学術誌での論文出版は、研究者にとって一大事です。でも、どのタイプの論文を書けばよいのか迷ってしまうことはありませんか?研究者の多くは原著論文の出版を目指していますが、レビュー論文(review articles)、理論論文(theoretical articles)、論説(editorials)など、原著論文以外の論文を書くという選択肢もあります。このビデオでは、さまざまな種類の論文を紹介し、皆さんの今の状況に合った論文タイプを選ぶ際のヒントを提供します。
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MDPIから投稿の依頼がメールで再三にわたり来ておりますが、 MDPIの一般的な評価はどのようなものでしょうか。 お忙しいところ誠にお手数とは存じますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
MDPIはオープンアクセス誌専門の出版社なので、ジャーナルはすべてオープンアクセスモデルで運営されています。この出版社とやり取りをしたことはありませんが、ジャーナルについては個人的にやや不安的な印象を持っています。効率的な査読システムが構築されており、論文掲載料についても明確になっているようなので、ハゲタカジャーナルとは言えないでしょう。しかし、投稿を勧めるメールがMDPIから大量に送られてくることに、多くの著者が不満を述べています。また、MDPI の論文掲載料は全般的に高額です。これらのことから、ハゲタカ出版社とは言えないものの、質の高いジャーナルとも言えないでしょう。分野では比較的新しい出版社なので、業界内で足場を築くには一定の時間がかかるでしょう。
いずれにせよ、まずは自分自身で確認し、先輩や指導教授に相談してから論文投稿を行うようにしましょう。ジャーナルの信頼性に確信が持てない限り、投稿は控えましょう。
著者の経歴が、とくにコレスポンディング・オーサーの経歴が論文のアクセプトや編集委員会への心証に影響を与えるというのは本当ですか?所属機関の評判は、どの程度影響を与えるのでしょうか?自誌の被引用数を上げたいジャーナルは、自誌論文を引用するよう著者に働きかけることがあるようですが、高インパクトファクターのジャーナルから論文を引用したら、アクセプトに影響を及ぼすのですか?
本来、論文の価値はその質と科学的意義によって決まるべきものです。コレスポンディング・オーサーや所属機関などの評判は、論文の評価に持ち込まれるべきではありません。しかし、残念ながらこれらのバイアスが存在するのは事実で、コレスポンディング・オーサーや所属機関の評価が高いほど、論文がアクセプトされやすい傾向にあることは確かです。とは言え、このバイアスがどの程度働いているかを明言することはできません。完全に個人的なものである場合もありますし、編集者や査読者の無意識による場合もあります。まったく同じクオリティの論文が2本あり、どちらかを選ぶ必要に迫られたら、編集者/査読者は、自分たちのジャーナルで質の高い論文を出版し続けている実績がある方の著者の論文を選ぶかもしれません。また、著者に自誌の論文を引用させるようそれとなく働きかけるジャーナルは確かに存在しますが、高インパクトファクタージャーナルの論文を引用しているかどうかがアクセプトの判断基準になったというケースは聞いたことがありません。
結局のところ、自誌の論文を引用しているかどうかや、バイアスといったものは、論文の総合的価値を判断する上では些細なことです。著者にできるのは、論文の質を高めるよう努め、関連する論文だけを引用するようにすることです。編集者/査読者への心証を良くするための努力をするよりも、論文の質を上げることに力を入れた方が、アクセプトの可能性は間違いなく高まるでしょう。
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論文出版と研究報告におけるバイアス
何ヶ月も研究に没頭してデータが揃ってきたら、初めての論文執筆に着手しても良い時期に差し掛かっていると言えるでしょう。しかし、何をどう始めればいいのか見当もつかず、執筆の開始に二の足を踏んでいる人はいませんか?初めての論文を書き始めようとしている人に向けて、5つのアドバイスを送ります。
何ヶ月も研究に没頭してデータが揃ってきたら、初めての論文執筆に着手しても良い時期に差し掛かっていると言えるでしょう。しかし、何をどう始めればいいのか見当もつかず、執筆の開始に二の足を踏んでいる人はいませんか?
何かを新しく始めるときは、たいてい困難を伴います。研究論文の執筆も例外ではありません。私が初めて論文を出版したのは1977年でしたが、印刷された自分の論文を目にした時の感動は、今でも鮮明に覚えています。
ジャーナルに論文を投稿するプロセスは、時代とともに大きく変わっていますが、単語から文、文から節へ言葉を紡いでいく執筆のプロセスは、昔から変わりません。紙に文字を書く作業から、画面に文字を入力する作業への移行はありましたが、サイエンティフィック・ライティングのプロセスにおいては、小さな変化にすぎないでしょう。
この記事では、初めての論文を書き始めようとしている人に向けて、5つのアドバイスを送りたいと思います。
1. 論文の枠組み(骨格)を考える:執筆作業でもっとも難しいのは、連続した文章を生み出すことです。なぜなら、文法や構文に神経を使う必要があるからです。建築士が実際に建物を建て始める前に設計図を描くのと同様に、論文でも、まずはその枠組みを考えることが重要です。枠組みや骨格を決めることで、論文を論理的に構築していくことができます。
ターゲットジャーナルがIMRaD形式を採用している場合、この作業は進めやすいはずです。ただし、ジャーナルの指示に応じて、IMRaD(イントロダクション、材料と方法、結果、考察)のそれぞれのセクションに、小見出しを付ける必要があります。ジャーナルがフォーマットをとくに指定していない場合は、適切な見出しを適切な順序で自ら設定しなければなりません。この作業に長い時間はかからないでしょう。論文の概略は、比較的短い時間で設定・修正することができるはずです。
この作業を終えたら、同僚にチェックしてもらい、必要に応じて修正を加えましょう。自分にとって明快なことが、他者にとってもそうであるとは限りません(1人で作業をしていると、客観的な判断ができなくなることがあります)。
2. 論文全体ではなく、セクションや段落ごとに考える:目の前の画面はまだ空白であるにも関わらず、頭の中には、丁寧な構成で簡潔に書かれた、誤字脱字や文法ミスのない完成した論文の姿が見えていませんか?このギャップは、作業開始を躊躇してしまうほど、とてつもなく大きなものです。解決策は、論文の完成形を思い描かないことです。論文は小さなまとまりに分割し、段落やセクションを1つずつ着実に書き上げていきましょう。
3. ターゲットジャーナルを選んだら、すぐに書き始める:ジャーナル選びは、それ自体が1つの課題であると言えます。ターゲットジャーナル(論文の投稿先)は、早めに選びましょう。そうすることで、ジャーナルの投稿要件やバックナンバーを調べる時間に余裕が生まれます。自分の論文がジャーナルの対象領域に含まれていることが確認できたら、執筆を開始しましょう。研究が完了するのを待つ必要はありません。論文執筆は、実験や実地作業と並行して進めましょう。たとえば、材料と方法のセクションは、記憶が鮮明なうちに書き始めるのが良いでしょう。あらかじめ図の枠組みを作っておいて、実験結果が更新されるごとに、所定の升目に値を入力していきましょう。
「Detailing the writing of scientific manuscripts: 25-30 Paragraphs(科学執筆の詳細:25-30段落の論文)」(De Araújo、2014)という論文では、研究論文を書くという難しそうな作業に怯えることなく、タスクを視覚化して、IMRaD形式(イントロダクション、材料と方法、結果、考察)に分けられた25~30段落の文章を書くプロセスについて解説しています。Belcher(2009)は、論文を12週間で書き上げられるように設計されたシステマティックなアプローチを紹介しています。
4. 論文を書き始める前に、自分の研究について話す:自分の研究の話をすることは、論文を書く「準備」になります。自分の研究について他者に説明することができれば、執筆の際にも言葉が出てきやすいでしょう。自分の考えを言葉にして整理しておけば、論文の書きやすさが向上するはずです。共同研究者や信頼できる同僚と議論をすることで、研究の穴なども発見することができるでしょう。
5. 目標ワード数を設定する:論文執筆に取り掛かる際は、目標を細かく設定するようにしましょう。たとえば、「今日は400ワード書くまでやめない」といった具体的な目標です。これは、「今から3時間論文を執筆する」と決めるよりも効果的です。また、火曜の午後や金曜の午前中など、1週間の中で必ず論文執筆を行う時間を設定することで、論文を書く習慣が身に付きます。毎週同じ時間に腰を据えて論文を書く時間を設けることで、脳がその作業に適応しやすくなるのです。習慣化するまでは、設定したスケジュールを厳守するようにしましょう。
(※論文出版スケジュール管理用テンプレートがダウンロードできます。)
理屈はこれくらいにして、今すぐ書き始めましょう!
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参考文献:
Belcher W L. 2009. Writing Your Journal Article in 12 weeks. Thousand Oaks, Los Angeles: Sage Publishing. 376 pp.
De Araújo C G S. 2014. Detailing the writing of scientific manuscripts: 25-30 paragraphs. Arquivos Brasileiros de Cardiologia 102: e21–e23. http://doi.org/10.5935/abc.20140019
あるJournal(具体的にはBMJ Case Reports)からAcceptのお返事をいただき、校正ののちpublishを待つのみとなりました。ところが、以前であれば数日中にpublishされていたのですが、2週間経ってもなんの動きもありません。それどころか、Journal HPを確認すると、普段は毎週2桁ほどのcase reportが更新されていたのですが、この10日ほどは1本も新規更新がなされていません。 Journalでtroubleでも生じているようにも思えるのですが、何か確認のmailを送った方が良いでしょうか。現在別の論文がunder reviewのままであり、他Journalに投稿し直した方が良いのであれば早めに動きたいと考えています。
アクセプト論文の数や、校正プロセスにかかる期間によって、出版までの期間は異なります。ご質問からは、校正刷りを受領済みかどうかが分かりませんが、いずれにせよ、論文の状況についてジャーナル/出版社に問い合わせを行うことには何ら問題ありません。BMJ Case Reportsは定評あるジャーナルなので、レビュー中の別の論文の取り下げを検討する必要はないように思います。
生物医学の研究において、統計学はもっとも重要なツールの1つです。それにも関わらず、誤用や乱用が蔓延しており、統計学の誤用によって論文がリジェクトされるケースが増えています。生物医学分野で統計学が誤用される理由と、この問題の解決手段を考えます。
統計学は、2つ以上の変数の関係性を見極め、研究上の問いを評価するためのツールです。また、生物統計学は、統計学、確率、数学、コンピューティングを組み合わせたもので、生物医学の問題解決に使われます。生物統計学を用いることで、新薬に効果があるかどうかや、疾病の原因因子、患者の平均余命、全体の死亡率・罹患率などを分析することができます。
生物医学の研究において、統計学はもっとも重要なツールの1つであるにも関わらず、意識的か無意識かによらず、誤用や乱用が蔓延しています。実際、統計学の誤用が論文のリジェクトの主な要因になるケースが急速に増えています。
この記事では、生物医学分野で統計学が誤用される理由と、蔓延するこの問題の解決手段について考えます。まずは、統計エラーの背後にあるものを見ていきましょう。
1. 統計データを示すための明確さ不足:論文では、統計的手法とその手法による分析データを示します。しかし、統計的仮定を明確に示せていない論文が多く、読者が統計データの全容を掴むのを妨げる大きなグレーゾーンが存在しています。医学部の学生と教員を対象としたある横断的調査では、53.87%が統計学を非常に難解と捉えており、p値と標準偏差の意味を正確に定義できなかった割合はそれぞれ52.9%と36.45%にのぼり、50.97%がサンプルサイズを正しく計算できないことが明らかとなりました。この結果は、研究者に必要な能力として、データを正しく分析する力だけでなく、それらを正確に使用して提示する力の重要性を示しています。
2. データ対理論のバランスの悪さ:臨床研究が統計学の面で厳格な査読を経ている一方、基礎科学研究はそうではありません。生物化学、行動科学、動物実験、細胞培養が関係することが多い基礎研究の学際的性質が、統計学的分析を困難にしています。研究者は実験終了後に統計分析の導入を決める場合が多く、このような事後分析的手法では、限られた情報しか得ることができません。
3. データ収集開始前の意思決定不足:サンプルサイズ(例:マウスの数)の決定など、実験の重要な局面で統計分析を計画しておくことはきわめて重要です。こうすることで、研究結果に大きなメリットをもたらすことができます。結果に影響を及ぼし得るサンプルの変数(体重、BMIなど)が複数あることを考慮すると、それぞれの結果ごとにサンプルサイズを計算し、実際の最大のサンプルサイズを決定するのが効果的なアプローチと言えるでしょう。研究者は、出される結果の関係性の分析を、データ収集前に決めておくことが理想的です。この方法は、偽陽性の関係を防ぐ上で効果的です。主要転帰変数を明確にし、研究に比較群(例:薬品A対薬品B)または従属群(例:鬱症状のあるマウスへの薬品Aの投与による変数の効果)を含めるかどうかを判断しましょう。
4. データ収集と統計分析のバイアス:研究デザインの段階でも、対照群(条件)、ランダム化、ブラインディング、レプリケーションに配慮することがきわめて重要です。サンプルサイズが大きい場合は、ランダム化によって意図しないバイアスや交絡を取り除くことができます。たとえば、薬品Aの効果を動物の体重・心拍数・BMIによって評価する研究があったとしましょう。この場合、研究者はそれぞれの実験を独立したものとして設定しがちです。このアプローチは、バイアスと交絡を生み出します。一方、対照群と薬品を投与する群に対して十分なランダム化を行うと、心拍数・BMI・体重を適切に観察することができます。
同様に、事後分析が未確定で、懸念のある因果経路を十分に検討することなく複数の分析で潜在的関係性を調べる方法では、研究者は、すべての潜在的関係性を分析する中で、結果を「フィッシング」する可能性があります。したがって、統計的手法を使う場合は、その方法論や論拠を示し、指針として広く認められている国際医学編集者会議(ICMJE)ガイドラインなどの規定に準拠することが重要です。
論文出版プロセスにおける統計学的エラーの意味
正確な結果を得るためには、データを正確に扱うことが重要です。また、統計的正確性は、論文を出版する上でもきわめて重要です。ジャーナルが統計学的エラーを見つけたら、著者は広範囲に及ぶ修正を余儀なくされるか、論文自体がリジェクトされることもあるでしょう。残念ながら、統計エラーは決して珍しくありません。出版プロセスの段階でのよくある統計的ミスは、以下のように分類できます:
統計分析の説明に関するエラーであれば、修正は難しくないでしょう。しかし、データ分析やデータ解釈、結果の考察部分にミスがあった場合は、論文全体を通した大幅な修正が必要になります。また、研究デザインにエラーがあった場合は、研究をやり直さない限り修正が不可能であるため、論文はリジェクトされるでしょう。
統計学の誤用を防ぐには
統計データは、最先端の生物医学を進歩させる上で欠かせないものです。これを実現するには、統計データの収集、分析、表現の誤用や乱用を避ける意識的な努力が必要です。
研究者一人一人がこのような意識を持ち、規定に従って統計学を扱う必要があるでしょう。ICMJEは、「生物医学系ジャーナルに投稿する論文の要件の統一」を義務付けています。これらのガイドラインは、統計的手法が正しく使用され、説明されるようにするための提言となっています。
ICMJEのガイドラインの他にも、研究者が知っておくべきガイドラインとして、「Statistical Analysis and Methods in the Published Literature(出版論文における統計学的分析および手法、SAMPL)」などがあります。これらは、それぞれの統計学的手法や分析ごとの報告方法について詳しく解説しており、実験的研究におけるデザイン、実行、解釈に関する指針を示すことを目的としています。
生物医学分野の論文はほとんどの場合、統計学に支えられています。したがって、生物医学系ジャーナル(とくに、Lancet、Nature、Science、Cell、JAMAなどのインパクトファクターが高いジャーナル)は、生物統計学者を編集者や査読者として雇っています。論文の審査チームに生物統計学の専門家を加えるジャーナルは、徐々に増え始めています。
データを基にエビデンスをまとめて結論を導き出すのは、研究デザインの変数やサンプルサイズ、評価項目の数を考慮すると、確かに難しいことかもしれません。しかし、コンピューターや統計ソフトウェアなどのツールによって、データの解釈や分析の手段は増えています。とは言え、ツールの増加によって誤解やミスが増えている側面があるのも事実です。
ノルウェーの数学者/生物統計学者/医学研究者で、スタヴァンゲル大学健康科学科のジョー・ロイスリエン(Jo Røislien)博士は、「[…]統計学は、研究結果を信頼するかどうかへの確信度合いを定量的に示すもの」と説明しています。したがって、研究者は、研究に着手する前に統計学的手法のベストプラクティスを学んでおく必要があるでしょう。統計学は、正しく扱うことができれば、生物医学の現状の知見をさらに拡張できる力を秘めた強力なツールなのです。
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南方科技大学の中国人研究者が、世界初の遺伝子改変ベビーが誕生したと発表しました。この発表に対し、世界中の研究者や生命倫理学者から激しい非難の声が上がっています。この研究では、HIV感染を引き起こす遺伝子を、遺伝子編集技術によって無効化したとされています。
南方科技大学(中国、深セン)の中国人研究者、賀建奎(He Jiankui)氏が、世界初の遺伝子改変ベビー(「ルル」と「ナナ」呼ばれる双子の女児)が誕生したと発表しました。この発表に対し、世界中の研究者や生命倫理学者から激しい非難の声が上がっています。
賀氏は、HIV感染を引き起こす遺伝子「CCR5」を、「CRISPR-Cas9」と呼ばれる遺伝子編集技術によって無効化したと述べています。この遺伝子編集は7組の不妊治療患者の胚に対して行われ、唯一妊娠に至ったのがこの双子の女児であるとしています。賀氏は、「双子は、父親がHIV感染者であるものの、健康体である」と、自身がYouTubeに投稿した動画で語っており、HIVに感染したカップルにも子供を持つチャンスを与えることが研究の目的であるとした上で、「私の研究が物議を醸すことは理解しています。しかし、この技術を必要とする人々がいるのです。彼らのためなら非難を浴びることも厭いません」と述べています。
今回の結果に対する検証はまだ行われていないため、現時点で賀氏の主張に確証はありません。しかし、遺伝子編集が人体に及ぼす影響はいまだ不明確であり、多くの国で禁止されていることから、研究者のほとんどが賀氏の主張に激しく反発しています。オックスフォード大学で実践倫理学教授を務めるジュリアン・サヴレスク(Julian Savulescu)氏は、「実験が事実なら、それは恐ろしい事態です」と批判しています。
賀氏が所属する南方科技大学は、今回の件について何も知らないと述べており、同氏が今年度の大半を休職していて、研究は学内で行われたものではないという声明を発表しました。また、賀氏が国際的な倫理基準を順守していたかどうかの調査を進める方針も打ち出しています。さらに、研究が行われた病院は、「倫理審査の承認が偽造された」と主張しています。
今回の研究は、中国の生物医学研究者らからも激しい批判を浴びており、120名の研究者が中国のソーシャルメディアで、「この研究は中国の国際的信頼を大きく貶めるものであり、中国の科学研究、とくに生物医学の発展を阻害するものである」という共同声明を発表しています。
中国国民のヘルスケアに責任を負う政府機関である国家衛生与計画生育委員会(National Health Commission)は、世界中からの非難を受け、賀氏の研究の調査を進める方針を示しています。ただし、中国はこのような研究を明確に禁じているわけではないため、賀氏の研究も同国の法律を逸脱するものではありません。
今回の発表は、今後の遺伝子編集のあり方について議論する、香港で開かれた国際会議「ヒトゲノム編集国際サミット」に先立って行われました。賀氏はこの檀上で、700人の聴衆を前に「この研究を非常に誇らしく思っている」と語りました。また、この研究が自己資金によるものであること、査読付きジャーナルに論文を投稿したこと、成人するまで双子の健康状態をモニターしていくつもりであることを明かしました。
今回の発表を契機として、生殖細胞の編集に関する国際的倫理指針の策定が促されるかどうか、見守っていく必要があります。
参考資料:
同じ症例で一度症例報告をしたことがある場合、フォローアップの症例報告をすることは二重投稿もしくはサラミ出版にあたりますか?
すでに一度発表している症例報告のフォローアップは、その新規性と重要度がカギとなりますが、出版済みの症例報告書について明記し、フォローアップ研究であることを述べ、前回と同じ図表を使用しない限り、非倫理的とみなされることはないでしょう。
ただし、念のために前回の症例報告書について投稿時にジャーナル編集者に知らせておいた方がいいので、カバーレターにそのことを記載し、前回の症例報告書へのリンクを添えて、後になって倫理上の問題が生じることを避けましょう。
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ある薬剤投与患者に稀な有害事象が生じました。PubMedで検索したかぎり同様の報告はありません。しかし製薬会社に問い合わせたところ、市販後全例調査で2例報告があったとのことでした(詳細は未発表)。 本例について、初の報告としてcase reportとすることは可能でしょうか。
PubMed、Google Scholar、DOAJ、Ingenta Connectなどのデータベースを徹底的に検索し、製薬会社がその症例に関する報告を行なっていないことを確認しましょう。
製薬会社が情報を進んで開示するようであれば、その2例に関するより詳しい情報を求めてみることも可能でしょう。調査で判明した2例についてすでに発表されているとすれば、あなたの症例報告書の新規性は限られたものとなり、ジャーナルはその報告を独自性のあるものとはみなさず、臨床的重要性を認めないでしょう。したがって、その2例の出版に関する情報の有無がカギとなります。
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中国は、研究の公正性を強化するための最新の取り組みとして、学術不正を行なった研究者や機関に対する標準的な懲戒制度の確立を目指し、国内41の組織・政府機関による共同覚書を発表しました。中国政府はこの文書の中で、科学的イノベーションのための公正で信頼できる環境の整備を目指す方針を示しています。
中国は、研究の公正性を強化するための最新の取り組みとして、学術不正を行なった研究者や機関に対する標準的な懲戒制度の確立を目指し、国内41の組織・政府機関による共同覚書を発表しました。中国政府はこの文書の中で、科学的イノベーションのための公正で信頼できる環境の整備を目指す方針を示しています。
倫理的な出版慣行や世界基準の出版慣行に違反した研究者は、助成金や賞の剥奪などのさまざまな罰則を受けることになります。不正を働いた機関も、研究予算や国益に関連する研究プロジェクトへの参加資格が剥奪される可能性があります。この覚書に署名した組織や政府機関には、中国科学院をはじめとする科学技術関連の機関だけでなく、銀行やテレビ・ラジオ局なども含まれています。
中国は、科学技術で世界をリードする国の1つです。2018年初頭には、米国を抜いて世界最大の科学論文生産国になりました。しかし、急速な科学的発展を遂げる中、学術不正に関する事案も後を絶ちません。主に中国の研究者によって執筆されていた107本の論文をシュプリンガー・ネイチャーが大量撤回した問題は、世界の注目を集めました。
中国は過去にも、学術不正を正すためのガイドラインや方針を策定し、制度の一新を図ってきましたが、科学技術分野以外の機関や組織が不正防止のための取り組みに参加するのは今回が初めてだと思われます。覚書によると、各組織や政府機関には不正に対応する独立した権限が与えられますが、政府への報告が義務付けられています。また、調査に関する情報は基本的に一般公開されることになります。
この覚書は、中国の研究における信頼性の向上や学術不正の廃絶に向けた大きな一歩として期待されています。
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参考資料:
症例報告、予備研究、RCTをシステマティックレビューとして1つにまとめることは可能ですか?可能なら、どのような方法で分析を行えばいいですか?
症例報告(ケースレポート)、予備研究(パイロットスタディ)、RCT(ランダム化比較試験)をシステマティックレビューとして1つにまとめることは、良い案とは言えないでしょう。これらは、比較することができない異なる種類の研究だからです。
しかしながら、研究ごとに下位セクションを立て、データを個別に分析すれば、システマティックレビューとしてまとめることも可能です。データ分析は、実施した研究に応じた方法で行なってください。各研究の結論も、別々に書きましょう。
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若手研究者のためのシステマティックレビューの書き方指南
リサーチクエスチョンは決まりましたか?決まったら、それを課題ステートメントとして整えましょう。課題ステートメントとは、研究を進める根拠を明確にし、知識のギャップや、現状と理想の状態との差異を浮き彫りにするものです。しかし、自分のアイデアを整理して表現することを難しいと感じている著者が多いようです。そこで、Henry Bwisa教授によるこのビデオでは、課題ステートメントをスムーズに書くためのシンプルで取り入れやすい3つのステップを紹介します。
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カンマ(,)は、センテンス内の要素を必要に応じて効果的に区切ることができる、もっとも便利な句読点の1つです。カンマは、文章を読みやすくし、意味を正確に伝えるために欠かせないものです。しかし、その効果を発揮させるためには、適切に使わなければなりません。
[本記事の図は、GrammarCheckによって発表されたものを、許可を得てここに再掲載したものです。]
カンマ(,)は、センテンス内の要素を必要に応じて効果的に区切ることができる、もっとも便利な句読点の1つです。センテンス内のアイデアを区切るために使われるカンマは、文章を読みやすくし、意味を正確に伝えるために欠かせないものです。しかし、その効果を発揮させるためには、カンマを適切に使わなければなりません。
カンマの用法には、いくつかのルールがあります。たとえば、連続する3つ以上の語、句、節を区切るときに使います(例:I ate eggs, bacon, and toast. [私は卵、ベーコン、トーストを食べた])。あるいは、文章の流れを止めることなく補足的な情報を加えたいときにも使います(例:I was talking to Mrs Norris, our next-door neighbor, when the first shots were fired. [最初の花火が上がった時、私は、近所に住んでいるノリスさんと話をしていた])。
このように、比較的明確で守りやすいルールがある一方で、分かりにくいものもあります。たとえば、「カンマは、混乱や誤読を防ぐために必要に応じて使わなければならない」(Purdue OWL: Extended Rules for Using Commas)という決まりがありますが、この基準は曖昧であるため、不要な位置や誤った位置に配置するなどの誤用を招く可能性があります。
残念ながら、研究者の論文にも、カンマに関するミスはよく見られます。句読点のミスがない論文を投稿するためには、カンマに対する意識を高める必要があるでしょう。
論文執筆時に研究者が犯しがちなカンマに関する6つのミスを、下記の図にまとめました。また、図の後には、アカデミックライティングにおける正しいカンマの用法を例文とともに紹介しています。
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カンマに関するよくある6つのミス
【カンマ・スプライス(カンマによる接合)】
完結している2つの文や節をカンマでつないでしまうことを、カンマ・スプライスと呼びます。
例:「Nikki took my scissors, she replaced them with a broken pair.」(ニッキにハサミを取られた、彼女はそれを自分の壊れたハサミと交換した。)
完成した2つの文をカンマでつなぐのは、不適切です。このような場合は、より強い句読点を使いましょう。
・2つの文をカンマなしでつなげると、切れ目のない分かりにくい文章になってしまいます:
NG: “That frog is slimy I don’t want to touch it.”(カエルはヌルヌルしている私は触りたくない。)
・2つの文を独立させましょう:
OK: “That frog is slimy. I don’t want to touch it.”(カエルはヌルヌルしている。私は触りたくない。)
・セミコロンを使うこともできます:
OK: “That frog is slimy; I don’t want to touch it.”(カエルはヌルヌルしている;私は触りたくない。)
・接続詞を使いましょう。その場合は、接続詞の前にカンマを挿入します:
OK: “That frog is slimy, so I don’t want to touch it.”(カエルはヌルヌルしているので、私は触りたくない。)
【インターラプターの使い方】
インターラプターとは、補足情報や感情を示すために文中に挿入される語、名前、句、節です。文章の流れを遮る場合は、インターラプターの前後をカンマで区切りましょう。
OK: “I think you should know, since it might make a difference, that your shoes don’t match.”(知っておくべきだと思って、一応言わせてもらうけど、その靴は君に似合っていないよ。)
【シリアル・カンマ(オックスフォード・カンマ)】
一文に3つ以上の言葉を羅列する場合に、最後の言葉にカンマが付いていたりいなかったりするケースがあります。カンマを付けないと、混乱を招く可能性があります。
・シリアル・カンマあり:
OK: “We invited the rhinoceri, Washington, and Lincoln.”(サイ、ワシントン、リンカーンを招待した。)
・シリアル・カンマなし:
NG: “We invited the rhinoceri, Washington and Lincoln.”(サイのワシントンとリンカーンを招待した。)
・以下の文でシリアル・カンマを使うと、朝食に食べたものの話になります:
NG: “I had eggs, toast, and orange juice.”(私は卵、トースト、オレンジジュースをとった。)
・カンマがないと、トーストとオレンジジュースに話しかけているように読めてしまいます:
NG: “I had eggs, toast and orange juice.”(ねえトーストとオレンジジュース、ぼくは卵を食べたよ。)
【入れ替え可能な形容詞】
形容詞が2つある場合、語順を変えても文書の意味が変わらなければ、それらを区切るためにカンマを使わなければなりません。形容詞が同じ名詞を形容しているなら、それらを入れ替えることができます。
・入れ替え可能な形容詞:
OK: “I’d love to eat a hot, juicy cheeseburger right now.”(出来立てのジューシーなチーズバーガーを今すぐ食べたい。)
・連続的な形容詞の場合は、カンマで区切る必要はありません:
OK: “I can see the UFO against the dark blue sky.”(ダークブルーの空にUFOが見える。)
【導入句】
文頭に導入句がなくても意味が成立する文の場合では、導入句の後にカンマを付けなければなりません。
OK: “In fact, nobody knew you went home early.”(実は、君が早退したことを誰も知らなかった。)
OK: “No, you don’t have to stare at the pot until it boils.”(いいえ、お湯が沸くまで鍋を見ている必要はありません。)
【文頭の従属節】
従属節が文頭に来る場合は、従属節の後にカンマを付けなければなりません。
OK: “After we examine each and every piece of the model, we can start assembling it.”(すべての部品を確認し終わったら、組み立て始めよう。)
OK: “Once I realized that I had judged the man unfairly, I apologized.」(男性への扱いが不公平だったことに気づき、謝罪した。)
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以上の図から、どのような場合にカンマの使い方が誤りとされるのかを理解できたと思います。ここからは、研究に関連する例文を紹介しながら、この6つのミスを回避する方法を説明していきます:
1. カンマ・スプライス(カンマによる接合):図にあるように、完結した2つの文をカンマで区切るのは誤りです。このような場合は、2つの文をピリオドで区切ります。
誤:The results of six independent experiments did not differ significantly, this indicates that the experimental procedure was reliable.(6つの異なる実験の間に著しい差は見られなかった、これは実験の手順が妥当であったことを示している。)
正:The results of six independent experiments did not differ significantly. This indicates that the experimental procedure was reliable.(6つの異なる実験の間に著しい差は見られなかった。これは実験の手順が妥当であったことを示している。)
2. インターラプター/挿入句でのカンマの使い方:文章において必ずしも必要ではない語、名前、句、節は、カンマで括りましょう(補足情報を丸括弧で区切る手法に似ています)。挿入する節/語の前にカンマを入れて文を一度中断し、節/語の後にカンマを入れて、補足情報の終わりを示しす。
例:Nitrogen, an essential component of proteins, is important to plant nutrition. (窒素は、タンパク質の必須成分であり、植物の大切な栄養源である。)
ここでは、「an essential component of proteins」というフレーズが、名詞「窒素」を修飾する補足情報となっています。このフレーズを省略したとしても、文章の意味は保たれるので、挿入句の前後にカンマを配置します。
3. シリアル・カンマ:オックスフォード・カンマとも呼ばれるシリアル・カンマは、言葉やフレーズの羅列の最後に使う「and」の前に任意で置かれるカンマです。複数の言葉を羅列するときに、文章を読みやすくする働きをします。
例:Mice that were fed the modified diet lived longer, weighed less, and had smaller litters than the mice in the control group.(改変食を与えられたマウスは、対照群のマウスよりも長く生き、体重が少なく、小さい子供を産んだ。)
4. 入れ替え可能な形容詞:同じ名詞を形容する2つ以上の入れ替え可能または等位の形容詞は、カンマで区切る必要があります(例:「I’d love to eat a hot, juicy cheeseburger」)。これらの形容詞の順序を入れ替えたり、「and」で区切ったりしても、修飾されている名詞や本来の文の意味に変化はありません。以下の例文では、「reliable」と「quantitative」という形容詞が、名詞「method」を等しく形容しています。
例:A reliable, quantitative method for estimating disease incidence is required.(疾病の発生を予測する、信頼性の高い、定量的な手法が必要である。)
累積形容詞: 2つ以上の累積形容詞または等位でない形容詞は、等位形容詞とは異なり、名詞を等しく形容してはいません。したがって、これらの形容詞をカンマで区切ってはなりません。以下の例文における形容詞「significant」と「positive」は、名詞「effect」を等しく形容しているのではなく、「significant」は、「positive effect」というフレーズを修飾しています。したがって、「significant」と「positive」をカンマで区切るのは不適切です。
例:The two regulatory molecules had a significant positive effect on protein expression.(2つの制御分子は、タンパク質の発現に著しい正の効果を示した。)
5. 導入句:導入句は、文脈を説明する不完全な節であり、主節の前に配置し、後ろにカンマを加えなければなりません。以下の例文では、「in this study」という前置きが、次の文とカンマで区切られています。
例:In this study, we compared the effectiveness of two plant extracts as antifungal agents.(この研究では、2種類の植物エキスの抗真菌薬としての効果を比較した。)
6. 文頭の従属節:文が従属節で始まるときは、従属節の直後にカンマを付けます。従属節とは、単体では意味をなさず、主節なしでは成立しない節です。以下の2つの例文では、「If the establishment and growth of legumes are promoted by fire」と「after incubation for two days at 40°C」という従属節は、単体では意味をなしていません。したがって、主節との間にカンマを挿入する必要があります。
例1:If the establishment and growth of legumes are promoted by fire, legumes may be able to promote the recovery of the N pool.(豆果の定着や成長が火によって促進されると仮定すると、豆果はNプールの回復を速める能力を持っている可能性がある。)
例2:After incubation for two days at 40°C, samples were subjected to further analysis.(サンプルを40℃で2日間培養した後、さらなる分析を行なった。)
以上が、論文でよく見られる、カンマに関する6つのミスです。これらのミスについてご存知でしたか?今回のアドバイスや例文は役に立ったでしょうか。カンマの使い方でほかに困っていることはありますか?皆さんのご意見をぜひお聞かせください!
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参考資料:
エルゼビアのジャーナルに投稿した論文が、60日以内に修正して再投稿するよう求められています。この期日を守らないと、論文はリジェクトされますか?
再投稿の遅延の扱いは、ジャーナルによって異なります。期日を過ぎても問題視しないジャーナルもあれば、期日後の再投稿は受け付けずにリジェクトするジャーナルもあるようです。重要なのは、ジャーナルとコミュニケーションを取ることです。期日を守れそうにない場合は、編集者にその理由を説明し、期日を延ばしてもらえるかどうか問い合わせてみましょう。柔軟なジャーナルであれば、期日を多少延長するなどの対応をしてくれるはずです。
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1か月半前に、(editageの助けもあって)拙稿が英文誌にアクセプトされ、名前や謝辞も付け加えたcleared versionを直ちに送りました。その後、雑誌の担当者から、cleared versionの受領連絡と合わせて以下のような連絡をいただきました。 We hope to complete the production checks and export your article to the production team as soon as possible. The production team would get in touch with you regarding the author license agreement and proofreads in due course. We hope to publish your article on early view within 4 months. ところが、1か月半が経っても、production teamからの連絡はありません。その場合、催促や確認の連絡をするべきでしょうか。それとも、上掲の期間に合わせて、4か月ほどは待つべきなのでしょうか。
ジャーナル側から出版までに4か月程度かかりそうだと言われているのなら、催促の連絡をするには時期尚早でしょう。問い合わせを行うのは、もうしばらく待ってからにすることをお勧めします。数週間のうちには、校正原稿と著作権関係の同意書が送られてくるのではないかと思います。
もう2か月待ってみてもproduction teamから音沙汰がなければ、編集者にメールを送ってみましょう。その際は、原稿ID、投稿日、アクセプト日を記載するとともに、ジャーナルからのメール(cleared versionの受領連絡時に届いたもの)を添付し、アクセプトから3か月以上たっても校正原稿と著作権関係の同意書が届かないので心配していると伝えましょう。
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2018年のピアレビュー・ウィークでは、査読の多様性と包摂性が取り上げられました。そして、多様な人々に査読プロセスに関わってもらうにはどうすればよいか、査読に多様な視点を反映させるにはどうすればよいか、といった点について議論が交わされました。これらの議論を前に進めるベストな方法は、査読の包摂性に関するユニークな実例を紹介することでしょう!
今回は、独自のアプローチで運営されているオープンアクセスジャーナル、Frontiers for Young Minds誌のジャーナルマネージャーを務めるエマ・クレイトン(Emma Clayton)氏にお話を伺いました。そのアプローチとは、科学論文の査読に子どもや若者を参加させるというものです。インタビューでは、「Frontiers for Young Minds(若き頭脳の開拓)」プロジェクトについて詳しく伺い、一般の人にも正確に分かりやすく科学的発見を伝えるために子どもたちとどのような取り組みを行なっているのかについてお聞きしました。
クレイトン氏は、生態学と環境管理学で修士号を取得後、科学コミュニケーションの促進に関わる分野に進み、2016年からこのプロジェクトに携わっています。現在は、科学的発見を若年層に広めるために、そして科学者が若い人により幅広く研究を伝えられる円滑なコミュニケーションを実現するために奮闘しています。
「Frontiers for Young Minds」というアイデアはどのように誕生したのですか?
編集委員会を子どもたちで構成するという構想は、弊誌編集長のロバート・ナイト(Robert Knight)教授(カリフォルニア大学バークレー校)によるものです。ナイト教授は、その実現に向けて2013年からFrontiersとともに活動してきました。
「正確で楽しい論文を作る」ために、「Frontiers for Young Minds」では科学者と子どもにどのように働きかけているのですか?
「Frontiers for Young Minds」は、若い世代に査読付き論文を届けることを目指しており、8~15歳の子どもたちをターゲットにしています。子どもたちには、読者という立場だけでなく、論文の査読者としても科学出版プロセスに重要な役割を果たしてもらえるようにしています。編集者と編集長で構成された編集委員会は、子どもたちをサポートしながら、研究者として、査読プロセスの管理とジャーナルの科学的質の維持に努めています。2013年に神経科学分野を起ち上げたのを皮切りに、現在は天文学、数学、地球資源、保健、生物多様性の分野が加わり、計6つの専門分野を持つまでに成長しました。
子ども査読者たちと指導員1人でチームを作り、指導員は、理解しにくかった部分に対応したり、子ども査読者からのフィードバックを集めたりして、子どもたちへの査読指導の責任を負います。フィードバックは、著者に送られます。著者はすべてのフィードバックに返答し、修正を行います。そして、子ども査読者と指導員が修正に満足し、幅広く受け入れられる論文になったと判断した場合に限り、論文はアクセプトされ、出版されます。
「子どもたちは、楽しみながら論文を読んでフィードバックを行なっています。子どもが論文を改善するというアイデアは、本人たちにとっても新鮮だったようで、このような経験は学校でもなかなかできません。子どもと一緒に働くことは、とても楽しい学びの経験になっています」
―「Frontiers for Young Minds」指導員
査読プロセスに子どもたちを関わらせるにあたっては、科学者のように考えて物事に疑問を持てるように働きかけています。科学者になることを夢見ている子がいれば、その夢を応援します。弊誌は、科学者と一般の人々をつなぐ橋渡し役として、信頼されるリソースを提供しています。新たな発見が教科書に反映されるまでに、通常は数年かかりますが、「Frontiers for Young Minds」によって、そうした情報により早くアクセスすることができるのです。
弊誌では、著者に出版費用を請求することはありませんし、編集関連や論文使用に関する費用も請求しません。学校の先生から論文の使用許可を求められることがよくありますが、このような許可を得る必要もありません。子どもたちだけでなく、誰でもこれらの論文を読むことができ、最先端の科学を理解することができるのです。
研究に子どもたちの意見を取り入れるというアイデアは素晴らしいですね。子ども査読者はどのように選ばれているのでしょうか?特別なトレーニングなどは行なっていますか?
興味のある子どもたちからの応募を、kids@frontiersin.orgで受け付けています。一緒に査読に取り組んでくれる指導員の準備が整い次第、編集部から、用意できた論文を送ります。
子どもたちがこの斬新な役割を務めるためのさまざまな資料を用意していますが、指導員も、自らの経験に基づいてこうした資料を用意することが可能です。また、査読プロセスについての説明を行なっているほか、査読で見るべき点についてのガイドラインも用意していますし、確認すべき項目のリストも用意しています。
「このジャーナルの存在を初めて知った人々の反応を見ると、いつも嬉しくなります」
―エマ・クレイトン
科学者たちと交流してきた経験を踏まえてお聞きします。子どもにも分かるように科学を噛み砕いて伝えることは、科学者にとってどれほど難しいことだと思いますか?
それは非常に難しいことだと思います。しかし、苦労する価値のあることだと思います!科学者の多くは、論文をどのように書き始めたものかと戸惑うものです。そんな中で、私たちのジャーナルは、よりよい伝え手になるための学びの場になります。自分の発見が独り歩きを始めてメディアや一般の人々に誤解されてしまうことを恐れている研究者もいます。「Frontiers for Young Minds」で自ら伝える機会を得ることで、科学者は、自分の発見を一般の人々に向けて正しく伝えることができるようになるのです。
どうすれば指導員になれますか?募集はされていますか?特別な資格は必要ですか?
指導員は、子ども査読者たちとチームを組みます。指導員は、プロセスについて子どもたちに説明することができる、査読経験のある若手研究者が務めるケースが多いです。また、科学的経験や課外活動の経験が豊富な教員や研究者が指導員を務めるケースもあります。指導員は、科学者の生活や、クリティカルシンキングの方法や、査読プロセスの重要性を子どもたちに伝える役割を担っています。
指導員や編集者として弊誌の査読プロセスに参加することに興味をお持ちの研究者の方は、kids@frontiersin.orgまでお気軽にご連絡ください。
この取り組みに対して、学術出版コミュニティからはどのような反応がありますか?
非常にポジティブな反応を得ており、弊誌の存在をもっと早く知りたかったと言ってくれる方が多いです。このジャーナルの存在を初めて知った人々の反応を見ると、いつも嬉しくなります。
「Frontiers for Young Minds」での経験からお聞きします。研究者が研究情報を簡略化しようとする際に犯しがちなミスはどのようなものでしょう?それを防ぐにはどうすればよいですか?
もっともよく見られるミスは、1つの論文でできるだけ多くのことを説明しようとすることです。研究者は、物事を詳細に伝えるように訓練されているので、1つの論文ですべてを説明しようとする傾向があります。したがって、必要なものとそうでないものとを区別する方法を学ぶ必要があるでしょう。もっと頭を柔らかくして、書き方を変えなければなりません。これを、物事をクリエイティブに考えるチャンスと捉えてほしいと思います。論文に面白さという要素を加え、図版などといった要素は若い読者にとってまったく馴染みのないものであるということを忘れないでおきましょう。普通の学術論文で使うような図をカラフルにしたり文字を大きくしたりするだけで分かりやすくなるといった、安易な考えは捨てましょう。図は、データを視覚化するために使うのではなく、意味を示すためや、本文の説明を捕捉するために使いましょう。
「Frontiers for Young Minds」で論文を出版した研究者の多くは、自分の研究に対する新たなモチベーションを得ています。プロセスを経験してみれば、それが実感されることでしょう。
教育者や学校に対する意義の高さを踏まえ、Frontiers for Young Mindsをより多くの人に届けるためにどのような取り組みを行う予定ですか?
発表した論文はすべて、ソーシャルメディア(Facebook、Twitter)とブログで宣伝しています。
研究者が子どもたちに対面で研究を発表し、子どもたちが批評や質問を行なって論文に判定を下すというライブ査読のイベントも開催しています。
また、さまざまな関連イベントにできるだけ出席するようにしています。たとえば、今年の4月には、世界中の多くの子ども、保護者、教師、研究者の関心を集めている米国科学エンジニアリングフェスティバルに参加しました。
生態学者から学術誌のスタッフに転身したのはなぜですか?学術出版界に携わることは、昔から考えていたのですか?
研究を続けたい気持ちはありましたが、学術界でのキャリアが欲しかったわけではありませんでした。科学や最新の発見はすべての人に分かりやすい形で伝えられるべきだと考えているので、オープンアクセスである「Frontiers for Young Minds」は、私にとって最適な選択肢だったのです。
最後の質問です。ピアレビュー・ウィーク2018のテーマは多様性でしたが、ご自身にとって多様性とはどのような意味を持ちますか?また、ジャーナルが包摂性を高めるにはどうすればよいでしょうか。
私にとっての多様性とは、子どもたちが、それぞれの背景、性別、人種、社会経済的立場に関係なく査読を行えるようにすることです。私たちは、同じ考えを持つ世界中の機関と協力関係を築き、論文をさまざまな言語に翻訳することで、国際的多様性が促進されることを目指しています。そして、あらゆる背景を持つ子どもたちに、研究者になることの素晴らしさを伝えています。彼らが大人になったとき、科学コミュニティの多様性はさらに高まっているはずです。「Frontiers for Young Minds」のようなプロジェクトを通して研究を広めることは、そのような将来を実現するための1つの方法と言えるでしょう。
クレイトン氏、興味深いお話をありがとうございました!
論文とは、幅広い読者の興味を引きつつ、研究を最大限に表現するものでなければなりません。単に科学的成果を伝えるにとどまらない、読者にとって興味深くエキサイティングな論文を書くのは、きわめて難しいことです。この記事では、執筆スキルを高めて読みやすい論文を書くための5つのヒントを紹介します。
単に科学的成果を伝えるにとどまらない、読者にとって興味深くエキサイティングな優れた科学論文を書くのは、大変難しいことです。なかには難なく書いてしまう人もいますが、たいていの人にとっては、非常に骨の折れる作業と言えるでしょう。
論文の出版前は、まずジャーナル編集者と査読者の興味を引く必要があります。いざ論文が出版されたら、キャリア形成において「被引用数」の重要性が増している今、論文をより多くの人に読んでもらわなければなりません。私は大学院時代に初めて論文を執筆しましたが、書くことに神経質になりすぎたために、執筆をできるだけ先延ばしにしていました。書くことより、ほかの科学コミュニケーションを楽しいと感じていたのです。もちろん、学位を取るためにいつかは書かなければならないと承知していましたが。
しかし、時間がたつにつれて私の嗜好も変化し、今では書くことを楽しんでいます。論文を書くことはクリエイティブで楽しい作業ですが、論文とは、幅広い読者の興味を引きつつ研究を最大限に表現するものでなければならないということを忘れてはなりません。この記事では、私の論文執筆スキルを大いに高めてくれたコツを紹介したいと思います。
1. 考えをまとめる:研究結果を伝えるすべての要素が含まれた、読者にとって読みやすい整合性のある論文をまとめ上げるのは、長い道のりです。簡潔明瞭な論文を書くためには、自分の考えを整理することが最初の一歩となります。仮説や研究の目的をしっかりと理解し、その目的が設定された背景を整理しましょう。研究の詳細や論理的考察は、その後に付いてくるものです。また、論文の潜在的読者を把握し、目指す読者層に応えるように論文を書くことで、より分かりやすい文章を書くことができるでしょう。
2. 最初のページは目を引くものに:タイトルとアブストラクトは、読者が最初に目にする部分です。このセクションは、オープンアクセス誌か有料誌かによらず、無料で公開される唯一の部分です。したがって、タイトルとアブストラクトは、簡潔で興味を引き、なおかつ論文全体をうまく要約したものでなければなりません。
無数の論文の中から自分の論文を見つけてもられるように、効果的なキーワードを設定しましょう。ただし、ターゲットジャーナルのガイドラインは順守しましょう。多くのジャーナルが語数制限を設けているほか、略語の使用が禁じられている場合もあります。また、アブストラクトを「背景と目的」、「方法」、「結果」、「結論」などの副題をつけて書くよう指定しているジャーナルもあります。アブストラクトとは言え、このスタイルで文章を書くことはよい訓練になるでしょう。
まずは、研究を行なった理由と、研究の主要課題もしくは目的の説明から始めます。研究の新規性についても簡潔に述べましょう。次に、基本的な研究デザインや主要方法論を含む研究の方法について説明します。続いて、この方法によって明らかになった主な結果を述べ、最後に、この研究によって分野や読者に与えられるインパクトとメリットを説明しましょう。アブストラクトは、伝えたい関連情報をすべて含んでいると同時に、シンプルかつ簡潔明瞭でなければなりません。
最近では、アブストラクトのほかに、グラフィカルアブストラクトやビデオアブストラクト、一般語訳を含めることを認めるジャーナルもあります。これらは研究をより分かりやすく伝え、論文をより読みやすくするツールです。
3. 第三者の視点で論文をチェックする:論文を書く際は、読者は自分ほどその研究に詳しくないということを忘れてはなりません。したがって、反復や拡大解釈をすることなく、伝えたい情報を正確かつ簡潔に述べましょう。シンプルでありながらも印象的な文章を心がけてください。専門用語の使用や回りくどい表現のほか、差別的な表現や過度にくだけた表現も避けましょう。
私が初めて論文を書いたとき、自分では研究を細部まで把握していたので、書いてあることを完全に理解することができました。しかし、論文を校正してもらった同僚からは不備を指摘され、多くの質問をされたので、結局、論文の大半を書き直すことになりました。このように、できるだけ同僚に論文をチェックしてもらい、第三者の貴重な視点を取り入れるようにしましょう。こうすることで、論文のさまざまな要素をブラッシュアップすることができます。英語を母語とする同僚にチェックを頼めれば、言語の問題も同時に確認することができます。
4. 完結したストーリーを伝えるために必要なデータだけを漏れなく含める:論文は、完結した1つのストーリーを伝えるものです。どのようなストーリーを伝えたいのかを最初に考え、そのストーリーに必要な関連データをすべて含めるようにしましょう。あなたが大学院生なら、ストーリーに必要なデータよりもはるかに多くの実験をこなしてきたことでしょう。しかし、すべてのデータを含める必要はないのです。ストーリーを語るために必要なものだけを含めるようにしましょう。
出版点数を増やすためだけにデータを複数の論文用に分割することには、注意が必要です。ICMJEガイドラインの重複出版やサラミ法に関する規定をよく読み、倫理的規定を順守しましょう。一方で、論文を書き進めるうちに、結論を引き出すために必要な重要データが不足していることに気付くことがあるかもしれません。可能であれば、この段階で必要な追加実験を行い、データを加えることが望ましいでしょう。
追加実験を行う余地がない場合は、考察セクションで研究の限界として示し、データを追加できなかった理由を説明しましょう。こうすることで査読者や読者に、課題として考慮はしたものの、この論文に載せることはできなかったということを伝えられるでしょう。
5. 効果的な図表を作る:研究を効果的に伝えるための5つ目のポイントは、データの表現方法についてです。一般的に、データは図(折れ線グラフ、棒グラフ、円グラフ、画像など)や表を用いて表現します。適切なフォーマットを選ぶようにしましょう。
読者は、図表によって大筋を理解するということを忘れないようにしましょう。図表は、本文を読まなくてもキャプションや凡例だけで理解できる、独立したものでなければなりません。また、本文と図表で情報が重複しないように注意しましょう。ジャーナル編集者は、くどい論文ではなく、簡潔な論文を好みます。
書くことが好きでも嫌いでも、科学や研究の道を追求するつもりでもそうでなくても、ライティングスキルを磨くことはきわめて重要です。でも、心配はいりません。あなたも、私と同じような成長曲線をきっと描けるはずです!
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論文における「implication」と「recommendation」の違いは何ですか?
「research implication」とは、研究結果が方針・実践・理論・後続研究にどのような意義を持つかを示すものです。これは基本的に結果から導き出す結論であり、結果が方針・実践・理論にとってどのように重要であるかを説明することです。ただし、これらはエビデンスによって立証されていなければなりません。また、研究のパラメータが説明されている必要があり、結果の過度な一般化を防ぐために、研究の限界が考慮されていなければなりません。
「recommendation」とは、方針・実践・理論・後続研究に関して特定の行動を促すものです。つまり、テーマに関する今後の研究内容を具体的に提言するものです。たとえば、とくに研究のパラメータを越えて結果を一般化することに意義があるような場合には、今後実施可能な研究について提言することができます。また、論文中で触れなかった今後取り組むべき課題や、その研究が寄与したあるいは寄与しなかった可能性のある領域について示すことができます。
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What is the difference between research implication and recommendation?
全力で作成した助成金申請が却下されてしまったら、大きく落胆することでしょう。このような事態を避けるためにも、研究者は、頑健で隙のない助成金申請書とはどのようなものかを理解しておく必要があります。
ほかの仕事を脇に置いて助成金申請書の執筆に全精力を注ぎ、大きな希望と共に完成した申請書を提出したのに、申請が却下されてしまったら…きっと、大きく落胆することでしょう。
このような事態を避けるためにも、研究者は、頑健で隙のない助成金申請書とはどのようなものかを理解しておく必要があります。この記事では、助成金申請書を作成する際の有益なヒントやガイドラインのほか、万が一申請が却下されてしまったときの対応についても紹介します。
助成金申請とは?
助成金とは、政府機関、企業、財団などの助成団体が、非営利団体、教育機関、企業、個人に提供する、返還不要な研究費のことです。この研究費を受け取るためには、グラントプロポーザル/グラント申請などと呼ばれる申請書を作成する必要があります。
優れた助成金申請書の特徴
優れた助成金申請書では、提案する研究のインパクトとそれを実現するための現実的なアプローチが簡潔明瞭に提示されています。その特徴を詳しく見ていきましょう。
1. 簡潔明瞭に書く
申請書は、明確な流れに沿って簡潔明瞭に書かれていなければなりません。研究の目的と、それを達成するための道筋を明示する必要があります。
すべての目的が、設定した仮説と直接結び付いていることを確認しましょう。そうすることで、審査委員会が提案内容を明確に理解することができます。
2. 研究の潜在的インパクトを示す
多くの助成団体が、大局的な申請書を求めています。研究室を越えて、より大きなコミュニティに利益をもたらす可能性を秘めたプロポーザルほど、受理されやすいと言えるでしょう。
分野を跨いだ共同研究、汎用性の高い研究、学生の学びに影響を与える研究、研究がさらに活発化するような研究なども、受理される可能性が高いでしょう。
3. 現実的なアプローチを示す
プロポーザルでは、利用する予定の研究方法や、期日、リソースを論理的かつ現実的に説明する必要があります。
具体的な結果を出すことを保証するプロポーザルは、肯定的に受け入れられない可能性があります。比較的好まれるのは、すべての目的が達成されなかったとしても興味深い結果が得られそうなプロポーザルです。
申請が却下される原因
申請の却下を避けるために、却下の一般的な要因を理解しておきましょう。
1. 対象領域から外れている
どれほど画期的で優れたアイデアを提示したとしても、助成団体の対象領域や目的に合っていなければ、プロポーザルは却下されるでしょう。
すべての機関にはそれぞれの目的や優先事項があり、申請を採択するかどうかは、これらが判断材料となります。
2. 申請書の質が低い
一般的に、申請書は申請先が設定するガイドラインや要件に従って書かなければなりません。申請書の構成や体裁にも気を配り、文法ミスなどの言語的間違いのないものを目指しましょう。
ガイドラインを無視してでたらめに書かれたものや、体裁が整っていないものは、即座に却下されます。
3. 説得力と先行研究の提示が不足している
申請書は、研究のインパクトと重要度の高さについて、助成団体を説得できるように書かれていなければなりません。そのアイデアの背景や、アイデアの基となった先行研究を提示することで、プロポーザルに強固な基盤を与えましょう。
必要に応じて先行研究を引用し、統計情報も含めれば、アイデアの文脈を効果的に示すことができるでしょう。
申請が却下された場合の対応
申請が却下されてしまった場合は、以下のように対応しましょう:
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リソース:
ある疾患のcase seriesの作成を考えているのですが、症例一覧に含めたいもののうちの一つについて過去に同門医師がcase reportで報告しています(和文雑誌)。その症例を含めてcase seriesを報告することは倫理上問題ないでしょうか。
出版物に倫理的な問題がないようにとの配慮は大変素晴らしいものです。Case seriesは、所属先で自分が直接観察し、対処した症例の報告書でなければなりません。あなたがこの症例に直接対処したわけではないのなら、他の著者が報告した症例をcase seriesに含めることはできません。他の人が報告したこの症例を、case seriesで引用し、あなたの研究の観点から考察することは可能です。
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