える4つのヒント

データの消失や管理不全によって悲惨な結果を招く研究者は、後を絶ちません。研究者は「自分のデータは安全」と信じたがりますが、それはまったくの思い込みです。この記事では、研究者にとってのデータ管理の重要性について取り上げます。

中国は、国内のすべての研究者に対し、国のリポジトリで科学データを共有し、データセットをオープンにすることを義務付ける方策の導入を最近発表しました。EUをはじめとする地域がデータ保護関連の法規制の導入を予定しているのと同様に、中国もデータの安全性確保に向けて歩みを進めていることになります。データセキュリティに関する選択肢の増加は、研究生活にどのような影響を与えるのでしょうか?この記事の執筆中、博士号の取得を目指す友人から偶然にも連絡があり、その友人の同僚を襲った悲惨な出来事を耳にしました。その同僚は、研究データを保存していたハードディスクを紛失し、5年分のデータをすべて失ってしまったのです!


研究データの管理を怠ると、こういったことが起こるのです:


Dr Lucie Bea D@MissElvey
@theflyingeditorアドバイス:バックアップは欠かさずとりましょう。私は、博士課程在籍中に3台のノートパソコンが壊れ、大部分の研究データが失われるという経験をしました。


Hugh Kearns‏ @ithinkwellHugh
金曜日ですよ!バックアップの日です。
ハードディスクがクラッシュ。メモリースティックを紛失。消えた作業のやり直しは最悪。
#ECRchat #PhDchat


神聖化された学術界においても、データの消失や管理不全によって悲惨な結果を招く研究者は後を絶ちません。博士号の取得をあきらめる寸前まで追い込まれることや、取り戻したデータの範囲で実行できる研究に舵を切らざるを得なくなることもあります。物理学・医学系の大学院生であれば、研究室に自分の研究データを保存しているはずです。人文科学・社会科学系の博士課程の学生のハードディスクには、音声や動画などの記録データが溢れんばかりに詰まっていることでしょう。


研究者は「自分のデータは安全」と信じたがりますが、それはまったくの思い込みです。博士課程の道を邁進し、研究費の獲得や就職活動などのさまざまなタスクに追われていると、研究の土台となる「データ」を軽視しがちです。長期的に研究プロジェクトに取り組むためには、リソースを絶えずアップグレードすることによってデータを豊富に生成し、成果物として成立し得る道筋を複数用意しておかなければなりません。プロジェクトを成功裏に完了させるためには、研究データの適切な管理が不可欠なのです。この記事では、研究者にとってのデータ管理の重要性について取り上げます。


データの保全が重要である理由


研究の世界におけるデータとは、研究の質と完全性を示す役割を持つ、きわめて重要なものです。したがって、研究者なら誰もが、効果的なデータ管理の方法について関心を持つべきです。所属研究者がデータの保管・アクセス・利用を行えるデータ管理システムを設置する大学は、急速に増えています。


責任あるデータ管理は、科学界が抱える大きな課題の1つである「再現不可能性」を解消する鍵となる可能性もあります。データ利用の多様化という観点で言えば、登録されたデータを効率的に管理し、適切なフォーマットで保管することで、集めたデータを、さまざまな方法で多角的に利用できるようになります。また、異なる研究者による同じデータセットの反復を識別できるようにもなります。データへのこのようなアクセシビリティは、科学の再現性の保証に欠かせない要素です。


さらに、効果的なデータ管理を行うことで、研究成果や論文出版に大きな影響を及ぼし得る、データの消失を防ぐことができます。先述した友人の同僚は、消失したデータを取り戻すのに、これから何年も費やすことになるでしょう。


研究のアクセシビリティ:未来への鍵


データへのアクセシビリティは、先行研究を基に新たな知見を生み出すために不可欠であり、データ管理においてきわめて重要な要素です。シュプリンガー・ネイチャーの調査よると、「回答者の70%以上が、今後生み出されるすべての論文、学術書、研究データをオープンアクセス化することに賛成と答えており、司書の91%が、“オープンアクセスは学術・科学出版の未来である”という考え方に同意」しています。これを達成するために、科学のあらゆる利害関係者たちの間で、責任あるデータの保存だけでなく、データのアクセシビリティ向上を重要視する気運が高まっています。


テクノロジー企業やエンジェル投資家は、研究者向けにさまざまなアプリケーションやサービスを提供しています。MendeleyReadcubeEndnoteなどのアプリケーションソフトにより、社会科学・人文科学系研究の大部分を占めるテキスト中心のデータの保管や参照だけでなく、自然科学や物理科学の論文の閲覧や注釈付けが可能になりました。


機関や研究室が主導するデータを、プロジェクトに携わる人々の間だけでなく、第三者とも共有しなければならない機会は少なくありません。高まるオープンデータ化への気運は、オープンアクセスやアクセスを共有するプラットフォームでのデータ公開を、研究者に迫っています。


今日では、効果的なデータ管理方法として、識別子やリポジトリの重要性が増しています。これらのツールの利用には、以下のようなメリットがあります:
 

  • 研究の保護:アクセスポイントやアクセス範囲を設定できるため、アクセスを限定的に許可しながら迷惑な侵入者からデータを守ることができる。
  • データのブランディング:自分の研究を最先端のものとしてブランド化できる。
  • アクセシビリティの向上:データセットを1ヶ所にまとめることができるため、データの利用が容易になる。


また、データを保持しておき、新たな調査に利用することもできます。世の中には研究が溢れているものの、そのすべての質が高いとは言えないため、研究のブランディングは重要です。識別子やリポジトリを利用することで、研究を差別化できるだけでなく、研究を1ヶ所で安全に保管することができます。これらのツールは、研究データ群を管理してくれるだけでなく、その安全性を保証してくれるものでもあります。


大切なデータを管理するためのペストプラクティス


具体的なデータ管理計画は、信頼性を示し再現性を保証するものであるため、資金調達のための書類、助成金の記録、重要な公的文書において、今や欠かせないものとなっています。このことを踏まえて、研究データの安全性確保と管理のためのベストプラクティスを紹介します:
 

  1. クラウドサービスのプロバイダーの個人アカウントを利用するか、(もしあれば)大学のデータ管理システムを利用して、データを可能な限りクラウド上に保存する。これにより、データ消失のリスクを最小化できる。
     
  2. データをフォーマットして、見つけやすくするとともに使いやすくする。こうすると、とくにデータが公開・共有されている場合は検索が容易になる。標準化されたメタデータは、国際的なベストプラクティスとして、現在多くの助成金契約において重要志されている。データを保管・区分・フォーマットする際は、アプリケーションソフトを効果的に活用する。
     
  3. 管理データのオープンアクセス化は、任意ではあるものの、データの保存・共有が重要視され始めた昨今、強く推奨される。
     
  4. 日々蓄積されるデータをシステマティックに保存することを習慣化する。識別しやすくアクセスしやすい領域で、データを分類・フォーマット・保管する。


データは、研究者にとっての金鉱にたとえられることがよくありますが、この表現は意外と的確かもしれません。研究データは、多大な資金と時間とリソースを投資した結果として生み出されるものです。データの保管やアクセシビリティの向上は、科学を進歩させるための鍵であり、データの管理は、すべての研究者に絶えず付きまとうテーマです。科学コミュニティが前進するためには、データ管理の重要性への意識を、さらに高める必要があるでしょう。


 

データの管理やアクセスについて、どのような考えをお持ちですか?ご意見や体験談などを、ぜひお寄せください。


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前所属先での研究を発表する場合、所属先はどうすればいいですか?

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Question Description: 

A大学の研究者から、B大学の常勤職員になって4か月が経ちました。A大学の教授は、A大学でのプロジェクトをこのまま続けて、論文をまとめ上げようと言っています。この論文の責任著者は、A大学のこの教授で、私は筆頭著者です。ただこの教授は、論文に書く私の所属先は、B大学ではなくA大学だと主張しています。教授は、私の現在の職場であるB大学については、第2の所属先とすればよいと提案しています。これが正しい方法なのかどうか、そして倫理的に問題がないのかどうか分からないので、アドバイスをお願いします。

回答

著者の所属先が変わった場合の対応については、コンセンサスがありません。慣例的には、プロジェクトに関する研究活動の大半をA大学で行なっていて、そこから支援を受けていたのなら、論文を投稿する際は、A大学を所属先とするべきでしょう。

この場合は、脚注かAcknowledgement(謝辞)に、現在の所属先を「現所属先」として記載します。その研究に対して両方の組織から同程度の支援を受けている場合は、両方を所属先として記載します。

「所属先の変更」について、多くのジャーナルは具体的な規定を設けているので、あなたの前所属先と現所属先も、同様のガイドラインを定めているかもしれません。論文投稿先ジャーナルの編集者と、両大学の然るべき人に問い合わせて、この件についての方針が定められているかどうかを確認することをお勧めします。


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チェックリスト「Think Check Submit」であなたの論文に最適なジャーナルを選ぶ

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チェックリスト「Think Check Submit」であなたの論文に最適なジャーナルを選ぶ

ジャーナルの創刊数は年々増えていますが、偽りの約束で著者をおびき寄せる悪徳出版社やハゲタカジャーナルもまた、増えています。選んだジャーナルが信頼に値するかどうかを、どのように見極めればいいのでしょうか。学術出版界の支援組織連合、Think Check Submitよる、シンプルなチェックリストをご紹介します。

自分の論文にふさわしい信頼できるターゲットジャーナルをいざ選ぼうとすると、混乱してしまいませんか? ひょっとしたら、途方に暮れてしまうかもしれません。でも、それも仕方のないことです。というのも、ジャーナルの創刊数は毎年増えており、今や、研究者にはさまざまなオプションが用意されているからです。この増加の深刻な側面は、スピード出版や出版の保証といった偽りの約束で著者をおびき寄せる悪徳出版社や、ハゲタカジャーナルが増えていることです。では、選んだジャーナルが信頼に値するかどうかを、どのように見極めればいいのでしょうか。学術出版界の支援組織連合が起ち上げたThink Check Submitキャンペーンは、シンプルなチェックリストを使って、信頼できるジャーナルを見極められるよう、研究者をサポートするものです。このインフォグラフィックは、ダウンロードして自由にお使い頂けます。


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考えて、チェックして、提出する

あなたの論文のために、信頼できるジャーナルを選ぶ

 

「出版したい」という気持ちにつけこまれた若手研究者がハゲタカ出版社の餌食となる例が、後を絶ちません。信頼できるジャーナルを選び、ハゲタカ出版社を避けるためのチェックリストをご紹介します。

 


考える

 

論文を出版する学術ジャーナルは3万誌以上

この数は年々増えている

しかし

ハゲタカジャーナルやハゲタカ出版社の数も増えている!

 

論文を投稿する前に、よく考えましょう!

 


確認する

 

あなたや同僚は、そのジャーナルのことを聞いたことがありますか?

その出版社にはすぐに連絡がつきますか?

査読のシステムやプロセスについて、ウェブサイトに明記されていますか?

そのジャーナルの出版論文は、有名なデータベースやあなたが使用しているデータベースに収載されていますか?

そのジャーナルは何らかの費用を徴収していますか?費用の詳細は明記されていますか?

ジャーナルの編集委員は聞いたことがある人ですか?

その出版社は、COPEDOAJなど、出版界の有名組織の会員ですか?

 


投稿する

 

上のチェックリストにYESと答えられる場合のみ、投稿しましょう。

 

論文投稿先には、分野で名を知られたジャーナルを選びましょう。そうすれば、適切な読者に論文が届きやすくなります。

 

適切なジャーナルで出版することで、引用が増え、露出度が高まり、研究者としてのキャリアにプラスになります。



考えて、確認して、投稿する


 

ジャーナルや出版社の信頼性をチェックする、研究者のための手軽なチェックリスト

Thinkchecksubmit.org


 

学術出版に関する豊富なリソースは、こちらからご覧ください
www.editage.jp/insights
 

Think Check Submit


:このインフォグラフィックのコンテンツは、Think Check Submitのウェブサイトから得たものです。


ハゲタカジャーナルやハゲタカ出版社から身を守りたいですか?こちらのビデオで対処法を学びましょう。

共著者が勝手にデータを追加した論文を無断で投稿してしまいました。どうすればいいですか?

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Question Description: 

私が第一著者として投稿した論文がアクセプトされました。しかし、投稿・査読・修正のプロセスは、私がポスドクとしてその研究を行なった研究室を去った後に行われました(コレスポンディング・オーサーは、その研究室の長)。修正には積極的に関わったのですが、その後の再査読を経た再修正の際に、コレスポンディング・オーサーから、新たなデータを加えたいと提案されました。私は、そのデータが論文とは無関係で混乱を招くリスクを考慮して、この提案を明確に拒否しました。それにも関わらず、彼は私に無断で新たなデータを加えた論文を投稿してしまいました。コレスポンディング・オーサーとは、この問題を解決しようと何度も話し合いを試みましたが、埒が明かなかったため、ジャーナルの編集者に問い合わせることにしました。編集者からは、「査読後のデータの追加は原則として認められている」との頼りない返答があり、「論文を強化するものであるならデータを追加してもいい」とした上で、コレスポンディグ・オーサーに対し、「最終版の投稿の前にすべての共著者の同意を得ること」との指示がありました。コレスポンディグ・オーサーは、自分の提案を取り下げる意思は今もないようです。彼は、「ほかの共著者全員の同意は容易に得られる」と言っており、私だけが有用なデータの活用を阻止しようとしていると非難しています。私は、彼が自分の強い立場と共著者との関係を利用して、私を阻害していると感じています。今のところ、データを加えることに関する明確な科学的根拠の説明はありません。コレスポンディグ・オーサーの提案に私1人が同意しない状況がこのまま続いた場合、ジャーナルはどのような判断を下すのでしょうか?

回答

ほとんどのジャーナルは、変更に対して共著者全員の同意が得られていない限り、論文を出版することはありません。反対しているのが1人だけであったとしても、論文は出版されるべきではありません。個人的には、コレスポンディング・オーサーがこの段階になって新たなデータを加えたがっていることを不思議に思います。査読者は、このデータを加えるべきだと言っているのでしょうか。

コレスポンディング・オーサーに、データを加えることによって論文の科学的な質がどのように向上するのかを聞いてみましょう。その際は、ccにほかの共著者を入れ、新たなデータを加える理由の説明がない限りは同意できないことを伝えましょう。その説明に納得できない場合は、納得できない理由と、データを加えることで生じるデメリットを説明しましょう。また、データを加えることで、論文がもう一度査読に回る可能性があることも伝えておきましょう。

以上のやり取りの記録をジャーナル編集者に送り、自分の同意がない限り論文は出版されるべきではない旨を伝えてください。あなたの専門分野で新たに出版される論文には、常に注意を向けておきましょう。万が一、論文が無断で出版されていることに気付いたら、すぐにジャーナルに問い合わせましょう。


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学術誌も出版社も学会も、今すぐソーシャルメディアを活用しよう

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学術誌も出版社も学会も、今すぐソーシャルメディアを活用しよう

ソーシャルメディアの恩恵を受けるのは研究者個人だけと考えているなら、それは誤解です。学術出版社やジャーナルやその他の組織も、ソーシャルメディアを活用することで多くのメリットを得ることができます。学術出版社がソーシャルメディアを活用することのメリットを紹介します。

ソーシャルメディアの恩恵を受けるのは研究者個人だけと考えているなら、それは誤解です。学術出版社やジャーナルやその他の組織も、ソーシャルメディアを活用することで多くのメリットを得ることができます。ソーシャルメディアを利用していない出版社は、今すぐその判断を改めるべきでしょう。以下で、学術出版社がソーシャルメディアを活用することのメリットを紹介します。


ジャーナルや出版社はフォロワーを「探す」必要がない:
ジャーナルや出版社の場合、すでにともに論文を出版した大勢の著者たちとの関係があります。その著者たちが、自分の論文の出版元であるジャーナルや出版社のソーシャルメディアアカウントをフォローしない理由はないでしょう。また、これから論文を出版しようと考えている研究者もいます。そうした人々もまた、ジャーナルや出版社が発信する情報や各機関の最新情報にアンテナを張っています。さらに、学術出版に関わる査読者や編集者なら、もともとジャーナルや出版社の活動への理解があり、ソーシャルメディアでつながることにも関心を持っているでしょう。以上のように、ジャーナルや出版社はすでに大勢の潜在的フォロワーを抱えているので、ソーシャルネットワーキングのプラットフォームを活用しさえすれば、コミュニケーションの輪に入ることができるのです。


新たな著者の関心を引く絶好の機会である:
ジャーナルや出版社の成否は、著者の存在にかかっています。世界中の研究者たちが執筆した興味深い論文を自分たちが幅広く出版していることをソーシャルメディアでアピールすれば、新たな著者の興味を引きつけることができるでしょう。デジタル戦略の一環としてソーシャルメディアを取り入れることで、ターゲットへのより効果的な情報発信が可能になります。


評判や知名度の向上につながる:
自社の出版物について積極的に取り上げ、学術出版に関する情報をシェアすることで、自分たちが特定の分野に熱心に関わっているというポジティブなメッセージを発信でき、業界をリードする存在としての評価を高めることができます。投稿を募集するだけでなく、学術出版に関するトピック(オープンアクセス、プレプリント、査読など)について発信するようにしましょう。


一般コミュニティとの接点になる:
ソーシャルメディアは、多くの人に情報を届けることができるツールです。一般向けにまとめた研究概要やアブストラクト動画を利用して、適切なプラットフォームで最新の画期的な研究に関する情報をシェアしましょう。そうすることで、科学的背景を持たない一般の人々にもインパクトを与えるとともに、最新の重要な科学情報を把握できる機会を提供できます。このような取り組みによって、最新の発見や研究に関する確かな情報と、人生を変えうる知見を提供する、信頼できる情報源として認められるでしょう。


リアルタイムでのコミュニケーションが可能になる:
学術誌や出版社はこれまで、いろいろな意味でソーシャルメディアほど強力なリソースを持った経験がありません。ソーシャルメディアでは、かつてないほど簡単にターゲットとつながることでき、しかもそれをリアルタイムで実現できます。ソーシャルメディアでは、コミュニケーションが発展し、形成され、進化していく様子をリアルタイムで観察でき、人々の懸案事項に対してその場で解決策を提示することができます。


以上が、ソーシャルメディアで交流して最新情報をシェアすることに伴うもっとも分かりやすいメリットです。もちろん、これらのメリットを得られるのはジャーナルや出版社だけではありません。助成機関、学術機関、民間企業、サービスプロバイダーなども、ソーシャルメディア・プラットフォームを通して学術コミュニティと交流することで、恩恵を受けることができます。


本シリーズの後編では、オンライン・インフォグラフィック作成ツール「Visme」の創設者、ペイマン・タエイ(Payman Taei)氏に、学術誌・出版社・学会がソーシャルメディアを上手に活用するためのアドバイスを頂きます。


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提出予定の学位論文の内容を、学会で発表しても問題ありませんか?

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Question Description: 

国際学会で口頭発表を予定しています。発表内容は、自分の学位論文をもとにしたものです。学会は、学位論文を大学に提出する2ヶ月前に開催されますが、学位論文として提出する予定の内容を、提出前に学会で発表することに問題はありませんか?倫理的に許容されるでしょうか?

回答

学会で発表した内容を発展させ、論文としてジャーナルに投稿することには何ら問題はありません。少なくとも30%以上の内容が異なっているか、または新しいものであれば、重複出版とは見なされません。ただし、学位論文の出版については、大学によって方針が異なる可能性があります。基本的には問題ないはずですが、あらかじめ指導教官や学部長に確認しておくのが得策でしょう。また、発表のアブストラクトが学会議事録に掲載されるかどうかも確認しておきましょう。議事録に掲載される場合は、その旨を学位論文の中で示す必要があります。


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「科学の知識・原理・法則・慣行の背後には、必ず血の通った人間の物語があります」

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「科学の知識・原理・法則・慣行の背後には、必ず血の通った人間の物語があります」
インドで画期的な科学コミュニケーション戦略を実践することに情熱を注ぐ核科学者/エンジニア。Academy for the Advancement of STEAM Storiesを創設し、国際ストーリーテリング会議で科学に関する物語を紹介。科学の博士号、経営学のPGDMM(Post Graduate Diploma in Materials Management)、機械工学/電子工学のディプロマを取得。インドにおける科学コミュニケーションの普及に貢献したことが評価され、国や州から「International Copernicus Award for Science Popularization」をはじめとする数々の賞を受賞。これまでに20冊の科学関連書籍と、5000本以上の論文の著者として名を連ねている。

核科学者/エンジニアであるA.P.ジャヤラマン(Dr. A.P. Jayaraman)博士は、インドで画期的な科学コミュニケーション戦略を実践することに情熱を注いでいます。科学者としてのキャリアを歩む中で、科学コミュニティと一般コミュニティの間に溝があることを実感した博士は、一般コミュニティにも科学をより身近に感じてもらうための取り組みを行う決心をしました。その一環として、科学コミュニケーションに「物語」という概念を持ち込むことの重要性を広めるための「Academy for the Advancement of STEAMScience, Technology, Engineering, Arts and MathematicsstoriesSTEAMの物語を紡ぐアカデミー」を創設しました。今回のインタビューでは、科学コミュニケーションについての考え方をお聞きしました。博士は、科学にはたくさんの物語があり、それを活用するか否かは私たち次第だと言います。また、インドの科学教育を刷新する必要性や、新たなコミュニケーション形式を活用する未来の科学コミュニケーションについても伺いました。


ジャヤラマン博士は、科学の博士号と経営学のPGDMMPost Graduate Diploma in Materials Management)のほか、機械工学と電子工学のディプロマを持っています。核科学者/エンジニアとして学術的訓練を積んだ後は、科学教育を再構築するプロジェクトに情熱を注いでいます。学術界で輝かしいキャリアを歩む中で、インドにおける科学コミュニケーションの普及に貢献したことが評価され、「International Copernicus Award for Science Popularization」をはじめとして、国や州から数々の表彰を受けています。最近まで、Sadanam Institute of Management Studies(ケララ州パルガート)の学部長および技術経営学教授を務めていました。National Centre for Science Communicators(ムンバイ)では、副委員長として、「Creative Science Literature for Children(子供のためのクリエイティブな科学文学)」という新たな分野の創設や、国際ストーリーテリング会議で科学に関する物語を紹介するなどの活動を行なっています。長年に渡り、インド国内で多くのワークショップや、教師・子供・科学者・政策決定者向けのトレーニングイベントに参加しています。また、これまでに20冊の科学関連書籍と、5000本以上の論文の著者として名を連ねています。

Academy for the Advancement of STEAM Stories創設の経緯を教えてください。その活動についても詳しくお話し頂けますか?

私は多くの学会、セミナー、ワークショップに出席して、科学者や科学教育者とさまざまなディスカッションをしてきました。これらのイベントや交流を通して、科学を一般の人々にも理解しやすくする方法を生み出さなければならないと感じました。この想いが、「Sci-story」(“science”と“story”を組み合わせた造語)を語り継いでいくための団体の創設につながりました。


インドでは、ストーリーテリングと科学を融合させる試みは別個に行われてきました。たとえば、シヴァダス(Sivadas)教授は子供向けの「Sci-story」書籍をマラヤーラム語で180冊以上執筆しており、数年に渡ってEurekaのクリエイティブ・エディターを務めています。インドで使用されている複数の言語で同様の取り組みがなされていますが、問題は、それらの本の露出を高めるためには、より多くの言語への翻訳や音訳が必要であるということです。また、「Sci-story」の計画、企画、実行、デザインの監視、製品の流通などを行うことは、大規模なプロジェクトであることも実感しています。


今のあらゆるレベルの科学教育に不足しているのは、物語的な要素です。現在、教室で教えられている「科学」は、暗記重視の退屈で味気ないものです。しかし、科学とは科学者が行うものです。したがって、すべての科学的知識・原理・法則・慣行の背後には、血の通った人間の物語が存在しています。科学の歴史は物語の宝庫なのです。特定の方法で何かを知ったり行なったりするという科学的手法は、思考や生き方の手段として発展させなければなりません。科学者たちが科学的手法を実践し、それをもって物事を改善していくプロセスに、もっと注目すべきなのです。周期表を例に挙げてみましょう。それぞれの元素には、少なくとも10以上の物語があるはずです。すべて合わせると、1つの周期表の中に約1200もの物語が存在しているということになります。とは言え、科学者が物語を語ることに消極的であるという別の問題があるのも事実です。キャリアの最盛期にいる多忙な科学者は、科学コミュニケーションにおける物語の機能に懐疑的で、同僚から「ストーリーテラー」と揶揄されることに警戒心を持っています。


これらの問題の重大さと、一般の人々に科学をより身近に感じてもらいたいという想いが、「Academy for the Advancement of STEAM stories」の創設につながりました。本アカデミーは、科学の領域に学術的な厳格性をもたらしています。STEAMアカデミーの中心メンバーは、STEM分野で平均30年の活動経験を持つ大学教授で構成されており、それぞれが、編集者、核科学者、機械工学士、電子工学士、天文学教育者、数学の学位を持つ校長、哲学・論理学者としても活躍しています。哲学・論理学者のマーク・ノワツキー(Mark Nowacki)教授は、Logic Mills Learning Academy(シンガポール)のCEOも務めており、我々が作っているSTEAMの物語に、純粋理性、論理、認識論が組み込まれているかどうかをチェックしてくれています。さまざまな専門性を持つ人材が集まっているこのチームで、インドの科学教育センターや研究機関とのネットワークを駆使して、「Sci-story」の普及を目的としたイベントを主催しています。

インドの科学コミュニケーションという文脈において、人を引き付ける科学情報とはどのようなものですか?

現在インドの学校で行われている科学教育は、数学や物理では、教科書の内容を暗記させたり、方程式を何度も書き写させたり、与えられたデータをもとに数式を解かせたりする手法が主流です。生物学でも、生徒が良い成績を取るためには、指定の教科書に書かれた言葉や意味、図を暗記することがもっとも一般的な方法です。


私は科学について考えるとき、よく硬水を頭に浮かべます。その硬水のもととなっているミネラルを除去し、水を軟化、または口当たりの良いものにするにはどうすればいいのかを考えるのでます。これと同じように、私たちは、科学をより口当たりの良いものにしなければなりません。そうすれば、一般の人々の科学への意識が高まり、より多くの関心を集めることができるはずです。生徒の興味を引くことを目的に作られた短編の「Sci-story」は、補助教材として使用できるでしょう。それだけでなく、学術出版産業の利害関係者の関心を引くことにも利用できるかもしれません。


科学を「軟化」させることは、科学を矮小化させることと同義ではありません。もちろん、科学者たちにドラマチックな物語を求めるようなこともしません。それでは、研究者たちの貴重な時間を邪魔し、コアメッセージを薄めてしまうことになるからです。しかし、研究テーマに関する分かりやすいスライドや2分程度の物語を作ることはできるはずです。コンパクトで、興味深く、科学的に正確な物語は、科学の「軟化」に大きな役割を果たすでしょう。このような物語を、ワークショップやマスメディア、ソーシャルメディアを通して、教師や政策決定者、一般コミュニティ、その他の学術関係者に届けるのです。また、引退した科学者たちのネットワークを作って、彼らの物語を世に発信するという計画もあります。このネットワークを駆使すれば、多種多様なインドのSTEAM物語を構築できるのではないかと考えています。

インドの科学コミュニケーションはどのように進化していますか?

インドの科学コミュニケーションは、印刷媒体の大衆科学誌やラジオからスタートしました。科学ジャーナリストが活躍する時代が来ましたが、彼らは主に、インドのさまざまな地域ですでに名のある記者や科学教員でした。今日の利害関係者の多くは、科学と一般社会の接触の優先度を高めています。科学研究をより多くの人に届けることが求められる状況の中で、ストーリーテリングや路上パフォーマンスといった手法も、科学コミュニケーションの新たなフォーマットと見なされています。意識の高い市民科学者たちのおかげで、人々の科学に関する活動も変化を見せています。かつて、科学的な世界観を噛み砕いて分かりやすくしていたのは一般的な科学でした。また、迷信の撲滅も、新たなコミュニケーション形態を提示する上で魅力的かつ有効なテーマでした。そして、科学リテラシー向上の機運が高まる中、科学報道に対するより構造的なアプローチが取られるようになりました。科学コミュニケーションは、大衆科学誌や新聞の科学コラムとともに、着実に進化を遂げてきたのです。


とは言え、科学コミュニケーションにおいて新たなフォーマットを用いるためには、コミュニケーターが考え方を改める必要があります。新たなコンテンツも、これまでと同様に、その重要性と科学性を維持しなければなりません。科学に言及しているものはすべて精査される必要があり、コミュニケーターにも相応の力量が求められます。新たなフォーマットで科学的発見や情報をシェアする者は、断定を避けるのが無難でしょう。また、エンドスルファンプラチマダ地方におけるコカコーラ社への抗議といった、有害物質の発生や大衆への影響が懸念される現象など、危険や有害性の周知を行う場合は、慎重なコミュニケーションが求められます。

編集者やジャーナルは、自誌の論文の垣根を越えて科学コミュニケーションを行うために、考え方を改める必要があると思いますか?

比較的著名なジャーナルとその編集者の一部は、従来の頑ななアプローチを軟化させる必要があると考えています。サー・C.V・ラマン(Sir C.V. Raman)が古くから出版界に懸念を表明していたことは良く知られていますが、「出版するか消え去るか(Publish or perish)」という文化では、どの科学者も一流誌での論文発表に熱心です。彼らの夢は、心血を注いだ論文を高名な査読付きジャーナルで発表し、数多く引用されることです。編集者たちが厳格に定めたルールがあり、リジェクトされまいとする著者たちは、そのルールに忠実に従います。


学術出版界にはほかにも、いわゆるインゲルフィンガー・ルール(Ingelfinger ruleと呼ばれるものがあります。これは、新たな知見の純潔を保つためのルールで、マスメディアの報道によって知見が「汚染」されないようにするためのものです。たとえば、New England Journal of Medicine誌での論文発表を目指す研究者は、メディアと距離を保ち、学術会議などの公的イベントを避けるしかありません。これがインゲルフィンガー・ルールで、メディアと連携することは自殺行為と同義なのです。それでも、現場の研究者は論文を出版しないわけにはいきません。仕事の一環として、助成団体に進捗状況を報告するなどの活動も必要です。だから、研究の露出やインパクトを高める最良の方法は、論文出版に加えて代替的な方法(インフォグラフィック、プレスリリースなど)で科学コミュニケーションを図ることなのです。

今後、科学コミュニケーションはどのように変化していくでしょうか?科学コミュニケーションの代替手段は、将来どのような役割を果たすと思いますか?

科学は大規模に組織化された活動です。多大な投資がなされており、その投資に見合った結果を出さなければなりません。All India People’s Science Networkによると、歴史上の99%の科学者が存命で活動中であることが分かっています。


ある記事によると、インドでは1万人のうち4人が科学者です。中国ではこの比率は1810,000で、シンガポールやその他の先進国では801,000を越えています。研究者の数が多い分だけ科学的成果も膨大ですが、これらの成果が、科学コミュニティだけでなく一般コミュニティにも届けられるようにし、社会の改善にポジティブな役割を果たすようにしなければなりません。科学コミュニケーションは、それを実現するためにもっとも重要な要素です。科学技術関連の社会問題がある場合、人々に情報を届けるための代替手段を考える必要があります。たとえば、南インドのケララ州での科学活動を支援する任意団体「Kerala Sastra Sahitya ParishadKSSP」は、科学の普及だけでなく、持続可能性や発展に向けた解決法の提案も行なっています。彼らはインドの農村に住む人々が日常的に使用できる、優れた燃費性能を持つ製品を開発しています。


科学が社会に与える影響が高まり、「ポスト真実」の時代が到来している今、科学コミュニケーションの未来は明るいと言えるでしょう。将来的には、代替的な手段での科学コミュニケーションを使うケースが増え、学術出版という絶対的基準を超越することになると思います。「Sci-story」は主流となり、学習や教育に欠かせないメソッドとなるでしょう。


ジャヤラマン博士、ありがとうございました。科学の普及に関する取り組みが実を結ぶ日が来ることを楽しみにしています!

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